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杭工事に関するお詫びとお知らせ(「旭化成建材 HP」より)
横浜マンション傾斜、データ偽装の旭化成建材に広がる「経営危機」懸念
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12074.html
2015.10.23 文=編集部 Business Journal
子会社の旭化成建材による杭打ち工事データ偽装が発覚した旭化成の株価下落が止まらない。業績悪化の不安から10月20日の株価は前日終値比29.5円安の700.5円。一時、693.6円(36.4円安)まで下げ、年初来安値を更新した。問題が発覚した14日から終値で217円下落したことになる。
旭化成の浅野敏雄社長は20日、子会社が杭打ちを手がけた横浜市都筑区のマンションが傾いた問題で初めて記者会見した。責任の所在をめぐっては、販売元の三井不動産レジデンシャルや工事元請けの三井住友建設との間でずれが見えた。
偽装が発覚したマンションは全4棟。旭化成はこの日の会見で、傾いた1棟については調査、補強、改修にかかる費用を全額負担すると表明した。一方の三井不動産レジデンシャルは全棟の建て替えや部屋の買い取り、住民の精神負担への補償などを検討すると表明している。こうした費用について浅野社長は「売り主や施工会社と誠意をもって協議する」と述べるにとどまった。
仮に4棟すべてを建て替えるとなると、買い取りや住民の引っ越し費用を含めると300億円以上かかるとみられる。三井不動産レジデンシャル、三井住友建設、旭化成建材の建て替え費用の分担についての交渉は難航が必至だ。
旭化成建材がこの10年間に杭打ち工事を請け負った全国の物件3000棟についてもデータ偽装の有無などを調査し、22日に国土交通省に報告する。同様の問題が発覚すれば、費用はもっと膨らむ。「売上高644億円(15年3月期)の旭化成建材の支払い能力から、一気に経営危機に陥る懸念も広まってる」(市場筋)。
■親会社にとっても大きな痛手
注目されるのは旭化成の15年9月期(4〜9月)中間決算である。11月6日に発表する。補強、改修、建て替えに備えて、どの程度の引当金を積むかが焦点となる。旭化成は16年3月期までの5カ年の中期経営計画を立てている。同計画では16年3月期の目標を売上高は2兆円、営業利益は1600億円としている。問題発覚までは順調に推移しており達成は確実と見られていた。だが、杭打ち偽装で暗転。業績の大幅な下方修正をせざるを得ない。
旭化成の事業は今回問題を起こした住宅・建材、創業事業であるケミカル・繊維、エレクトロニクス、ヘルスケアの4つに分けられる。旭化成の15年3月期決算は絶好調だった。売上高は前期比4.7%増の1兆9864億円、営業利益は10.2%増の1579億円、純利益は4.3%増の1056億円。売上高、利益ともに2期連続で最高を更新。
住宅・建材事業は戸建て住宅「へーベルハウス」の旭化成ホームズのほか、リフォーム事業、断熱材の製造・販売を行っている。売上高は6038億円、営業利益は630億円。全社の営業利益の4割を稼ぎ出した。海外で高機能樹脂、繊維などの販売が好調なケミカル・繊維事業と肩を並べるドル箱である。住宅・建材は収益の大黒柱だ。
耐久性が高いと評判のへーベルハウスは、9月に茨城県で発生した鬼怒川堤防決壊の際、濁流に流されなかったことで話題になった。だが、今回の事故でブランドイメージは傷ついた。差し引きゼロどころかマイナスである。受注に影響が出ることは避けられない。稼ぎ頭だっただけに大打撃だ。
■ワンマン経営
旭化成の創業者は日窒コンツェルン創始者の野口遵氏。1922年に宮崎県延岡市で旭絹織を設立して、合成アンモニアを製造したことに始まる。敗戦後の46年、商号を旭化成工業(現・旭化成)に変更。チッソ、積水化学工業は、日窒コンツェルンから分かれた同根の会社だ。60年に発売した食品包装ラップの代名詞ともなった「サランラップ」の爆発的なヒットで知名度は全国区になった。72年に「ヘーベルハウス」ブランドで住宅事業に本格参入した。
旭化成では戦後、宮崎輝氏と山口信夫氏という「2人の長老」(業界筋)が長きにわたり経営の実権を握ってきた。92年に現職会長のまま82歳で死去した宮崎輝氏は敗戦直後、37歳で取締役に就任。取締役歴は半世紀近く、社長・会長として30年近く存在感を示し続けた。
バブル崩壊後、野村證券などの4大証券で損失飛ばし事件が発覚し、住友銀行(現三井住友銀行)では反社会的勢力に取り入られるイトマン事件が起きた。この時、宮崎氏はこう発言した。
「問題を引き起こしている野村證券や住友銀行は若返りを進めたため、若い役員が多い。こうした人が収益を上げようとがんばったことが今回の不祥事が起きたひとつの要因ではないか。老害ばかりいわれるが、若害も考えなくてはいけない」
その宮崎氏に「陸士(陸軍士官学校)トップならオレの秘書をやれるだろう」と引っ張られたのが山口氏だった。秘書室長、総務部長として宮崎氏に仕えてきた山口氏は、92年に宮崎氏が現職会長のまま死去すると、会長の椅子を引き継いだ。山口氏は社長を務めたことはないが、会長としての在任期間は18年に及び、10年9月に名誉会長として85歳で亡くなるまで代表権を手放さなかった。人事権を握り旭化成のドンとして君臨した。この間、日本商工会議所の会頭を務めた。
「宮崎氏と山口氏は、引き際を誤った。杭打ち工事のデータ改ざん事件を起こした旭化成建材の親会社、旭化成は2人のドンが君臨したワンマン会社だった」(業界筋)
今回の事件は、こうした旭化成の負の遺産が一気に露呈した結果なのかもしれない。
(文=編集部)
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