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60代からでも可能! 会社の「傘の下」で起業のススメ〈AERA〉
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/733.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 23 日 07:30:20: igsppGRN/E9PQ
 

執行役員・ウェブマーケティングユニット長兼TABROOMプロデューサー塩見直輔さん(35)07年リクルート入社。出版社勤務時代から趣味について執筆。転職の目的は「ウェブメディアを自分で立ち上げる勉強をする」(写真:本人提供)


60代からでも可能! 会社の「傘の下」で起業のススメ〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151023-00000003-sasahi-bus_all
AERA 2015年10月26日号より抜粋


 こんな会社、あんな上司……会社勤めをしていれば、我慢ならないことは多いでしょう。でも、心の持ちようで、社内での環境を自分で変えることもできるのです。

 リクルートライフスタイルの塩見直輔(ただすけ)さん(35)は、10代のころから家具やインテリアが好きだった。「好きなことをビジネスにしたい」。いつか起業しようと考えていた。
 
 32歳のとき、複数の投資家の賛同も得て「いよいよ」となった。起業する考えを社内で話すと、「ウチでやってはどうか」と役員に持ちかけられた。

 当時、会社は紙メディアからITへシフトしようとしているタイミングで、マーケティングの仕事が評価された塩見さんがウェブマーケティングの部署の執行役員に任命された。ダイナミックな転換に関われるのはすごく面白いことではないか。「昔からの夢」と「今、面白いこと」のどちらを取ろう──。葛藤した末、塩見さんは両方取った。

 IT推進と同時に、13年に立ち上げた国内最大級の家具サイト「TABROOM」プロデューサーとして、それまでウェブ上にバラバラにしか存在していなかった家具の情報を一元化。270以上のブランド、400以上のデザイナーの製品12万件から自分のお気に入りを検索できるようにした。

「やりたいことが先にある。今のマーケティングの仕事が社外でもできるなら、社外でもいい。社内か社外かは関係ないんです」(塩見さん)

 社内起業に手を挙げるのは30代を中心にした中堅、というイメージがあるかもしれない。でも、50代だって60代だって、自分の強みを知っていれば遅いことはない。

 パソナの鈴木博之さん(63)、牧野純さん(57)、丹羽廣道さん(64)が社内起業した「パソナビズナイズ」は11月からサービスを始める予定だ。

 3人は勤め人としての経験が豊富なだけではない。鈴木さんは飲食関連、牧野さんはIT関連など、三様のジャンルで経営者になったこともあるのだ。パソナに転じてからは定年や早期退職で会社を辞めた人の再就職支援をしていた。彼らを相手にして、ひらめいた。再就職したい人ばかりとは限らない。起業を考えている人だっている。経営者として蓄積したノウハウを、起業予備軍に伝えて支援すれば事業として成り立たないか──。

「会社に属してきた人は経験した部門の実務しかわかりません。私たちは会社経営の実態を経験として知っている。これをリアルやオンラインのセミナーで、オープンに提供していきます」(鈴木さん)

 

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コメント
 
1. 2015年10月23日 11:05:45 : OO6Zlan35k
体は不自由だけれど、五感はさえ渡っています

ダイヤモンドダイニング社長 松村厚久氏に聞く(前編)

2015年10月23日(金)日経トップリーダー

カツオのたたきを豪快に焼き上げる、わらやきを店舗で再現した居酒屋「わらやき屋」や、不思議の国のアリスの世界を模したレストランなど、ユニークな飲食店を展開するダイヤモンドダイニングは気鋭の外食企業だ。100業態で100店舗を達成したように、多様な業態で店を展開するのはなぜなのか、創業者で社長の松村厚久氏に聞いた。
初っぱなから本題を外れますが、今年8月刊行の『熱狂宣言』という本で若年性パーキンソン病にかかっていることを初めて公にしましたね。なぜ、このタイミングだったのですか。

松村:隠しきれなくなってきたからです。言わなくても周りはみんな分かっていたと思うんですけれど、去年あたりからそれを知らない人から「昼間から酔っ払っている」とかいろいろなことを言われ、誤解されることが増えてきて、それでは社員に悪いなと思うようになりました。

