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横浜市都筑区マンションの現場代理人が関わった現場数(「旭化成建材 HP」より)
欠陥マンションは今後も絶対になくならない?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151104-00010002-bjournal-soci
Business Journal 11月4日(水)22時32分配信
横浜市のマンションが傾き、マンション施工時の「杭打ち」が強固な地盤にまで達していなかったことが発覚した「杭打ちデータ改竄事件」は、その後も大きな広がりを見せています。杭打ち工事を担当した旭化成建材は、過去10年間に行った3040件すべての杭打ち工事をチェックするとしており、現時点ですでに数十件のデータ改竄が発覚しています。そのなかには横浜のマンションとは別の人物が現場管理者を担当したものもあり、同社の企業体質が問題視されています。
現時点では実際に杭打ち工事を行った旭化成建材に注目が集まっていますが、施工した三井住友建設には元請けとしての責任はないのでしょうか。
三井住友建設は、「チェックが十分でない体制だった」などと言い訳に終始し、神妙に頭を垂れていますが、旭化成建材が出鱈目な杭打ち工事に走った背景には、元請けで強い立場の三井住友建設からの「工期厳守」のプレッシャーがあったのではないかというのは、すでに業界関係者の間からも指摘されています。
横浜のマンションの杭打ちの現場では、はじめから強固な「支持層」と呼ばれる地層に届かない短い杭が、三井住友建設から提供されていたという情報も報じられています。短い杭を渡された旭化成建材の現場責任者が、三井住友建設に対し杭が支持層に届かない懸念がある旨を伝えられる空気だったのか、そして実際に届かない杭があった時、三井住友建設側へ「やり直し」の申し入れをできるような関係があったのか――。疑問を呈する指摘も数多くなされています。
杭打ちをやり直すと1カ月近い工期の遅れが生じるといわれており、販売時期が決まっているマンション工事の立ち遅れは、旭化成建材の現場責任者にとっては許されないという重いプレッシャーがかかっていたということは想像に難くありません。
こうしたマンション建設現場の実態についても、報道などで徐々に明らかになってきています。建設現場における「元請け」と「下請け」という力関係が、今回のような不正につながっていると窺わせたのが、この事件の教訓のひとつでしょう。
●耐震偽装事件
今から10年前の2005年、「耐震偽装事件」が社会問題化しました。規制緩和で民間でも「建築確認」が行われるようになった制度上で、一級建築士が建物の構造計算で耐震強度を偽装した事件でした。大騒ぎになり、この建築士が関与したいくつかの物件は取り壊されたり、耐震補強工事が行われたりしました。
当時の小泉純一郎政権で自民党幹事長を務めていた武部勤氏は、国民の高まる不安に応えるかたちで、ついうっかりすべてのマンションの「全棟検査」を行うなどと口走ったりしたものでした。結果的には国交省によるサンプル検査で終わりました。もちろん、全棟検査など大それたことなどすれば、全国のあちこちで新たな耐震偽装マンションが次々と発覚して、業界は壊滅的打撃を受け、経済にも甚大な影響を及ぼすのは必至でした。
この時は、一級建築士だけでなく、民間の確認審査会社社長、マンションデベロッパー社長などの関係者が逮捕されましたが、結局建築基準法違反で裁かれたのはくだんの一級建築士のみで、そのほかは詐欺や業法違反、名義貸しの建築士法違反などで有罪になっただけなのでした。結局、国交省は法律を若干厳しくしただけで幕引きを図ったのです。
建築確認システムのずさんな問題点や、役所の隠蔽体質、歪んだ業界の構造的問題などにはあえてふれずに、悪いのは「構造計算をインチキして誤魔化した一級建築士」というかたちで、すべての悪の根源をここに押し付けたのでした。
●建設業界と政府の癒着関係
建設業界は、政治家とも官僚ともズブズブの癒着関係にあることは広く知られています。官僚は大手建設会社に天下るという構図がありますし、建設会社は賄賂である「政治献金」で政治家を手なずけます。政治家もよだれを垂らして、業界からの献金を求めます。ここでもまた、参政権をもたない企業が政治献金という賄賂によって、有権者である国民以上に有力な立場となって政治を動かしている現実があるのです。
今回もまた、政府は「悪いのは旭化成建材のごく一部である数名の現場管理者だけ」というかたちで幕引きを図るつもりでしょう。そして、かたちばかりの法改正や規制を強めてポーズをつけて終わりにするのでしょう。繰り返しになりますが、国交省と政治家は建設業界とズブズブの関係であり、徹底的に建設業界にメスを入れることなどは望むべくもないのです。
したがって、これからも、粗製濫造のマンションや学校施設が、隠れた瑕疵を内蔵したままつくり続けられるわけなのです。
運悪く欠陥マンションに当たってしまった住民は、まったく浮かばれない――という構造は、永久になくなることはないのかもしれません。
文=神樹兵輔/マネーコンサルタント
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