1. 2015年11月05日 17:21:34
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コラム:潜在成長率回復を阻む「真犯人」=河野龍太郎氏 河野龍太郎 河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長 [東京 5日] - 中国の追加緩和、日欧の追加緩和観測などを好感し、世界的な株高傾向が続いている。ただ、アグレッシブな金融緩和で株高がもたらされても、それはあくまで一時的で、その先の実体経済への効果が限られるのは、すでに多くの人が認識していることだろう。各国経済停滞の原因が潜在成長率の低下にあるのなら、そもそも金融緩和で対応できる話ではない。にもかかわらず、ここ数年、多くの政策当局者がケインズ流のシンプルな「所得・支出アプローチ」ばかりで政策を語るようになったことは気がかりだ。日銀のように「期待に働きかける」などと装いを新たにするところもあるが、総需要喚起という点では、基本的な発想は変わらない。 問題は、こうしたモデルでは政策規模が大きくなるほど効果も大きくなるといった結論しか得られないことである。効果が現れなければ、それは政策が十分ではないということになり、規模ばかりが追求される。 私たちは、個人消費が弱いとか、設備投資や輸出が弱いとか、とかく総需要の低迷を問題にしがちである。しかし、そうした支出の弱さには、単に需要が低迷しているといった分析では捉えられない問題が潜んでいる。 <円安誘導政策は内需部門への課税、輸出部門への補助金に等しい> 1つの問題は、私たちの所得獲得能力(付加価値の生産能力)が低下していることだ。潜在成長率そのものが低下している。短期的には、借り入れや資産売却を行うことで、所得以上の支出は可能である。しかし、永久に借り入れを増やすことはできないし、資産を切り売りすることもできない以上、私たちの支出は平均的に見れば、所得の伸びに規定され、その所得の伸びは付加価値を生産する私たちの能力、つまり人的資本によって決定される。 この人的資本については、マクロ的に見ると大きく分けて2つの問題に我々は直面している。1つは少子高齢化の影響で、労働力の頭数そのものが減少していること。もう1つは、平均的な労働者の生産性の伸びが足踏みしていることだ。これらは、金融緩和で資産価格を一時的にかさ上げしても、解決される問題ではない。 むしろ、アグレッシブなマクロ安定化政策を行って総需要を刺激すると、ぬるま湯となり、現状を変えるインセンティブが働かず、現状維持が積極的に選択されるケースが少なくない。この議論は神学論争になるので止めておくが、問題はアグレッシブな政策の長期化や固定化が、資源配分や所得分配を歪め、潜在成長率そのものを抑制することだ。 1990年代以降の日本では、個人消費の回復の遅れが常に問題だった。そして、内需が脆弱で、追加財政を永久に続けることができない以上、輸出主導の景気回復を目指さざるを得ず、その場合、個人消費の回復が企業部門に比べて遅れるのは止むを得ないとされてきた。 2000年代以降の日銀の「所得・支出アプローチ」が典型だが、2012年末に始まったアベノミクスでは明確にトリクルダウン(浸透)政策だと説明された(金利低下や円安によって、まずは企業の業績が回復し、最後に家計の所得が増えて個人消費が回復するのだと)。 2000年代の長期の景気拡大局面では、円安によって輸出数量は大幅に増加し、輸出企業の設備投資が増えるところまでは何とか到達した。しかし、家計部門の実質所得の増加までには至らず、個人消費の明確な回復も見られなかった。戦略そのものが間違っていた可能性が大きいのだが、政策は再検討されず、むしろアグレッシブな金融緩和で超円安を目指すという戦略が採用された。それが2012年末から始まったアベノミクスだが、今回は超円安にもかかわらず、輸出数量の増加というプロセスの最初の部分も達成されていない。 