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おてごろマック、今週末の前代未聞プロモで復活に導くか?かえって悪評広がるリスクも
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12072.html
2015.10.23 文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO Business Journal
10月15日、日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長は新製品の発表会で、「10年前の『100円マック』登場以来の大きな変化だ」と自信を持って新たなメニューの投入を発表しました。
発表によれば、10月26日から“200円マック”として「エッグチーズバーガー」(略称:エグチ)、「バーベキューポークバーガー」(バベポ)、「ハムレタスバーガー」(ハムタス)の新たな3種類の商品ラインナップの提供を開始。これら200円マックとサイドメニュー、ドリンクをセットにして500円で提供するメニューを「おてごろマック」と銘打ち、顧客獲得の旗頭とすることを表明したのです。
■おてごろマックで顧客が戻ってくるかどうかは未知数
マクドナルドは東日本大震災以降、顧客のトレンドの変化が読み切れずに今年9月まで2年5カ月にもわたって顧客減少が続いています。
特に客離れを決定づけたのが、2014年7月に起こった仕入先の消費期限切れ鶏肉使用問題と、今年1月に発覚した異物混入事件。これらの事件により、マクドナルドのイメージは極端に悪化し、1月には顧客数が前年同月比28.5%のマイナスに落ち込むなど、深刻な顧客離れに悩まされることになるのです。
ただ、売上減自体は8月に一旦前年同月比2.8%のプラスに浮上するなど底を打った感はありますので、これからの巻き返しに満を持して投入したのがおてごろマックということができるでしょう。
しかし、このおてごろマックで顧客を呼び戻すことができるかどうかは未知数といえます。
というのも、今回おてごろマックの500円セットを導入するのに伴い、これまで人気の高かった昼マックの廃止を決定したからです。顧客の声を拾ってみると、昼マックが廃止されればマクドナルドに行く頻度も低くなるという意見も少なからずあります。
昼マックは350円、450円、550円のプライスラインで展開し、最低価格を比べれば、おてごろマックは150円も高い価格設定になっているのです。
■「ランチ500円戦争」におてごろマックは勝利することができるか?
消費者が1回のランチに使う平均予算は500円前後ということを考えれば、おてごろマックの価格設定は、その平均予算を狙ったものといえるでしょう。
ただ、この500円という価格帯には、強力なライバルがひしめき合っています。たとえば、ファミリーレストランのガストのランチは税別ではありますが、499円に設定されています。また最近では、全国41以上の都道府県の各都市で通常価格が700円から1000円程度のランチがワンコインの500円で食べられるランチパスポートも、女性男性を問わず人気を博しています。
さらに500円以下を見渡せば、大手牛丼チェーンの牛丼は1杯400円以下で食べることができますし、スーパーなどでは298円など低価格のお弁当の品揃えの充実を図っています。そして究極には、ランチ代を節約するために自分でお弁当をつくって持参する人も増えているのです。
このように消費者全体が外食にかける予算にシビアな時代、満を持して投入したマクドナルドのおてごろマックが、これら強力なライバルに負けず劣らずのバリューを提供できなければ、顧客をライバルから奪うどころか、逆に奪われかねない事態も十分に考えられるのです。
■おてごろマック発売日前日に前代未聞のキャンペーンを展開
マクドナルドは今回のおてごろマックを強力に推進するために、前代未聞のプロモーションをぶち上げます。それが、全国発売予定日の前日、10月25日の14時から17時限定で、なんと30万人に新メニューである200円マックを無料で提供するキャンペーンを実施すると発表したのです。
このマクドナルドの無料キャンペーンと聞いて、ピーンときた方もいらっしゃるかもしれません。
そう、かつてマクドナルドは、プレミアムローストコーヒーを発売した際に、無料キャンペーンを展開して多くの顧客を引きつけ業績アップにつなげた成功体験があるのです。今回は商品をコーヒーからハンバーガーに変えて無料キャンペーンを展開することにより、「かつての成功よ、もう一度」という思いを込めているのでしょう。
ただ、コーヒーとハンバーガーでは原価に大きな違いがあることを考えれば、前代未聞のキャンペーンといえなくもありません。恐らく、30万人もの顧客に今後自社の主力となる商品をいきなり無料で提供した前例は、あまりないのではないでしょうか。
マクドナルドにとって、この前例のない無料キャンペーンを展開するに当たり、いくつかの狙いが考えられます。
