1. 2015年10月30日 20:53:02
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日銀、2%物価目標の達成時期先延ばし 追加緩和を見送り[東京 30日 ロイター] - 日銀は30日の金融政策決定会合で2%の物価目標達成時期を先送りしたが、原油安の影響を除けば物価は上昇しているとして追加緩和を見送った。円安・株高基調が続くなか、政府や産業界に追加緩和を切望する声は皆無だが、見通しが下振れれば追加緩和を辞さないと繰り返してきた日銀としては言行不一致の状態だ。 今後は、1)2%を目指し続け、歓迎されない追加緩和にも踏み切るのか、2)緩やかな物価上昇が確認されるかぎり現状維持を継続するのか──政策の枠組みをめぐり議論が広がりそうだ。 <16年度物価見通し、1.4%に大幅引き下げ> 30日の会合では、半年に一度の「展望リポート」で2017年度までの経済・物価見通しを公表。消費者物価指数で生鮮除くコアCPIについて15年度は従来7月の0.7%から0.1%、16年度は1.9%から1.4%、にそれぞれ大幅に下方修正された。 ただし、主な理由は原油安。従来は足元バレル60ドルから70ドルに上昇するとしていた想定を、50ドルから60ドル台前半に引き下げた。原油などエネルギー安の影響を除くと、16年度見通しは1.6%と従来の1.7─1.8%からの小幅修正にとどまっている。 18年度見通しは1.8%(消費税率引き上げの影響を除く)で据え置いた。 これに伴い2%の達成時期を従来の「16年度前半」から「16年度後半」に半年延期した。 <17年度物価見通し、9人中5人が下振れ意識> 展望リポートは、9人の政策委員の見通しを中央値を示したものだが、今回は各委員の見通しの分布の記述方式を変更。無記名ながら一人一人の提示した数値について、本人が「上振れ」「下振れ」リスクを意識しているかの有無まで表象するチャートを公表した。 17年度見通しについては5人の委員が下振れを意識していることが明らかになった。 木内登英委員と佐藤健裕委員が、17年度末までの2%達成は無理として、2%達成を前提とした記述に反対して否決された。 民間エコノミストの予測中央値では16年度のコアCPIは1.0%(日本経済研究センター・ESPフォーキャスト)にとどまっており、市場では今会合で日銀の見通し下方修正と目標達成時期の先送りは必至なうえ、中国など新興国の減速による国内景気の下振れリスクから、追加緩和に踏み切るとの予想が相応に高まっていた。 <物価だけ上げればよいわけでない、と黒田総裁> 追加緩和を見送った理由について黒田総裁は会見で、「物価の基調は順調に上昇しているため」と強調。日銀が物価の基調を示すとしている生鮮・エネルギーを除いた新型コアコアCPIが9月は1.2%まで上昇した点を指摘。また「物価だけ上がればよいわけでない」とし、物価と賃金など経済全体がバランスよく上昇する重要性を強調した。 日銀は年間80兆円(残高ベース)と巨額の国債を買い入れており、国債発行額の3割をもすでに保有しているため、インパクトある追加緩和手段が乏しいことから追加緩和に踏み切れないとの見方も市場の一部に根強い。総裁はしかし、「今の時点で国債買い入れに限界がくることはない」「手段に限界あるとは全く思っていない」と反論。「英中銀は国債発行額の7割をも買ったことがある」と例示し、その一方で「(日銀が国債発行額の)7割まで買うと言っているわけでない」と火消しに走った。 <追加緩和見送りも円安・株高、政府高官「為替ちょうどいい」> 一部海外の投資家の間では今会合での追加緩和が織り込まれており、見送れば円高・株安を招くとの懸念もあったが、実際には政策公表の直後に小幅な円高・株安となった後は、補正予算をめぐる報道などに支えられ、大幅な円安・株高に転じた。 市場では、今後も「追加緩和期待は根強く残る」(SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏)との見方が多い。 もっとも政府や産業界の間では、ドル/円で120円前後の現行為替水準について「ちょうどいい」(政府高官)との見方が多く、急激な円高や株安がない限り、黒田日銀に追加緩和を待望する声は出て来なさそうだ。政府内では、エネルギー以外の日用品の価格上昇が消費に水を差すとの懸念も広がっており、黒田日銀を頼む声は昨年までとは様変わりしている。日銀の今後の政策運営に注目が集まる。 (竹本能文) http://jp.reuters.com/article/2015/10/30/boj-wrapup-idJPKCN0SO17J20151030
