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日本郵便本社ビル(「Wikipedia」より/Rs1421)
郵政上場の裏でトンデモない異常事態 金融業界の露骨な「儲け主義」横行
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12041.html
2015.10.22 文=編集部 Business Journal
日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のいわゆる郵政3社の株式新規公開(IPO)を11月4日に控え、投資家への営業が始まっている。販売は順調と報道されているが、その内実はかなりゆがんだ状況となっている。
というのも、3社が売り出す株式の99.5%を、わずか61社の引き受け証券が担う構造となっているからだ。しかも、主幹事証券は大和証券、野村証券、みずほ証券、SMBC日興証券、岡三証券、東海東京証券、三菱UFJモルガン・スタンレー(MS)証券、ゴールドマン・サックス(GS)証券、JPモルガン証券の9社。この中からさらに、野村ホールディングス(野村証券の持ち株会社)、三菱UFJMS証券、GS証券、JPモルガン証券が、アジアや米欧への売り出しも担うグローバルコーディネーターとして選定されている。
この結果、中堅証券や大手証券系ではないインターネット証券にはほぼ3社株式の配分がないと見られる一方、主幹事証券、とりわけグローバルコーディネーターには潤沢な数量が配分されることが確実。ある地方の中堅証券の幹部は「顧客から問い合わせがあり、新規の口座を作ってもらって待機してはいる。ただ、実際は1株の配分すらない可能性がある」とため息をつく。また、都内の比較的大きめな独立系証券も、「大口顧客にも、配分を期待しないようにと説明した」(執行役員)としている。
その一方で、大手証券では三菱UFJMS証券がダイレクトメールや休日の電話攻勢で営業をかけているもようだ。同じグループの東京三菱UFJ銀行でも証券仲介口座を利用して顧客に接近しているという。それでもまだ余っているとの見方もある。野村証券でも大口顧客からの引き合いが活発だが、当局から新規の個人投資家を開拓せよとの要請があり、販売はむしろ苦戦気味との情報が流れているのだ。つまり、欲しいところにはほとんど配分がなく、大手ではむしろもてあまし気味という異常事態になっているのだ。
さらに、価格形成に重要な影響を与える国内機関投資家は現時点で3社の株式を保有しておらず、ブックビルディング(需要予測)での獲得や大手証券からの配分待ちの状況。不足分は上場後の買い付けとなる見通し。一方、外資系証券は海外の年金など大口投資家に販売していると推計されるなど、大口でも対応が分かれている。某国内大手では「3社は12月末にTOPIX(東証株価指数)に採用されるため、それに合わせて(保有資産がインデックスに連動するように)新規に購入せざるを得ない」としていた。IPOに参加できない恨み節にも聞こえる。
■銀行、異例の投信を販売
こうした郵政3社のIPOの混乱がある中で、銀行はとんでもない投資信託の販売を始めている。
三井住友信託銀行が10月15日から販売しているのは「日本郵政株式/グループ株式ファンド」(運用は日興アセットマネジメント)がそれだ。日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社のみを組み入れた投信である。郵政3社については株式なので、今回銀行は基本的には蚊帳の外だ。しかし、投信にして販売すれば、販売手数料や信託報酬というかたちで収益化できる。
3社しか組み入れない投信など、かつて存在しなかったものだ。申し込み手数料は1.62%(税込み)、信託報酬は年0.6912%(同)で、1万円から投資できるという。100万円申し込んだら、手数料として1万6200円が取られ、毎年6912円が信託報酬として差し引かれるのである。郵政3社を直接ネット証券で同額買えば、もちろん信託報酬などなく、手数料もはるかに割安で済む。
投信会社が信託報酬を取るのはプロが多くの銘柄に投資するので、システムや人件費などの運用コストを投資家に求めるため。3銘柄しか投資しない投信に、高い手数料と信託報酬が発生するなど、銀行の儲け主義以外の何ものでもない。しかし、銀行ではおそらく「今話題の郵政3社が、お手軽な価格で購入できます」などというセールストークで個人投資家に売っているに違いない。10月16日現在で、純資産額はなんと約65億円に達している。信託報酬は4億円を軽く超える計算だ。
郵政3社のIPOは、後々に禍根を残しそうな状況なのである。
(文=編集部)
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