まず1つ目には、前代未聞のプロモーションを展開することにより、テレビなどのニュースで取り上げてもらい、パブリシティとしておてごろマックをプロモーションしていくという狙いです。
今回のキャンペーンは、日にちと時間が限定されており、恐らく開始直後の10月25日の14時にはマクドナルドの店舗に顧客が殺到することが予想されます。この前代未聞のプロモーションと顧客が店舗に殺到する様子は、マスメディアにとって格好のニュース材料であり、当日は多くのメディアが取材に訪れる可能性が高いでしょう。数多くの全国ネットで取り上げられれば、広告費に換算して数億円の効果を得ることもできるでしょう。
たとえば、このキャンペーンにかかるコストは、200円マックの原材料費が30%と仮定すると、60円×30万人=1800万円であり、昨年度の販売促進費として11億円、そして広告宣伝費として59億円を計上しているマクドナルドにしてみれば、微々たるものです。このコストで数多くのメディアに取り上げてもらうことができるのなら、費用対効果は相当に高いという算段を立てることもできるのです。
続いて2つ目には、インターネットによる拡散を狙っているという点です。
今回のキャンペーンは、誰でも無料でハンバーガーがもらえるわけではなく、おてごろマックの愛称にちなんで、「エグチ」「バベポ」「ハムタス」という名前、もしくはニックネームを持つ者のみが対象になっています。「エグチ」はともかく、「バベポ」「ハムタス」という名前の人は恐らく存在しないでしょうから、わざわざFacebookやTwitterなどのSNSで名前を変更して無料のハンバーガーをゲットしようとする人が続出すると睨んでいるのです。結果として、一気におてごろマックのラインナップの愛称がソーシャルネットワーク上に拡散し、コストをかけずに口コミでより多くの潜在顧客に伝わるというシナリオが描けるのです。
そして最後の3つ目には、クロスセリングによって、トータルで利益を上げることを狙っているという点です。
一般常識から考えて、無料のハンバーガーだけをもらいに来店するというのはなかなか気まずいものです。そこで、店員から「ポテトとドリンクもご一緒にいかがでしょうか?」と声を掛けられれば、ハンバーガーが無料なだけに追加で注文する顧客も一定数に上るはずです。
マクドナルドでは、特にポテトやドリンクの原価が低く、もし定価でポテトやドリンクを追加した場合は、ハンバーガーを無料で提供したとしてもトータルで利益が出る可能性があるというわけです。
このようにハンバーガーは無料で提供しますが、マクドナルドとしてのコストは最小限にとどめられるどころか、うまくいけば十分なメリットを享受することもできるキャンペーンともいえるのです。
■一方で、無料キャンペーンには大きなリスクも……
無料でハンバーガーを配れば、もちろん多くの顧客が来店するはずです。そして、このキャンペーンによって、2年5カ月にわたって続いた顧客の減少についに終止符を打つことができる可能性も高まったといえるでしょう。
ただし、この無料キャンペーンは数々のメリットと同時にマクドナルドにとって大きなリスクをもたらすことも考えられます。
1つ目は30万人が一斉に全国のマクドナルドに押し掛けることにより、店舗のオペレーションに混乱を来たし、逆に悪評が広まることもあるかもしれないというリスクです。
現状のマクドナルドの店舗は全国におよそ3000店なので、30万人が均等に来店したとすると1店舗あたり100人です。3時間のキャンペーンですから、1時間あたりは33人、10分あたりまでドリルダウンすると5人〜6人と1人2分弱で注文をさばくことができれば計算上は問題ないように感じます。ただ、通常は30万人限定とすれば、我先にとキャンペーンの開始直後に来店することが考えられますので、都心など特定の店舗に予想をはるかに上回る顧客が集中することも十分に考えられます。そこで、店舗のオペレーションに混乱を来たしてハンバーガーが提供できないような状況になれば、かえって顧客の不満が爆発し、インターネット上で散々な評価が拡散するリスクもあるのです。
また2つ目として、いきなり新製品を無料で提供することによって、顧客に「おてごろマック=価値のないもの」というイメージが植え付けられるリスクもあるでしょう。
もし、カサノバ社長が宣言したように、おてごろマックが本当に価値の高い商品であれば、値引きせずとも顧客は喜んで購入するはずです。それを最初から無料で提供してしまえば、いきなり商品自体のブランドや価値が毀損され、200円という定価で販売したときに、誰も見向きもしなくなる危険性があるのです。
果たして、これらのリスクを乗り越え、かつてプレミアムローストコーヒーで成功したように、今回のキャンペーンが再びマクドナルドの輝きを取り戻すきっかけとなるのでしょうか?
その成否に注目が集まります。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)
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