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変調ドイツ経済:中国低迷や米国不振と同じ主因:原油など商品価格低落が引き起こす資金循環変動に伴う世界規模の需要縮小
http://www.asyura2.com/15/hasan102/msg/203.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 11 月 02 日 05:02:45: Mo7ApAlflbQ6s
 


※日経新聞連載


[時事解析]変調ドイツ経済

(1) VW、排ガス規制逃れ 問われるブランド

 ドイツ経済が揺れている。フォルクスワーゲン(VW)の不祥事で企業への信頼が低下。強みだった輸出の停滞やデフレも懸念されている。

 VWにとって排ガス規制逃れの打撃は大きい。欧州金融大手UBSは、罰金とリコール(回収・無償修理)の合計コストは350億〜500億ユーロ(約4兆7千億〜約6兆7千億円)と推計する。

 影響はVWにとどまらない。UBSのフィリップ・ウショワ氏は「排ガス性能などで試験時と走行時に差があり、大きな課題になる」と指摘。規制強化でディーゼル車のコストが上昇、ドイツの基幹産業である自動車業界を揺るがしかねない。

 独企業の体質も問われる。環境重視を掲げ、利益最優先の米企業と一線を画してきたが、VWは利益優先で環境をないがしろにした。世界経済フォーラムの競争力報告でドイツは「企業の倫理的行動」で21位と日本(9位)を下回っていたが、一層低下する可能性もある。

 企業統治にも課題が多い。VWは同族経営や、議決権の2割を握るニーダーザクセン州の関与が懸念されていた。ドイツには同族経営企業が多いのに加え、大株主としてにらみを利かしていた銀行が持ち合いを解消している。

 米ゴールドマン・サックスのステファン・バルグスタラー氏は「(VWの事件は)メード・イン・ジャーマニーのブランドに負の影響を及ぼす」と指摘する。

 1990年代に「欧州の病人」とされたドイツは近年一人勝ちといわれる。VW不祥事は急復活の陰で隠れていた経済のもろさをあぶり出した。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞10月26日朝刊P.17]

(2)中国依存がリスクに 輸出主導に陰りも

 フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れと並んでドイツ経済を揺さぶっているのが、中国経済の減速だ。

 VWが自動車販売で世界一のトヨタ自動車に迫った原動力の一つは中国市場への浸透だ。グループの販売の3分の1が中国で、中国でのシェアは18%にも達している。

 中国ではディーゼル車は少ないが、輸入車の一部がリコール(回収・無償修理)対象になった。輸出入品などを検査する国家質量監督検験検疫総局は「警告すべき事態」としている。景気減速とブランドイメージ低下が販売に響く恐れがある。

 ドイツの輸出全体に占める中国向け輸出の比率は金融危機前の3%程度から、2014年には6%台に伸びた。中国の景気対策を最大限生かしたのがドイツだった。

 しかし中国の経済減速が鮮明になり、9月の輸入は前年同月比20%減。中国経済の1%の減速は1年後のユーロ圏経済に0.25%の減速圧力となる。中国依存度の高いドイツの場合はより強い下押し圧力がかかる。

 14年までの10年でみると、ドイツの1人あたり輸出額は世界トップで、日本の3倍近く。国内総生産(GDP)に対する輸出比率は約50%。強い輸出が経常黒字や強い経済を支え、それが欧州連合(EU)でのドイツの発言力につながっている。

 中国問題はその強いドイツの基盤を揺るがしかねない。米ゴールドマン・サックスのピエール・ベルネ氏は「欧州にとって中国経済減速の影響は、ギリシャ問題以上に大きな懸念事項だ」と指摘している。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞10月27日朝刊P.26]


(3)強まるデフレ懸念 独企業、海外シフト

 ドイツの9月の消費者物価指数は前年同月に比べ0.2%下がった。原油はじめ国際商品価格の下落が響いた。エネルギー・食品などを除いたコア消費者物価の上昇率も低下傾向で、デフレ懸念が強まっている。

 背景にあるのは少子高齢化。既に人口が減り始め、需要が低迷。2030年の人口減少幅は2.5%と日本より大きくなる見通しだ。人口の6分の1を占める1960年代生まれが30年代には引退し、労働力も急減する。

 先行きの需要不安で、独企業は国内での設備投資に慎重だ。「独自動車メーカーは米国や中国での生産を増やす。国内生産は25年まで現状程度で推移する」とドイツ銀行のエリック・ヘイマン氏。

