4. 2015年10月28日 09:01:49
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中小企業の人事担当は必須知識の就活生に好かれるテクニックとは? 社長・人事・総務のための新しい採用活動の本 【第3回】 2015年10月28日 牧 伸英 [特定社会保険労務士・採用面接士]
数ある企業の中から自社に興味をもってもらうための努力や工夫が必要です。ただ単に求人票で告知するだけでは就活生の心はつかめません。最終回では、募集の段階でおさえておきたい自社PRの効果的な方法を、就活生の目線から考えていきます。知名度の低い会社でも独自の採活メソッドで成功に導いてきた「採用のプロ」が教える、中小企業のための最強の人材採用マニュアル『低予算でも欲しい人材だけが来てくれる! 社長・人事・総務のための新しい採用活動の本』から抜粋し、再構成してご紹介します。(構成・文 佐藤祥子) 就活生のことは内定者に聞けばよくわかる! 採用活動は、応募者と企業の求める人材像がうまくマッチングしてこそ成功します。より成功率を高くするために、就活生の視点に立って採用戦略を考えていきます。 就活生のことは内定者に聞くのが一番です。そこで、直近の内定者や、入社したばかりの社員にアンケートを取り、本音を聞いてみましょう。 牧伸英(まき・のぶひで) 一般社団法人採用面接士協会理事、特定社会保険労務士、e−人事株式会社代表取締役、ぜぜ社労士事務所代表、一般社団法人日本歯科労務コンサルタント協会代表理事、滋賀県社会保険労務士会理事、同会湖西支部支部長、日本FP協会滋賀支部副支部長(2015.9現在)。大学を卒業後、営業職、経営コンサルタント、人事コンサルティング会社を経て独立開業。現在は、採用面接士®として、採用選考プロセスの設計、適性検査の導入、オリジナル採用基準の構築支援、面接官の育成、採用面接への同席&採否の助言、内定者フォローまで展開しており、支援先企業は約400社。高校生・大学生への就活支援も手掛けており、支援実績は延べ3000人以上。 ホームページ http://www.e-jinjibu.jp メールマガジン https://55auto.biz/e-jinji/touroku/entryform6.htm アンケートでは、次のような質問をすると改善すべき点が見えてきます。
・当社を何で知りましたか? ・応募前に一番悩んだことは? ・一次、二次の面接官の印象は? ・内定を承諾した理由は? ・他社を断ってまで当社へ入社した理由は? ・当社応募時の、他社の応募状況について ・応募前に教えてほしかったこと ・就職活動中に不安だったこと ・内定後の不安点 など たとえば、応募前に一番悩んだことが「転勤の多さ」であったなら、転勤先の職場環境や転勤者のコメント、さまざまなサポート体制など、転勤に関する情報量を増やして不安を軽減することができるでしょう。 また、他社に比べて「キャリアアップ」についての情報が少ないようなら、モデルとなる社員の活躍ぶりを大きく紹介すればイメージがわきやすくなります。アンケートの回答に、面接のときに「目つきが怖かった」といった印象に関する記述を見つけたら、面接官は自分の表情に気をつけて接するようにして、相手に威圧感や不安を与えない工夫を心がければいいのです。 このように、応募者目線から採用側が気づかない改善ポイントを探り、採用活動をどんどんブラッシュアップしていきましょう! 企業説明会には社長自ら登壇して会社情報を発信 採用活動において、企業説明会は就活生と最初に出会う場です。何事も最初が肝心ですから、応募者に良い印象を与えられるようしっかり演出してください。 企業説明会を成功させるために、絶対に必要なことが1つあります。それは、社長の登場です。社長がわざわざ出席する必要はないと思うかもしれませんが、応募者の視点で考えてみてください。興味のある会社の社長から直に話が聞けるのと聞けないのとではインパクトが違います。経営者としての信念や、まだ形になっていない将来の事業計画を確信を持って語れるのは社長だけです。 特に中小企業の社長は自ら姿を見せてスピーチしたほうが、アピール効果が高くなります。