3. 2015年10月27日 22:04:11
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日銀、海外の景気減速に警戒強める=関係者 By TAKASHI NAKAMICHI 2015 年 10 月 27 日 12:40 JST 【東京】日本銀行は世界の景気減速が物価目標の達成に及ぼすリスクをこれまで以上に注視し始めており、追加緩和策の可能性も排除していない。内部の議論に詳しい関係者が明らかにした。 関係者によると、日銀は企業利益の改善や他の力強い兆候を理由に、日本経済の現状をかなり楽観しているが、執行部の一部は、中国や新興国経済減速の影響が一段と強まる可能性に懸念を強めている。 関係者の一人は、「新興国の問題が長引いたり深まったりすると、(国内の)企業コンフィデンスに影響を与え、企業が(設備投資や賃上げの面で)さらに及び腰になることもあるかもしれない」とした上で、「今のリスクが昨年よりも小さいというつもりはない」と語った。 中国をはじめとする新興国からの逆風を受け、日本経済は前年と同様のリセッション(景気後退)に陥りかけている。日銀の一部当局は、海外の成長減速や最近のコア消費者物価指数(CPI)の低下を理由に、国内企業が基本給の引き上げを渋る可能性について懸念していると関係者は言う。 黒田東彦総裁は9月下旬、デフレを克服し、2%の物価安定目標を達成するためには、賃金の伸びの加速が欠かせないとの認識を示した。 2人目の関係者は「リスクのほうを重視するのであれば、(政策は)本当にこのままでいいのかという議論になる」と述べた。関係者によると、今月30日の金融政策決定会合で追加策の実施が決まっているわけではないが、日銀は政策変更の可能性について「オープン」な姿勢を維持している。 これらの発言は、日銀がこれまで発してきた一連の楽観的なメッセージとは対照的で、世界経済の不安定性が各国中銀の自信をぐらつかせている兆候と言える。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月、金融政策の引き締めを見送った。一方、欧州中央銀行(ECB)は先週、追加緩和の用意があることを示唆した。中国人民銀行(中央銀行)は23日、追加利下げを発表した。 関係者らは、こうした動きが日銀当局に対し、欧米の金融政策当局は世界の景気減速をより真剣に受け止め始めているという印象を与えたと述べた。3人目の関係者は、世界経済の先行きが「よくわからなくなってきた」ため、日本の輸出や生産、雇用、ひいては物価動向の予測が一層難しくなっていると語った。 日銀は昨年10月31日の金融政策決定会合で、資産買い入れのペースをそれまでの年間約60〜70兆円から約80兆円に拡大するという積極的な金融緩和に踏み切った。今週30日の同会合ではこのペースがさらに拡大されると多数のエコノミストが予想している。 2人目の関係者は、そうした観測について「ゆえんなきことではない」と語った。リスクを挙げればきりがないことから、日銀当局でさえも「メインシナリオの蓋然(がいぜん)性に100%自信をもっているかというと、そうでもない」と言う。 関係者らは一例として、日銀版のコアインフレ指標(生鮮食品とエネルギーを除くCPI上昇率)が追加の金融緩和なしでも着実に2%の目標に向かうのかどうか、当局者の多くは確信を持っていないと指摘した。 日銀が前回緩和策を発表した際、黒田総裁は国民のインフレ期待の低下に先んじて先制行動を取る狙いがあると説明した。今年は複数の物価見通しの指標がすでに低下し始めているため、当局は海外発の影響がさらに生じるリスクに一段と敏感になっているようだ。 2人目の関係者は、9月の日銀企業短期経済観測調査(短観)で企業の物価見通しが一段と低下したことを含め、不安を感じる物価見通しの指標は多数あると述べた。また、コアCPIの低下が見通しに二次的悪影響を与える可能性も懸念されると言う。日銀は一般的に、国内のインフレ期待は不安定で、過去の指標に影響されると考えている。 関係者らは、追加緩和が行われた場合、企業景況感のてこ入れを通じてインフレは上向き、金利は一段と低下して、物価見通しは押し上げられる可能性があると述べた。 1人目の関係者は、限界的な効果が差し引きでマイナスとなる可能性は低いと指摘した。 黒田総裁が追加緩和を提案した場合、議論は白熱する可能性が高い。関係者らによると、9人で構成される日銀政策委員会では、追加緩和が急激な円安を招いた場合、生活費の急騰を通じて消費者に打撃が及ぶとの見方から、複数の委員が漸進的な政策行動を支持している。 だが一部の当局者は、日銀が緩和を見送れば、国民のインフレ期待はさらに損なわれる恐れがあると懸念している。 煮え切らないFRB、明確な金利見通しに苦慮