追加緩和せずとも中銀の信認崩れない=黒田日銀総裁 [東京 30日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は30日の金融政策決定会合後の記者会見で、2%の物価目標達成時期を先延ばししたものの、追加緩和に踏み切らなかった理由として、原油安が主な理由で物価の基調は上昇しているためと説明。追加緩和せずとも「中央銀行としての信認は崩れない」と反論した。 また「物価だけ上がればよいわけでない」と指摘、物価と賃金、経済全体がバランスよく上昇する状態を目指す姿勢を強調した。 同日の会合で日銀は半年ごとに公表する「展望リポート」で2017年度までの経済・物価見通しをまとめ、従来2016年度前半としてきた物価目標達成時期を16年度後半に先送りした。黒田総裁は現在の大規模な金融緩和(量的・質的緩和、QQE)を打ち上げた2013年4月以来、見通しが下振れれば「ちゅうちょなく政策を調整する」と追加緩和に含みを持たせてきたため、市場では1)今回は追加緩和に踏み切る可能性があり、2)踏み切らなければ言行不一致になる─とみられていた。 総裁は、目標達成時期が後ずれる理由について、「15年度の成長率下振れなどの影響もあるが、主として原油価格が理由」と説明し、物価の基調は上昇している姿を維持していることを強調。同日朝公表された9月の消費者物価指数は、日銀が本来政策運営の目安とする生鮮除くコアCPIは前年比0.1%のマイナスになったものの、生鮮とエネルギーを除く新型コアコアCPIは「1.2%上昇した」として、物価の基調が上昇している点を強調した。 <「2年」との想定、無理だったと思わない> そもそも2年で2%を実現するとの当初のもくろみに無理があったのでは、との質問に対しては「2年程度を念頭にできるだけ早期の達成を目指すと想定するのが無理だったとは思わない」と反論した。 一方、「物価見通しは原油価格動向で左右される」と繰り返し、今後も原油次第で達成時期が後ずれする可能性を示唆した。日銀は今会合で原油が17年度末にはバレル60ドル台前半(ドバイ産)に上昇すると仮定しており、現行の40ドル台から大きく上がることがなければ、自動的に達成時期はさらに後ずれする。 <手段に限界なし、英中銀は国債発行額の7割保有> 日銀はQQEの名の下で、年間80兆円(残高ベース)と巨額の国債を買い入れており、国債発行額の3割をもすでに保有しているため、インパクトある追加緩和手段が乏しいため追加緩和に踏み切れないとの見方も市場の一部に根強い。総裁はしかし、「今の時点で国債買い入れに限界がくることはない」「手段に限界あるとは全く思っていない」と反論。「英中銀は国債発行額の7割をも買ったことがある」と例示し、その一方で「(日銀が国債発行額の)7割まで買うと言っているわけでない」と火消しに走った。 日用品の価格を集計した東大日次物価指数は足元1.7%程度まで上昇している点について「エネルギーを含めた消費者物価はほぼゼロ。日用品が上がっているから全体としてゼロでいいというわけでない」とし、引き続き消費者物価指数の上昇を目指す公式見解を繰り返した。 <今回追加緩和提案なし> 一部の報道で今回の会合で追加緩和提案が議論されるとの観測があったが、総裁は「具体的な提案はなかった」と明言した。 総裁はこれまで米利上げについて、実施できるなら米経済が堅調な証拠で、世界・日本経済にプラスとの見解を繰り返してきたが、ロイターが米利上げ延期の意義を質問すると「米国は今後ももっとも適切な金融政策運営を続ける」とのみ回答した。 *内容を追加します。 (竹本能文、伊藤純夫) http://jp.reuters.com/article/2015/10/30/kuroda-press-meeting-idJPKCN0SO0X020151030 |