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エコノミストの中原圭介氏
日本経済にとって本当に恐いのは、 中国経済の失速よりも米国経済の減速だ
http://diamond.jp/articles/-/81066
2015年11月5日 中原圭介 ダイヤモンド。オンライン
あと2ヵ月で2015年も終わろうとしているが、中国経済の失速、米FRBの利上げのタイミングなど、世界経済の流れが大きく変わろうとしている。果たして、2016年の日本経済はどうなっていくのか?
先日『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』を上梓し、「もっとも予測が当たるエコノミスト」といわれる中原圭介氏が、2016年日本経済の行方を語った。
■2016年、中国経済の悪化で足を引っ張られる日本経済
アベノミクスが始まって早くも2年10ヵ月が過ぎようとしていますが、その実態はというと、円安や株高によって大企業や富裕層が潤った一方で、国民生活は悪化し続けてきたということに尽きるでしょう。国民経済の視点から見れば、アベノミクスは完全に失敗に終わっていたわけです。
国民が景気回復を実感できない状況下で、2016年は外部環境の悪化が日本経済の足を引っ張る可能性が高まってきています。中国経済が大減速すれば、その悪影響は少なからず日本にも打撃を与えるからです。
ただし打撃を受けるのは、主に企業部門になります。今のところ、中国経済の減速が企業業績の悪化として表面化しているのは、機械や素材などの設備投資に関連する業種が中心となっています。日本の大企業の中では、建設機械のコマツや日立建機、工作機械のファナック、鉄鋼の新日鉄住金、神戸製鋼所などで業績が悪化し始めています。
今後は中国の消費市場まで弱含むことが想定されるので、自動車など影響を受ける業種は一気に拡大していくことになるでしょう。ただし、中国市場で自動車販売首位のフォルクスワーゲンが排ガス不正問題で自滅する見通しにあるので、日本の自動車メーカーはフォルクスワーゲンの需要を取り込み、それほど悪影響を受けないで済むかもしれません。
また、中国から日本を訪れる観光客によるインバウンド消費も、これからは伸び悩む傾向が表れると予想することができます。中国の株価バブルが日本での爆買いに一役買っていたのは間違いなく、株価が暴落した今となっては、訪日観光客の人数が増加したとしても、1人あたりの消費額が減少するのはある程度は避けられないでしょう。
■日本経済を支えているのは中国ではなく、アメリカだった
しかし私は、日本経済にとって本当に恐いのは、中国経済の大減速よりも米国経済の減速のほうだと考えています。新興国や東南アジアの減速が懸念される中で、日本の企業業績の好調さは、米国の消費拡大によって支えられているからです。
米国の景気回復が順調で消費が旺盛でなかったら、いくら円安が進んでいるとはいっても、日本の上場企業の2014年3月期の純利益は、とても24兆円までは伸びていなかったでしょう。日本の企業は米国への輸出で稼いでいると同時に、米国での現地生産でも稼ぎまくっているのです。
実際に貿易収支を地域別で見ると、日本は米国に対して、2014年は8兆2857億円もの巨額の黒字を計上しています。続く2015年1〜3月でも、黒字は2兆5336億円と増加の傾向をたどっています。
ところが中国に対しては、2014年は5兆4926億円もの赤字を計上していますし、2015年1〜3月は1兆6453億円と赤字が高水準を保っています。少なくとも貿易において、現在の中国は日本が利益を得ることができる国ではなくなっています。
2014年の日本の貿易赤字は12兆7813億円と過去最悪に落ち込んでいたのですが、米国への黒字がいかに日本の輸出を下支えしているかを理解できると思います。日本の輸出企業は米国の消費に大いに助けられてきたわけです。
そのうえ、日本の企業は米国への投資を拡大し、現地での生産を強化させてきました。日本で生産して輸出するよりも、米国で直接生産したほうが、人件費、エネルギーコスト、輸送費などのコストを安くすることができるからです。
企業の海外子会社の稼ぎを示す第一次所得収支を地域別で見ると、米国での2014年の黒字は4兆9000億円、2015年1〜3月の黒字は1兆6450億円と、貿易収支と同じように増加傾向にあります。中国での黒字は2014年が9324億円、2015年1〜3月が2950億円であるのと比較すると、日本企業にとって米国の存在感がどれほど大きいかがわかります。
たとえば、トヨタなどの自動車メーカーは、米国でかつてないほどの利益を上げています。米国の経済が安泰であり続ければ、中国や東南アジアの景気減速も大した問題にはなっていないのです。
■過大評価される中国、過小評価される日本 しかし、これからは実態が明らかになる
さらに興味深いのは、貿易統計の表面的な数字ではなく、付加価値を算入した実質的な数字で考えると、日本の米国に対する黒字額はいっそう膨らむということです。これまで私たちが正しいとしてきた従来の貿易統計では、中国の黒字が過大評価されている傍らで、日本の黒字は反対に過小評価されています。これは、どういうことなのでしょうか。
たとえば、日本から中国に70ドルの部品を輸出し、中国の工場で完成品にして100ドルで最終消費地の米国に輸出したとしましょう。このケースを従来の貿易統計で計算するとどうなるかというと、日本が中国に70ドル輸出し、中国が米国に100ドル輸出したということになります。
これに対して、本当の付加価値の流れを考えれば、新しい見方をすることができるようになります。すなわち、日本が米国に70ドル、中国が米国に30ドルそれぞれ輸出したと計算するのが妥当であるという見方です。
従来の貿易統計では、主に完成品を輸出する中国の国際競争力は過大に評価される傾向が強かったのですが、新しいパラダイムで経済の実態を見ると、日本の競争力は表面的な数字で判断されるほど弱くないということが理解できます。さらには、日本にとって本当に重要な貿易相手国がどこなのかということも、いっそう明らかにしてくれます。
■米FRBの動向に注目!無理な利上げをすれば、日本経済は大失速する
米国の経済が回復する過程でいちばん恩恵を受けるのは、昔も今も日本であることに変わりません。なぜならば、日本から輸出される部品や素材の大半は、最終的には米国で消費されているからです。
従来の貿易統計で見ても、今でも日本が大幅に貿易黒字を保っているのは米国だけであり、EUや中国に対しては赤字になっているのです。だから、付加価値の流れを見れば、日本にとっての米国の重要性はよりいっそう高まっていくわけです。
日本が中国との貿易によって利益を受けることはないので(日本の消費者は利益を受けているかもしれませんが)、中国の大減速は日本経済に直接的に大きな打撃をもたらすことはないでしょう。
ところが、中国の経済が大減速すれば、ドイツの経済がひどく傷つくように、米国の経済が減速の度合いを強めれば、日本経済にとってダメージが大きいものになるのは避けられません。
要するに、FRBが世界の経済環境の変化を無視して利上げにこだわれば、日本経済は今よりも厳しい局面に追い込まれる可能性が捨て切れないわけです。
なお、新刊『中原圭介の経済はこう動く(2016年版)』では、経済の本質を見据えたうえで、新しいパラダイムのもと、米国、欧州、中国、日本などの近未来の予測をしています。もし興味がございましたら、ぜひご覧ください。
中原圭介の経済はこう動く〔2016年版〕
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4492396225/asyuracom-22
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