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王者ニッセイの逆襲、「壮大な失敗」か…ドコモショップで生命保険など売れるのか?
http://biz-journal.jp/2015/11/post_12208.html
2015.11.02 文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト Business Journal
日本生命保険がNTTドコモと提携して、ドコモのショップ店頭で生命保険の販売を来夏より始める。成長が緩やかになる国内市場で新たな販路を確保したい日本生命と、契約者の長期囲い込みにつなげたいドコモの狙いが一致した。ただ、販売効果が不透明な上、ドコモは日本生命だけでなく複数社の保険を取り扱う予定だ。日本生命にとって旨みは少ないように映る一方、当事者の日本生命関係者からは「提携の意義は大きい」と自信に満ちた声が聞こえてくる。
日本生命にとっては提携の最大のメリットは販路開拓。ドコモショップは全国に約2400。来店客の年齢層も幅広いだけに、保険会社にとっては接点の少ない若年層も含めてアプローチできる貴重な販路になる。
問題はそれだけ実効性があるかだが、若年層をターゲットに携帯電話と生保を組み合わせて契約することによる「セット割」などの提供が想定されるが、金融関係者は首をひねる。
「固定光回線とのセット割と同じ発想だろうが、生保はいつ必要になるかわからない商品ながら、支払う総額が大きい。そのような商品に携帯ショップで気軽に加入するのか」(銀行関係者)
競合の外資系生保幹部は「新しい販路開拓の一環ではあるが、日本生命にしてみれば、マーケティングの意味合いが大きいのでは」と見る。実際、携帯電話アプリなどを通じた個人の健康習慣や行動のデータ取得が真の狙いとの見方は根強い。
保険商品は年齢と持病の有無で保険料が決まるが、海外では運動などで健康状況が良くなれば保険料を下げるサービスは珍しくない。仏アクサは2013年にフランスでランナー向け保険料割引サービスを開始。毎日7000歩または1万歩以上を1カ月続けた場合、保険料の割引が受けられる。アクティビティトラッカーと呼ばれる心拍計が付いた記録装置は無料で提供する。
日本生命は今回の提携でこうしたサービスの展開について否定しているが、顧客情報をビッグデータ解析して保険料に反映する世界的な流れには抗えないだろう。
「運動習慣にとどまらず、南アフリカの保険会社ディスカバリーは契約者の遺伝情報解析にまで乗り出している。日本生命がスマートフォンのアプリを活用して、顧客の生活習慣などの情報を収集して新たな保険モデルを構想しているのは間違いないだろう」(国内大手生保関係者)
競合他社も参入が予想される中、日本生命が先陣を切ったのは経営資源の豊富さも関係しているだろう。保険販売には専門の資格も必要となるため、保険会社がショップに指導担当の人員を派遣する。日本生命もドコモでの取り扱いを数十店舗から始め、順次拡大するという。
■課題
問題は、どの程度のスピードで取り扱い店舗数を増やすかだ。もちろん、販売動向は影響するものの、日生としては、店舗網が拡充されればそれだけマンパワー、つまりコスト負担が重くなる。
「他社は果たして携帯ショップで保険が売れるのか、どこまでコスト(要員)をかけるかを慎重に判断している。実際、当社はドコモから打診があったが断った」(国内大手生保幹部)
一方の日本生命は、人員の大量投入も物理的には可能だと指摘する。
「買収した三井生命の社員を配置転換するのにもよい受け皿になるのでは。三井生命は営業職員の余剰も指摘されているが、日本生命傘下に入れば、内勤職員も当然スリム化が必要になる」(同)。
携帯ショップで生命保険は売れるわけがないと捉えるのは早計。第一生命を抜き返し、生保ナンバーワンの座を再び確保した今、目覚めた「王者・ニッセイ」が本腰を入れれば、ドコモショップビジネスは他社を突き放す足掛かりになるかもしれない。
(文=黒羽米雄/金融ジャーナリスト)
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