「所得・支出アプローチ」に固執すれば、効果が現れないのは、政策の規模が十分ではないからであり、効果が現れるまで、さらに金融緩和を追求し、一段の円安に誘導すれば良いという政策提言につながる。しかし、この政策は、内需部門に課税し、それを原資に輸出部門に補助金を与える政策に他ならない。日本では、製造業に比べて非製造業の生産性の低さがしばしば問題にされてきた。しかし、製造業が良く見える理由の1つは、円安という補助金が与えられているからではないか。 製造業の経済活動が活発となれば、経済全体における利用可能な経済資源は限られているから、非製造業は利用できなくなる。人々が欲するサービスを新たに生み出す成長企業が非製造業から現れないのは、円安誘導策の弊害ではないのだろうか。そのことは、明らかに潜在成長率の低下要因となる。また、魅力的なサービスが非製造業から提供されないため、そのことも個人消費の回復の足かせとなる。 一方で、超円安という補助金を受け取る輸出部門が投資プロジェクトを国内で増やすと、そのことは、極端な円安の下でしか採算の取れない生産能力を増やすことになる。リーマンショック前の極端な実質円安を背景に電機セクターが国内で過剰ストックを積み上げたのは、その典型例だ。収益性の低い資本ストックを増やすことが潜在成長率の回復につながらないことは明らかだろう。 <分配の歪みもGDP低迷要因に、問われるマクロ経済運営の目的> 振り返れば2000年代半ばに実質円安という極端なカンフル剤が打たれなければ、電機セクターは経営判断を誤ることもなく、国内生産能力の拡充の代わりに、収益性の高い新規ビジネスに打って出た可能性がある。もし革新性やデザイン性、コンテンツに自信があるのなら、生産工程を全て外部化しファブレス企業に進化することもできた。電子機器の受託製造サービス(EMS)やファウンドリーに進化し、モノづくりで徹底的に勝負するという選択もあり得ただろう。 過剰ストックを積み上げた電機セクターの苦境は明らかだが、経済資源を奪われ、成長分野の出現を阻害された内需セクターのデメリットについては、出現しなかったがゆえに、計測不能で忘れがちである。 いずれにせよ、2000年代に潜在成長率が低下した理由は、単に労働力が減少しただけでなく、超金融緩和の長期化・固定化を背景とした超実質円安の下で、収益性の低い過剰ストックが積み上がり、生産性上昇率も低迷、その後の資本蓄積が滞ったことが影響したと筆者は考えている。 このことは、2010年代初頭にはすでに明らかだったはずだが、こともあろうに2012年末に開始されたアベノミクスで全く同じ過ちが繰り返されてしまった。正確に言うと、過ちを犯したのは政策当局だけで、輸出企業は当時の電機セクターの失敗に学び、極端な実質円安が進んでいるにもかかわらず、誘惑に耐え、今のところ国内投資を積極化させていない。 とはいえ、今回は問題が小さいとも言い切れない。確かに過剰ストックが積み上がるという資源配分の問題は観察されていないが、大幅な実質円安の進展によって、所得分配が大きく歪められ、個人消費の回復を明らかに阻害している。分配が歪められても、現象面としては国内総生産(GDP)が低迷する要因となる。 前述した通り、「所得・支出アプローチ」に立つと、基点の輸出増を何とか達成しようと、景気回復が始まった後も、金利を低く抑え、円安に維持しようとする。それでも所期の効果が得られないのなら、アプローチが間違っていると考えても良さそうだが、さらにアグレッシブな金融緩和を行い、円安を助長したのがアベノミクスである。 しかし、その結果、家計の実質所得が抑制され、個人消費はさらに低迷している。筆者は早い段階から懸念を表明していたが、2014年年初に経済が完全雇用の領域に入ったため、円安になっても輸出数量はなかなか増えない状況になっていた。経済が完全雇用に達し、円安になっても、輸出数量が増えていない以上、円安は単に家計から輸出企業への所得移転に堕している。所得制約に直面し支出性向の比較的高い家計部門から、キャッシュ・リッチで支出性向の低い輸出企業に所得を移転することは、一般論として、景気拡張的に働くと言えるだろうか。 