 現在、ドイツはシリアなどから80万人ともいわれる難民を受け入れつつある。人道的な見地からとされるが、労働力減少を補う狙いもある。

 難民による人口増で需要が増えるのは事実だ。しかし熟練労働者以外への労働規制は厳しく「供給サイドに影響が表れるのは(難民を)労働市場に融合できる範囲に限られ、難しい課題だ」(ドイツ銀行のバーバラ・ボチャー氏)との声が多い。

 経済的なコストも小さくない。16年の政府の関連支出は100億ユーロを大幅に上回りそうだ。労働規制が緩和されても手厚い就労支援が不可欠。80年代に西ドイツはトルコ移民を受け入れたが、教育や社会保障の負担がかさんだ。

 独連邦移民・難民庁のマティアス・ネスケ移民統合研究部門長は「短期的には課題も多いが、将来(の発展)に向けての投資だ」と強調している。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞10月28日朝刊P.28]


(4)精彩欠く金融 欧州危機 影響残る

 ドイツでは製造業は強いが、金融業は精彩を欠いている。最大手のドイツ銀行は7〜9月期決算で60億ユーロ強の赤字を計上する。法人金融や売却するポストバンクの評価損がかさむ。株式時価総額は約410億ドルで、三菱UFJフィナンシャル・グループの半分以下だ。

 州立銀行の経営も不安定だ。州政府による資金調達への保証は2015年末で完全になくなる。低金利政策で貸出金利が下がるなか、調達コストが上がり、利ざや縮小が続く。欧州委員会は「州立銀行の統合や企業統治の改善に進展がみられない」と警告している。

 フォルクスワーゲン(VW)問題も影を落とす。金融子会社を抱えているためグループ債務は1千億ユーロを超える。不履行の可能性は小さいが、融資や社債の市場価格は下がっており、融資銀行や投資家に影響が及ぶ。

 ドイツの銀行は2000年代に投資銀行業務を強化したが、サブプライムローン関連商品や南欧国債への投資で失敗。資本が毀損し経営状態が悪化し、現在はまだ経営立て直しの最中だ。

 経済は米国に比べ間接金融依存が高いのに、支える銀行の体力が万全ではない状態だ。国際通貨基金(IMF)はドイツの銀行システムについて「銀行の収益性の低さに鑑みると、強い資本基盤がとりわけ重要だ」と指摘する。

 中央銀行に当たるドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)は「持続可能なビジネスモデルを持つ銀行だけが、長期的に金融機能を果たしうる」と、収益優先で投資銀行業務にかじを切った銀行の姿勢をけん制している。

(経済解説部 太田康夫)

[日経新聞10月29日朝刊P.37]


(5)問われる競争力の質 ハード主体、限界も

 ドイツ製造業の競争力は世界的にトップクラスとされる。価格競争力を支えるのが賃金抑制。以前は労働組合が強かったが、シュレーダー政権時の雇用改革で変わった。2000年以降の単位あたり労働コストの伸びは1割で、フランスやイタリアの3割より低い。

 伝統的には製造業の高機能、高性能が強みだ。ベルギーのブリューゲル研究所のダリア・マリン研究員は「集権的でなく現場の声が生きる独企業のモデルが、製品の質を高めることに貢献してきた」と指摘している。

 独企業はクラフトマンシップ(職人技)に支えられたハードに強いが、成長の原動力になっているソフトやサービスなどを付加する力には欠ける。

 ドイツ取引所の上場企業の株式時価総額合計は、米アップル、グーグル、マイクロソフトの3社合計とあまり変わらない。利益率をみると独企業は4.2%と英国や米国、中国などを下回る。

 クリーン・ディーゼルは独企業が環境配慮で世界をリードするカギとみられていたが、フォルクスワーゲン(VW)の不祥事でその可能性はほぼ絶たれた。独自動車業界は今後、排ガス規制強化に伴うディーゼルのコスト上昇を抱えながら、電気自動車などの新技術開発に取り組む必要に迫られる。

 経営戦略論で知られるヘルマン・サイモン氏は「独企業の多くは古いビジネスモデルに固執しがちだ。より利益志向になる必要がある」と指摘。ただVWでは利益を優先し排ガス規制逃れが起きた面もあり、企業文化を変えるのは簡単ではない。

(経済解説部 太田康夫)

=この項おわり

[日経新聞10月30日朝刊P.31]


 

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コメント
 
1. 2015年11月02日 14:12:42 : OO6Zlan35k
第3次ギリシャ支援、総額は想定下回る公算 銀行審査受け=ESM

[ブリュッセル 31日 ロイター] - 欧州安定メカニズム(ESM)は、ギリシャの4大銀行が欧州中央銀行(ECB)のストレステスト(健全性審査)で指摘された資本不足額が想定を下回ったことを受け、第3次ギリシャ支援の総額は当初の計画より少なく済む可能性が高いとの見方を示した。

