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三井不動産はなぜウソをついたのか──傾いたマンション問題の波紋
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/828.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2015 年 10 月 26 日 12:23:25: KqrEdYmDwf7cM
 

(回答先: 傾斜マンションは氷山の一角…欠陥つかまされぬ7つの常識(日刊ゲンダイ) 投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 26 日 07:39:25)

http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/sj/15/150245/102600024/?top_matome

建築&住宅ジャーナリスト 細野透
2015年 10月26日
住民の心を傷つけた三井不動産の罪深い行為

 マンションを傾斜させた旭化成建材の罪深い行為に続いて、今回は三井不動産レジデンシャルの罪深い行為についても指摘しなければなりません。建物の不具合が発覚した当初、住民は三井不レジを信頼して相談したのに、同社はどういうわけかウソをついて住民を突き放し、その心を傷つけてしまいました。ユーザーからクレームを受けたとき守らなければならない「4つの基本手順」に反して、なぜこのような罪深い行為を行ったのでしょうか。

 初めにマンション大手7社、すなわち三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、住友不動産、東京建物、東急不動産、大京からなる「メジャーセブン」が、毎年行っている「新築分譲マンション購入に際しての意識調査」を紹介します。

 この調査では「こだわりたいポイント」「マンション購入を検討する理由」などをユーザーにアンケートしています。その中で「建物の耐震性」が毎年、何位になっているのかをピックアップすると、驚くような結果になりました。

 2005年1月─5位
 2005年11月「耐震偽装事件」発覚
 2006年1月─2位
 2007年1月─14位
 2008年1月─16位
 2009年2月─16位
 2010年3月─15位
 2011年2月─17位
 2011年3月「東日本大震災」
 2012年2月─8位
 2013年2月─9位
 2014年2月─7位
 2015年2月─9位

 2005年11月に「耐震偽装事件」が発覚した後、「建物の耐震性」に関する関心は一気に高まって、その翌年の2006年1月の調査では実に2位にランクされたのです。

 10年間の調査のうち建物の耐震性が2位にランクされたのは2006年1月だけです。意外なことに、東日本大震災の翌年の2012年2月に行われた調査では、建物の耐震性は8位に上がっただけでした。要するに耐震偽装事件の直後は、歴史的に見て、ユーザーは建物の耐震性に最も敏感になっていたのです。

 マンションが傾いた「パークシティLaLa横浜」の杭工事は、耐震偽装事件の広がりと並行するかのように、2005年12月から2006年2月に進行。それに続いて春頃から販売が始まり、翌2007年には建物が完成しました。

 2006年1月に、メジャーセブンは「マンション購入時の比較検討ポイント」のランキングも発表しています。

 1位─管理会社が信用できる。
 2位─大手不動産会社が分譲する。
 3位─周辺環境が自然に恵まれている。
 4位─大手建設会社が施工する。

 三井不動産レジデンシャル系列の管理会社は高く評価されていますし、三井不レジは大手不動産会社ですし、周辺には緑がありますし、「パークシティLaLa横浜」を施工した三井住友建設は業界13位ですので準大手に入っています。しかもLaLa横浜のパンフレットには、「基礎・構造を初め、クオリティの高い施工を実現する」「杭基礎に支えられた荷重を、直径約35〜70センチの既製杭により、強固な地下約10〜19メートルの支持層に伝えています」と明記されています。

 耐震偽装事件にショックを受けたユーザーが、三井不レジという会社およびパークシティというブランドを信用して、「LaLa横浜」を選択するのは自然な流れだったのです。


「東日本大震災の影響によるもの」というウソの説明

 マンションを購入しようとするユーザーは、建物の構造についていわば無知同然です。ユーザーに対して、建物の構造をどのように説明すれば、分かりやすいのでしょうか。日本建築学会構造委員会に2007年ころ、日本女子大学の石川孝重教授(当時)、平田京子助教授(当時)を中心とする小委員会がつくられ、私も『耐震偽装』の著者として小委員会に参加しました。しかしその結論はおおむね次のようなものでした。
「ユーザーを理科系と文化系に分けたとすると、文化系の人たちに、建物の構造耐震性を分かりやすく説明することは困難に近い」。

