4. 2015年11月04日 20:25:58
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アングル:人民元の国際化、外交面で進捗も企業は及び腰 11月4日、中国政府による人民元国際化の取り組みは、国際通貨基金(IMF)が人民元を特別引き出し権(SDR)に採用する方向で準備を進めるなど外交面で次々と成果を上げているが、外国企業は人民元に対して警戒を強めている。写真は人民元紙幣。台湾で2010年3月撮影(2015年 ロイター/Nicky Loh) [上海 4日 ロイター] - 中国政府による人民元国際化の取り組みは、国際通貨基金(IMF)が人民元を特別引き出し権(SDR)に採用する方向で準備を進めるなど外交面で次々と成果を上げている。 しかし外国企業は外為市場で下落圧力にさらされている人民元に対してむしろ警戒感を強めており、決済通貨をドルから人民元に切り替える動きは、実際には遅々として進んでいない。 中国政府はIMFの一件以外にも、アジアインフラ投資銀行の設立で欧州諸国から支持を取り付け、ドイツで人民元建て金融商品を扱う取引所の設置を発表するなど外交的に成功を収めてきた。 香港を拠点とする中国の大手企業の幹部は「(SDRの構成通貨に)採用されれば、人民元の国際化にとって大きな一歩だ」と話し、海外の取引相手は人民元決済の志向を強めると予想した。 しかし年初からの動きをみると、外国人のオフショア人民元(CNH)志向はむしろ衰えている。中国が利下げする一方で米国は利上げの準備を進めているためだ。 人民元が下落圧力を受けたため、オフショア人民元の金利はオンショアの金利を上回り、海外の人民元建て預金は減少し、人民元建て債のオフショアでの起債も減速している。 公式統計によれば、国際取引における人民元決済は着実に増えている。中国人民銀行(中央銀行)のまとめによると今年1─9月の中国の貿易決済における人民元の比率は27%で、昨年通年の22%から上昇した。国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、人民元は決済通貨としての需要をめぐって円と激しく競っている。 しかし海外市場における人民元のこうした需要は見かけ倒しだ。 例えばSWIFTが補足している人民元決済の4分の3程度は実際には国際的な取引ではなく、中国本土と香港間の取引だ。またこのデータからは中国企業内部の取引ではない、外国企業の香港法人による取引がどの程度の比率を占めるのかは読み取れない。 ガベカル・ドラゴノミクス(北京)のエコノミスト、チェン・ロン氏は、人民元建て貿易決済は外国の顧客が中国の輸出業者に人民元建てで支払いを行う例が大半を占めており、これは将来の人民元安に備えて人民元のエクスポージャーを圧縮しているということだと指摘した。 外国人の人民元需要がしぼんだのは、人民銀行が8月に実施した突然の通貨切り下げが一因。人民銀はその後オンショア市場で市場介入を行うなど信認回復に務めたが、外国人が警戒するのは、相場の上げ下げにまつわる目先の不安だけではない。 国家が経済のドル依存に懸念を抱くのには理があるが、企業幹部はこうした懸念を共有せず、コストやリスクを考えてドルから人民元への切り替えに益はないとみなしている。 半導体製造大手ARMは中国向けの販売が好調だが、同社のテクニカルPR部門のディレクター、フィル・ヒューズ氏は「当社の契約はドル建てがほとんどだ」と話した。 英豪系資源大手リオ・ティント(RIO.AX)も今年の中国向け鉄鉱石輸出が180億ドル程度に達する勢いだが、昨年の人民元建て輸出は宝鋼集団向けの1カーゴだけで、しかも一回限りの取引だとしている。 対中貿易の多い別の大手企業の幹部は「顧客が非ドル通貨建て決済を望む流れは起きていない」と述べた。また別の企業の財務担当者は、4年前に人民元建て取引口座を開設したが、まだ1度も使っていないと明かした。 仏高級ブランドのエルメス(HRMS.PA)や高級車メーカーのジャガー・ランドローバー(JLR)などの証券取引当局への申請書類を調べると、中国での売上高は好調に伸びているが人民元建て負債の規模は横ばいだ。 もっとも、香港を拠点とする中国の大手企業幹部は、外国企業がいずれは人民元建て決済に移行するとみている。この幹部は「外国企業は人民元の重要性アップを無視できない」と指摘。その上で「ただ、一夜で実現することはない。人民元のSDR採用を国家レベルで後押しするだけではなく、企業側も実務レベルで人民元を国際通貨に転じさせる必要がある」とした。 (Pete Sweeney、Michelle Chen記者) http://jp.reuters.com/article/2015/11/04/currency-yuan-retreat-idJPKCN0ST0X320151104 |