ECBは31日、ギリシャの4大銀行が追加で140億ユーロ(160億ドル)以上の資本調達が必要になるとの審査結果を公表した。

ESMの広報担当者は「今回示された不足額の総額はESMがギリシャの銀行の資本増強向けに確保していた250億ユーロを大きく下回る」とし、「ESM内で銀行の資本増強向けの資金が十分足りていることが示され、ギリシャ向け融資の上限額は当初計画された860億ユーロを実際には下回るだろう」と述べた。
http://jp.reuters.com/article/2015/11/02/greece-ecb-esm-idJPKCN0SR00V20151102


2. 2015年11月02日 17:49:49 : OO6Zlan35k
ドイツ人が赤信号を渡る日はくるのか? 罰金廃止の動きも

ドイツでは人々が赤信号を辛抱強く待つ。一方、左派党は自転車と歩行者を信号無視の罰金対象から外すことを考えている PHOTO: ZOELLNER/ULLSTEIN PICTURE/GETTY IMAGES
By ANDREA THOMAS
2015 年 11 月 2 日 09:23 JST

 【ベルリン】ある夜更け、眠気に包まれたベルリン市の中心部。道路を走る車はない。だが、信号は赤だ。このとき、自転車や徒歩で横断しようとしているドイツ人にとって、正しい行為は決まっている。青になるまで待つことだ。

 ギリシャへの金融支援問題から道路の信号にいたるまで、ドイツ人は規則を守ることを誇りにしている。だが少なくとも後者に関しては、その徹底ぶりを行き過ぎだと思っているドイツ人もいる。自転車や歩行者が立ち止まって信号を待っている姿を皮肉る向きもある。

 ドイツの最大野党である急進的な左派党はこの強迫観念を何とか変えたいと考えている。11月には赤信号を無視した自転車や歩行者に対する罰金の廃止を提案する計画だ。

 左派党の幹部議員で交通問題を担当するザビナ・ライディッヒ氏は「(罰金の廃止は)街なかで自転車や歩行者が動きやすくなる」とし、「街で自転車に乗っている人は子供扱いされる感覚を味わっている」と話す。

 ドイツでは信号を無視した場合、歩行者も6ドル程度(約700円)の罰金が課される。自転車の場合は最高150ドルの罰金だ。

 自転車や徒歩での通勤が望ましいと考えられているドイツで、罰金廃止の考えは神経に障るものだ。政府の統計によると、ドイツでは8100万人の国民が合計7200万台の自転車を所有している。世論調査会社フォルザが保険会社コスモス・ダイレクトの委託で実施した調査では、国民の5人に1人が毎日自転車に乗っていることが分かった。


 オーストリアのウィーン工科大学で交通計画を研究するウルリッヒ・レス氏は「他の人の邪魔になったり、誰かを危険にさらしたりしない限り、赤信号で渡ることを罰金の対象から外すべきだ」と話す。「そうすれば徒歩と自転車の利用がより魅力的になる」

 だがドイツでは、交通ルールに個人の自己裁量が入り込むという考えは浸透していない。警察官から保守的な議員にいたるまで、道路交通法を緩和すれば問題を引き起こし、命が犠牲になると懸念している。

 ただ、厳格に規則を守ることが必ずしも安全につながるかどうかは定かではない。公式な事故統計によると、ドイツで昨年、自転車利用中の事故で死亡した人は11.9%増の396人、けがをした人は6000人増の7万7900人に達した。政府は死傷者が増加したことについて、秋冬期の天候が穏やかだったため、自転車で通勤・通学する人が増えたことも一因だとしている。

 欧州の他の国では交通規則の一部に「ブレーキ」をかけたところもある。例えば、フランスは2012年にパリ市内を対象に、自転車は選択的に赤信号を無視して良いと決めた。自転車を愛するオランダでは1990年に赤信号でも右折可とするルールを導入した。

 だが、ドイツでは多くの人がこうした「常識」を交通ルールに持ち込むことは大混乱へ向かって坂を転げ落ちるようなものだととらえている。メルケル首相をはじめとする保守派はすでに野党・左派党のライディッヒ氏の動きを阻止しようと動いている。

 メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)の議員で交通政策報道官を務めるウルリッヒ・ランゲ氏は「自転車は特殊車両というわけではない」とし、「通行しているものはすべて交通の流れの一部であり、だからこそ安全かつスムーズな共存のために、特定の規則に従わなければならない」と述べた。

