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資材費や人件費の高騰もあり、大手ゼネコン施工の新築マンションを購入することは難しくなってきそうだ(撮影:今井康一)
新築マンションを買えない時代がやってきた いまベターな選択といえるのは注文住宅だ
http://toyokeizai.net/articles/-/90022
2015年10月31日 黒崎 敏 :建築家 東洋経済
人生における大きな買い物といえば「家」だが、これからは「新築マンション」を買いたくても買えなくなるかもしれない。大手住宅メーカー商品開発者を経て、現在建築事務所APOLLOを経営する黒崎敏氏によると、横浜市の「傾きマンション」のように、施工不良案件が増えるかもしれないという。そこで、今回から3回にわたり新築マンションを買えない時代の「失敗しない家の選び方」をお届けしよう。第1回の今回は「新築マンションを買えない時代がやってきた」である。
「いつかはマンションを購入しよう」
そんな希望を抱いている方々にはたいへん申し訳ないが、新築マンションが買えなくなる時代がすぐそこまで近づいている。
2014年ころからマンションの着工数の減少が続いている。建築コストが高騰しているため、計画自体の見直しが相次ぎ、いざ建設が始まっても計画通りに進まなくなっていることが主な原因だ。建築コストがかかれば販売価格を上げるしかないのだが、高値で売り切るのは難しい。こうして着工数自体が減っている。
■ゼネコンのマンション建設は「おつきあい」
新国立競技場の建設が見直しになった際に盛んに報道されたため、資材や人件費が高騰していることは世に広く知られるようになってきたが、実はマンションに関していえば事態はさらに深刻だ。
一般建築と比べてマンション建築は粗利率が低い。景気とは関係なく、粗利率が低いのはマンションの宿命ともいえる。そのため、大手ゼネコンにとってマンションの建設は、そもそもデベロッパー(不動産会社)とのおつきあいで成り立っている。人材が不足し、資材の値上がりが続いている昨今、大手ゼネコンがマンションを積極的に建てようとするマインドが低下するのも無理はない。
職人不足による品質低下も大きな問題だ。建設に携わる人間が減少するとどうなるか。技術が十分に継承されず、品質は低下していく。職人の数が少なくなっているだけでない。建築需要が多く多忙すぎることで、職人のモチベーションが落ちているのも由々しい事態だ。
現場ではレベルの高い仕事をしようとする雰囲気が薄れ、「何が何でもここまでは仕上げよう」という職人の目標達成意欲は明らかに低下している。仕事への姿勢は受け身になり、「やれることさえやればいい」という冷めた考えが蔓延している。その結果、工期は伸びるのに品質は向上しない。人口減少で売り手市場になるということは、いわば職人が急激に「サラリーマン化」するということなのである。
このことは5年前と比べても明らかで、実際に現場に足を運ぶと如実に感じることができる。人命に関わる部分での瑕疵こそ見られないものの、それ以外の部分で品質低下は避けられない状況である。
■玄関豪華で外壁チープな物件
エントランスホールは豪華なのに、外壁はチープというようなアンバランスな新築マンションも目立つようになった。これは、計画の最中に建設コストが上がったことで、実行予算内でなんとかコスト調整した結果に他ならない。最初に派手な広告を打っている以上、エントランスや住戸の仕様について大きな変更はできない。そこで、外壁やまだ変更可能な仕様の品質を落とすことで、全体コストを調節しているわけである。
率直に言って、プロである私たちにもわからないような調整を施して完成しているマンションも少なくない。販売価格と販売時期はどうしても動かせないことから、他の部分で全体的に無理をしていることも多い。それゆえ、いざふたを開けてみると、期待以下のクオリティのマンションが多くなる。当然、こうしたマンションは劣化も早く、価値も急落しがちだ。これでは、マンション購入がギャンブルだと言わざるをえない。戸建てであれば建て替えもできるが、マンションは協同組合事業なので、自分たちの意向だけで建て替えを推進するのは難しい。
品質の低いマンションは、リノベーションを行っても結局また維持費がかかる。インフラを調査した上で修復する場合は特に手間がかかり、実際の費用は新築とほとんど変わらない場合も多い。フルリノベーションを行っても、数年経てばまたメンテナンス代が発生してしまう。
余計なものを取っ払ってスケルトンにしてしまい、思い切って土間をコンクリートにするとか、イケアや無印良品の家具を入れてミニマムに暮らすというのであれば、リノベーションにお得感を感じるだろう。しかし、ローンを組むのはリノベーションより新築の方が断然有利なので、「親から譲られた愛着ある家なので壊したくない」といった強い思い入れがない限り、更地から作る新築のほうが合理的な選択肢と言わざるをえない。
人手不足や資材高騰の問題を先に触れたが、債務超過なり倒産や民事再生に陥る会社も増えている。建設会社はそのビジネスモデル上、建物を建て続けていかなければ資金が回収できず経営が成り立たない。しかし、人手不足が著しいため、人出を確保するために先に高い人件費がかさみ、売り上げがたっても十分な利益を得にくくなっている。
人材が足りない中で建設会社がマンションを建設しようとすると何が起きるか。十分な管理ができないため瑕疵が発生し、その修理のために費用がかさみ、工事が遅延するのだ。建設会社は10年間の瑕疵保証を義務付けられているため、修理をする義務がある。さらに工期が延びれば、依頼主に遅延損害金を支払わないといけない。そのリカバリーのために、赤字覚悟の低価格で他の案件の工事を引き受けているのが現状である。
■購入するなら自己責任の意識を持つ
瑕疵の修理や遅延損害で利益が低下し、それをカバーするために安請負を行う。そしてまた品質が下がり、瑕疵が発生し、工事が遅延する。これがいわゆる建設界の負のスパイラルだ。行き着く先は債務超過。好調に業績を伸ばしてきた中小の建設会社の中には、拡大路線に舵を切ったとたんに倒産するところも少なくない。その多くは人材不足が主な原因である。
これから東京五輪や震災復興、増水整地などで公共工事はさらに増えていくだろう。そのあおりをうけて民間工事は後回しにされるが、ゼネコンは人数の限られた職人を高値で引き抜いてでも計画した物件の建設を進めざるをえない。そのため、実行予算が大幅に膨れ上がることとなるが、高値で販売できる大手ならともかく、建設コストを販売価格に反映させることができない中小の建設会社にとっては、極めてシビアな事態といえる。
このように、現状の新築マンションは無理に無理を重ねているため、品質に問題がある可能性が少なくない。もはや誰もコントロールできない領域にある。その意味では、戸建ての注文住宅の方が品質は確保されるのではないだろうか。個人の仕事である戸建ては、品質がコントロールしやすく、細かい調整も可能だ。コストがかさみそうなら、仕様を変更したり、サイズダウンするといった具合に、クオリティを担保するためのフレキシブルな判断ができるからだ。
ただし、戸建ては戸建てでも、建売住宅はマンションと同じ問題をはらんでいるといえよう。下手をすると品質はマンション以下になるケースも少なくない。マンションであればある一定レベルのグレードが備わっているが、建売にはそれがない。現在の状況下におけるベターな選択は第一に注文住宅。新築マンションや建売住宅は自己責任の上で購入するしかないと考えた方がよいだろう。
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