1. 2015年11月06日 17:31:50
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PDP RIETI Policy Discussion Paper Series 15-P-022財政赤字・社会保障制度の維持可能性と金融政策の財政コスト 深尾 光洋 経済産業研究所 独立行政法人経済産業研究所 http://www.rieti.go.jp/jp/ 概要 本稿では、第2節で日本の財政バランスの動向を国際比較の観点から概観した後、財政赤字の累増がなぜ日本経済にとって問題となるのかを説明し、赤字を削減するための増税方式と増税が生み出す問題点を検討する。また赤字を放置した場合のリスク要因を考える。次に第3節では、従来見逃されてきた金融政策の財政コストを分析する。日銀は量的緩和の一環として巨額の長期国債を購入しているが、これは日銀が国債価格下落のリスクを負っていることを意味し、将来金利が上昇した場合に、日銀の収益では処理し切れない損失を追う可能性があることを指摘する。第4節では、これまで行われてきた社会保障制度改革を簡単に説明して、今後日本の経済・財政にどのような影響を与えるかについて述べる。公的年金制度については、近年の改革で給付水準を抑制する措置が実施された結果、相当の財政健全化が図られたが、医療・介護分野では、今後さらに支出の拡大が見込まれており、特に医療・介護の人手不足が極めて困難化する可能性を指摘する。最後に分析を総括して、日本の人口減少による潜在成長率低下が、医療・介護制度維持と財政再建の最大の懸念材料となっていることを指摘する。 1 序論 日本の財政バランスを見ると, 政府支出は人口高齢化による社会保障費の増 大が主因となって, 1990 年代のGDP( 国内総生産) 比30% 台から2010 年代 には40% 前後にまで増大してきた. これに対して, 税・社会保険料が太宗を占 める歳入は,GDP 比30% 程度に留まってきた. この結果, 財政赤字は1980 年代後半のバブル期の小幅の黒字から, リーマンショック後の2009 年には GDP 比10% を超える大幅な赤字へと悪化してきた( 図81 ). こうした厳しい財政事情を背景として, 野田政権の下で2012 年夏に消費税 の二段階引き上げが決定され,第一弾として2014 年4 月に5% から8% に引き 上げられた.さらに2015 年9 月には消費税を10% に引き上げることが予定さ れていたが, 安倍政権によって2017 年4 月に1 年半先延ばしされている. こ の二回で合計5% の引き上げが実現すれば,消費税収は12 兆円強増加すること が見込まれるうえ,2013 年以降の景気回復による税収増加もあって,日本の財 政赤字は2015 年にはGDP 比6% 程度まで縮小し,2017 年以降には3% 台にま での縮小が見込まれている1. 図1
2 財政バランスの現状と課題 2 . 1 政府債務残高の国際比較 日本の中央・地方の政府が抱える国債などの負債総額は, 2014 年末で1202 兆円と日本の国内総生産(GDP)の2.3 倍にも達している2.人口で割ることで 国民一人あたりに引き直しても946 万円となり,政府は非常に大きな負債を抱 えている. 政府債務のGDP 比率を主要国と比較しても, 日本の比率は最も高 い水準にあり, 財政危機に陥っているギリシャと比較しても日本の方が大幅に 高くなっている( 図2).また日本政府は税や社会保険料からの収入を大幅に上 回る支出を行っており,これに伴う財政赤字を国債発行でまかなっているため, 政府の債務は非常に速いペースで増加を続けている.1997 年に100% を超えた 政府債務GDP 比率は, 2009 年に200% を超えている. 日本政府は負債だけでなく, 金融資産も保有している. 例えば, 国の年金基 金は国債などの金融資産を持っており, また外貨準備として米ドルなどの外貨 建て金融資産も保有している. 借金が多くてもそれに見合う金融資産を持って いれば, 金融資産を売却すれば債務は返済できる. そこで政府の負債総額から 金融資産保有額を差し引いた純債務について国際比較をしたのが,図3 である. 日本政府は, 2014 年末でGDP の1.2 倍もの金融資産を保有しているため, 純 債務GDP 比率は総債務GDP 比率から約120 ポイント差し引いた水準になる. 2014 年の政府純債務GDP 比率でみると, 日本は127% とギリシャの174% を 下回っているが, 他の主要国を相当上回っていることが見て取れる. このよう に, 日本政府の負債の水準は資産を差し引いた純額で見ても, 他の主要国に比 べて高くなっているといえる. 2 International Monetary Fund(2015) 4 図2 2 . 