もちろん、輸出企業の業績改善を反映して株価は上昇しているが、日本では株式を保有するのは限られた富裕層であり、その支出性向も当然、一般の家計に比べれば相当に低い。インバウンド消費が刺激されているといっても、要は外国人に対して大安売りを行っているだけであり、その代償に食料やエネルギーなどの日用品購入に日本人が割高なコストを強いられているのなら、一体何を目的にマクロ経済運営を行っているのかということになる。 <円高アレルギーが市場メカニズムによる景気回復の波及を遮断> ケインズ流の「所得・支出アプローチ」の視点に立った政策は、資源配分の歪みが多少生じるとしても、数量増で未稼働資源が減少することによって、何とか実行が正当化されていた。数量が増えていなければ、こうした政策は資源配分や所得分配を歪めるだけで、全く正当化されない。個人消費が弱いのは消費増税の後遺症だけではなく、円安によって家計部門の実質購買力が抑制されているためである。原油安のプラス効果がなかなか現れない理由の1つも、円安がその効果を相殺しているためだ。 「所得・支出アプローチ」に囚われていると陥りやすい誤りなのだが、起点の輸出増を促そうとする努力が、終点の個人消費の足を引っ張ってしまう。新古典派的なメカニズムで考えると明らかだが、本来、景気回復が進めば、金融市場では市場金利が上昇し、そのことによって為替市場では円高圧力が生まれる。景気回復で短期的な自然利子率が上昇し、為替の均衡レートも増価するのである。そして金利上昇は家計の利子所得を増やし、円高は輸入物価の低下を通じ実質購買力を一段と改善させる。企業部門が改善すれば、その恩恵は家計部門にも当然広がっていくが、その経路は雇用者所得を通じたものだけでなく、金利上昇や円高を通じたメカニズムも存在する。 しかし、輸出への悪影響を恐れ、我々は、いつまでも金利上昇を回避し、円高を回避しようとして、市場メカニズムがもたらす景気回復の波及を遮断してきた。家計部門を痛めつける政策を20年も続けているのだから、個人消費が回復しないのも無理はないだろう。2000年代の長期の景気拡大局面において、企業部門は相当に潤ったが、家計部門への波及は限られていた。今回も、企業業績は大幅に改善しているが、家計部門は利子所得の上昇や円高を通じた実質購買力の改善を全く味わうことなく、いずれ後退局面を迎えるのだろうか。 ゼロ金利政策や大量の国債購入政策、それらがもたらす実質円安を前提にした経済主体が増えれば増えるほど、収益性の低いビジネスばかりが増え、我々はますます、低成長から抜け出すことができなくなり、結局、政策も終わりを迎えることができなくなる。日本だけのストーリーとして終わるのだろうか。あるいは、この問題でもまた日本がフロントランナーとなるのだろうか。 *河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら) http://jp.reuters.com/article/2015/11/05/column-ryutarokono-idJPKCN0ST10820151105?sp=true
インタビュー:2%早期達成困難、日銀は持久戦に転換必要=早川英男氏 [東京 5日 ロイター] - 元日銀理事の富士通総研・エグゼクティブ・フェローの早川英男氏は5日、ロイターとのインタビューの中で、2016年度に大幅な賃上げが実現する可能性は低く、2%の物価目標実現には時間がかかると指摘した。一方、年間80兆円(残高ベース)の国債を買う日銀の「量的・質的緩和(QQE)」は数年以上は継続できないため、日銀は持久戦への戦略転換が急務だと強調した。 <緩和見送り理由、円安の限界と弾なし> 日銀が10月30日の金融政策決定会合で追加緩和を見送って理由について、早川氏は「表向きは9月鉱工業生産の好転と基調的な物価上昇の継続が理由」だが、「裏の理由は円安を進めても輸出・設備投資が伸びず、追加緩和手段も乏しいためだ」と述べた。 仮に追加緩和に踏み切った場合は「国債買い入れを10兆円増額などと発表すれば『政策はもうおしまい』とのメッセージとなり、かえって株が下落した可能性がある」と指摘した。 