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日産自動車本社(「Wikipedia」より/Wiiii)
日産を悩ます仏政府の「経営介入問題」と「不平等条約」 生産を自国内へ強引に誘導か
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12115.html
2015.10.27 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
日産自動車と仏ルノーが資本関係の見直しに向けて検討を開始したことが、明らかになった。「不平等条約」によって、長年にわたり「子供の仕送りで親を支えてきた」構図が大きく様変わりする可能性がある。ただ、本来の対等な関係を構築するためには、日産とルノー両社のトップを務めるカルロス・ゴーンCEO(最高経営責任者)が自身の進退を含めて大きな決断を下せるかにかかっている。
「自動車メーカー同士の資本提携では最大の成功を収めている唯一のアライアンス」――。
日産とルノー両社のCEOを兼務するゴーン氏が成功を豪語する日産とルノーが結びついたのは1999年に遡る。当時の日産は、長年にわたる新車販売の低迷や、過剰な設備投資によって多額の有利子負債を抱え、「倒産の危機」に陥っていた。そこに支援の手を差し伸べたのが、欧州での販売台数を伸ばして業績が安定していたルノーだった。
当時、ダイムラー・ベンツがクライスラーと合併するなど、業界再編が加速、グループの年間新車販売台数が400万台以上なければ生き残れないといわれ、合従連衡が繰り広げられていた。単独での生き残りに危機感を持ったルノーは、企業規模では上だが、業績不振で危機に瀕していた日産に目を付けた。
日産はルノーと資本提携し、ルノーから送り込まれたゴーン氏による経営改革を断行、短期間での業績立て直しに成功した。当初、ルノーの日産への出資比率は36.8%で、日産のルノー株式持分はゼロだった。その後、日産の業績が改善したことから、ルノーの株式を取得、同時にルノーは日産への出資比率を引き上げた。
現在、ルノーは日産の株式43.4%を保有する。日産もルノーの株式15%を保有するが、40%以上出資を受けている会社が持つ親会社の株式は、議決権が認められないというフランスの法律によって日産が保有する株式には議決権が付与されていない。両社は資本構成では長年にわたってルノーが「親」、日産が「子」の立場で関係を続けてきた。
しかし、日産が北米や中国で販売を伸ばすなど、ほぼ好調な業績を続ける一方で、欧州や南米にしか基盤を持たないルノーは業績不振が続き、実質的に日産の配当頼りで黒字化したケースが少なくない。「子」である日産が「親」であるルノーを支える構図が長年続き、しかも日産はルノーに対して議決権さえ持たない。「不平等条約」といわれるゆえんだ。
■フロランジュ法
そこに資本関係の見直しが降ってわいたのは、フランスのフロランジュ法が原因だ。同法では、長期保有する株主の議決権を2倍に増やすというもの。この制度導入を見送るためには、株主総会で議決権の3分の2の反対が必要。フランス政府は同法を制定後、ルノーに対する出資比率を15%から19.7%に引き上げた。ルノー経営陣は、導入に反対する姿勢を示し、提携相手である日産も導入に反対する声明を出した。しかし、日産が保有するルノー株式に議決権がなかったこともあって導入に反対するルノー経営陣への賛成票が不足、2016年4月からフランス政府のルノーに対する議決権は28%に上がることになった。
こうした動きに懸念されるのが、立場上は「子」である日産への影響だ。フランス政府はこれまで、国内の雇用を維持するため、たびたびルノーが実施を計画した人員削減や工場閉鎖などのリストラに介入、これらを撤回させてきた。今後、フランス国内の雇用を確保するため、ルノーへの議決権を増やしたフランス政府が、ルノーの「子会社」である日産の経営に関与してくる可能性がある。
実際、ルノーの工場稼働率を引き上げるため、16年から日産の欧州市場向け主力車種である「マイクラ」(日本名=マーチ)の次期モデルの生産を、ルノーのフランス・パリ近郊にある工場で生産することが決まっている。フランス政府の意向を受けたものとされている。来春以降、ルノーのフランス国内にある工場の稼働率を引き上げてフランス国内の雇用を創出するため、さらに日産車の生産をフランス国内のルノー工場に移管を要請する可能性がある。
■ゴーン氏が迫られる苦渋の選択
日産とルノーが資本関係の見直しを検討するのは、フランス政府の動きをけん制するためだ。当面はルノーが保有する日産への出資比率を40%未満に引き下げて、日産が保有するルノー株式に議決権を持たせることを検討している。ただ、日産とルノー両社のトップをゴーン氏が担っている現状から、議決権を持たせても、日産はルノーの子会社と見なされる可能性が高い。日産がルノーとは資本提携関係にあっても、あくまで独立した自動車メーカーであることを内外に示すためには、経営体制でもルノーと日産で線を引くことが求められる。
ゴーン氏は、ルノーの会長だったルイ・シュバイツァー氏が05年に引退してから、日産、ルノー両社のトップを兼務している。ルノーは日産の筆頭株主で、ルノーのトップであり続ける限り、日産のトップも続けることができる。つまりは、高額な報酬と世界トップクラスの自動車メーカー連合のトップの地位に居座り続けることができた。
しかし、フランス政府の日産への経営介入を避けるためには、両社のマネジメント層への線引きが重要になる。その際、ゴーン氏は日産、ルノーどちらかのトップから手を引かざるをえなくなるとの見方が強い。年間報酬10億円という日産のトップの座を捨てて「親会社」であるルノーのトップの地位を保持するのか、資本関係では親の立場にあたる筆頭株主ルノーのトップの座を別の人材に明け渡して、自らは日産のトップとして高額な報酬による「実」をとるのか、はたまた両社トップの椅子にしがみつくため、フランス政府の理不尽な要求を受け入れるのか、苦渋の選択を迫られることになるかもしれない。
日産、ルノーが資本関係を見直した場合、フランス政府の議決権が引き上げられる16年4月を前にした、16年の日産、ルノーの経営体制の動向が注目される。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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