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米賃金低迷−FRBの期待かなわず
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7-9月期の米雇用コスト指数は前期比0.6%上昇した。写真はメキシコ料理ファストフード「タコベル」で働く従業員(シカゴ) PHOTO: MATT MARTON/ASSOCIATED PRESS
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JUSTIN LAHART
2015 年 11 月 2 日 10:15 JST
 米連邦準備制度理事会(FRB)は雇用市場がさらに改善し、ある段階でインフレ率が上昇し始めると考えている。だが、そのような兆候はまだ全く現れていない。
 米労働省が10月30日発表した7-9月期の雇用コスト指数(ECI)統計では、軍隊を除く全業種の人件費(季節調整済み)が前期比0.6%上昇、前年同期比2%上昇となった。前年同期比の上昇率は過去5年間の傾向と一致しており、1-3月期の大幅な伸びは例外的なものだったとの見方が強まった。
 FRBはECIを注視している。毎月の雇用統計で発表される所得と違い、ECIでは雇用者の職種構成などの変化も考慮しているからだ。現時点でこの点は非常に重要だ。一部のエコノミストは、ミレニアル世代が最初の就職先として賃金の低い仕事に就く一方で高賃金を得ていたベビーブーム世代が退職しているため、賃金にかかる上昇圧力が見えなくなっていると主張している。だがECIからは、そうした賃上げ圧力はうかがえない。
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雇用コスト指数の変化率(前年比)
 インフレ統計を見ても雇用市場が引き締まっている様子はない。FRBがインフレ指標として特に注目している個人消費支出(PCE)価格指数は、商務省が同日公表した9月の統計で前月比0.1%上昇、前年同月比0.2%上昇となった。食料とエネルギーを除くコア指数は前月比0.1%上昇し、前年同月比で1.3%上昇にとどまった。
 FRBは10月28日に発表した連邦公開市場委員会(FOMC)政策声明で、インフレ率がいずれ目標の2%に向かうとの見通しをあらためて示した。しかし、実際にそうなるという証拠は依然として乏しく、次回12月のFOMC会合までに状況が変わるかは疑わしい。
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米賃金の伸び低迷、原因は諸手当の増加
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諸手当に対する依存度が高くなっていることは、労働力構造の変化を反映している可能性もある。 PHOTO: SPENCER PLATT/GETTY IMAGES
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ERIC MORATH AND JEFFREY SPARSHOTT
2015 年 11 月 2 日 14:28 JST
 米企業経営者らは、なかなか労働者への基本給引き上げで報いようとはしていない。だがここ数年、契約金や有給休暇、その他の諸手当などを手厚くしている。
 現在の景気拡大においては、異例なほど低調な賃金の伸びが根本的な謎のひとつとなっているが、より高い諸手当の伸びがその答えの手掛かりをいくつか示している。
 諸手当への重心移動は、従業員らが賃金の他に柔軟性や医療保険、休暇などに高い価値を置いていることを反映している。
 だが同時に、経営者らがまだ基本給引き上げの取り組みをためらい、代わりに取り消しやすい諸手当に頼っているという、この景気拡大のもろさをも浮き彫りにしている。消費者の賃金が伸びずに消費を増やすことができなければ、これはより広範な反動につながる可能性がある。
 労働者の報酬に占める基本給の比率は、過去10年間にわたり減少してきた。特にリセッション(景気後退)が終わってからは、減り方が加速してきた。4-6月期には、休暇や医療保険、一時金(ボーナス)などの形での諸手当が、報酬全体の31%を占めた。10年前は29%だった。
 人材募集サイトのグラスドア・ドットコムでチーフエコノミストを務めるアンドリュー・チェンバレン氏は、「構造変化が続いている」と指摘し、「労働市場全体に、賃金から諸手当へのとても巨額な移動が起きている」と述べた。
 第二次世界大戦中、企業が賃金統制を回避するために医療保険を提供し始めた。現在、企業の福利厚生はスポーツジムの会員権やコーヒーメーカー、無料携帯電話、犬を同伴できる職場などさらに手厚くなっている。
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労働者への報酬の内訳(上から:加給金、退職手当、保険、有給休暇、法定手当、基本給)
 2009年半ばにリセッションが終わって以来、平均時給は年率およそ2%のゆっくりとしたペースで伸びている。景気拡大が始まってから、雇用は着実に生み出されているが、時給の伸びは約12%にとどまっている。直近のリセッション以前の20年間における時給の伸びは、平均して年率3%よりも高かった。賃金の伸びが弱い原因は、まだら模様な個人消費や過去最低のインフレ率、自分の家を買うことができない借家人が多いことなど、さまざまな米経済の弱い面にあるとされてきた。
 一方、景気拡大期に入って以降、諸手当はこれよりもやや高い15%の伸びとなった。実際、これはより長期的な傾向として続いている。01年以降、基本給の伸びは40%だが、諸手当は60%近く増えた。
 この変化は、少なくとも一部は従業員の希望を反映している。人材紹介会社ロバート・ハーフの調査によると、労働者が企業に希望する上位には、休暇や通勤費、フレックスタイムがあがった。
 高額所得者にとっては、税金上の意味合いもある。医療保険をはじめ諸手当の多くは、基本給と異なり一般に非課税だ。
 グラスドアのチェンバレン氏は、「10ドルの昼食が非課税ならば、労働者に20ドルの現金を支給するのと同じことになる」と説明した。
 だが、医療保険制度改革法の下で、非課税の医療保険は変わろうとしている。 18年から高額医療保険プランに対して、いわゆる「キャデラックタックス」と呼ばれる課税が実施される。このため一部の経営者はすでに、諸手当の削減や従業員が非課税の医療保険勘定に給与を積まないよう阻止することを検討している。民主党大統領候補に上がっているクリントン氏とサンダース氏はいずれも、オバマ大統領が署名した医療保険制度改革法のこの部分を撤回したいと考えている。
 諸手当に対する依存度が高くなっていることは、労働力構造の変化を反映している可能性もある。医師や弁護士、技術者など管理職や専門職の雇用は、09年から14年にかけて7.3%増えた。こうした労働者の報酬の中で基本給が占める比率は69%だ。これに対し、給仕や在宅医療補助などサービス職の雇用はこの5年間に5.1%しか増えなかった。これらの労働者は報酬のうち基本給が76%を占めている。
 企業の立場からすると、報酬における諸手当の割合を増やすのは理にかなっている。ロバート・ハーフのボストン地区担当社長、ライアン・サットン氏によると、契約金などの諸手当を提供する方が、給与体系を再構築するより早くかつ簡単なことが多い。給与体系の見直しには時間がかかり、会社全体への波及はその後になってようやく見られるようになるためだ。
 
