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埼玉県和光市の高齢者福祉センターで筋トレ中の利用者(撮影/木暮誠)
4割以上が介護保険“卒業” 和光市が行う無料支援とは〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151106-00000002-sasahi-life
週刊朝日 2015年11月13日号より抜粋
要介護度が軽くなって介護保険を“卒業”できる──病気やケガで生活に支障が出ても、適切なケアとリハビリで自立に戻れる。そんな施策を始めている自治体がある。住み慣れた地域で自立して暮らせれば、自治体の財政負担も減る。自治体と住民、双方が幸せになる取り組みを追った。
一般的に、要支援状態の人が介護サービスを受けたいと思ったら、1日30分ヘルパーに来てもらう、または、お風呂に入るためデイサービスに通う、というケアプランを提示されることが多いが、埼玉県和光市は違う。
体調が回復する見込みがあれば、機能回復訓練(リハビリ)をするプランを立てる。骨折などのケガや病気で入院しても、自分らしく生活し続ける体力を取り戻させるためだ。
和光市の高齢者は、人口8万77人に対して、1万3129人(2014年10月1日現在)。全国の高齢化率26%に比べると低いが、今後10年で介護を必要とする人は倍増すると予測。身体機能が改善できる人たちの自立を促す支援を積極的にすることで、毎年、要支援認定者の4割以上が介護保険を“卒業”している。
同市保健福祉部の東内京一部長が言う。
「国の要介護認定者の推移を見ても、要介護2以下の軽度の人が半数以上を占めています。この人たちの重度化を防ぐことが、将来的に介護保険制度を維持するために重要だと思ったのです」
同市は、「オーダーメイド」型のきめ細かい支援をしている。その前提となるニーズを知るため、65歳以上の市民を対象に独自の「日常生活圏域ニーズ調査」を、介護保険法が施行された後の03年度から毎年実施。アンケートと訪問聞き取りの結果を分析し、高齢者が本当に望むサービスを把握している。
「例えば、認知症の高齢者が多い地域に、重点的にグループホームを建てるといったように、その地域の課題を見つけて対策を講じています」(東内部長)
在宅介護の需要が高い地域には、それを続けられるように、デイサービスを中心にショートステイや訪問介護を組み合わせて使える「小規模多機能型居宅介護施設」と、認知症の人が暮らす「グループホーム」を設置している。
介護予防事業にも積極的だ。運動や栄養改善、認知症予防や口腔ケアまで、バラエティーに富んだ無料のプログラムを23項目そろえた。利用者たちは、介護保険の“卒業”後もほぼ同じ内容のサービスを利用できる。介護保険では1割負担だったのが「卒業」後は無料になるため、「ただになる」のを励みに高齢者に頑張ってもらおうという仕組みでもある。
さらに市役所で隔週、和光市コミュニティケア会議(地域ケア会議)を開いている。今年度から国が全ての自治体に義務づけたのに先駆けて、同市は01年に始めた。市内すべての地域包括支援センターの職員、保健師、看護師、理学療法士、管理栄養士らが一堂に会し、各高齢者のケア計画の内容を議論し、見直す。
『埼玉・和光市の高齢者が介護保険を“卒業”できる理由』(メディカ出版)の著者で介護ライターの宮下公美子さんはこう話す。
「和光市は、『日常生活圏域ニーズ調査』を実施し、未回答の人を個別に職員やサポーターが訪問しています。支援が必要な人を見逃さないように努力してきたことが大きいと思います」
今年4月の介護保険制度の改正で、要支援2と1向けの介護予防事業のうち、予防通所介護(デイサービス)と予防訪問介護(ホームヘルプ)は、国から市区町村の「地域支援事業」への移管が決まった。18年3月末までに終了する。介護予防に積極的かどうか、自治体によってサービス格差が問題となり始めている。
和光市の東内部長が指摘するとおり、介護保険は利用者が増えると、自治体の財政を圧迫する。要介護度が軽くなる、または進まないようにして、自立して生活することは、高齢者本人にとってだけでなく、コストを抑えたい自治体にとってもメリットになる。
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