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『国も企業も個人も今はドルを買え!』(PHPビジネス新書)著者・藤巻健史氏
藤巻健史 私が「今はドルを買え」という理由
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151023-00010000-php_s-bus_all
PHP Biz Online 衆知 10月23日(金)12時49分配信
■景気回復は「当たり前」。問題はその後だ
藤巻健史氏の新刊『国も企業も個人も今はドルを買え!』(PHPビジネス新書)がいよいよ発刊される。なぜ、藤巻氏は「ドルを買え」と主張するのか。そこで、本書のベースとなった「THE21」の好評連載「2020年のサラリーマン・サバイバル術」の第1回(2015年4月掲載)をここに転載。藤巻氏が抱く日本への危機感とは?
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「アベノミクスで、再び景気が上向きつつある」。今年に入り、そんな声が周囲から聞かれるようになった。「異次元」と称された大胆な量的緩和が行なわれ、輸出産業をはじめとした一部の大企業の収益は大幅に回復し、一時は8000円台まで下落した株価は1万9000円を突破した(2015年5月当時)。「この調子でいけば、本当に日本経済は復活するのではないか」という期待を寄せる人も少なくないだろう。
しかし、その期待をそぐようで申し訳ないが、私は、今の日本経済に対して、いっさい、楽観的な見通しを持つことができない。
量的緩和をすれば、一時的に株価が上昇したり、円安で輸出産業の売上げが伸びたりするのは当たり前の話だからだ。政策の良し悪しは短期的には判断できない。出口、つまり量的緩和を終えた時点で、初めてトータルに評価することができる。
そして、そのような視点から考えたとき、アベノミクスの量的緩和は、後々、間違いだったと断罪される可能性が極めて高い。このままいけば、ハイパーインフレが起きて、円が大暴落する──。私は、いまだかつてないほどの危機感を覚えている。
■年収500万円の世帯が年400万円の借金を!?
なぜ私はそれほどまでに危惧しているのか。順を追って説明していこう。
まず、現在の日本経済の状況だが、国の実力ともいうべき名目GDP(国内総生産)は、2014年度は、ピーク時の1997年と比べるとマイナス7%(自国通貨ベース)。それほど落ちていないと思うかもしれないが、その間、多くの国々のGDPは数倍になっている。中国やインド、アメリカはもちろんのこと、イギリスも20年間で2・4倍に伸びている。先進国では、日本だけが世界から取り残されている状況だ。
安倍首相は、株価が一時の低迷期から50%上がったことを自慢気に話しているが、これは息子の小学校のテストが8点から12点になって「50%も上がった!」と自慢しているようなものだ。平均点が80点の中、12点で喜んでいたら世話がない。
GDPの伸び悩みもさることながら、それに輪をかけて危機的状況にあるのが、日本の財政状況だ。2013年度の日本の公的債務残高は、1030兆円。金額で見ても、GDP比で見ても、世界最悪の状態だ。
ここまで借金を積み上げた理由は、財政赤字が20年以上も続いているからだ。2014年度の当初予算を見ても、税収+税外収入が55兆円だったのに対し、歳出は96兆円に上った。歳出に占める割合としては社会保障関係費が最も多く全体の32%、約30兆円に達している。
普通の国は、年金など社会保障を充実させれば、税金をその分高くするのが当たり前だ。日本は世界に冠たる国民皆保険というサービスがあるのだから、税金が高くてしかるべきである。ところが実際には、歳出の半分しか税金を取っていないわけだ。
この税収の不足分を補うために行なわれてきたのが、国債の発行である。2014年度は、国債などの公債金収入が40兆円以上に達している。これだけの額を国債でまかない続けた結果、借金は1000兆円というとんでもない水準までふくらんでしまったわけだ。
この異常さも、身近な例でたとえるとわかりやすい。今の日本は、550万円の収入しかない家が、毎年400万円を超える借金をして、年960万円を使い続けている状態だ。その結果、現在では1億円を超える借金を抱えることになった。これが日本の現実なのだ。
■インフレが起これば確かに借金は目減りするが……
いずれにしても、ここまで借金が積み上がってしまっては普通の方法では返済不可能だ。個人なら、とっくに自己破産している。
財政破綻を免れるための方法は、次の二つしかない。
一つは、大増税をして、かつ歳出も大幅に下げることだ。医療や年金など、必要と思われる社会保障も全部下げる。社会保障を下げたくないというなら、税金を大幅に上げなければならない。多くのエコノミストは消費税を20数%に引き上げることが必要だと述べているが、私に言わせれば、20%台なんて実に甘い見積もりである。現在の歳出をそのまま変えないとしたら、消費税は40%台にしてようやくトントンになる水準だ。
もう一つの方法は「インフレ」を起こすことだ。市中のお金を増やす「量的緩和」をすることで、意図的に通貨の価値を下げ、インフレを起こす。通貨の価値が下がれば、借金は目減りする。たとえば、通貨の価値が半分になれば、かつての100円が50円の価値しか持たなくなる。逆に言えば100万円の借金が50万円になる、というわけだ。
大増税も社会保障の切り下げも、国民の了解は得にくい。だから、安倍政権は後者を選んだわけだ。インフレターゲットを年率2%に設定し、2013年4月と2014年10月の2回にわたって、大規模な量的緩和、いわゆる「黒田バズーカ」を行なった。その結果、通貨の価値は下がり、一気に円安ドル高が進むことになった。
ここまでの借金を作った元凶は、バラマキを続けてきた自民党政権だから、安倍政権だけに罪を負いかぶせるのはフェアではない。しかし、財政破綻を免れるために、大規模な量
的緩和を行なったことは、私は間違いだと断言できる。
その理由が、冒頭で述べたように、「出口」が見当たらないことだ。
■「マネタイゼーション」で日本はジンバブエ化を!?