http://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CH703A_OUTLO_16U_20151101122416.jpg 


3. 2015年11月02日 18:27:03 : OO6Zlan35k

米製造業の不振、景気全体に与える影響とは
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米経済にとって製造業の重要性は以前ほどではないが、今でも大きく貢献している。写真はカリフォルニアのファスナー工場 PHOTO: MEG ROUSSOS/BLOOMBERG NEWS
By
JUSTIN LAHART
2015 年 11 月 2 日 16:21 JST
 米国の製造業は落ち込んでいるが、問題は、それが米国経済にどれほど影響するかだ。
 海外の景気低迷は、米国製品への需要を減少させる一方、ドル相場を押し上げることで米国製造業の国際市場での競争を難しいものにしている。米国内では、石油産業への投資減少が資本設備の売り上げを圧迫してきた。
 このため、製造業に沈滞ムードが漂い、2日発表される米サプライ・マネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数が芳しくなかったとしても不思議はない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が実施したエコノミスト調査では、9月の50.2から49.9に低下すると予想されている。同指数は50を下回ると製造活動が縮小していることを意味する。この予想通りなら、この3年近くでは初めてのことになる。米連邦準備制度理事会(FRB)は先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、12月の次回会合で利上げ実施について判断すると明言したが、そのFRBもこのシグナルを無視したいとは考えないだろう。
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 確かに、現実は製造業景況感指数が示唆しているほど悪くないかもしれない。それは新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の5つの分野について製造業者が「良くなっている」、「悪くなっている」、「同じ」のどれかで回答し、それを総合して算出したものである。したがって、製造業が活気付いているか冷え込んでいるかを判断するには良い物差しとなるが、同セクターの正確な動向までは読み取ることができない。
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米サプライ管理協会(ISM)の製造業景況指数
 さらに言えば、製造業は米国経済にとってかつてほど重要ではない。1970年代初めには米国の総雇用者数に占める製造業の割合が25%もあり、その不振は米国経済に大きなリスクをもたらしたが、現在は9%なのでリスクは当時ほど大きくはない。
 ただ、製造業は、総雇用者数に占める割合が示唆する以上に大きな影響力を持っている。トラック運転手や倉庫の従業員、臨時雇用に分類される工場の契約社員など、製造業の雇用者数には含まれていないが、製造業に直接依存している人々が数多く存在している。そして、財の生産(そのほとんどは製造業である)は、米国の国内総生産(GDP)の30%を占めている。
 したがって、米国経済は製造業不況をなんとか乗り越えるだろうが、世界の経済環境が改善し、製造業の見通しが明るくなるまで、米国の力強い経済成長は望めないかもしれない。


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