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[一目均衡]1700兆円の増やし方 編集委員 北沢千秋
安倍政権は名目国内総生産(GDP)を600兆円にすると打ち上げた。次は「貯蓄から投資」の実現へ、1717兆円の個人金融資産を2000兆円にする目標を掲げてはどうか。潜在成長率ゼロ%台の日本がGDPを100兆円増やすより、よほど現実味がある。
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個人の金融資産はもっと厚みが必要だ。低成長や少子高齢化などで、今の現役世代は経済的に厳しい老後を迎える。野村総合研究所の試算では、現役世代(1979年生まれ)の退職後所得(退職金、年金など)は退職世代(49年生まれ)に比べ15〜35%減る。
試算は今後10年間は過去の実質賃金上昇率を維持、その後は0.5%の上昇率を見込んでおり、しかも今の公的年金の受給水準が前提。減少率はさらに拡大する恐れがある。それを補うには早くから資産形成に取り組み、金融資産を蓄えなければならない。
2000兆円は象徴的な数字だが、非現実的ではない。1717兆円を年1.54%の複利で増やせば10年後に達成できる。
では、その利回りをどう実現するか。金融資産の52%を現預金が占める現状では到底望めず、リターンの源泉のリスク資産の構成比を高める必要がある。貯蓄から投資中心へのポートフォリオの組み替えだ。
金融資産に占める株式、投資信託の比率は米国が48%、日本は16%。米国でこの比率が大きく上昇したのは80年代半ばからで、IRAと呼ぶ個人年金制度の充実がきっかけ。今は比率が米国並みのカナダも、個人年金制度の改革で90年代から急上昇したという。
日本でも少額投資非課税制度(NISA)や個人向け確定拠出年金(DC)、世代間の資産移転を促す非課税相続制度など、道具立ては整ってきた。
しかしNISAは時限制度のうえ資産の入れ替えができない、個人向けの確定拠出年金は60歳まで引き出せないなど、使い勝手はいまひとつ。個々の制度の改善と、「NISAから個人向け確定拠出年金への資金移動を自由にするなど、制度をまたいだ利便性向上」(金子久・野村総研上級研究員)が課題だ。
リスク資産の収益性を高める試みも始まったばかり。企業のガバナンス・コードや機関投資家のスチュワードシップ・コードは、丸めていえば日本市場の投資リターンを高めるのが狙い。現状では「多くの企業や年金基金は自らの課題ととらえていない」(大手運用会社の社長)。
運用会社の責任も重い。金子氏の分析では、国内外の株式で運用する投信が98年4月からの16年余に投資家にもたらした利益は5000億円で、販売手数料(2%と仮定)を差し引くと損失になる。投資家利益を優先した商品設計、運用のあり方が問われている。
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1700兆円超の個人金融資産は日本の大切な宝物。放っておけば高齢者の取り崩しで減少しかねない。国を挙げて着実に増やす努力が求められる。
[日経新聞10月20日朝刊P.15]
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