2 政府債務の負担と世代間移転 財政債務の負担に関しては, 次の3 つの代表的な考え方が存在する. 本稿で は, まずこの3 つの考え方を説明したあと, 財政再建のための税目と歳出削減 策について考えてみたい. ( その1) 政府の債務を, 家計の債務と同じものだと見なす考え方. 例えば両親の世代 が所得以上の消費を行って借金を残した場合, 相続放棄が許されない子孫はそ の借金を返す負担を負うことになる. それと同様に, 政府が税収以上の支出を 行って積み上げた政府債務は, 実質的に国民が負った相続放棄ができない債務 であり, よって政府債務は, 将来の世代が負担することになるとされる. ( その2) 政府の債務は, それが対外的な債務でない限り国民が国民自身から借り入れ たものであり, 国全体で考えれば国民の債務と資産が打ち消しあってしまうと する見方. 従って, この考え方の下では, 政府の債務は将来の世代の負担には ならないとされる. しかし海外からの借金は, 将来世代の負担となる. 6 ( その3) 政府の債務は, 将来に繰り延べられた課税であるとする考え方. この見方で は, 政府の財政赤字は, 過去から将来に繰り延べられた課税額に対応している と考える. 例えば税金が勤労所得に対する税だけだと仮定しよう. 1 年間だけ 課税を停止して翌年に二倍の課税を行えば, 1 年間課税を繰り延べたことにな る. 1 年くらいの繰延であれば, 課税停止の恩恵を受ける人と, 二倍の税金を 払う人は大部分が重なっているので,あまり影響はないだろう.しかし20 年間 も課税を停止して, その後20 年間課税を二倍にすれば, 20 年分の世代が現役 時代の所得課税を免れて退職し,後に続く世代が20 年間も重税に苦しむことに なる. 財政赤字による課税の繰延べは, 将来の世代から現在の勤労世代や高齢 者世代への所得の移転を発生させる. このため財政赤字が発生している場合に は, 各世代が将来の世代に対して, 課税の繰り延べと同じ金額だけ遺産を追加 して残していかない限り, 将来世代に課税負担が発生する. それでは, どの見方が正しいと考えられるのか. これら3 つの財政赤字に関 する見方の内で, 第一の見方は家計の収支と政府の収支を混同しており, 誤り である. 第二の見方が指摘しているように, 政府の債務が国内の主体により保 有されている場合には, 政府の債務は国民の債務であると同時に国民の資産で もあることを見落としている. このため第二の見方は, 政府の収支と家計の収 支の違いを認識しており, その点では正しい. しかし財政赤字により課税を免 れる世代と, 将来, 政府債務を課税の形で負担する世代が異なりうる点を見落 としている. このため第三の見方が, 財政赤字の本質についての最も深い理解 であると言うことが出来る3. 以上述べたように,財政赤字が世代間の移転を発生させるものだと考えれば, 世代間の公平性の観点からは, 増税や歳出削減にあたっては, 過去に課税を免 れた世代にある程度負担してもらうのが良いことになる. 過去に低い税・社会 保険料を享受してきた高齢世代の中で, 裕福な者にある程度税を負担してもら うことによって, 現役世代の過大な税・社会保険料負担を削減することが考え 3 庄司( 2013) は, 政府債務の蓄積は, 経済成長率に対してもマイナスの影響 が発生しうることを示した. 7 られる. この観点から見ると, 消費税の増税と, 所得の多い高齢者に対する社 会保障支出の抑制が適当だと考えられる. まず消費税についてみると, この税は一面で過去に蓄積されてきた金融資産 に対する課税である. なぜなら, 預金, 生命保険, 債券, 株式などで財産を保 有してきた世代が, それを取り崩して消費するときに消費税を負担するからで ある. 消費税が5% 引き上げられれば, 退職した世代が保有する金融資産のう ち死亡するまでに消費する金額に5% 課税されることになる. 次に社会保険の仕組みを見ると, 所得にかかわらず同一税率で課税される社 会保険料を使って,所得の高い高齢者に年金などの形で所得を移転することは, 公平とは言えない.「社会保険」は「保険」と呼ばれているものの,その実態は 保険とはかけ離れた課税による所得移転であり, その実質的な移転額は, 高齢 の世代ほど有利に, 若い世代ほど不利に設計されていた. この状況を直視すれ ば, 所得の多い高齢者に対する移転を削減することで若い世代の負担を軽減す ることが適当だと言える(表1).経済企画庁( 1985)『経済白書』付注3-1 によ れば,1985 年に60 歳に達して満額の厚生年金を受け取る男性の受給者の場合, 本人と事業主が過去に拠出した年金保険料の現在価値は, 本人と遺族が受け取 る年金の現在価値の僅か12.2〜 17.6% にすぎず, 8 割以上が若い世代からの所 得移転となっていた4.