イエレン議長にはFRB内のさまざまな見解をまとめる責任がある PHOTO: JONATHAN ERNST/REUTERS By JON HILSENRATH 2015 年 10 月 27 日 16:07 JST 米連邦準備制度理事会(FRB)は28日、短期金利をゼロ近くにとどめると発表すると広く予想されており、その次の12月15日・16日の連邦公開市場委員会(FOMC)が、年内に利上げする最後の機会になる。 この日程の中で、FRBのイエレン議長は二つの課題に取り組まねばならない。一つは、米経済が利上げに備えているかどうかの判断だ。もう一つは、市場をこれ以上混乱させずにFRBの意図を示すことだ。 前回9月のFOMCでは、以前から予想されていた利上げが不安定な経済情勢のために先送りされた。この政策判断の前後にFRB関係者がまちまちなシグナルを発したため、多くの投資家が非難の声をあげたが、そうした動きの一因はイエレン議長にもあった。 FRBが年内に動くかどうかに関心が集まる中、FRBは金利と米経済に対する予想をもっとうまく誘導する必要が増している。FRBの言葉は、ドル相場や資金調達コスト、株価を激しく上下させ、いずれは米国中の財布に影響を及ぼす可能性がある。 ウォール・ストリート・ジャーナルが今月行ったエコノミスト調査では、64%がFRBは12月に利上げすると考えている。だが、先物市場が織り込む利上げ確率は35%だ。 混乱の一因は、FRBの失敗ではなく、経済の足並みがそろわないことにある。失業率が急低下する中、イエレン議長をはじめとする多くのFRB関係者は今年の初めに、米経済は利上げできるくらい十分に強いと考えた。 FRBは投資家を驚かせないように、警告を発した。FOMC委員のうち2人が、早ければ3月、遅くとも6月に政策金利の引き上げる予想を示した。ところがインフレ率は思ったように上向かず、中国経済の減速が不透明感をあおった。 今年の利上げ見通しは確約を意味するものではなかったが、投資家やアナリストの多くはそのように受け止めた。だから、利上げの可能性が薄れるにつれ、FRBの姿勢は煮え切らないものに見えてきた。 FRBは、雇用市場がさらに改善し、FRBの目標とする2%を3年以上も下回っているインフレ率が目標に向かうと「合理的に確信」したときには、利上げするとしてきた。だが、雇用の改善や、インフレ動向に対する確信をどのように定義するかについては、FRB関係者の見解は分かれている。 FRB関係者が発するシグナルの違いが大きくなるほど、金利に対する判断は難しさを増す。FRB内にあるさまざまな見解をまとめ、合意形成する責任はイエレン議長にある。議長は定期的にFRB理事と会合を持ち、FOMCの前には各地区連銀総裁との電話会談を組む。 だが、見解の相違がイエレン議長に近い人々の間で生じ始めた。フィッシャー副議長とニューヨーク連銀のダドリー総裁だ。 イエレン議長とフィッシャー副議長は、2人を良く知る関係者によると、毎週FRB本部最上階にあるカフェテリアで昼食を一緒にとりながら、米経済や政策戦略について相談する。これも良く知る関係者によると、ダドリー総裁はしばしば、経済と政策を協議するために、議長と副議長、FRB幹部職員との会合に電話で参加する。また、イエレン議長が四半期ごとの記者会見を準備する際にも、ダドリー総裁は議長の答えを用意する議論にフィッシャー副議長らとともに参加する。この3人の定期的な交流が、FOMCの下準備になるのだと、事情に詳しい関係者は言う。 だが、この3人はそれぞれの考えを持っている。フィッシャー副議長は利上げに積極的な陣営に属している。ダドリー総裁はためらっている。彼らの見解の相違が数週間前に表面化して、投資家を混乱させた。 中国経済を懸念して、8月25日に各市場が動揺した。ダウ工業株30種平均は204.91ドル安と、6営業日で10%超も下落した。事情に詳しい関係者によると、イエレン議長はこの週、ダドリー総裁とフィッシャー副議長にたびたび電話して協議した。 FOMCの勢力図(利上げ派:リッチモンド連銀ラッカー総裁、中間派:イエレン議長、フィッシャー副議長、NY連銀ダドリー総裁、アトランタ連銀ロックハート総裁、SF連銀ウィリアムズ総裁、パウエル理事、懐疑派:ブレイナード理事、タルーロ理事、シカゴ連銀エバンズ総裁) ENLARGE FOMCの勢力図(利上げ派:リッチモンド連銀ラッカー総裁、中間派:イエレン議長、フィッシャー副議長、NY連銀ダドリー総裁、アトランタ連銀ロックハート総裁、SF連銀ウィリアムズ総裁、パウエル理事、懐疑派:ブレイナード理事、タルーロ理事、シカゴ連銀エバンズ総裁) ON GRAPHIC 8月26日の記者会見でダドリー総裁は、イエレン議長とフィッシャー副議長と共有する見解をほぼ繰り返した。