なぜなら、中小企業の魅力は社長の魅力そのものだからです。そして良い人材は会社の成長力になります。 採用にかける時間は、将来への投資です。直接質問できる時間も用意すれば、応募者の疑問を解消できるので、満足度がさらに高まるでしょう。 注意したいのが、会社を紹介する際に、単に履歴書型の歴史年表を披露することです。まったく聞いている人の心には響きません。では、どうすれば就活生の心をつかめるのでしょうか。 人はストーリーに魅了されます。「うちの会社には、そんなドラマティックな話はない」というかもしれません。はたしてそうでしょうか? どの会社にも独自のストーリーがあります。応募者が知りたいのは、どういう会社で、どのような仕事をしてきて、そしてこれから進みたいと考えている方向についてです。それらを誠実に伝えていけばいいのです。 合同企業説明会は自社をアピールできる絶好の機会 採用活動は自社を売り込むという意味では営業のようなもの。知名度の低い中小企業や、個人の消費者には縁のない法人、企業間取引が主たるビジネスになっている企業にとっては、若い人の目に触れる企業PRの機会でもあります。最終的に、就活生を採用できなかったとしても将来の優良顧客になる可能性も十分あり、長い目で見ても費用対効果が高いといえます。 合同企業説明会の参加には、もう1つのメリットがあります。それは他社の動きがわかることです。たとえば、会場でのブースの作り方や、モニターを使ったプレゼンテーションなど、同業他社がどんな方法で応募者を集めているのか実際に見ることができます。出展企業同士で情報交換をしたり、他社のパンフレットを入手して参考にしてもいいでしょう。いろいろなアイデアが出てくるはずです。 弊社の支援先からも「うちと同じような会社はどんな採用活動をしているのか」とよく聞かれるのですが、採用のノウハウを学ぶという面でも現場から得られる収穫は大きいです。 ただし、実際の説明会の時期に関して注意点があります。それは、その合同企業説明会の開催が秋以降の場合、積極的な学生はすでに内定が決まって参加しなくなり、春や夏に開催した頃に比べて内向的な学生が多く見られる点です。 業界によって就活のスケジュールは若干違いますが、欲しい人材との出会いを真剣に求めるのであれば、就職活動のピーク前から、そういった説明会などに参加したほうがいいでしょう。 二次面接からは“もっとも優秀な人材”を面接官に据える 採用面接は会社にとっても応募者にとっても一番の勝負どころ。応募者は自分をよく見せることに全力を注いできますし、面接官は相手が用意してきた答え以上の情報(=本音)を引き出そうと努力します。 中小企業の採用面接では、手が空いている人が面接官になっている場合も結構あるのですが、それは絶対にやめてください。冒頭でも述べたように、欲しい人材を獲得するには、面接官としてのテクニックが必要だからです。 みなさんは、どういう人が面接官に適していると思いますか? 会話が得意な人でしょうか。洞察力のある人でしょうか。いろいろ考えられると思いますが、一番選びやすくて間違いないのは、社内でもっとも優秀な人を面接官にすることです。 というのは、まず面接官は企業の広告塔でもあるからです。面接官が優秀なら就活生の間でいい評判が得られますが、逆にダメな印象を受ければ悪評につながることもあります。 そして、面接官に求められるのは、話上手ではありません。聞き上手で褒め上手、会話をリードできることです。話しがうまい人を面接官にする会社もありますが、聞き上手な人のほうが応募者も本音を話しやすいので成功します。 そういった意味では、トップ営業マンも面接官として適任です。コミュニケーション力が高いので、聞き手となって応募者の本音を引き出しながらも、巧みなセールストークで自社の魅力をアピールできます。 人当たりがよく、人に好かれるスキルを持っていますから、応募者もガードを下げて自然に話せるはずです。私の経験からも、トップ営業マンを面接官に据えると選考辞退率が低いケースが多く、理由の真相もこういったことに関係しています。 「評価シート」を作って面接の精度をUP 面接時に用意しておきたい「評価シート」について説明します。評価シートは必ず用意してください。