 本当は一人ひとりにご挨拶に行って説明しなきゃいけないんですが、難しい病気ですぐには理解してもらえませんし、公平に伝えるには本が一番だと思いました。

 今、体は不自由だけれど五感はさえ渡っています。社長を辞めるつもりは、これっぽっちもないです。


松村 厚久(まつむら・あつひさ)氏
1967年生まれ。日本大学理工学部を卒業後、ディスコを運営する日拓エンタープライズに入社。96年エイアンドワイビューティサプライを設立し、日焼けサロンを展開。2001年に「ヴァンパイアカフェ」で外食業界に参入。02年に社名をダイヤモンドダイニングに改めた。07年大阪証券取引所ヘラクレス市場(現ジャスダック)上場。10年に100店舗100業態を達成。東証二部を経て、15年東証一部に上場(写真:鈴木愛子、以下同)
日焼けサロンの客はどう言われたいか

では、最初に始めた店について教えてください。そもそも、飲食に興味を持ったのは、学生時代にサイゼリヤでアルバイトをしたことですよね。そして日拓エンタープライズに入社し、ディスコの黒服などを経て、独立します。

松村:そうです。サイゼリヤではいろいろなことを学びました。サイゼリヤはコスト管理が徹底した素晴らしい会社ですが、僕は自分で同じことをやる自信がなかった。

 独立した当初から飲食店をやりたかったのですが、お金がなかったので、最初は日焼けサロンを始めました。僕は日焼けサロンに通う側だったので、お客さんがどうしたいか、どう言われたいかをよく分かってました。

 お客さんは、体を焼きたい。「焼けてますね」と言われたい。だから僕は「焼けてますねえ!」と声をかけて「下地ができるまでは週3回、できたら週1回でいいので通ってください」と、回数券を売っていました。完璧ですよね。そうやって店を増やしてお金を貯めて、ついに東京・銀座に飲食店を出しました。それが2001年6月オープンの「ヴァンパイアカフェ」、ドラキュラ伝説をモチーフにしたレストランです。

 いわゆるコンセプトレストランです。当時、コンセプトレストランには「内装は面白いけれど、飯がまずくてサービスが悪い」というイメージがあったので、それを一つひとつ払拭してきました。

そのヴァンパイアカフェのオープン直前、故郷の高知でお父様が脳梗塞で倒れられますね。お父様は経営する工場の拡大のため銀行から2億円を借りていて、松村さんは連帯保証人になっていました。それが原因で、ご自身の出店計画が狂いました。

松村:でも、僕はその書類にサインしていないんです。訴訟になりましたが、最後は、その書類が書かれたとき、僕が海外にいたことがパスポートから分かり、それが決め手となって、500万円で示談できました。今思うと、あれが最大の危機でした。危機一髪でした。

よく持ちこたえたと思いますが、お父様を恨まれたことは。

松村:ありません。そもそも、僕が悪いんです。僕は父に工場を継ぐと言っておきながら、継ぎませんでしたから。

その後も個性的な店づくりを進めてきて、2010年には100業態100店舗を達成しています。多様な店を出していくことは、最初から決めていたのでしょうか。

松村:同じ業態の店をいくつもやることは、僕には信じられないです。今、一部ではチェーン展開もやっていますが、僕は同じ店よりも新しい店をつくるほうが楽しいので、自分ではやりません。

 店づくりでは、お客さんから「わあ」「きゃあ」「ぎゃーっ」「かわいい」という言葉をいくつもらえるか、これを大事にしています。そのために、笑わす、驚かせる、びびらす。これに限ります。


ただ、それぞれがあまりに個性的なので、チェーン店にある画一的な「ダイヤモンドダイニングらしさ」が見えづらいかもしれません。

松村:スーパーブランドを持っている会社は、どんなに頑張って別の業態の店をつくっても、結局、全部同じになっちゃうんです。例えばワタミさんには、「和民」のほかに「わたみん家」とか「坐・和民」とかがありますが、お客さんから見ると全部和民です。でも僕らは個性的な店をやっているので、1本50円の焼き鳥を出す店も、客単価2万円の焼き鳥屋もできます。これは僕らの強みです。今度は客単価3万円のイタリアンに挑戦します。

遊びの中に仕事が、仕事の中に遊びがある

うまくいかなかった店はありませんか。

松村:あります。それはターゲットを間違った店です。東京・錦糸町に「ベルサイユの豚」を出したときには、大ヒットしました。それで第2弾を企画したのですが、ただ、当時は同じ名前の店を出すつもりはなかったので、第2弾は「黒豚のタンゴ」で行こうと。それで東京・吉祥寺に出店したんだけど、失敗した。吉祥寺のお客さんは「黒ネコのタンゴ」を知らない世代だからです。ただ、うちの会社の場合、うまくいかなければリニューアルして業態を変えることができます。