4 経済白書( 1985) は次のサイトで入手可能である. http://www5.cao.go.jp/keizai3/keizaiwp/wp-je85/wp-je85-000i1.html を参 照 8 表1 出所: 経済企画庁( 1985),『経済白書』付注3-1 に筆者が加筆. 2 . 3 財政赤字削減の方策と世代間の所得移転効果 長期的な観点から見て, 日本経済にとっての最大のリスクが巨額の財政赤字 の累増である. 国内総生産(GDP) 比130% もの政府純債務が, 見通しうる将 来増加を続けていく姿は, 極めて不健全であり, これを放置すれば早晩日本政 府に対する信用が失墜するのは確実だからだ. 財政再建にはプライマリー・バランス( 利払いを除く財政収支) の相当大幅 な黒字化が必要だ.2017 年4 月の消費税2% の追加引き上げと将来の景気回復 注: (1)1985年4月に60歳に達して新規受給者となる30年間厚生年金に加入した 男子サラリーマンをモデルとする。妻は3歳下の専業主婦を想定する。 夫は79歳、妻は82歳まで存命と想定するが、これは当時の夫の退職時 の余命から推定した。 (2)年金保険料は本人負担分に加え事業主負担分も、実質的に被保険者 の負担とみなした。 (3)運用利回りは、過去の厚生年金制度の運用実績である6.5%のケース と利付電電債10年もの運用利回りの8.8%の二つのケースを想定した。 (4)将来給付は、当時は5年ごとに賃金上昇率にスライドし、その間の期間 は物価にスライドしていたので、長期的に賃金スライドであると考えて推計 した。割引金利は、賃金上昇率プラス2%のケース(実質金利2%)と賃金 上昇率と同じケース(実質金利0%)の二つを考えた。 (5)モデル受給者の過去の賃金水準は1984年度のボーナスを除く月当たり 報酬額を25万円とし、過去にさかのぼって名目賃金指数の上昇率で減額 して求めた。このケースの新規裁定時年金額は1,770,400円であった。 9 による税収増加を考慮しても, 政府債務を漸減させるための黒字化には少なく ともGDP 比8% 程度の増税が必要となる. 消費税1%の増税で, 税収はGDP 比0.5%程度増加するため,GDP 比8%の増税を消費税だけで実現するためには, 消費税を現在予定されている10%から16 ポイント引き上げ,26%程度にする 必要がある. 後に見るように, 人口高齢化によって特に医療・介護関連の財政 負担の増加が予想されるので, 歳出の徹底的な抑制を想定しても, 歳出面では 政府支出のGDP 比率を横ばいにするのが精一杯だからだ5. しかし財政再建を可能とするほどの大規模な増税を行えば, 景気を悪化させ て, 財政再建自体をより困難にする可能性が高い. 高い税率は脱税や節税を誘 発し, 経済成長や雇用情勢を悪化させるだろう. これは現役の世代にとって非 常に重い負担になる. では, 財政再建で守られるのはだれの権益だろうか. 国債の元利金支払いの ために増税すれば, 日本の金融資産の大部分を保有する年配層の財産が保全さ れることになる.これは,日本の家計が直接保有する国債はさほど多くないが, 家計が保有する銀行預金や生命保険契約の大きな部分を支えているのが国債だ からだ. 5 消費税の段階的な引き上げと法人税減税が経済成長に与える影響については, 蓮見亮( 2014) を参照されたい. 10 図4 全国消費実態調査からの推計によれば, 家計部門の保有する純金融資産( 金 融資産マイナス負債) の大部分は50 歳以上の年配層が保有しており, 50 歳前 後までの大部分の現役層は, 金融資産と負債が拮抗しているため, 純金融資産 をほとんど保有していない( 図4 参照). このため, 日本の高年層は, 全体と してみると巨額の金融資産を保有している.世代別の純金融資産額( 金融資産- 負債の純額)で見ると,50 歳以上の世帯主の家計が約1200 兆円のほぼ全額を 保有しており, 60 歳以上の家計が7 割程度を保有していると推計されている. これに対して50 歳未満の若い世代は, 金融資産と住宅ローンなどの負債が拮 抗しており, 純金融資産はほとんど保有していない. 高齢層は, 年金・医療・ 介護保険の財政に対する信頼が揺らぐ中で, 老後の医療費や介護費用に対する 不安感から, 巨額の貯蓄を保有していると考えられる6. 現在の高齢世代は, これまでの低い税・社会保険料負担の下で財産を形成し 6 小池( 2005) を参照. 世帯主の年齢階級別1世帯あたり資産額(千円) 注:2009年全国消費実態調査により筆者作成。 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30 歳未満30 〜 39 40 〜 49 50 〜 59 60 〜 69 70 歳以上 金融資産額負債額 11 てきている. いわば低税率で勝ち逃げした世代の利益が, 主に現役世代に対す る大幅な増税で守られることになる. このため財政再建のための増税が行われ ていけば, 高齢世代と, 増税と雇用情勢悪化に直面する現役世代との間に深刻 な対立が発生しかねない. 財政再建のためには, 増税だけでなく, 年金支給開 始年齢のさらなる引き上げや, 社会保障給付に対する全面的な所得テストの導 入など, 抜本的な支出削減策を実施する必要がある. 2 . 4 長期的な人口減少と人材投資不足の原因 財政再建のための大規模な増税や支出削減は,景気を悪化させる懸念がある. そこで, その原因を少し考察してみよう. 