早川氏は従来、2%目標は達成可能だが、日銀の見通しよりやや時間がかかる、との立場だった。 だが、今回のインタビューでは「昨今の労組側の発信などをみると、来年度1%以上のベアを期待するのは難しい。2%の物価目標実現は相当遠のいた印象だ」と述べた。 一方で年間80兆円の国債を中心とした「現行の買い入れは、数年しか継続できない。日銀は政策の変数を現在のマネタリーベース(資金供給量)から金利など長期に継続できるものに転換する必要がある」と訴えた。 具体的には「短い金利はマイナスにする、(長期ゾーンと短期ゾーンで保有比率を変更する)ツイストオペなど様々な手段が考え得る」と付け加えた。 <昨年の追加緩和は「ミッドウェー海戦」> QQEについて「短期決戦を狙った戦略で初陣は大成功、『真珠湾攻撃』だった。しかし、昨年の追加緩和によりほとんど戦力を失ったため『ミッドウェー海戦』(注1)。今年10月に追加緩和していたら、もうすでに戦力はほとんどなくなっているから『レイテ沖海戦』(注2)だった」と総括。10月の2回の決定会合で政策現状維持を決めた日銀の判断を評価した。 もっとも最近の日銀について「自ら墓穴を掘るケースが増えている」とも苦言を呈した。 物価の目安として、今夏から生鮮・エネルギーを除く日銀版コアコア指数を公表し、順調に上昇しているのを強調している点について「都合の良いもののみ組み入れている」と批判した。 今後の展開について、円安が一巡していくため、輸入品の割合の高い缶詰などの食品加工品の価格上昇が一服する一方で、賃上げの影響を受けたサービス価格がジワジワと上がっていくと予想。加工食品が含まれる日銀版コアコアの上昇率が鈍化する一方、サービス価格のウエートが高い通常のコアコア指数が「ゆっくりだが上昇を続ける」と分析した。 そのうえで、2016年早々に日銀は、日銀版コアコア指数の伸び悩みを説明する必要が出てくると予測した。 黒田東彦総裁が30日の記者会見で、英中銀の国債保有が発行額の7割と発言、その後4割と訂正した点についても、「結果的に(すでに3割保有している)日銀は政策の限界が近いと思われやすくなった」と指摘した。 注1:1942年6月、太平洋のミッドウエー島沖で日米海軍の主力機動部隊が激突。日本海軍は主力空母4隻を失う大敗北を喫し、真珠湾攻撃以来の優位を一気に失い、太平洋戦争の転機となった。 注2:1944年6月のマリアナ沖海戦で機動部隊が大打撃を受けた日本海軍は、同年10月のレイテ沖海戦で残余の艦船を繰り出したが、戦艦・武蔵など主力艦が沈没。日本海軍の戦力は大幅に低下した。 (竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/2015/11/05/h-hayakawa-idJPKCN0SU0LZ20151105 アングル:国際機関の成長見通しに潜む「楽観バイアス」の謎 [ロンドン 4日 ロイター] - 国内総生産(GDP)の予想は、最も優秀なエコノミストにとってさえ宝くじを当てるようなものだ。 だが国際通貨基金(IMF)や世界銀行、経済協力開発機構(OECD)といった専門的な国際機関はこれまで、単に予想が不正確であっただけでなく、ずっと同じ方向に間違ってきたという特徴がある。つまり予想が一貫して明る過ぎて、下方修正を迫られた。 HSBCのシニアアドバイザーで英財務省の顧問をかつて務めたスティーブン・キング氏は、「『楽観バイアス』が内蔵されている。しかし最終的には予想は事実に屈しなければならない」と述べた。 IMFと世銀が2011─15年の間に世界全体と先進国、新興国のGDPについて行った最初の予想を見ると、楽観的になり過ぎていたことが証明される。多くのケースでは楽観度はかなり大きかった。 OECDについても構図は変わらない。同じ期間に出した米国と世界全体の成長率に関する10件の当初予想はすべて実際よりも強気だった。一部では、成長率の実績が当初予想の半分にとどまった。 