「ベルサイユの豚」にしろ「黒豚のタンゴ」にしろ、そういうアイデアはどこから生まれるのですか。

松村:「ベルサイユの豚」という店名は、家に漫画の「ベルサイユのばら」があるのを見ていて、「ベルサイユのばら、ベルサイユのばら」と繰り返し考えているうちに、電車に乗っているときに浮かんできたものです。それで、マリー・アントワネットとオスカルをこう並べて、宮殿のようなイメージでという店のビジュアルも浮かびました。

 僕は、遊びの中に仕事があり、仕事の中に遊びがあると考えています。これは遊びを正当化するためでもあるんですけれど。でも、新しい話が生まれるのは、全部、遊んでいるときです。

(後編につづく/構成・片瀬京子)

カルビー・松本晃会長兼CEOなど、著名経営者と人材教育を語り合うセミナー
日経BP社は、カルビーの松本晃会長兼CEOなど、著名経営者が登壇する、人材教育の特別セミナーを開催します。1時間の講演の後、1時間の質疑応答の時間をご用意。受講者の方々にも徹底的に討論していただける、特別なプログラムです。2日間にわたって、5人の経営者が登壇します(松本会長のほか、キングジム・宮本彰社長、柿安本店・赤塚保正社長、ダイヤ精機・諏訪貴子社長、中央タクシー・宇都宮恒久会長)。詳しい内容とお申し込みはこちらからどうぞ。


このコラムについて
トップリーダーかく語りき

自ら事業を起こし数々の試練を乗り越えて一流企業に育て上げる。引き継いだ会社を果敢な経営改革で躍進させる――。 こうした成長企業のトップはどう戦略を立て、実行したのか。そして、そこにはどんな経営哲学があったのか。日経トップリーダー編集部が創業経営者やオーナー経営者に経営の神髄を聞く。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/269473/101900017/?ST=print


2. 2015年10月23日 11:08:25 : OO6Zlan35k
人気のスラックが問う日本人の基本動作の欠如

目指せ、クラウド流免許皆伝

2015年10月23日(金)海部 美知


米国でユーザーが急増している企業向けビジネスチャット「スラック(Slack)」のサイト
 シリコンバレーで会議に出席する機会があれば、自分より前に座っているほかの出席者が、パソコンやタブレットを開いてどんな「内職」をしているか、ちょっと見渡してみると面白い。数年前はツイッター系のアプリを開いている人が多かったが、最近は、あずき色の枠で縁取られたサイトやアプリを開いている人を多く見かけるはずだ。

 それが、噂のスラック(Slack)である。どう噂かというと、売り上げマルチプル(企業評価額が年間売り上げ額の何倍か)という「ベンチャーの人気指標」で、前回に紹介した三冠王、米配車アプリ大手のウーバーテクノロジーズに迫っており、この2社がほかをダントツに引き離している、ということだ(出所はこちら)。

 スラックが提供している社名と同名の企業向けビジネスチャット「スラック」は、メッセージベースのチーム・コラボレーション・ツールである。カタカナばかりで申し訳ないが、漢字にしたらますます意味不明になるので仕方がない。

ネット上の共同作業場

 「コラボレーション・ツール」とは、プロジェクトに必要なドキュメントを保管したり、連絡やカレンダーなどの情報を1カ所に集めて、チームの中で共有するための、クラウド上の「共同作業場」だ。

 過去にも数多くあり、その昔大企業で「ロータス・ノーツ」が業界スタンダードであった時代から、もっと最近では、中小企業向けの外部サービスである「ゾーホー」や「ベースキャンプ」、「チームワーク」などがよく使われている。少々位置づけが異なる「ドロップボックス」や「エバーノート」、消費者向けには「グーグルグループ」や「グーグルドライブ」なども、仲間内で情報をシェアするために使われる。コラボ・ツールは、「クラウド時代」の中心的な存在である。

 一時人気になってもすぐに消滅したものも多く、安定した人気と思っていたエバーノートでも最近は人員削減をするなど、この分野は特に栄枯盛衰が激しい。そんな中、ユーザー数を急増させているツールとして注目されているのが、スラックだ。