 つまりユーザーにとっては、三井不レジという会社名こそが判断基準になるのです。そのように、ユーザーから深く信頼されていたにもかかわらず、同社は問題発覚後には手の平を返すような行動を取りました。全国紙によると、「天井や壁にひび割れが入った」と訴えた住民に対して、同社は最初「東日本大震災の影響によるもの」と説明したそうです。また「調査したところでは震度7の地震にも耐える」と説明したそうです。しかしこの説明は大ウソです。

 気象庁「2011年東北地方太平洋沖地震による各地の震度(PDFファイル)」を調べると、「LaLa横浜」がある横浜都筑区池辺町は震度5弱(4.7)となっています。

 次に同じく気象庁「気象庁震度階級関連解説表」を調べてみましょう。
[画像のクリックで拡大表示]

 この表を見ると一目瞭然なのですが、「耐震性が低い鉄筋コンクリート造建物」(1981年以前に完成した旧耐震基準の建物)であっても、震度5強では「ひび割れ・亀裂が入ることがある」という程度なので、震度5弱ではひび割れ・亀裂が入ることはありません。

 そして、「LaLa横浜」は2007年に完成したばかりの「耐震性が高い鉄筋コンクリート造建物」(新耐震基準の建物)ですので、震度5弱ではひび割れ・亀裂が入るはずがありません。すなわち三井不レジの担当者は住民に対して「ウソ」をついたか、耐震性に関してまったく無知なまま「デタラメな返事」をしていたことになるのです。

 さらに補足しておきましょう。三井不レジは東日本大震災の地震波形を入手して、「LaLa横浜」の構造計算をやり直した後で、「東日本大震災の影響によるもの」と判断したのでしょうか。きちんとした根拠を示さないで住民を突き放すのは不誠実です。

 また「調査したところでは震度7の地震にも耐える」という言葉も大ウソです。いったい同社はどんな調査をしたというのでしょうか。今回の施工不良事件における調査とは、地下杭の状態を把握したうえで、構造計算をやり直して強度を確認する行為を意味しています。

 実際問題として、今年10月26日時点では、地下杭の状態がまだ分かっていないことは、報道を通じて多くの国民が知っています。加えて、仮に震度7に耐えるのなら、既に傾いている西棟は別として、他の3棟は解体する必要がないはずです。同社はなぜウソをついたのでしょうか。 


「クレーム対応の4つの基本手順」

 マンションが傾いた「パークシティLaLa横浜」は戸数705戸の大規模マンションです。1戸に3.5人住んでいるとすると、全体では約2500人。これは地方なら一つの町に匹敵する規模になります。主力住戸の価格は、2006年に販売した時点で、3500万円台〜4000万円台でした。

 住民の皆さんはさぞ不安な気持ちで過ごしていると思われます。ただ、国交省が建築指導課・建設業課・不動産業課という、これまで聞いたことがない異例の複数部署体制で対応。また販売主の三井不動産レジデンシャルが、「建て替え」を基本的枠組みとして住民と協議を進める意向を示しています。これは平たくいえば、「個々の住民の事情を考えて対応します」という意味ですので、そういう面では心配は少ないと思います。詳しい内容は10月31日と翌11月1日に新横浜プリンスホテルで開かれる説明会で、三井不レジから住民に正式に提示される見込みです。

 「LaLa横浜」とは逆に悲惨な運命をたどったのが、2005年末に発覚した耐震偽装事件の被害者の皆さんでした。姉歯元建築士が構造を設計し、ヒューザーが販売したマンションは21棟730戸でした。平均戸数35戸、平均居住者数130人程度のマンションの住民たちは、首都圏の各地に孤立するような形で闘いました。

 しかしヒューザーが倒産し、かつ国交省が「震度5強の地震で倒壊する恐れがある」としてマンションの解体を指示したため、住民は住宅ローンを抱えたまま自宅を失うという気の毒な立場になってしまいました。主力住戸の価格は4500万円程度だったと思われます。