手間はかかりますが、メリットが多く、この記録を残しておくことで、長い目でみれば会社の方針、成長を「見える化」できるからです。 <(1)同じ失敗を繰り返さない> 面接では良い人材に見えても、「すぐに辞めてしまった」「面接のときと印象が違う」といったことが、採用の現場でよく起こります。きちんと面接の記録を残し、合格理由を明確にすることで、同じような失敗を防ぐことができます。 <(2)面接の結果に責任を持つ> 誰が面接して、どの応募者に、なぜ合格を出したのか、その記録をデータとして積み重ねていきます。面接官の選任や教育にも役立ちます。 <(3)誰がやっても同じ面接ができる> 聞く内容などを事前に頭に入れておいても、いざ面接となると忘れてしまいがち。応募者のどこを見ればいいのか、判断基準を常に確認しながら面接できます。 <(4)次の面接に役立てる> 面接は少なくとも2回、できれば3回行えると失敗が少なくなります。前回の面接で確認できなかった質問や気になった点を記録に残しておき、次回の面接をより有意義に行います。 評価シートは面接後に記入するものですから、自社の採用基準に基づいて、評価方法や評価項目、評価ポイント、合格点などを決めておきましょう。本書では面接評価シートの見本を掲載しています。 面接に向けてしっかり準備し、応募者を迎える 採用面接では、しっかりと準備しておくことが大切です。ただ面接すればいいという考え方では、いい結果は期待できませんし、就活生の印象も最悪です。 一番いけないのが、 「〇日の午後、時間空いてる? 面接に同席してくれないか」 「気になったことを聞いてくれればいいから」 「質問は特に決まってないから。やる気があるかどうかとか、適当に頼むよ」 というように、突然の面接官の依頼、そして採用したい人物像が漠然としているようなケース。依頼された社員も迷惑ですし、面接される側にとっても準備が整っていない面接では会社の印象が悪くなってしまいます。 採用とは会社の成長のために必要な「投資」です。採用に失敗するということは、何億円ものプロジェクトが失敗するのと同じなのです。それを肝に銘じて、面接をすることが決まったら、まずは次の1〜5の項目に沿って確認していきましょう。 1 面接官の決定 2 日程の決定と場所の確保 3 書類(応募者のリストとともに履歴書、職務経歴書、面接シートなどを準備) 4 会場設営 5 社内への告知 面接官を担当する人については、基本的に一次面接=現場の若手・中堅社員、二次面接=現場の責任者クラス、課長、部長、最終面接=役員、社長で調整します。面接が2回で終了する場合は、2回とも社長が面接してもOK。面接官には、自社についての理解があり、会社と仕事の魅力を伝えられる人材を選定します。 また、面接の精度を上げるためには、面接官が少なくとも2人は必要です。一人が質問をし、もう一人が聞き役と記録役を担当します。複数で対応することによって聞いてはいけない質問をしてしまったときに、もう一人がそれを止めてフォローすることもできます。お互いに話を振りながら、役目を交代しながらバランスよく質問してもいいでしょう。3対1になると圧迫感を与えますので、面接官の人数=応募者+1人が目安です。 面接のときの座り方ですが、2対1の場合は、1人が面と向かい合うより、応募者を頂点に三角形を描いて座ると、応募者のガードが下がり、緊張感のない状態で情報を聞き出せます。 面接会場については、面接官と応募者の距離が2メートル程度取れる部屋を用意します。集団面接の場合は、応募者の椅子の間隔は20センチ程度がベスト。応募者が荷物を置く棚やテーブルも設置しましょう。応募者の人数に応じて控室を準備し、ペットボトルなどのお茶を出す配慮も忘れずに。 面接を実施する日時と場所が決定したら社内告知します。面接当日に会場を探す応募者を案内したり、挨拶をされても反応しやすくなります。応募者数が多い場合は、張り紙で会場への案内をしておくとわかりやすいです。緊張して来場する応募者にとって、当日の不安が少しでもほぐれるような環境を提供するように心がけましょう。 http://diamond.jp/articles/-/80650 経団連「6月選考解禁」の愚 無意味な就活ルールは廃止せよ 山崎元のマルチスコープ 【第399回】 2015年10月28日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