量的緩和を未来永劫続けることはできない。いつかはやめるという「出口」を考える必要がある。理想は、適度なインフレで借金をなくしたうえで、国民に負担をかけないかたちで収束を図る必要がある。だが、現実にはそう簡単に「着地」できるとは思えず、「ハイパーインフレ」が起こり、国を大混乱に陥らせる可能性が高い。
なぜ私がそう考えるかというと、今、政府が行なっている量的緩和は「マネタイゼーション」そのものだからだ。
マネタイゼーションとは「現金化」という意味で、この場合、国の発行した国債を中央銀行(日本の場合は日本銀行)が通貨を増発して引き受けることである。平成27年度の国債発行額は153兆円の見込みだが、そのうち、日銀は110兆円強を購入する予定だ。日本政府は入札で民間銀行に国債を売り、日銀は民間銀行から国債を買い取るというかたちを取っているので、一見、直接引き受けているように見えないが、実質的には直接引き受けと言っていい。
日銀の黒田総裁は否定しているが、発行された国債の70%を買うというのは、どう考えても、マネタイゼーション以外の何者でもない。先日、外国人の知人と話したのだが、彼などは「フルサイズのマネタイゼーションだ」と述べていた。
そもそも引き受けは、財政法第五条で禁止されている違法行為だ。政府の思いどおりにお金を刷れる「打ち出の小槌」になってしまうからだ。買いたいものがあればお金を刷ればいいとなると、政府にとってこれほど便利なものはない。
事実、財政赤字に苦しむ現在の日本にとっては、国債費の償還などのお金が払えなくなって倒産する「資金繰り倒産」を防ぐうえで非常に効果的な方法となっている。今回の量的緩和は、景気浮揚策というより、財政赤字に苦しむ日本の資金繰り倒産を防ぐことが本当の目的というのが私の見立てだ。
量的緩和が続くかぎり、日銀は、未来永劫に国債を買って、政府にお金を貸し続けなければならないことになる。そうなれば、紙幣価値はどんどん下がっていき、しまいに紙くずと化す……。
ジンバブエをはじめとした、フルサイズのマネタイゼーションをした国で、過去にハイパーインフレを起こさなかった国は、一つもない。だから、私は先行きを危惧しているのである。
■あなたは、ブレーキのないバスに乗り込んでいる
もちろん、ハイパーインフレが起きる前にブレーキをかけられれば、うまく出口から抜け出せるだろう。しかし、30年間金融の実務の世界にいて、一橋大学で13年間、早稲田の大学院で6年間教え、それなりにこの世界に精通しているつもりの私でも、どのようにブレーキをかけるつもりなのか、皆目見当がつかない。頭のいい政府や日銀の方はさぞすばらしいアイデアを持っているのだろうと、私は国会の場で、日銀の黒田総裁に「出口があるのか」「ブレーキがあるのか」とさんざん質問してきたが、回答は「時期尚早」というのみだった。
さすがにまったく考えていないわけではないだろう。おそらく、日本政府が考える出口戦略は、アメリカが行なう予定の利上げと同じ方法だと推測される。中央銀行の当座預金の利上げをすることで、利上げを誘導していく方法だ。
私たちは自分のお金を銀行に預けているが、それと同様に、民間銀行もまた、中央銀行(日本なら日銀)の当座預金にお金を預けている。銀行間のお金の移動などは、日銀の口座を利用して行なっているのだ。
そこにつける金利を上げれば、市中の金利はそれ以上に高くなる。その金利を1%に上げたと仮定しよう。民間銀行はそこに預ければ1%の金利をもらえるのだから、それ以下の金利で融資をしたり他行に貸すことはない。この方法を取れば市中の金利は1%以上となるはずだ。
しかし、残念なことに、日本において、このシナリオは絵に描いた餅である。日銀が当座預金の金利を上げることは、実際には極めて難しい。
先日、参議院財政金融委員会で質問したところ、日銀が運用している資産の利回りは昨年の9月末で0・481%ということだ。アメリカのFRB(連邦準備理事会)は、アメリカ国債やMBS(モーゲージ担保証券)など、利回りがかなり高い金融商品で運用しているので、当座預金の金利を上げるのはわけもないことだ。
一方、今の日銀が低い運用利回りのままで、当座預金の金利を上げたら、運用収入が支払い金利を下回り、損の垂れ流しになってしまう。その結果、債務超過の可能性さえある。もしそのリスクを市場が感じ取れば、その段階で円・国債・株式も大暴落して日本経済はThe Endだ。
つまり、お金をばらまくことによってインフレが加速したとしても利上げというブレーキは存在しない。たとえるなら、異次元の量的緩和は、フットブレーキもハンドブレーキもないオンボロバスを時速200キロで走らせているようなもので、第2弾の量的緩和は、そのバスのアクセルを踏み込んで、時速250キロに上げたようなものだ。みなさんは、そんなハイパーインフレ行きのバスに乗り込んでいるのである。
では、本当にハイパーインフレが起きると、どのようなことが起こるのか。そして我々はどうしたらいいのか? 続きは藤巻氏の新刊『国も企業も個人も今はドルを買え!』(PHPビジネス新書)にて!
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