 このように、「LaLa横浜」の住民の皆さんが、補償という意味では何とか見通しが立ちそうなのに、今なお三井不レジに対する怒りが静まらないのは、信頼していた相手にウソをつかれた影響が大きいのです。同社は初期対応を間違ってしまったのです。

 「クレーム対応の4つの基本手順」はネットで検索すればすぐに分かります。「 (1)相手の心情を理解し、不快にさせたことをお詫びする。(2)何が問題になっているか、原因・事実確認を行なう。(3)問題の代替案・解決策を冷静に提示する。(4)再度お詫びをし、ご意見に対して感謝する」。

 三井不レジほどの業界トップ会社に、なぜ、こんな簡単なことが実行できなかったのでしょうか。世間の関心は今、旭化成建材の杭欠陥工事の真相とその全国的影響に向かっていますが、私としてはそれに加えて、三井不レジの対応についても真相を知りたいと考えています。


三井不レジを信頼していたジャーナリストからの「未練状」

 三井不レジグループの信頼性については、スタイルアクトが運営する「住まいサーフィン」が発表する各種のデータを見れば分かります。

 まず「新築マンションアフター満足度ランキング2015」によると、マンション入居者の満足度1位は野村不動産、2位は三井不動産レジデンシャル、3位は東京建物です。

 また「管理会社満足度ランキング2015」によると、マンション入居者の満足度1位は野村不動産パートナーズ、2位は三井不動産レジデンシャルサービス、3位は住友不動産建物サービスです。

 三井不レジはほかに、建設における全ての工程において、施工会社などの検査だけに頼ることなく、社員自らによるチェックを行うことでも知られています。その名前は「お客様の声で進化し続ける品質基準管理システムTQPM」です。

 建物が完成した後には、次のようなサービスが提供されます。
三井不レジのアフターサービス体制とサービス内容(同社Webサイトから引用)
[画像のクリックで拡大表示]

 すぐ上の図には、「主要構造部材は10年間品質保証」と明記してあります。「LaLa横浜」の完成は2007年ですので、私の計算違いでなければ、まだ品質保証期間内であるはずです。

 ただ気になるのは、「本サイトの内容は当社の平成23年3月現在のシステムであり、これ以前に竣工済み、または着工した物件においては一部実施されていないものもあります」と注記してある点です。三井不レジの担当者が「LaLa横浜」はその適用外と判断して、無責任ないい逃れをしてしまったのでしょうか。

 さて、私は「日経産業新聞」の新製品欄に、マンションを評価するコラムを月に1回のペースで寄稿しています。その取材経験を通じて、三井不レジのマンションは総じて品質に優れ、業界のトップレベルにあると実感してきました。また知人に「どの会社のマンションなら信頼できるか」と相談されると、2社か3社の名前を挙げるのですが、その中には必ず三井不レジの名前を入れていました。

 つまり私自身も今、「LaLa横浜」の住民の皆さんと同じように、三井不レジに対して失望しているのです。傾いた西棟に住む友人に「君はどう思っているのか?」と聞くと、性格が穏和な彼らしく、悲しそうな表情で見返してきただけでした。

 私はこの記事がアップされた段階で、三井不動産の広報部に連絡して、問題発覚後の初期対応に関して説明を求めたいと考えています。この記事はいうならば、「三井不レジを信頼していたジャーナリストからの未練状」、のようなものなのです。

 未練状という言葉について、辞書を引いても意味がよく分からないはずですので、念のために補足します。ラブレターでは間違いですし、縁切り状というわけでもありませんし、諫言状では筋違いですし、勧告状ではお役所的なにおいがします。いい返事が来てくれればいいなと期待を抱いている書状なのですが、適切な表現が思い浮かばなかったので、とりあえず未練状としておきました。

 同社も問題対応に追われて忙しいでしょうから、すぐに返事があるとは思っていませんが、その結果はいずれ何らかの形で紹介します。

建築学会、マンション学会、地震学会

 最後に私自身の信念を少しだけ説明します。私はジャーナリストであって研究者ではありませんが、日本建築学会、日本マンション学会、日本地震学会という3つの学会に入っています。建築学会とマンション学会、あるいは建築学会と地震学会に入っている人は少なくないのですが、3つの学会に入っている人はおそらく私一人ではないでしょうか。