8月選考は不評だった 学生も企業も疑心暗鬼で疲弊
朝令暮改の「指針」に、学生も企業も振り回される 経団連が、昨年改訂した大学新卒者の採用活動のルールを今年、早くも変更し、選考活動解禁を6月とする意向だという。
昨年の改訂は、それまでの「大学3年の12月時に会社説明会の解禁、4年生4月に面接などの選考活動解禁」という旧選考スケジュールが、大学での学業に支障を来すことを理由として、「3年の3月(4年になる直前)に説明会解禁、8月に選考活動解禁」の現スケジュールへと大幅に後ろ倒ししたものだった。 いずれの場合も、正式な採用内定を出すのは10月からということになっているが、選考活動の解禁と共に、学生には限りなく内定に近い「内々定」が出始めることが多いので、選考活動の解禁時点が就職活動の一つのピークになる。 しかし、3月から企業と学生の接触が始まり、8月からやっと正式な選考活動が解禁されるというスケジュールは、実質的な就職活動期間の長期化をもたらした。学生も企業の採用担当者もくたびれるのと同時に、学生側では「会社の採用活動は“実質的に”どこまで進んでいるのだろうか」、採用側では「内々定を出した学生は、本当に確保できているのか」という疑心暗鬼が共に生じ、精神的に疲弊した。 企業側はともかく、社会経験が乏しく、立場が弱い学生の側は特に気の毒だった。学生の立場からすると、自分が受けている会社、他の会社が、どれくらい採用を決めたのかが分からない期間が長い。また、就職活動のピークが真夏にかかることもあって、長くてくたびれる就職活動だった。数年前のような「就職氷河期」よりも本質的にはマシだが、真夏にスーツで右往左往する「熱帯就活」の不快指数は高かったようだ。 学業への支障を小さくするための ルール改定だったはずだが… 学生の立場からすると、第一志望ではない会社の内々定を確保しながら、もっと条件の良い会社の内定を取ることができるならそちらに行こう、という行動が合理的になる場合が多いし、実際にそのような戦略を組む学生が少なくなかった(入試に例えれば、滑り止め校の受験日・発表日が第一志望校の前にあり、入試の季節が何ヵ月もあると考えると分かりやすい)。 企業は内々定者を確保するために、「今後の就職活動を止めるなら、内々定を出してやる」といった圧力をかけるケースもあって、内々定を出す側・もらう側が過剰な精神的駆け引きに巻き込まれた。 学業に対する支障を小さくすることを目指したルール改定だったはずだが、ある私立大学で筆者が担当している授業では、4月から始まる春学期全体を通して、説明会や面接を理由とする欠席が多数あった。 ついでに言うと、正式な内定の解禁日である10月1日は、多くの会社が「内定式」を行ったため、4年生の多くが欠席した。相手は学生で、その日は授業のある平日なのだから、内定式はせめて夜間に行うのが見識というものだろう。 もともと、企業側が学業を本当に大切にするなら、採用に関わる諸々の活動は、休日・休暇期間ないし、授業時間と重ならない夜間に行うのが常識だろう。しかし、企業側は大学に対して、入試による学生の選別を参考にするものの、教育内容にはほとんど期待していないことが見事に分かる。正直でかつ失礼な採用活動である。 なお、旧スケジュールにあって、採用活動を後ろ倒しすることが、どんな意味で学業の邪魔を減らすと考えたのか、大学側の意図はよく分からない。 就職内定が早く決まってしまうと、学生の勉強に対するモチベーションが低下する傾向があるのは事実だが、学生が来なくなるのは、大学に魅力がないからであって、就活スケジュールに文句を言うのはお門違いだ。 「6月選考開始」への変更でも “採用カルテル”は変わらない さて、経団連企業において、選考活動解禁を6月に変更する、目下検討中の新スケジュールがルール化されることで、何が起こるだろうか。 まず、大学では、春学期の授業に対する4年生の出席が、これまでよりも顕著に減ることが予想できる。 