日本経済は資産価格バブルが崩壊に転じた1990 年代以降, 傾向的な需要不 足に苦しんできた.この原因としては,1990 年代後半の不良債権問題の深刻化, 同じ時期に定着したデフレ傾向, 2008 年前後の世界金融危機による輸出低迷, 東日本大震災後の原発停止に伴うエネルギーコストの上昇, などの要因が挙げ られることが多い. しかし過去20 年を超える傾向的な需要不足経済を直視す ると, その原因は日本経済の中心構造にあるのではないだろうか. 具体的に言 えば, 中高年世帯の貯蓄保有動機と, 企業や若年世帯の投資動機との間に, 根 本的なミスマッチが発生しているのではないだろうか. 日本経済は, 10 年後, 20 年後の医療・介護サービスを提供できる見通しが 立っていない. 介護・介助ロボットや医療技術について今後相当の進歩を見込 んでも, 良質なサービスの提供には, 多くの人による労働の投入が不可欠とな るだろう7.そのためには,家計部門が出産と育児,教育に多額の時間と金を投 資して次の世代を育てるしかない.しかしこの次世代の人材への投資の成果は, 将来の世代が提供する医療・介護サービスの価格上昇として, 将来世代に帰着 し, 子育てを行う世代には戻ってこない. 今日では人的資本に対する所有権は 認められておらず, 将来の人的資本に対するニーズが非常に強くても, 現在の 世代には子どもを産んで養育するインセンティブが働かない. この結果, 老後 に備えて貯蓄する中高年世代は, 厳しい状況に直面する. 労働力不足に対する 移民政策の見直しなどの対応を早急に行わない限り, 人材不足で医療・介護の 7 本稿の第4 節を参照されたい 12 相対価格が急速に上昇することで, 貯蓄の実質価値は減少し, 貯蓄を行った時 の予想を大幅に下回る医療・介護しか受けることは出来なくなるだろう. ミクロ経済学の基礎となっている一般均衡理論では, こうした貯蓄動機と投 資動機の間にミスマッチは発生し得ない. この理論では, 将来の財・サービス に対する需要は, 現在の時点で将来の供給を購入しておくことで満足させるこ とが出来ると仮定されている. 理論的には, 将来の財・サービスを先物市場で 購入しておくことで,将来の供給不足を避けることが出来ると想定されている. しかし実際には, 将来成人して医療・介護サービスを提供する人のサービス を予約しておくことは不可能だ. この結果, 将来世代を産み育てる, ヒューマ ンキャピタルへの投資が不足することになる. 2 . 5 欧州財政危機との比較 まず通貨制度をみると, ギリシャは独自の通貨と中央銀行を持っていない. 同国政府は, 資金調達の最後の手段である中央銀行からの借り入れに頼ること ができない. これに対し日本政府が財政危機に直面すれば, 最後の手段として 日銀法等の改正を行って日銀借り入れで支払いを続けることも可能である. こ れは, インフレを引き起こすリスクを伴うが, 政府がデフォルトを避けるため であれば, 実行される可能性はゼロではない. 国際収支の面でも, ギリシャと日本はかなり異なった状況にある. 同国は経 常収支の赤字が続いてきており,2010 年までの10 年間の累積経常収支は,ギ リシャでGDP 比111% (IMF 統計, 以下同じ) の赤字となっており, 対外債 務国である. また, その債務は独自の通貨ではなく共通通貨のユーロ建てであ る.これに対し日本は,同じ期間に28% の黒字を累積している対外債権国であ る. 日本政府債務の大部分は国内で保有される円建て債務である. また日本は 債権国であるため, 仮に国内投資家が日本政府に対する信用リスクを考えて, 保有資産円を売って外貨を買っても, それによる円安で, 外貨建て資産を持つ 企業・家計や金融機関は利益を得られる立場にある. 政府も外貨準備を1 兆 2441 億ドル保有( 2015 年8 月末現在) しているため, 円安になれば相当の利 益が得られる. このようにギリシャと日本の状況には大きな違いがあるため, 震災復興のた 13 めの財政赤字拡大を考慮しても, 近い将来に日本政府が現在のユーロ圏型の財 政危機に陥る可能性は小さい. しかし, 別の危機シナリオを考えることは可能 である. 具体的には, 政府が政府債務の累増を放置し続け, 国民が政府に対す る信頼を無くす場合である. 日本の家計部門は財産の相当部分を銀行預金や生 命保険などで保有しているが, 銀行や保険会社は, その資金を貸出や国債への 投資などで運用している. このため, 政府に対する信用が低下すると, 銀行預 金や貯蓄性の保険に対する信用も低下し, 家計は銀行預金から株式, 不動産, 外国の国債や外国銀行の預金などに資金をシフトし始める. すると銀行は預金 の流出を不安に思い, 国債の買入に消極的になる. これは長期国債金利を上昇 させる. 国債金利の上昇は, 政府の利払い負担増を招くため, 政府に対する信 用がさらに低下して, 預金の流出がさらに拡大する. また, 外貨への資金シフ トは円安を招く.小幅の円安であれば,景気の拡大に繋がるため問題はないが, 大幅な円安になると, 物価の上昇要因になる. 物価上昇は固定金利の運用を不 利にするので国債価格を下落させ長期金利を押し上げる. 現在は, 日本だけでなく米国やEU も財政赤字に苦しんでいるため, 円から 外貨への大規模な資金シフトは発生しにくいだろう. しかし米国やEU が財政 健全化に成功すると, 円から外貨への資金シフトが拡大し, 国債金利の上昇要 因になり得る. このため, 将来着実な赤字削減ができるという見通しを打ち出 せなければ,「日本政府」の信用は低下していく.