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厳しい表情の旭化成建材・前田社長(左)/(C)日刊ゲンダイ
旭化成建材3040件は氷山の一角 “06年マンション”の危険度
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/167423
2015年10月24日 日刊ゲンダイ
過去11年間に杭打ち工事を請け負ったのは45都道府県3040件、うちデータ改ざんを認めた現場代理人が関与したのは41件――。横浜市のマンション傾斜問題で、旭化成建材が工事実績の内訳を明かしたが、肝心の施設名は23日になってようやく情報提供を開始、全国に疑心暗鬼を広めてしまった。各自治体とも旭化成建材が手がけた公共施設を独自に探していたが、見方を変えれば、もっと危ない物件がある。
「当時は次から次に仕事の発注があった。残業の量は相当多かった」
現場代理人は旭化成側の聞き取り調査にそう答えたという。旭化成建材の前田富弘社長も20日の会見で「当時は確かに忙しかった」と振り返った。問題の杭打ち工事は2005年12月〜06年2月に実施。この時期に現場が多忙を極めたのにはワケがある。
05年11月、あの姉歯秀次・元1級建築士の手による耐震強度偽装事件が発覚。時の小泉政権が建築確認・検査の厳格化に向け、法改正に動き出した頃と、杭打ちの時期はちょうど重なる。
「実際の法改正前から、建築確認など事務手続きの煩雑化が予想されました。そのため、面倒な作業が増える前に『駆け込みで着工に取りかかれ!』と言わんばかりのマンション建設ラッシュが始まったのです」(建築エコノミスト・森山高至氏)
事実、06年度の新設住宅の着工件数は約128万5000戸と、過去15年間でのピークを迎え、07年6月の法改正後は着工数は激減。09年度以降は100万戸を割り続けている。
近年まれにみる建設ラッシュ期に、問題の工事は行われたのだ。深度不足の杭8本は工期の最終盤の06年2月23〜24日に施工された。杭の長さは設計段階で約2メートル足りなかったが、杭を追加発注すると、工期が1カ月以上長くなる可能性があったという。
「元請け以下、現場には工事中に行う『中間検査』や工事後に確認する『完了検査』などを法改正前に終わらせたいムードがあったかも知れません。多忙だった現場代理人も次々と仕事を片づける必要性に迫られていたでしょう。関与した全員にとって、工期が強いプレッシャーになっていた可能性は十分にあると思います」(森山高至氏)
この業界挙げての駆け込み建設期の直後には、欠陥住宅が次々と見つかった。07年には建材メーカーなど2社による耐火壁や断熱パネルの性能偽装や、大手ゼネコンが千葉で建設中だった超高層マンションで鉄筋128本の不足が判明。同年10月には横浜市の分譲マンションで新たな耐震偽装も発覚した。この物件は改正法の施行直前に建築確認を受けており、構造データを167カ所も改ざんした1級建築士は当時、偽造の理由をこう語っていた。
「時間に追われていた」
傾斜マンションは氷山の一角。06年度の“狂気の建設ラッシュ”の負の遺産は、まだまだ各地に潜んでいるのではないか。
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