「短期的な市場の展開に過剰反応しないことが重要だ。これが単に一時的な調整なのか、あるいは米国の成長とインフレの見通しに意味を持つことになる何らかのもっと長引くことなのかは定かでないからだ」との声明を読み上げた。 この会見の終わりに、ダドリー総裁は自らの見解を示した。9月のFOMCでの利上げは「数週間前よりも私には説得力が薄れたように思われる」と語った。 この2日後にフィッシャー副議長はCNBC放送で、FOMCの政策判断に余裕を持たせようとして、ニューヨーク連銀総裁が残した印象を消そうとした。副議長は、「いまここで、どんな条件ならば説得力が増し、説得力が薄れるなどと、先んじて判断したくはない」と述べた。 ダドリー総裁は後日、副議長も自分もFRBの判断は経済指標の展開次第だということを強調しており、見解の違いを否定した。ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対して総裁は「われわれはほぼ同じ見解にある」と話した。 9月のFOMCで現状維持の判断を9対1の賛成多数で決めたイエレン議長は今回、FRB内の三つの陣営をまとめねばならない。 数人の地区連銀総裁を含む利上げの用意はできたとする陣営と、もう一つは雇用と経済生産が堅調に伸び続けるならば利上げに向かうとするイエレン議長をはじめとするFRBの中核メンバーだ。そして第3のグループは「懐疑派」と呼ばれる連銀総裁や理事らだ。この陣営は、利上げする前にインフレ率や賃金が上昇する確証を得たいとしている。このグループは、利上げ積極派と対抗し、イエレン議長の中立姿勢を中心として合意形成に役立つ可能性がある。 ダドリー総裁やフィッシャー副議長をみても分かる通り、それぞれの陣営内でも見解は割れる可能性がある。 ブレイナード理事とタルーロ理事は、9月のFOMC後にそれぞれ、利上げに着手すべきとする一部地区連銀総裁の根拠に異議を唱えた。ブレイナード理事は今月、ワシントンでの講演で、タルーロ理事はその翌日、CNBC放送のインタビューで、インフレ率の上昇を確認するまでFRBの行動は待ちたいとの意向を示した。 地区連銀総裁らの利上げ姿勢に反対しつつ、両理事は失業率がさらに低下すればインフレ率は上がるとするイエレン議長の見解にも疑問を投げかけた。失業率とインフレ率の相関性はあまり納得できないと語った。 イエレン議長は、米経済のスラック(余剰資源)が減り失業率が下がるという自身の中心的な見通しのもとで、インフレ率は上昇すると信じている。事情に詳しい関係者によると、議長は数カ月前に、インフレ率がこれほど長く2%の目標を下回り続けているときに、なぜ利上げを検討するか、もっと詳しく説明する必要があると判断したと言う。 FRBがスラックの尺度として好んでいるのは失業率だ。これは、失業率が下がれば賃金が上がるという半世紀前に生まれたフィリップス曲線の理論につながっている。インフレ率が上がることを納得できるようFRBが説明できなければ、利上げの根拠はほとんどなくなる。 実際のところ、2人の理事とイエレン議長の距離は見た目ほど遠くない。イエレン議長は9月のFOMC後の講演で、昔からフィリップス曲線の理論はあるものの、失業率とインフレ率の関係性は希薄だと認めた。関係性が強いならば、2009年に失業率が10%に上昇したときにはインフレ率は落ち込み、失業率の低下にともないインフレ率が上がったはずだ。ところがインフレ率が徐々に低下し、2%割れの水準にとどまっている。 イエレン議長は9月24日の講演で、「この(フィリップス曲線の)モデルの理論的土台は、経済学者の間でまだ議論されている話題だ」と述べ、「このモデルから導かれた見通しの妥当性は、新たに入手される統計に応じて評価され続ける必要がある」と指摘した。 これは意味のある手掛かりだ。今後数週間で堅調な成長と雇用に関するFRBの見通しが統計から確認されなければ、そして統計がインフレの段階的な上昇を示唆しなければ、イエレン議長とFRB関係者らは利上げするとしても、あまり上げないだろう。 