日本政府に対する信頼を維持 して長期金利を低位に維持するためには, 財政債務の着実な削減のめどを示す ことが必須となるだろう8. 3 量的緩和の財政コスト 3 . 1 量的・質的緩和の財政コスト 安倍晋三政権と黒田東彦日銀総裁によるインフレターゲットの設定と金融の 量的緩和は円為替相場の下落と株価の上昇を発生させ, 景気回復に成功すると ともにデフレからの脱却を実現しつつある( 図8-5).これに伴って,実質金利 は徐々に低下しており, 金融緩和の効果が今後強まっていくと予想される. ま た金融緩和効果の強まりは, 財政支出削減や増税による景気下押し効果を相殺 8 深尾( 2012a, b) を参照. 14 する方向に働き, 名目成長率の上昇は将来の税収を拡大するように働く. この 金融緩和政策は, 一見コストなしに実行できているように見える. しかし少し 長い目で見ると, 金融緩和にも相当の財政コストが必要となる可能性が高い. 具体的には, 日銀が非常に巨額の長期国債を保有することになったため, デ フレからの脱却に伴って予想される国債価格の下落コストが日銀に大きな損失 を発生させるリスクを生んでいる. 日銀の長期国債保有額は2015 年8 月末で 258 兆円に達した.異次元緩和導入の2013 年4 月末の98 兆円から160 兆円も 増加した計算になる. 日銀は消費者物価の前年比上昇率を2% に引き上げることを目標にしており, この目標は消費税増税の効果を除いたものだと説明されている. 物価上昇率が 継続的に2% 前後まで上昇すれば, 長期国債の流通金利は少なくとも2% 程度 は上昇し3% 台に乗ると見込まれる. またインフレの加速を避けるためには, 日銀はインフレ率を多少上回る水準まで短期市場金利を引き上げていく必要が あり, 短期金利も2% 前後に達することになる9. 図5 9 このほか, 金利上昇が金融機関の健全性に与える影響については, 鎌田・倉 知(2012) を参照されたい. 長期金利が上昇すれば, 日銀が保有する国債価格は相当下落し日銀は損失を 被る. 2014 年10 月31 日に日銀が発表した「量的・質的緩和の拡大」によれ ば, 長期国債保有残高を年間80 兆円増加させるほか, 国債の平均残存期間も 2013 年の緩和開始時の3 年弱から7〜 10 年程度まで延長すると発表している. 仮に, 現在のペースで国債購入を継続すると, 2016 年末には, 約365 兆円に 達する. 長短金利が2% 上昇すれば, 平均残存期間8 年の日銀保有国債の時価 は, 約16% 低下し, 日銀の損失は58 兆円程度になる( 365 兆円×デュレーシ ョン8 年×2 ポイント金利上昇= 約58 兆円の損失). 3 . 2 日銀の損失負担能力 今年7 月末時点で日銀の引当金,資本金,準備金勘定の合計は7 兆円強とな っている. またゼロ金利で資金調達できる銀行券の残高も91 兆円あり, これ も広義の資本に相当する. この水準の銀行券需要が維持されれば, 日銀は古い お札を新券と交換するコストだけで, 91 兆円の資金をゼロ金利で調達でき58 兆円の損失を吸収するバッファーとなるからだ. それでは何が問題になり得るのか.第一に,物価上昇率の目標が達成できず, 日銀が長期国債を買い進めることで, さらに巨額の損失リスクを発生させる場 合である. 第二に, 銀行券需要が減少するリスクである. 金利が上昇すれば現 金を持つよりも預金や国債での運用が有利になり, 銀行券が日銀に環流して来 る.国債金利が3% 台になれば,銀行券需要は50 兆円以下に減少しても不思議 ではない. 図6 は, 日本の名目GDP が480 兆〜 500 兆円で横ばいに推移して いた1991 年から2015 年7 月までの期間について,縦軸に短期市場金利,横軸 に日銀券残高を取ってグラフにしたものである. 縦軸は日銀券を保有すること に伴う資金運用利益の機会損失, 横軸は家計や企業による日銀券の需要額と見 ることが出来るので, この図は日銀券の需要関数と見なせる. この図は, 金利 が低下するに従って日銀券の需要が増大してきたことを示している. 逆に金利 が上昇しはじめると,日銀券残高は図の矢印の逆方向に動くと考えられるため, 銀行券需要は減少に転ずると考えられる. 16 図6 注: 日銀のデータベースと国民経済計算から筆者作成. 3 . 3 日銀赤字の処理方法 日銀が負担した損失は, 次のような方法で処理することが考えられる. ( 日銀納付金の削減) 日銀は資産の運用益から超過準備額に対する0.1% の利払いコストや年間約 2000 億円前後の経費を差し引いた金額の大半を国庫に納付している.しかし国 債価格の下落に伴う損失が発生すると, この納付金を停止して赤字を処理する 必要が生ずる. これは, 政府にとっては歳入の減少となり, 財政赤字の増加要 因となる. しかし日銀納付金を停止することによって損失処理が徐々に出来る 場合は, 時間がかかるものの長期的には日銀のバランスシートは修復される. しかし日銀が納付金の支払いを停止しても日銀が赤字を出し続ける可能性が ある. これは, 日銀の損失が銀行券需要額を上回る場合に発生しうる. この状 況には, 日銀の量的緩和のやめ方によって二つの場合がある. ( 1 ) 日銀が国債の売りオペでマネタリーベースを回収する場合.
