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北陸新幹線に乗れば、東京からもあっという間(※イメージ)
シニア移住にやさしい古都・金沢 高齢者、学生、子どもがごちゃ混ぜ暮らし〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151101-00000001-sasahi-life
週刊朝日 2015年11月6日号より抜粋
今春開業した北陸新幹線の恩恵でにぎわう古都・金沢。金沢駅から車で20分あまり行くと、軽井沢や清里の別荘地のような風景が目に飛び込んできた。
道の左右に並ぶ焦げ茶色の平屋は、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)だ。夫婦2人で住める1LDKの広めの設計で、ウッドデッキもある。サ高住の隣には、知的障害を持つ子どもの入所施設や、学生向け住宅がある。
全国の福祉関係者がいま注目する“街”。それが「シェア金沢」だ。Share(分ける)という名前のとおり、子どもや大学生、高齢者が暮らし、世代や障害を超えて交流する。ここに住む高齢者は31世帯36人。家賃は夫婦2人で月額14万円(光熱水費込み)ほどだ。
“街”が誕生したのは、2014年3月。ここで暮らす高齢者の約半分は地元出身で、残りは関西や関東といった都市部からの移住組だ。オーストラリアから移住してきた80代の日本人女性もいる。
地元組が移住組に声をかけ、近所のスーパーやスポーツジムに出かけたり、能登などに旅行したり……。移住組が地元組に引っ張られて“街”に溶け込む。理想的なかたちだが、「予想外だった」と話すのは、サ高住や児童入所施設の施設長で、運営母体・社会福祉法人佛子(ぶっし)園の奥村俊哉さん(52)だ。
「実は、シェア金沢は地元の高齢者向けにつくった施設なんです。宣伝も地元の新聞に折り込みチラシを入れた程度でした」
ところが、オープンして半年後、メディアに紹介されたことがきっかけで、都市部の高齢者からの資料請求が急増。記者が取材に訪れたこの日も、1組の老夫婦が見学に訪れていた。
「おはようございます!」
笑顔であいさつして通り過ぎた住人の男性は、鈴木総七郎さん(73)。神奈川県横須賀市から単身でここに引っ越してきた移住組の一人だ。終(つい)のすみかにする高齢者施設を探していたときに、雑誌で知ったという。
住み慣れた横須賀から縁もゆかりもない金沢へ。不安はなかったのか。
「不安? まったくないです。だって僕は“日本すべてが故郷”と思っているから。北陸新幹線に乗れば、あっという間に東京。家内の墓参りも日帰りでできるでしょ(笑)」(鈴木さん)
鈴木さんは、まだ福祉の支援を受けていない自立した高齢者。ここでホームヘルパー2級を取り、施設内のデイサービスで同世代のケアにあたったり、知的障害を持つ子どもたちの面倒をみたりしている。
「高齢者だけでなく、子どもたちもいて一緒に遊べて……。ここは僕にとって理想郷ですよ」(同)
高齢者と子どもの、ちょっとした交流の場になっているのが、日用品・生活雑貨店「若松共同売店」だ。学生や高齢者、施設のスタッフが交代で店番をする。
さっそく店を訪ねた。店頭に並ぶのは10円、20円の駄菓子だ。実は“街”ができた当初、売店には100円程度のお菓子が並んでいたが、何も買わずに帰る子どもが多かった。施設からもらう数百円の小遣いでは買えないのだ。
「もっと安いお菓子を仕入れたほうがいい」。高齢者がそんな声を上げ、安価な駄菓子が置かれるようになったという。
シェア金沢では、元気な高齢者が、支援の必要な高齢者を支え、障害を持つ子どもたちを見守る。お互い役割ができることで、それが生きがいになっている。
今年4月から住人となった荻野千代秋さん(74)。歩いて数分の自宅を売却して移り住んだ地元組だ。庭づくりが趣味で、40鉢ほどあった観葉植物や盆栽ごと引っ越してきた。鉢植えは“街”の至るところに置かれて、住民やスタッフの目を和ませている。
「引っ越して気になったのが、伸びっぱなしの芝でね。自宅から持ってきた芝刈り機で整えた。歩道脇の川の石もきれいに並べ替えたい。やることが山積みですよ」(荻野さん)
ここにはレストランやクリーニング店、ボディーケアサロン、キッチンスタジオ、NPO法人の活動拠点などもある。ジャズ喫茶では近所に住む女性3人が、おしゃべりを楽しんでいた。
シェア金沢が目指すのは、05年に廃寺となった石川県小松市の「西圓寺(さいえんじ)」を利用したコミュニティーだ。室町期創建の廃寺に、佛子園が入居。温泉を引き、食事を出すなどして地元の住民と佛子園の子どもが集える場にした。その結果、55世帯が7年後に69世帯に。若い家族を中心に増えていったという。奥村さんは今後の展望をこう話す。
「ここも地域の人たちが気軽に集まれる、住民自治の場にしたいですね」
(本誌・山内リカ)
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