会社説明会が3月に解禁されるので、春休みに会社との接触が始まるからこの期間は学業の邪魔にならないが、春学期の最初の2ヵ月程度は、4年生のスケジュールも頭の中も就職活動で一杯になるはずで授業どころではないだろうし、会社側は自分たちの時間の都合で学生と接触するだろうから、「学業への支障」は大いにあるはずだ。現スケジュールよりも、「学業への支障」は大きいだろう。 一方、学生にとっては、実質的な内々定を取る時期が前倒しされ、「疑心暗鬼の期間」が短縮化するから、精神的にはいくらか健康的だ。 採用側の事情はどうか。世間体を気にする大手の企業が、就職活動期間の後半に横並び的に一斉に内々定を出して、大手企業同士の競争は抑制しつつ、「滑り止め企業」に内々定している学生を含めて後から優秀な学生を取り込むことができる──そうした経団連による「採用カルテル」の効果は基本的に変わらない。 以前からそうだが、経団連による「申し合わせ」や「指針」といった名称で呼ばれる採用活動の自主規制ルールは、学生からの人気が高い大手企業がお互いを牽制して採用を安定的に進めるための、「談合」ないし「カルテル」であった。同時に、立場の弱い企業が(例えば大銀行よりも人気のない、証券会社が)ルールを破って選考活動解禁前に内々定を出して学生を確保しようとするような「フライング行為」は大目に見られてきた。 経団連の採用活動の指針は、メンバーの中でのカルテル破りに罰則がない一方で、その分カルテル自体に対しても世間の批判が緩い、不思議なカルテルであり続けている。 今回の、6月への前倒しでは、会社説明会による学生との接触開始から、事実上の内定(形は内々定)が可能な選考活動解禁までの期間が短縮される。多くの経団連企業の採用担当者にとっては、大規模なフライングの心配が減る分、昨年よりも安心なのではないだろうか。 しかし、採用活動とはいえ、競争制限的な行為をしているのだから、日本の採用市場における、人材資源配分の効率性は大いに損なわれている。より自由な採用を行うようにした方が、学生は、より効率的に就職活動を行えるだろうし、評価の高い学生は、より良い条件を得ることができよう。 自由な採用ルールでの「青田買い」の勧め 企業にも学生にもデメリットは少ない 参加企業が全て同じルールに従う場合、人気のある企業(主に有名な大企業)は、就職活動の時期がより短期間に集中してより後になる方が、評価の高い学生を確保する「採用ゲーム」において有利な立場に立つことができる。 一方、それほど有利な立場ではない中小企業や、特に有能な学生を何としても(ルールを破ってでも)採用したいと考える「意識の高い企業」(正しい行為なので、敢えてそう呼ぶ)は、選考活動解禁の前に接触して、欲しい学生を確保しようとする。 これを推し進めると、3年生時点、あるいは2年生時点でも、学生に個別に条件を決めて内定を出す、いわゆる「青田買い」が競争的に行われることになる。 経団連のルールに縛られない採用活動を行うことで有名な、意識の高い企業の経営者に青田買いのデメリットを聞くと、「敢えて言えば、評価の精度が下がることだ」と教えてくれた。学生の素質の高低は、2、3年生の頃でも相当程度分かるが、遅くに選考する方が、評価の当たり外れが小さくなるという。自由に採用活動を行えるとしても、企業の側でも、「候補者を早く確保する」か、「ゆっくり評価してから決める」かの綱引きが働くので、青田買いが際限なく早まる訳ではない。 また、自由な採用ルールの下だと、立場の弱い企業は、より早く学生を評価して採用を決めるリスクを負う必要があろう。さらに、より自由競争的になると、評価の高い学生に対しては、個別に好条件を出す必要が出てくる。 一方、学生の側では、早く就職が決まると、勉強したい場合は、安心してより学業に集中できるだろう。就職を早く決められることについて、学生の側に大きなデメリットはない。 また、はっきり言って、就職先を選ぶ判断力や世間知は、大学の1年生でも、4年生でも大差ない。大学教育は、職業選択の能力を改善する役に立つものではないからだ。就職に関しては、どちらも同じくらい世間知らずであり、働いてみてから身の振り方を考えるしかない。 