日銀がオペで購入した国債の価格が下落しているため, 保有国債を全て売っ てもマネタリーベースの残高を十分削減できなくなった場合である. この場合 には, 日銀は日銀売出手形( 日銀の利付きの債務) を売り出して, マネタリー ベースを回収する必要が生ずる.日銀の資産が売却によって無くなった状態で, 日銀売出手形を発行すると, 利払いのための金利収入が存在しないので, 日銀 は利払いのためにさらに売出手形を発行する必要が生ずる. 要は, 利払いのた めにさらに借金を重ねる必要が生ずる. ( 2 ) 日銀が国債を売却してマネタリーベースを回収せず, 日銀当座預金に付 ける金利を引き上げることで金融緩和をやめる場合 国債を満期まで保有すれば, 売却損失は発生しない. しかし, 売りオペを行わず短期市場金利を 2% 程度まで引き上げるためには, 民間金融機関が保有する日銀当座預金に支 払っている金利を,現在の0.1% から2% まで引き上げる必要がある.これに対 して, 日銀が保有する長期国債の利回りは, 満期まで固定されており利回りは 大部分が1% 以下となっている. この日銀の資産の運用利回りと, 負債に対す る利払いの逆ザヤは毎年数兆円を超え, 逆ザヤの現在価値は, 国債売却損に匹 敵することになる. この場合には, 利払いによってマネタリーベースが増加を 続け, その利払い額も増大を続ける. このいずれの場合にも, 日銀は負債を際限なく増加させながら金融引き締め を行うことになる. 日銀が深刻な債務超過に陥って赤字が収拾できない場合に, 日銀が正常なバ ランスシートに復帰するためには, 預金準備率の引き上げによる民間金融機関 へのロスの転嫁( 民間金融機関に低利での日銀預金を強制) や, インフレによ り銀行券需要を増大させることが考えられる. ( 準備預金の引き上げ) 日銀は預金準備率を引き上げることで, 民間銀行に対してゼロ金利ないし低 利の日銀当座預金の保有増大を強制することで, 低利の資金を集め, それを国 18 債などで運用することで黒字化を図ることが考えられる. ( 物価の引き上げ) 日銀は物価安定のために利上げが必要になっても, 低利を維持することで過 度に景気刺激的な金融政策運営を行うことが可能である. これによってインフ レを加速させ, 物価を上昇させることが出来る. これを行えば, 物価上昇に伴 って銀行券の取引需要が増大する. このため, マネタリーベースを回収するこ となく, インフレによる通貨需要の増大を経由して, 金融引き締めが出来るバ ランスシートに持ち込むことが考えられる. 4 社会保障制度の概観
4 . 1 社会保障費の将来推計 日本の公的年金制度は, 第二次大戦中に強制貯蓄制度の一環として導入され たあと,戦後のインフレにより形骸化していたが,1970 年代に全面的な賃金ス ライド制が導入され, 給付も大幅な拡充が行われた. しかしその後は, 財政再 計算と呼ばれる将来シミュレーションが行われる度に, 予想以上の長寿化と少 子化で将来の財源不足が明らかになり, 給付開始年齢の引き上げや給付水準の 切り下げ,社会保険料率の引き上げが行われてきた.特に,2004 年の「100 年 安心プラン」では,( 1 )受給開始後の賃金スライドを取りやめて物価スライド にすること,( 2 )いわゆるマクロスライドで給付水準を引き下げること,の二 つの対策を行うことにより,年金の財源問題をおおむね解消した.実際,表8-2 に示したように, 年金給付のGDP 比率は今後低下していく見通しである. し かしその代償として, 年金受給開始後長期間経過した高齢者の年金額が相当低 下することとなった. これは, 将来, 生活保護の給付が年金を上回る高齢者を 増加させるという問題を孕んでいる. 他方, 今後の日本の社会保障制度の維持可能性を考えると, 高齢者介護と医 療制度における財源とマンパワーの問題がもっとも深刻になると予想される. 19 表2 実際, 厚生労働省の将来推計によれば, 人口の高齢化に伴って看護職員, 介 護職員の必要人員は大幅に上昇する( 表8-3). 看護職員は, 2011 年の141 万 人が, 2015 年には200 万人程度に, 介護職員も同じ期間に140 万人から240 万人程度に増加し, 看護, 介護に従事するその他の職員数も, ほぼ倍増する. この結果,医療・介護分野の必要マンパワーは,2011 年実績の462 万人から, 2025 年には720 万人前後へと,260 万人もの増加が必要となる.これに対して, 日本の生産年齢人口は大幅に減少すると見込まれている.15-64 歳人口は,2011 年の8130 万人から1000 万人以上も減少し, 7085 万人に達する. このため, 医療・介護分野の報酬は, 他の産業分野に比較して相当大幅に引き上げる必要 が生ずるだろう. こうした人手不足による報酬の引き上げは, 上記の将来推計 には十分反映されていないため, 財政負担は, 上の推計以上に大きなものにな ることが懸念される10. 10 この点で,現在の介護,看護に関する資格制度が報酬に相当影響しているこ とが注目される. 殷他( 2014) を参照. この医療・介護コストの上昇と, 人手不足に対応するためには, 二つの側面 から対応する必要がある.