 ユーザーの目から見てほかのツールと比べたスラックの特徴はというと、まず「メールではなくメッセージ」という概念が基本であることだ。重要なお知らせはスマートフォンのアラート、リアルタイムのやり取りはチャット、絵文字も使える。電子メールではなく携帯電話のテキストメッセージ(日本ならLINE)で育った若い世代に親和性のあるインターフェースである。

 次に、「たくさんの外部アプリと連携しており、高度に自動化されている」という点。例えば自分のグーグル・カレンダーに入力したミーティング日時が自動的にスラック経由でメンバーに告知されるし、参考ニュースのURLを入れればスニペット(検索結果で表示されるサイトの説明文)と写真が自動表示される。ウェブサービスやアプリとの連携を自動化するスマホ用アプリ「IFTTT(イフト)」を使えば、「こういうことが発生したらこうなる」という多種の動作を自分で組み込むこともできる。

 そして、「非定型データの蓄積とサーチ能力」。アップしたドキュメント、URLリンク、コメント、メンバー同士のチャット内容など、あらゆるものがデータとして蓄積され、単一の検索窓でサーチできる。チャットの内容や日時はそのまま記録されているので、議事録を特に書かなくても、後で簡単に見返せる。

 コンサルタントとしての私自身の仕事では、ネットで統計数字や記事を大量に集めて読むという作業が大変な割に、これまでのどのツールでも「リンク集」の使いやすいものがなかったので、ちょっとした違いながらスラックのインターフェースはありがたい。チャットが記録として残り、サーチ能力が高いことも、アプリ統合による自動化も、じーんとくるほどウレシイ。クラウドならではの「圧倒的な生産性の高さ」は、慣れてしまうともうやめられない快適さだ。

 マイナス点としては、カスタマイズする自由度が高すぎることに加え、アプリ統合も設定に一手間かかるので、初心者には少々とっつきにくいことが挙げられる。料金体系は「フリーミアム」で、無料で試せるがやや高度な使い方は有料である(といっても月7ドル程度)。


スラックを創業した起業家、スチュアート・バターフィールド氏(写真:Bloomberg/Getty Images)
 スラックの創業者は、写真共有サービス、フリッカーの創業者でもあるスチュアート・バターフィールド氏。フリッカーの後にはマルチプレーヤー・オンラインゲームも手がけており、「多人数でのデータのシェアと共同作業」の経験が深い。

 2013年にサービスを開始。アクティブ・ユーザー数は110万人と今年6月に発表されている(出所はこちら)。 爆発的に広がる消費者向け無料アプリの感覚に慣れていると少ないように見えるが、このうち4分の1以上が有料ユーザーでちゃんとマネタイズができている。さらにユーザー数の増加の勢いがよいために、会社の評価額が高くなっている。

クラウド流基本動作をマッスルメモリーに入れる

 さて、ここまで読んできて、「さっぱり意味が分からない」というあなた。私の記事を読みにくるからには、ある程度はIT(情報技術)に関わったり使ったりする仕事をしているはず、さらに私よりも年下である可能性が高い。それなのに「全然分からん」のならば、あなたこそが、私の心配のタネである。

 スラックの魅力自体は、使ってみないと分かりづらいので、それは仕方ない。ただそれ以前に、上記で言っている、ツールの使い方、ネット上での共同作業の仕方、クラウド上のモノの動き、それに対するユーザーの反応、といったクラウドを使うときの「常識・基本動作」部分が身に付いていない、感覚的に分からない人が、実は日本人ビジネスパーソン(学生も含む)に意外に多いと感じている。

 私の知る限り、日本企業では、こうした「コラボツール」を使えるところは非常に少ない。おなじみの「セキュリティーがちがち」の問題である。スラックのような外部サービス型でなくても、社内で何かツールがあればまだよいが、存在しないことも多い。あっても、「外部アプリ」にはつながせてくれない。ドキュメントにパスワードでロックをかけてメールで送るという、前時代的で実際にはセキュリティー効果は低いといわれる面倒な方式がいまだに広く使われている。そして、受け取った文書は紙にプリントアウトして読む。これらはいずれも1990年代のパソコン時代のやり方であり、そのままでは最近のクラウド流儀の「基本動作」がマッスルメモリーとして身に付かない。

 基本動作が身に付いていれば、初めてのツールを使っても「普通はこういうことができるはず」「そのためのコマンドはこのあたりにあるはず」「こういうトラブルが起こったらこう対処すればよいはず」といった感覚が無意識に働くので、初めてのツールでも少し触ってみればだいたい分かる。初めて乗るレンタカーでも、すぐに慣れるのと同じだ。

 クラウド流を使いこなせば、「あー、なんでもするーっとうまくいく、気持ちいい」というように、体が軽くなったような気分になる。しかし、パソコン時代流の状態からでは、そもそも「クラウド流」の快適さの状態を知らず、最初のハードルが高いので、入り口で挫折してしまうのだ。

差が開き始めたのは2000年代後半?