さらに、個別の契約方法は工夫する必要があろうが、企業が採用内定後の学生の学費や生活費を負担し、学生は将来一定期間以上その企業に勤める(期間未達の場合は違約金を払う)といった形が可能になれば、経済的に豊かではない家庭の子弟であっても、企業から高い評価を得られる者は大学で勉強することが可能になる。 大学は「飛び級卒業」を可能にせよ 本人にも企業にも社会にもプラスだ もう一歩踏み込むなら、大学は、3年、場合によっては2年での単位取得卒業の道を用意するべきではないか。例えば、早く就職が決まって、3年間で単位を取り終えて正式に卒業し、1年早く働くことができるなら、本人にとっても、企業にとっても、社会にとっても、いいことだろう。 もちろん、短期間で修士課程・博士課程に進み、研究なりビジネスなりに早くから高度な学問的知識を活用する人材がいてもいい。 かつて、外交官試験の合格者は、大学3年で中退して外務省に就職することが可能で、「外交官中退」は優秀な学生にとって誇らしい道の一つだったが、民間企業にも同様な道があって良かろうし、何よりも、素質にも努力の量にも個人差があるのだから、4年より短い期間での大学卒業(学士資格取得)のコースがあって然るべきだ。 早く卒業できるなら、就職後の試行錯誤の期間をより長く取ることができるし、起業にチャレンジする時間的な余裕もより大きくなる。 個人差があるので一概には言えないが、学生の学力の高い大学でも、そうでない大学でも、「4年間」が長すぎて無駄になっている大学生が多いように思う。趣味的な部活・サークル活動、長い夏・春の休暇、ましてアルバイトに長い時間をかけるのは、学業にとって非効率的だ。これは、自分の費用と責任において、大学生以外の身分でも十分できることばかりだ。 在学期間が短くなることが商売に差し障ると大学が考えるなら、「飛び級卒業」する学生から「卒業能力判定料」とでも名付けて、1年分程度の授業料を取ればいい。大学のやり方としていかにもがめついし、学生側は料金支払いに納得できないかもしれないが、1年を有効に使えるのだから、料金を支払った上での飛び級卒業には十分な経済合理性がある。 もちろん、大学としても、国としても、追加的な教育を受けることを求める社会人に対する、再教育の機会を豊富に提供するといい。 成長戦略としての若年者の労働力参加を 就活ルールを廃止に追い込め 国は、成長戦略として、女性や高齢者の労働力参加に期待しているが、大学生年代の若者をより早くビジネスなり学問なりの世界に取り込む、若年者の労働力参加を促進することも同様に検討すべきではないか。 ビジネスに適性のある若者に、より早くから働いてもらうことは、経済にとって良い刺激にもなるだろう。起業を促進する上でも有効ではないか。大学に多数の若者を長い期間抱え込む方法を考えるよりも、大学教育を短期化・効率化して、若い労働力が社会で活躍する時間を伸ばすことを考える方が効果的ではないか。大学の4年間がヒマに思える学業優秀な学生にとっても、そもそも大学の学業に適性のない学生にとっても、加えて社会にとって、より効率的だ。 就活ルールを検討していて、思わず脇道にそれてしまったが、元に戻って、就活に曖昧で余計なルールがあり、しかも、それが朝令暮改される現状は、無意味なルールに振り回される点でも学生が気の毒だ。ルール変更自体がもたらす不確実性のマイナス効果も無視できない。長期的な問題解決のためには、この採用におけるカルテル行為である経団連の就活ルールを廃止に追い込むことが適切だ。 当面、多くの外資系企業をはじめとして、経団連の採用談合に縛られない意識の高い企業には、経団連の指針を無視した、自由で積極的な採用活動を求めたい。当然の企業努力として採用に注力することが、やがては、経団連の無意味なルールを骨抜きにして、廃止に追い込み、社会と学生のためにもなるだろう。できることなら、堂々と名乗りをあげて自由で積極的な採用活動に励んでもらいたい。 大学側にも多々問題があり、可哀想な面もあるが、学生には、現在の企業や大学のペースに惑わされずに「時間を有効に使え」と申し上げておきたい。 http://diamond.jp/articles/-/80685
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