まず医療面では, 高齢者の健康水準を高めて, 医療需要そのものを減少させ ると同時に, 現在の高齢者に対する医療機関の対応そのものを見直していく必 要がある. 全く認知機能が失われて回復の見込みのない患者や, 本人の主観的 な生活に対する満足感を高めない延命措置については, 倫理的な面に十分配慮 しつつ公的な医療保険・介護保険ではカバーせず, 早期に停止していく必要が あるだろう. 第二に, 人口減少に対する抜本的な対応である. 次の節でも述べるように, 日本語能力の高い外国人労働力の活用である. 日本語能力を日本での就労ビザ の主要要件として位置づけ, 一定水準を超える外国人の移民を積極的に受け入 れることである. また, 高齢者の健康水準を高めるための政策については, 研究が決定的に不 足している. これに関しては, 高齢者の健康水準と生活環境との関係について の基礎的なデータ整備を欠くことはできない.これに関して,「くらしと健康の 調査」(JSTAR:Japanese Study of Aging and Retirement) の拡充と, それ による高齢者の健康状態を高めるための政策を, データに即して打ち出してい く必要がある11. 5 結語 日本の財政を健全化する上で, アベノミクスの弱点は, 第三の矢である成長 戦略の踏み込みが足りないことである. 先延ばしした消費税引き上げを確実に 実行し, 財政再建を軌道に乗せるためには, 日本の成長率を高めることが不可 欠である. 日本の潜在成長率を規定する要因は大きく2 つあり, 労働力人口の成長率と 生産性の伸び率である. 労働力人口の太宗を占める生産年齢人口は, 今後20 年間で年率1 % 弱減少し,累計で17% 減少する見通しである.1 人当たり所得 が米国水準に近づいた先進国における生産性の伸びは,概ね1.5% 程度である. 図8-7 は1 人当たり実質GDP の1870 年以降の超長期動向を示しているが,日 本, ヨーロッパの一人当たりGDP がアメリカ水準に概ねキャッチアップする と, 1 人当たり成長率は収れんし, 大体1.5% 程度に落ち着く傾向がある. 図7 11 JSTAR については, 次のウエブサイトを参照されたい. アメリカの潜在成長率は2.5% 弱であると言われているが, アメリカは移民 が入っていることと出生率が高いことがあり, 生産年齢人口は年率1 % 伸びて いる. 日本では, 今後, 年率1 % 弱で生産年齢人口が減っていくので, 女性や 高齢者の雇用を促進するとしても, 潜在成長率は実質1 % 程度に引き上げるの がやっとであろう.
丸めた数字で説明すれば, アメリカの人口成長率が+ 1 % , 日本は− 1 % , 生産性の伸びを日米で同じ1.5% と置いても日本の潜在成長率は0.5% であり, これをさらに引き上げることは難しい. なお過去20 年間の1 人当たり実質 GDP 成長率は, アメリカで1.55% , 日本は0.78% でアメリカより低いが, こ れは日本においては失われた10 年といった不況期があったからである. 潜在成長率の引上げには人口減少に対する強力な政策が必要だが, 出生率を 今すぐ引き上げることが出来たとしても, 成人して労働力になるのは20 年先 であり, 即効性はない. 今すべき政策のポイントは, 人口政策として移民政策 を位置づけることである. 現在は一時的に労働力を導入しようという政策に止 まっているが, むしろ移民として日本に定住してもらえる人材を積極的に受け 入れる必要がある. 日本語能力の高い移民を積極的に受け入れることが出来れば, 日本の経済社 会に対するマイナス面を最小限に抑えつつ, 日本の潜在成長率を高めることが 可能になるだろう. 日本語能力試験の最上級レベルであるN1 試験にパスしていれば, 日本の大 学に入学可能な日本語力になる. この試験にパスしたバイリンガルの外国人に 対して, 5 年程度の就労ビザを発給し, 5 年程度平穏に就労した後は永住権を 与えるか帰化を認めてはどうか. 現在でも大体7 年前後日本に平穏に住んで働 き納税していると, 永住を認められることが多い. 日本語能力試験は世界64 カ国,206 都市で実施し,毎年60 万人前後が受験 している. 年間6 万人程度N1 レベルの合格者があるが, 日本が積極的に移民 を受け入れる政策を打ち出せば, 合格者はかなり増大するだろう. このため, 年間5 万人程度の良質な移民を受け入れられる可能性が高い. 移民受け入れのプラス面としては, 日本全体として労働力不足を解消するこ とで, 人手を要する介護・医療の人材を確保できることがある. 仮に移民労働 23 者の大部分が医療・介護分野を就職先に選ばない場合でも, 彼らが日本国内で 勤労所得を得て納税する限り, その税金を使って日本人を雇用することが可能 になる.