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「老後破綻」「老後は1億円必要」という煽りのまやかし それほど心配は不要なワケ
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151105-00010002-bjournal-soci
Business Journal 11月5日(木)22時31分配信
●なぜ老後不安が起きるのか?
最近は雑誌やテレビの番組などで「老後不安」を取り上げられることが多くなってきました。メディアには暗く不安に苛まれるような文字が躍っています。「老後貧乏」「老後難民」「下流老人」そして「老後破綻」といった刺激的な四字熟語が、とても多く目につくようになりました。
こうした背景には、年金に対する不安や不信があると思われます。もちろん公的年金制度がなんの問題もなく万全だとは思いませんし、人生においては想定していなかったさまざまな不幸な事態が重なった結果、厳しい老後生活を余儀なくされている方がいらっしゃることも事実です。
ただ、世の中の大部分の人がそうなるということではありませんし、公的年金は巷間でいわれているほどひどい状態ではありません。マスメディアに出てくる報道やこうした不幸な例は、あたかもすべての人がそういう目に遭ってしまうかのような印象を与えます。
人間というのは目につきやすいことや象徴的なことは自分にも起きるのではないかという心理になりがちなので、どうしてもそういった不安に陥りやすくなります。また金融機関なども不安を煽ることで自社の金融商品へ誘導しようとしているのは明らかでしょう。
「老後には1億円必要」とか「退職時には少なくとも3000〜4000万円は用意しておかなければ」といった文言を目にすると普通の人は驚き、焦るに違いありません。私自身が金融機関で営業をやっていた30年前も今とまったく同じことを言って不安を煽り、保険や投資信託を売る営業が行われていました。
●実際の老後生活を知らない人たちが老後不安を煽る
しかし、世の中でそういう不安を煽っている人たちのほとんどは、実際に退職後の生活の経験がない人ばかりのようです。私自身、退職して年金生活をしていますが、私は退職後にどれぐらい生活費がかかるかを実際に知りたくて退職前から自分で家計簿をつけてみました。退職時点で住宅ローンも終わり、子供も独立していましたから、夫婦2人だけの生活であれば、退職後はだいたい月に20〜25万円前後の生活費でまかなえます。
よく「老後に1億円必要」といわれますが、その根拠は「ゆとりある生活をおくるために必要な生活費は月額35万円」ということからきているようです。ところが前述のように、私自身が3年前から年金生活をするようになった実感からいうと、それほど必要とは思えません。計算の仕方にもよりますが、仮に私のように老後の生活費が20〜25万円ぐらいでできるのなら、恐らく老後生活に必要な生涯金額は6000〜8000万円ぐらいです。
もちろん、お金のかかる趣味をたくさん楽しみたければそれなりに準備しておくことが必要ですが、それほどお金を使わず、月15万円程度で楽しく生活している夫婦だって決して少なくありません。要はライフスタイルの問題なのです。
●なぜ、サラリーマンは老後破綻しないのか?
サラリーマンというのは、自営業者と違って公的年金には強制的に加入させられています。したがって、学校を卒業して以来ずっとサラリーマンをやっていた人であれば生涯に受け取る公的年金の金額は5000〜6000万円ぐらいはありますし、もしこれに退職金や企業年金が加わるのであれば、老後の生活費のかなりの部分はカバーされます。
このようにサラリーマンの場合は、自営業者よりも公的年金の金額は多いのが普通ですし、企業によっては退職金や企業年金だってあります。普通に生活していれば、そうそう老後破綻するようなことはないのです。
ただ、これは定年時に住宅ローンや教育費の負担がなくなっているということが前提です。したがって最近のように晩婚化が進むと、定年時にこの2つの大きな負担を残さないようにすることが大切です。ローンであれば可能な限り返済を早めておくことや、教育費が退職後に発生するのであれば、別途準備しておくことが必要です。
また、ずっとサラリーマンで厚生年金に加入している人はともかく、昨今のように非正規で働く人が増えてきた現状においては、必ずしもそういう人たちの老後は安泰というわけではないというのもその通りです。ただ、この問題は老後不安の問題というよりも現在進行形で起きていることであり、社会構造の問題として考えていかなければならないことです。今の時点でサラリーマンとして働いている大部分の人にとっては、過剰な不安を抱く必要はないといってもいいでしょう。
老後に対して自助努力で備えておくことは大切なことですが、「老後破綻」というショッキングな言葉に煽られて焦って投資にお金を一挙につぎ込むことは避けたほうがいいと思います。自分がどんな生活をしたいか、それにはどれぐらいお金がかかるか。そして公的年金や退職金でその内どれぐらいまかなえるのかをじっくりと計算してみてから、少しずつ始めたほうがいいのではないでしょうか。
文=大江英樹/株式会社オフィス・リベルタス代表
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