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ファミリーマートの店舗(「Wikipedia」より/Kuha455405)
火種まみれのファミマ・ユニー統合 勝算なき弱者連合 FC離脱→他社へくら替え懸念も
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12112.html
2015.10.27 文=松崎隆司/経済ジャーナリスト Business Journal
ファミリーマートとユニーグループ・ホールディングス(GHD)が10月15日19時、都内のホテルで記者会見を開き、来年9月に経営統合することで基本合意したと発表した。ファミマがユニーGHDを吸収合併し、新たに持ち株会社を設立する予定だ。
会見冒頭でユニーGHDの佐古則男社長は次のように語った。
「コンビニエンスストアにおいては国内最大規模の事業基盤を構築した上で、スケールメリットやシナジーによる質的な向上を追求するとともに、アジアなどの新興国に対しても両社の培ってきたものを提供したい。またGMS(総合スーパー)事業については両社の商流、物流を活用しながら事業拡大や成長機会の実現をする一方で、新たな小売りグループの収益拡大を図っていきたい」
一方、ファミマの中山勇社長もまた「よりよい企業を創造しようと両社でやってきた。統合後5年以内に年商5兆円以上、連結営業利益は1000億円以上、連結純利益600億円以上の会社にしていきたい」と語っている。
両社は2015年3月、経営統合に向けて協議をすると発表。8月には経営統合の全体像を明らかにできると語っていた。これまでファミマの店舗数は1万1930店舗、ローソンの1万2276店舗に次いでコンビニ業界では第3位。しかし、今回の経営統合でサークルKサンクスの6310店舗が加わることで、単純計算ではセブン-イレブン・ジャパンの1万8099店舗を超え、1万8240店舗と業界第1位に躍り出ることになる。ただ、重複店舗や不採算店舗などについては「独禁法のクリアランスができていないので、詳細な情報交換ができないという状態です」(中山社長)という。
両社は3月10日に経営統合の交渉を進めていることを明らかにし、8月末には正式な基本合意を発表することを明らかにしてきたが、1カ月半遅れの発表となった。遅れた理由について佐古社長は、「GMSとコンビニ事業の計画を策定、精査するにあたり、お互い譲歩せず忌憚のない意見をぶつけ合ってきた結果、今回しっかりと手を携えていくことができました」と語っている。
来年4月に吸収合併契約・吸収分割契約承認し、5月26日には両社定時株主総会を開催し、そこで承認が取れれば、9月に経営統合することを予定しているという。
「それを加速するために、現在する統合検討委員会を統合準備委員会に変更して、経営体制やコンビニのブランドなどを検討していく。また不採算店舗の閉鎖統合など重要事項も検討する」(中山社長)
さらに統合後の取り組みについては、「コンビニ市場についてはブランドを一本化いたします。商品力、調達力を強化し、トップラインをあげていく。また物流やインフラの強化を進め、スケールの大きさ、ネットワークの密度の高さを最大限に生かします」(同)という。GMSについては、すでに構築されている東海や関東圏で、ドミナントに磨きをかけていく。また、売上高で3兆円を超えるスケールメリットを最大限に生かしていくという。
しかし、両社は本当に一緒にやっていけるのだろうか。
■3つのアキレス腱
今回の基本合意で具体的に決まっているのは、合併比率のユニーGHDの1株に対して、ファミマは0.138株を交付することと、コンビニのブランドを統一するということ。役員構成や重複店舗、業績不振店舗の統廃合をどう進めていくのか、今後の事業のグランドデザインなど具体的な方向性は何も見えてきていない。まさに、「まず統合ありき」の基本合意だということだ。
すでにコンビニのライバル企業などの間では「結局は弱者連合。一時的には店舗数でセブンを抜いても、いったいどれだけの店舗が残り、日販をどれだけあげられるかは疑問だ」という声すら上がっている。
では、いったい何が難しいのか。実はこの経営統合には、3つのアキレス腱があるといわれている。
■ブランドの統一化
一つ目はブランドの統一化だ。ブランドやシステムを統合することにより、シナジー効果が生まれてくるわけだが、ファミマの統合相手であるサークルKサンクスは2001年に経営統合して以降、両店舗のブランド統合はできなかった。自分たちのブランドにこだわりがあったからだ。そこにファミマが加わり、さらに関係は複雑になる。仮にファミマのブランドに寄せるとしても、サークルKサンクスの店舗は6310店舗ある。