また良質なアジア系の人材を確保できれば,日本はアジアのビジネス・ 金融センターとしてさらに発展できるようになるだろう. 人材供給の見通しが 明るくなれば, 国内設備投資にもプラスになり, 外国企業の日本進出の増加も 見込めるようになるだろう. 良質な移民は納税者として自立するので, 財政の 健全化にも寄与する. 移民の第1 世代の出生率は高めになる傾向があるので, 少子化対策にもなる. また, 世帯数の減少が弱まれば, 不動産価格もプラスに なるし, アジア諸国との相互理解を深めることで国際紛争の防止にも寄与する だろう. 移民受け入れのマイナス面としては, 地域社会への順応が出来ない人が発生 したり, 教育, 社会福祉システムへの負担を増加させたりする可能性がある. 移民の子弟の増加が学校教育の負担を増加させる可能性があることは否めない. しかし日本語能力の高い親があれば, 子どもの日本の学校への順応も相当容易 になると考えられる.筆者自身もOECD 勤務のためにパリに住んでいたときに, 子供二人を現地のアメリカンスクールの小学校に通学させていたが, 毎晩英語 の本の読み聞かせを行うなどにより, 1 年間で英語の補習クラスを卒業し, 完 全に普通クラスに移行することが可能であった. の 日本の外国人労働者受け入れでは, 一時的な専門労働者を受け入れるとの観 点から, 専門能力と所得水準に非常に高いポイントを置いている半面, 日本語 能力はさほど重視されていない. これに対して移民を積極的に受け入れている カナダ,オーストラリアでは,受け入れに当たって英語の能力を重視しており, 日本もこれに学ぶべきであろう. 日本において移民受け入れにより活性化したセクターとして, 日本相撲協会 を挙げることが出来る. 一つのビジネスとして日本相撲協会を見ると, 積極的 な外国人力士の導入が, 競技の質を高めることでファンを維持していると言え るだろう. 日本語を習得した外国人力士が, 日本の伝統を引き継いでくれてい ることは, 非常に良いことだと考える. 逆に, 移民を早期に導入して医療, 介護のマンパワーを十分確保しないと, 将来の高齢者に対する良質の介護・看護の供給は絶望的に困難になるだろう. 24 先日, 朝日新聞に、拘束された高齢者に関する悲惨な記事があったが, 人手不 足が深刻化すると, 認知症の老人を拘束することでしか対応できなくなる可能 性もあるだろう. 高齢者の多くが高額の貯蓄を維持している理由は, 老後のケ アに対する不安があるからであり, 今後マンパワーが不足して医療・介護コス トが高騰すれば, 貯蓄の価値も大きく毀損されることになるだろう. 25 【参照文献】 International Monetary Fund( 2015),World Economic Outlook. 殷婷・川田恵介・許召元( 2014),「介護労働者の賃金関数の推定― 学歴プレミ アムと資格プレミアム― 」RIETI Discussion Paper Series 14-J-033. 岩田一政・猿山純夫( 2013),「成長に友好的な税・年金改革― マクロモデルに よる効果試算― 」RIETI Discussion Paper Series 13-J-001. 鎌田康一郎・倉知善行( 2012)「国債金利の変動が金融・経済に及ぼす影響― 金融マクロ計量モデルによる分析― 」RIETI Discussion Paper Series 12-J-021. 蓮見亮( 2014),「法人税減税の政策効果― 小国開放経済型DSGE モデルによる シミュレーション分析」RIETI Discussion Paper Series 14-J-040. 経済企画庁( 1985),『経済白書』. 小池拓自( 2005),「家計金融資産1,400 兆円の分析」,国立国会図書館ISSUE BRIEF NUMBER 491. 厚生労働省( 2011),「医療・介護にかかる長期推計」. 厚生労働省( 2012),「社会保障に係る費用の将来推計の改定について」. 庄司啓史( 2013),「公的債務の蓄積が実体経済に与える影響に関するサーベイ およびVector Error Correction モデルによる財政赤字の波及効果分析」RIETI Discussion Paper Series 13-J-040. 日本銀行( 2014),「量的・質的緩和の拡大」, 2014 年10 月31 日. 26 深尾光洋( 2012a),『財政破綻は回避できるか』, 日本経済新聞出版社. 深尾光洋( 2012b), 「日本の財政赤字の維持可能性」RIETI Discussion Paper Series 12-J-018. http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/15110006.html |