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JASRAC本部(「Wikipedia」より/Kamemaru2000)
エイベックス離脱でJASRAC「離れ」加速か 崩れる独占、事業に違法の疑いも
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12033.html
2015.10.21 文=編集部、協力=山岸純/AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役・弁護士 Business Journal
エイベックス・グループ・ホールディングス(以下、エイベックス)が、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に委託していた約10万曲の楽曲管理を、系列会社のイーライセンスに移すことが明らかになった。
JASRACは放送局、レコード会社、カラオケ店などから著作物の使用料を徴収、著作権者に分配する業務を行っているが、著作権管理がJASRACの独占状態にあることで、「音楽業界の活性化を妨げている」という指摘が以前からされていた。
今年4月には、最高裁判所がJASRACと放送局などとの契約方式について「他業者の参入を妨げており、独占禁止法違反の疑いがある」「市場支配力の維持や強化のため、正常な競争手段を超えて、包括徴収方式での事業を行った」と判断しており、司法判断に続いてエイベックスが離脱したことで、今後の業界動向が注目されている。
音楽著作権の問題について、AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役で弁護士の山岸純氏は、次のように解説する。
「もともと日本では、他人が作曲した音楽などを演奏することに対して『お金を払う』という文化が発達していませんでした。昭和6年、これを逆手に取ったウィルヘルム・プラーゲというドイツの外交官が『私は、ヨーロッパの音楽の著作権を管理している者である。ヨーロッパの音楽を演奏するなら、私に金を払え』と主張、当時の放送局やオーケストラなどに対して、演奏許可料を請求する事件が発生したことがあります。
当時は、インターネットや国際電話などの便利な通信技術もなかったため、プラーゲの主張が正しいのかどうかもわからず、日本の音楽業界は混乱に陥りました。そこで、日本政府は『外国人に好き勝手にさせるな』とばかりに『著作権に関する仲介業務に関する法律』を制定し、著作権を管理する業務は当時の内務省の許可を得た者に限ることにしました。
要するに、国のお墨付きを得た団体のみが(1)他人の著作権を管理して、(2)演奏許可料などを徴収することができる、としたわけです。この時、唯一国のお墨付きを得て著作権管理を開始したのが、JASRACの前身である大日本音楽著作権協会でした。この時、実質的に日本国内で著作権管理業務を独占して行う団体が誕生したわけです」
●独占禁止法とJASRAC
国のお墨付きを得て誕生したJASRACだが、現在はその独占性が問題視されているわけだ。市場の公正な競争を維持するための「独占禁止法」について、山岸氏は以下のように語る。
「一部の者があるビジネスを独占してしまうと、新しい考えが生まれなくなり、そのビジネス自体の発展性がなくなってしまいます。また、そのビジネスの価格が一部の者の考えに左右されてしまい、国民経済が阻害されるという弊害があります。同法の目的はいろいろありますが、それらを防ぐのがひとつの目的です。
同法で禁止されている独占行為は、『オリンピックの100メートル競走でA国が金メダルを獲得する方法』に例えることができます。
(1)他の出場者と協定を結び、“八百長”により金メダルを獲得する
(2)出場者全員で同時にゴールして、金メダルを獲得する
(3)出場者全員をA国の選手にして、誰かが金メダルを獲得する
JASRACのビジネスモデルは、最高裁から『他業者の参入を妨げている』と注意されるなど問題視されていますが、これは決められた使用料を支払えばJASRACが管理する楽曲全部を使用できる『包括徴収方式』についての指摘です。それを踏まえて上記の例に当てはめると、JASRACの独占行為は(3)に近いと考えることができます。
JASRACは、日本のほとんどの楽曲の著作権を管理していることから、事実上『同協会と契約をしない限り楽曲を使えないが、契約をすればほとんどの楽曲を使うことができる』という関係を構築しています。前述の例でいえば、『A国は金メダルを獲得したいので、出場者全員をA国の選手とする。また、オリンピックで金メダルを獲得したければ、A国の国民にならなければならない』という構図になります」
●事実上、他者の参入が困難だった著作権管理事業
JASRACは、著作権管理のシェア約99%を持っているといわれる。これまで、JASRAC以外の著作権管理事業者が少なかったのには、どういった背景があるのだろうか。
「JASRAC以外に著作権管理業務を行いたい者がいれば、楽曲の著作権管理を委託してくれるように、作曲家やアーティスト一人ひとりに『JASRACではなく、私に楽曲の著作権管理を任せてください』と地道にオファーをしていけばいいわけです。しかし、これは現実的には困難な作業であることは明らかです。
他方で、今回のエイベックスのように多くの作曲家やアーティストと関係があり、すでに彼らの著作権を管理できる状態であれば、すぐに著作権管理業務を始めることができるでしょう。このように、JASRACの問題は、歴史的経緯からJASRACに著作権管理業務が集中してしまい、結果として他者が参入してこなかったという事情も一因です」(山岸氏)
今後、エイベックスを皮切りにJASRACからの離脱が増えれば、閉鎖的だった著作権管理事業に競争が生まれ、音楽市場の活性化につながることが予想される。
文=編集部、協力=山岸純/AVANCE LEGAL GROUP LPC執行役・弁護士
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