関連記事 人民銀とECBの行動、FRBの大きな障害にならない FRB、他国の緩和で利上げ一層困難に FRBの意に反し、市場は現状維持を織り込む 米利上げ観測【特集】 ギリシャ国内銀、再建への厳しい道のり ENLARGE ギリシャ・ナショナル銀行のATMを利用するギリシャ正教会の司祭 PHOTO: REUTERS By PAUL J. DAVIES 2015 年 10 月 27 日 15:17 JST ギリシャの銀行が再建するために何が必要かは明白だが、厳しく先の見えない道のりを歩まなければならないことに変わりはなさそうだ。 今週はギリシャの4大銀行を対象にしたストレステスト(健全性審査)の結果が発表され、各行に必要な資本水準が明らかになる。必要資本水準の予想範囲は広いが、その上限となりそうな兆しが高まっている。実際にそうなれば、投資家は大きな打撃を受けるだろう。 それを避けるための方法はあるかもしれない。ただ、ギリシャの規制当局と債権団が、長年厳しい状況が続き、ここにきて新たな緊縮策にも直面している国民の支持を維持しながら、国内銀行を安定させる決意であることに疑いの余地はない。 それでも、国内銀は民間投資家から50億〜60億ユーロ(約6650〜7300億円)の資本を調達できるのではないかと期待されている。 国内銀の中には、民間資本の獲得に特に苦戦しそうな銀行もある。ピレウス銀行は最も多くの不良債権を抱え、7-9月期には新たに大量の債権が不良化した。そのため、民間支援を受けるのは難しいかもしれない。他の国内銀は熱心な支援者がいると自信を見せる。 ただはっきりしているのは、国内銀は公的資金に頼る前にあらゆる手段を尽くして資本を増強するよう指導されてきたということだ。この指導には、ギリシャ向け第3次金融支援の最終的な規模を最小限に抑えるという狙いがある。国内銀は価値のあるものは何でも売却しなければならない。その一例が、ギリシャ・ナショナル銀行によるトルコ子会社ファイナンスバンク(時価総額30億ユーロ)の売却計画だ。 国内銀は劣後債保有者に損失負担を強いる必要があるだろう。シニア債保有者も例外ではないかもしれない。ピレウス銀行は劣後債とシニア債の保有者に対し、保有債券は売買不可能な受領書と交換されると通知済みだ。この受領書は、同行の必要資本水準が明らかになった段階で、元本を大幅に下回る金額(1ユーロ当たり0.40ユーロ程度と予想される)ないし株式と交換できる。 他の国内銀行も同様の対応に出そうだ。この問題で劣後債保有者に選択肢はないが、アルファ銀行やギリシャ・ナショナル銀行のシニア債保有者にはまだ救いがあるかもしれない。 これらの措置を実施した後、国内銀は新株発行を通じて投資家から資金を調達しようとするだろう。その対象は、不良債権投資に特化したディストレスファンドや、米著名投資家のウィルバー・ロス氏のような投資家となりそうだ。ユーロバンク株を保有するロス氏は、追加投資に前向きだが、シニア債は言うまでもなく、劣後債についても強制転換を望んでいない。これらの債券が株式に転換されれば保有株の希薄化が進むためだ。もっとも、この望みはかないそうにない。 こうした措置を組み合わせることで、ギリシャの銀行が把握している、あるいは予見できる損失が吸収されると期待されている。このような損失は、欧州中央銀行(ECB)による資産査定(AQR)とストレステストの基本シナリオで特定されるだろう。 国内銀がストレステストの悪条件シナリオで合格するには、資本の積み増しが避けられそうにない。公的資金の出番が来るのはその後と位置づけられている。 ENLARGE “2015年1月を100とした場合の株価の推移【青:アルファ銀行、緑:ユーロバンク、灰色:ギリシャ・ナショナル銀行、黄緑:ピレウス銀行】“ だが、規制当局はストレステストに高いハードルを設定している。国内銀は普通株式等Tier1比率を基本シナリオ下で9.5%、悪条件シナリオ下で8%維持する必要がある。 これはそれぞれ8%、5.5%だった前回のハードルよりもはるかに高い。つまり、国内銀はまず12〜13%の資本を確保する必要がありそうだ。その場合、必要資本額は総額で200億ユーロに増える計算になる。 これは厳しいように聞こえるが、ギリシャ政府と国民、そして債権団の全てが、資本問題の解決を望んでいることは間違いない。 クレディ・スイスの最高経営責任者(CEO)が先週語ったように、銀行は資本を積み増しすぎても投資家から罰せられはしない。既存の投資家に大きな損失が出たとしても、国内銀が強固で健全なら、他の投資家が再び国内銀に資金を投じるだろう。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-KX909_Greekb_G_20151026060630.jpg
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