 そして、コトはコラボツールに限らない。スラックは現在のところ、まだまだシリコンバレーのベンチャー周辺のユーザーが多いが、同様の「基本動作」を用いた類似コンセプトのウェブ/クラウド系システムは、支払い、会計、税務、契約、日程管理、人事、営業・顧客管理、特定業務向けのアプリなど、あらゆる分野でアメリカ全体の一般企業に入り込んでいる。

 クラウド流を使いこなせる免許皆伝の人が、企業のいろいろな部署に相当数いなければ、日本企業はますますアメリカに生産性で後れを取り、企業は競争力をますます失ってしまうだろう。また、安倍晋三首相がどんなに頑張って旗を振っても、日本企業がシリコンバレー人を理解して仲間になることはできない。シリコンバレー人のライフスタイルは、この「クラウド流快適状態」を追求することにあるからだ。

 日本人のクラウド流習得不足には、いくつも複合的な原因がある。企業のセキュリティー方針はその一つ。実効的なセキュリティーが目的というより、「これだけやってたのに破られました」と言い訳できるための予防線というのが本音だったりする。

 また、メディアや教育界や親世代が依然として、「ITは悪である」という原則でモノを言っていることが多い。それと表裏の関係で、「便利にすること」は、すなわち「手抜き、悪いこと」という漠然とした罪悪感も漂っている。製造現場では、「こうすれば工程がひとつ省略されて○円コストが削減できる」と熱心にやっているのに、なぜかホワイトカラーの仕事では逆に無駄な工程を増やすことに熱心な人も多い。

あなたまかせの「iPhoneの罪」

 そしてもう一つが、「iPhoneの罪」である。もともと日本では「なんでもケータイ」という風潮があったところへ、iPhoneが登場して圧倒的に「消費」するだけのユーザーを増殖させてしまい、「難しいことをやらせるのは、提供側が悪い」という開き直りが正当化された。このため、自分でプログラムを書く「本職のエンジニア」はもともと一定数いるのだが、あとは徹底的に消費するだけの「ド素人」の両極に分化してしまい、「自分で便利ツールを使いこなすユーザー」という中間的な層が相対的に薄くなってしまった。

 非常に感覚的に言えば、2000年代前半の「ウェブ2.0」黎明期には、日本のユーザーはシリコンバレーの新しいサービスを積極的に取り入れ、動きにしっかりついていっていた。ところが2000年代後半から、だんだん差が開き始めたように思う。黎明期の先端ユーザーだけだった時はよかったが、クラウド流が一般企業へ浸透するフェーズにおいて差が出た、ということではないかと思う

 なにしろ、せめてシリコンバレーと付き合おうという企業の当該部署や、生産性を高めて仕事の無駄を減らす必要に迫られているワーキング・ファミリーの親御さんたちなどは、「苦手」とか「危険」とか、「便利は手抜き」とか言っていないで、一歩進んだ便利なツールを使えるように工夫して試してみてほしい。基本動作が身に付けば、意外に難しくない、ということが分かるはずだ。免許皆伝への道は、意外に短いのだ。

 そしてかく言う私も、「基本動作をマッスルメモリーに…」と唱えながら、一向にうまくならない剣道の素振りに励んでいる毎日である。

このコラムについて
Tech MomのNew Wave from Silicon Valley

ヒューレット・パッカード、アップル、インテル、グーグル──。世界のIT(情報技術)産業を牽引するこれらの米国企業を輩出し、米ハイテク産業の「聖地」であり続けてきたシリコンバレー。カリフォルニア州サンフランシスコの南方に広がるこの地は、ITバブルの崩壊を乗り越え、今なおハイテクやビジネスの新たなトレンドの発信源として世界の注目を集めている。シリコンバレー在住の経営コンサルタントでブログ「Tech Mom from Silicon Valley」の著者として知られる海部美知氏が、現地で話題のビジネスやハイテクのトレンドをリポートする。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216773/102000006/?ST=print


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