 その理由は、地震国の日本において、マンションに求められる最大の性能は、「地震に必ず耐える強靱さでなければならない」という信念を抱いているためです。そして3つの学会に入っていれば、大きな傾向を把握できるのです。

 私は大学と大学院で建築構造学を学んだ後に、建築専門誌「日経アーキテクチュア」に記者として就職しました。それから数年経ったある日、耐震構造学の第一人者である梅村魁東京大学教授(故人)に呼び出されました。

 梅村教授は1981年に導入される予定の、「新耐震基準」をまとめるチームの指導者でした。また私が大学院時代に執筆した博士論文の査読者でした。その梅村教授は、「貴方は建築構造学を専攻したわけだから、新耐震基準を建築分野の人たち、および不動産分野など他の産業界の人たちに、理解してもらえるような記事を書く努力してくれないか」といって、頭を下げました。

 建築物の耐震性を向上させたいとの使命感が強かった梅村教授が、私のような若造にまで頭を下げることをいとわない姿勢に感動。以後、そのような方向で動いてきました。

 1995年の阪神淡路大震災のときには「日経アーキテクチュア」の編集長として、体力のある若手記者数名に、「当分は帰ってこなくてもいいから、とにかく現地で写真を撮りまくれ」と指示して送り出しました。被災地では全壊、半壊した建物は急いで片付けなければならないのですが、その前に写真を撮っておかないと、被害の原因を突き止めることができないのです。

 2005年の耐震偽装事件の際には、日経新聞出版局から『耐震偽装』の原稿を書いてほしいと依頼され、これは私にしか書けないと奮起。アドレナリンの力を借りて1カ月で原稿を提出し、「ずいぶん早いですね」と感謝されましたが、残念ながら初版止まりで2版には行きませんでした。世の中とはそういうものです。

 2008年には私が住む地域で、姉歯物件を連想させる規模数十戸のマンション建設計画が進行し始めました。「このような不良物件が完成すると、購入者は財産を失ってしまうし、大地震が来ると地域も悪影響を受ける」と判断。地域住民を代表して地方裁判所で3回、高等裁判所で1回闘って、なんとか建設中止に追い込みました。

 2009年にシンクタンク「東京財団」が、「建築基準法の耐震基準には本質的な欠陥があるので、これを改正すべきである」とする注目すべき提言を行ったときには、微力ながら協力させてもらいました。

 2011年の東日本大震災に際しては、私の故郷である岩手県などの惨状に涙しながら、お風呂に入ることも忘れて原稿を書き続けていたら、1カ月くらいでエネルギーが尽きてしまいました。

 2014年に発覚した三菱地所レジデンス「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」の施工不良事件や、2015年の三井不動産レジデンシャル「パークシティLaLa横浜」の杭工事不良事件では、主に新聞各社やテレビ各社の記者には難しくて分からないだろうと思われる視点から、記事を書き続けています。

 以上をまとめると、私はデベロッパー各社に、とにかく地震に耐える安全なマンションをつくってもらいたいのです。デベロッパー各社にはそういう信念があるのでしょうか。また一介のジャーナリストに過ぎない、私に負けないくらいの努力をしているのでしょうか。
細野 透(ほその・とおる)
細野 透

 建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。細野透編集事務所代表。大学と大学院で建築の構造を学んだ。師である構造家の坪井善勝・東大名誉教授(故人)は、建築家の丹下健三氏(故人)と組んで、代々木オリンピックスタジアム、東京カテドラル聖マリア大聖堂を設計した。ジャーナリストになってからは、方向音痴にめげずに、1000作品以上の建築&住宅を現地取材。インタビューした建築&住宅専門家は3500人を超える。日本建築学会学会賞選考委員会、建築計画委員会、現代建築評価小委員会、リスクコミュニケーション手法に関するWG委員。ブログ「建築雑誌オールレビュー」主宰。


投稿者コメント
なぜウソをついたのか?
「資本主義」は、利益第一主義となり、嘘をついてもばれなきゃOK、など狂った行動を普通にさせてしまう狂信者とその集団を作るんじゃないかな。  

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