なぜこうなったのかに対する解答は1つに絞れない。エコノミストの間では(1)2007─08年の金融危機が消費需要と銀行の融資能力・姿勢に与えた打撃への過小評価、(2)世界全体の債務水準増加がもたらした影響の理解不足、(3)驚くほど低調な生産性を見通せなかったこと──などが理由に挙げられている。 一方でIMFのチーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏は、過去5年間にわたって予想がいつも引き下げられてきた事実は認めながらも、予想に構造的なバイアスは存在しないと言い切った。 その上で「われわれや他の人々は、恒久的な負のショックを一時的なものと見誤っていた」と話した。 <過小評価と過大評価> IMFと世銀、OECDはロイターに対して、金融危機後の予想作業はとりわけ複雑化しており、理由を探るべくそれぞれが調査を実施したことを明らかにしている。 その結果、予測モデルが08年の経済方向がもたらしたダメージを過小評価していた半面、その後の回復の耐久性は過大視してしまったとの結論が下された。 IMFが常に楽観的な予想になった原因として指摘するのは、先進国全般で生産性の伸びが鈍化したことへの「理解不足」と、新興国における「経済減速の長期化」だ。 またエコノミストはしばらく前から、銀行システム崩壊後に起きる景気後退は他の場合よりも長期化、深刻化し、それに続く景気回復のペースはより鈍く、持ち直しの角度も浅くなることは承知していた。 それでも彼らは07─08年の危機が財や資金の需要、あるいは企業の借り入れ意欲や能力、銀行の融資態度にそれぞれ持続的な悪影響を及ぼすことを先読みすることができなかった。 金融危機への政策対応は未曾有の期間と規模になり、危機ぼっ発から8年経過した今でも政策金利はゼロ近傍で、中央銀行は債券を買い入れている。こうした中でマッキンゼーによると、世界全体の債務額は07年よりも多くなり、足元では約57兆ドルに達した。 この債務膨張が成長率に及ぼす影響も、まだ完全には理解されていない。いわば未踏の領域に属している。ただ、シティのチーフ・グローバル・エコノミストで以前はイングランド銀行(英中央銀行、BOE)の政策担当者だったウィレム・ブイター氏は、そうだとしても「予想というものは、偏ることなくすべての地点をカバーしなければならない」と釘を刺す。 そのほかにも、IMFや世銀が各国当局のデータに依存しているので、これらの数字に上方バイアスがあるとすればおのずと予想も歪んでしまうことや、新興国の過去データがまだ先進国ほどの信頼性を持っていないという問題もある。 さらにIMFなどは、08年の金融危機の結果を受けてだけでなく、その8年前のインターネットバブル崩壊後に、企業の投資意欲がどの程度弱まったかも正確に見抜けなかった。 企業は長期的な投資よりもリターンを増やすという短期的な措置を選ぶようになっている。バークレイズによると、2010年以降の米S&P総合500種企業の自社株買いは計2兆6000億ドルに上る。過去の景気回復局面なら工場建設や新規の人員採用に使われたかもしれない資金が株主へと還元されている格好だ。 一部のエコノミストからは、専門家特有の行動が予測モデルでずっと過大な成長を導き出す原因になっているとの声も聞かれた。 シティのブイター氏は、エコノミストにはある仮説についてそれを支持する証拠ばかりを重視し、反証情報は軽視する「確証バイアス」が存在するので、モデルが間違っていても気づくのは難しくなるとの見方を示した。 統計学の「平均回帰」への期待感も影響している。ダートマス大学教授でBOEの政策担当者だったデービッド・ブランチフラワー氏は、だれもが08年以前にそうだったように平均回帰を想定しているが、今は世界が異なることを理解していない、と述べた。 (Jamie McGeever記者) http://jp.reuters.com/article/2015/11/05/global-economy-bias-idJPKCN0SU0NL20151105?sp=true |