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日銀は日本経済復活の兆しに水を差すつもりか? 「黒田バズーカ」見送りがもたらす負のインパクト
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46203
2015年11月03日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■予防注射を打たないようなもの
日銀は先週(30日)の金融政策決定会合で、追加の金融緩和を見送った。追加緩和への期待がにわかに盛り上がっていたにもかかわらず、市場に肩透かしを食わせたのだ。
日銀を取り巻く環境を見れば、首相官邸が早くも来夏の参議院選を最優先するモードに突入し、外国為替は1ドル=120円台の円安が続いている。日銀としては、これ以上円安に振れてはマズイとの政治的判断が働いたものとみられる。
目先のことだけを考えれば、この決断は、輸入物価が高騰して、昨今の生鮮食品の値上がりに拍車がかかる懸念が薄れる可能性があり、われわれ庶民にとってはありがたいものかもしれない。
しかし、今回の「黒田バズーカ第3弾」の先送りは、インフレターゲット達成の先延ばしだけでなく、中国バブルの崩壊に伴う輸出減少が、好調な企業業績の足を引っ張る懸念を放置したことに他ならない。来春以降、ようやく一部に明るさが見えていた賃上げのペースを、鈍らせる懸念もある。
予防注射があるのに、蔓延確実なインフルエンザの対策を打たないような、そんなリスクのある判断を、日銀が下したと言わざるを得ない状況なのである。
くすぶり続けていた日銀の追加金融緩和がにわかに現実味を帯びたのは、先々週木曜日(22日)のことだ。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が記者会見で、「12月(3日)の理事会で、緩和度合いを精査する」と表明し、追加金融緩和に踏み切る構えをみせたのがきっかけだ。
翌23日、中国人民銀行が預貸の基準金利と預金準備率をセットで引き下げた。リーマン・ショック以来の措置で、中国経済の崩壊に対する危機感の強さを浮き彫りにした。ユーロや元に対し、円が買われる可能性が高まったわけだ。
金融政策決定会合の前々日の28日になると、米連邦準備理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、かねて懸案の利上げを見送り、事実上のゼロ金利政策を維持する決定を下した。
これは、8月の世界同時株安を踏まえ、利上げを見送った9月に続いての現状維持策だ。米利上げが遠のくならば、日銀は動きやすくなるはずだ。市場では、さらに黒田バズーカ第3弾への期待が高まった。
■記者も惑わす優柔不断さ
そんな状況を受けて、日銀金融記者クラブに常駐する記者たちは色めき立った。ある記者は、「やるかやらないか、五分五分だと応じる日銀中堅幹部もいる」と明かし、踏み込んだ観測記事を出すべきか頭を悩ませていた。
しかし、大山鳴動して鼠一匹。金融政策決定会合は8対1の賛成多数で、追加の金融緩和を見送った。年間80兆円の資金を市場に供給する現状の緩和策をそのまま維持する方針を決めたのである。
ちなみに、反対した委員は資金供給ペースを落とすべきだと主張した模様で、緩和の提案は出なかったという。
日銀にとって、まだ動きにくかったのは事実である。FRBが12月の利上げに含みを残しているうえ、今なお円はかなりの安値水準にあるからだ。
しかも、夏の終わりまで延ばした通常国会で、安全保障関連法を強引に成立させたツケで、世論の支持率が低下して以来、首相官邸はあらゆることに非常に神経質になっている。
来夏の参議院選挙に向けて、財務省案でヒンシュクを買った軽減税率導入案の作り直しを命じたり、権限もないのに電話会社に携帯電話料金の値下げを迫ったりと、人気の回復に躍起である。
■安倍政権に気を使い過ぎた
政府・与党も、同じ文脈から、この時期の追加緩和には反対というのが本音だった。麻生太郎財務大臣も、金融政策決定会合のちょうど1週間前の定例記者会見で、インフレターゲット実現の観点と前置きしつつ、「金融緩和だけによって、本来の目的というのはなかなか行きにくい」と、日銀を牽制していた。
このところ、野菜などの生鮮食品を始めとした食品の高騰は急ピッチだ。原油価格の下落でなかなか2%の目標に届かないインフレターゲットとは対照的な動きが、そこにある。それだけに消費者を敵に回すまいと、政府・自民党はピリピリしていると言ってもよい。
とはいえ、日銀が動かないことに伴うリスクが小さくないことも、また事実である。
何より懸念されるのは企業業績だ。SMBC日興証券の集計によると、先週末までに上場企業のほぼ半数が上半期決算の発表を終えた。
その中身をみると、発表した企業経常利益の合計が好調だった昨年を16%も上回る実績をあげながら、対照的に、通期については実に43社が下方修正に踏み切り、経常利益の伸びは5.7%にとどまる見通しという。
特に、輸出の比重が大きい鉄鋼と機械では、早くも上半期からそれぞれマイナス20.1%、マイナス12.1%とピークアウトが確認されている。中国経済の減速に伴う途上国向け輸出の減少の影響がくっきりと浮かび上がっているのである。
こうした影響は、今後広範な業種に出てくる模様だ。そうなれば、まだ不十分とはいえ、増加の兆しが見えていた賃金や投資が再び冷え込むのは確実だ。
先延ばししたからといって、黒田バズーカ第3弾を効果的に打てる時期が近い将来に巡ってくる保証はない。
今回の追加緩和策の見送りが吉と出るか凶と出るか、そして来夏の参議院選挙にどのような影響を及ぼすか、国内はもちろん、グローバルにも注目されることになるだろう。
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