ファミマは09年12月、am/pmを子会社化し、11年12月までの間に経営統合した。2年間かけて80億円を投資し、約733店舗(統廃合前の全1107店舗のうちの66%)を改装してブランドの統一化を図った。今回、仮にこの時と同様に66%のサークルKサンクス店舗が残るとして計算すると4164店舗。前回に比べ、5.6倍の店舗の統合をすることになる。
「それだけの店舗を統合するのは、そう簡単なことではないし、投資額も単純計算すれば448億円。733店舗をリニューアルするのに社員総出で2年かかっていることを考えると、単純計算では10年以上かかることになる。しかも利害が錯綜するため、離反組が出てくる可能性がある」(コンビニ幹部)
さらに問題は数百億円かかるとみられているリニューアルの資金を、本部が全額負担するのか、店舗側が負担するのかまだ決まってはいないということだ。仮に本部がその資金を出すとすると、どのようなかたちで資金を調達するのか。親会社の伊藤忠商事に増資などを受けてもらって調達するのか、借り入れをするのか。いずれにせよ、大きな負担になり、セブンやローソンなどが次々に店舗に設備投資を続けていく中で、大きな足かせになる恐れがある。
「セブンの日販は66万円、ローソンが55万円、ファミマが52万円といわれている。ファミマとサークルKサンクスの統合会社が上位2社に追い付くには、相当な設備投資が必要になってくるが、果たしてそんな余裕があるのか」(業界関係者)
逆に店舗側に負担を求めれば、有力なエリアフランチャイザーが離反し、他の大手コンビニエンスストアの元に走る恐れもある。
そして2つ目が、店舗の統廃合の問題。不採算店舗や重複店舗を整理しなければ、収益力を上げていくことはできない。場合によっては重複店舗で切り捨てた店が、ライバル店に鞍替えして思わぬ厳しい競争環境が出来上がってしまう恐れもある。
■壮大なコラボ
さらに3つ目がユニーの問題だ。ユニーのようなGMSは現在非常に経営が厳しく、じり貧が続いている。それは何もユニーに限らず、セブン&アイ・ホールディングスにしてもイオンにしてもしかりだ。
「当初、ファミリーマートも親会社である伊藤忠商事も、ユニー抜きでサークルKサンクスの買収を進めたかった。しかし、ユニーGHDサイドは一体としての合併を求め、結果的にはユニーも含めて合併せざるを得なくなってしまった」(同)
会見で中山社長は筆者の質問に、GMSとコンビニとの壮大なコラボレーションを語っていた。
「私どもは一体型店舗を模索しています。30坪のコンビニフォーマットだけではなく、2倍、3倍規模のスーパーやドラックストアを今展開しています。これは非常に手ごたえを感じています。将来のコンビニはどうなるのかを描いておりまして、できたての弁当などをやっています。コンビニの1店舗を潰してそこでできたての弁当をつくって、地域ハブとして近隣の20店舗、30店舗に提供し、それがうまくいっています。それを東海圏では、弁当だけでなく、惣菜、パンなどをGMSの店舗をハブにして1時間以内にデリバリーしていくという戦略も考えています。また、物流拠点としてコンビニは注目されていますが、コンビニは狭い。地域のハブをつくっていけば、その周辺のコンビニの規模が飛躍的に高まります。これをやっているところはまだありません。これが、我々の考えている次世代型のコンビニです」(同)
しかし中山社長が期待するような効果があるのか、効率的な店舗の配置となっているのか、まだまだ見えてこない部分がある。
そもそも利便性を重視するコンビニの経営と価格を重視するGMSの経営の考え方はまったく違う。水と油といってもいいかもしれない。両者を同時に経営することは、実は非常に難しいことだといわれている。事実、セブン&アイ・ホールディングスでもイオングループでも、GMSとコンビニとのコラボがうまくっているとはいえない。
今後ファミマは数年間、ユニーの経営再建の行方を見守っているとみられているが、その後、仮に経営が軌道に乗ってこなければ、同業他社への売却も十分ありえるといわれている。流通業界は今、再編の動きが加速しているからだ。
「ファミマとサークルKサンクスが合併して業界トップ級になったとしても、日販ではセブンやローソンに遠く及ばないのが実情だ。売り上げの悪い企業同士が統合し、いったいどのくらいのシナジー効果が出せるのか」(コンビニ幹部)
仮にシナジー効果が出せなければ、売却の対象になる可能性も少なくない。すでに外資企業など、統合会社に大きな関心を示しているところもあるといわれている。ファミマ、ユニーGHDを中心に、流通業界再々編が動き出している。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
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