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「手足がもげるまで働け」残業87時間で残業代ゼロ…1日22時間労働、24歳社員死亡(Business Journal)
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/672.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 21 日 00:21:00: igsppGRN/E9PQ
 

                空間デザイン会社「グリーンディスプレイ」の昨年の新入社員、渡辺航太さん(遺族提供)


「手足がもげるまで働け」残業87時間で残業代ゼロ…1日22時間労働、24歳社員死亡
http://biz-journal.jp/2015/10/post_12036.html
2015.10.21 文=佐藤裕一/回答する記者団 Business Journal


「ハローワークにある仕事なら安心だと思っていました」

 ケアマネジャーをしている渡辺淳子さんは、息子の航太さん(享年24歳)の就職先について、そう話した。

「求人票に真実が記載されていれば、息子は入社しなかった」

 航太さんが昨年3月に入社したのは、東京都世田谷区に本社のある空間デザイン会社、株式会社グリーンディスプレイ。植物を使った空間演出を手がけ、有名ホテルや百貨店などの植栽を受け持っている。

「テレビで銀座の飾りつけを見ては『あれはうちがやったんだよ』とか、六本木が映れば『あそこはうちがやったんだよ』と、目がキラキラしていました」(淳子さん)

 しかし、入社翌月の昨年4月24日、夜勤明けの帰宅中に原付自転車で単独事故を起こし、死亡した。原因は航太さんの居眠り運転とみられるという。

 会社のタイムカードによると、航太さんは事故前日の午前11時ごろ出社。約22時間後の24日午前8時50分ごろに退社するまで、記録上の労働時間は約17時間に上る。

■「事故防止」重視して会社選び 家族と相談し方針明確に

 2013年春に都内の大学を卒業した航太さんは、同年9月、東京西部のハローワークで求人票を見ていた。

 希望するのはデザイン関係の正社員だが、家族と相談して、会社を選ぶにあたって譲れない方針を2つ決めていた。ひとつは夜勤がないこと、もうひとつは自動車通勤が禁止されていること。

 これは、介護業界で働く淳子さんが、夜勤での自動車運転が、どれほど注意していても危ないことをよく知っていたからだ。淳子さん自身、夜勤とマイカー通勤が常識で事故が多発している介護施設を避け、居宅介護支援事業所を勤務先に選んでいる。

 そんな希望と方針にちょうど合致したのが、グリーンディスプレイだった。

 同社の取引先はなかなか魅力的だ。日本橋三越や六本木ヒルズ、和光銀座本館、大丸松坂屋百貨店、JR東日本企画(アトレ)、第一ホテル東京、ホテル日航といった有名どころが同社ホームページに並ぶ。

 淳子さんによると、航太さんが業界を調べたところ、同社は業界内で手がける分野が広いそうだ。支店も、札幌、仙台、名古屋、神戸、福岡と全国展開しており、今後のキャリア展開に有利になるとの考えもあったらしい。

 だが、内定には至らなかった。

 その代わりか、同社からアルバイトの誘いがあった。正社員採用への期待を持ちつつ、10月16日に航太さんはアルバイトとして入社し、横浜市内の拠点に配属された。

 ちょうど季節は秋から冬へ。クリスマス、年末、正月、バレンタイン、ホワイトデーと大きなイベントが続く直前だった。

■「夜勤なし」のはずが……

 航太さんのタイムカードを見ると、出社はおおむね午前8〜9時台で、入社後の1週間は遅くとも午後7時20分までに退社の打刻がある。しかし、仕事を始めて1カ月ほど過ぎたころには、午前3時台の退社が現れ始めた。出社は午後3〜4時台の日もあるが、いつもどおり午前9時台の記録もあった。

 深夜に仕事が終わっても電車は動いていない。仮眠室はあったが、上司や先輩、女性社員に配慮してソファなどで寝ることが多く、十分な仮眠は取れなかった。自宅で休むために原付自転車が必要だった。

 この段階で、ハローワークに出ていた求人票とは実態が異なっている。求人票が正社員を対象としていた違いはあるが、アルバイトといえども、航太さんの会社選びの方針は安全面から導かれたものだ。

 それでもグリーンディスプレイを辞めなかったのは、希望する業界で正社員になれる可能性を捨てていなかったからだ。

 アルバイト開始後の様子について、淳子さんはこう振り返る。

「クリスマスシーズンに向けて仕事を始めて、『がんばれば内定通知が来るよね』という話をしていました。会社がどう言ったかわからないけれど、私たちは試用期間だととらえていました」

「年が明けてだんだんと疲れてくる様子があった。『ちょっとブラックかな』という話はしていました。それでも、仕事はすごく楽しいと言っていました。ただ、2月ごろにはさすがに本人も、『いくらなんでも体がもたない』と思ったようです」

■長時間労働、パワハラ、侮辱 「手足がもげても働け」

 1カ月ごとの残業時間は正確な記録が残っていないため、わからない。休憩をすべて取得した場合の残業時間は、アルバイトを始めた直後の1カ月が約84時間となる(所定労働時間173時間で計算)。休憩をすべて取った場合、これ以降の残業時間が月80時間を超えることはない。

 ところが、淳子さんによると、会社の言う休憩は車での移動中や待ち時間に取ったものであり、実質的には休憩にあたらないという。移動中は、運転する先輩社員から「寝るな、道を覚えろ」と叱責されていたそうだ。

 そこで、休憩は取れなかったものとして残業時間を計算し直すと、最初の2カ月は国の過労死認定基準を上回り、正社員登用直後の1カ月も87時間23分に達した。そのうえ、上司や先輩社員からは「手足がもげても働け」「苦しい顔をするな、いつも笑っていろ」「さすが平成生まれ」などのパワハラや侮辱を受けていたという。

 14年3月末からは不規則労働も著しく、睡眠サイクルの乱れからいつ事故が起きても不思議はない状態だった。もちろん、航太さんも淳子さんも労働実態のおかしさには気付いており、その時点でアルバイトを辞めることを考え始めていた。

■正社員になっても…

 それでも、仕事への関心の高さは維持されていた。尊敬する先輩社員もおり、近いうちに正社員登用の面接もあるだろうとの期待もあったからだ。働き続けていれば、20年の東京オリンピックにも仕事を通して関わる見込みがあった。

 正社員登用の話があったのは、まさにそんな時期だ。

 航太さんの死後にわかったことだが、淳子さんが同僚社員に話を聞いたところ、昼夜を問わないような働き方をしていたのは航太さんだけだったと証言したという。

 航太さんにすれば、現状が厳しいのはアルバイトだからで、正社員になれば求人票通りに、夜勤なし、マイカー通勤不可が適用される見込みがあった。おそらく本人はそう思ったのだろう。

 そして、アルバイト開始からちょうど5カ月後の14年3月16日、航太さんは正社員に登用されたが、最後の期待が裏切られた。正社員登用後の1カ月の残業時間が約87時間だったことは前述の通りだ。

 さらに、4月16日から死亡前日(23日)も、勤務日数が5日なのに対して、会社の記録上の労働時間は60時間42分に上る。1週間の所定労働時間(40時間)を20時間以上オーバーし、4週間で見込まれる残業時間は80時間を超える。

■基本給は5万8000円

 事故前日の23日午前1時ごろ、航太さんは22日の作業を終えて帰宅し、食事もとれないまま、着替える間もなく倒れるように寝入ったのを淳子さんが見ている。

 23日午前11時ごろ、再び原付自転車で出社。電車を使わなかったのは、作業の終了時刻がはっきりしなかったからのようだ。

 退社できたのは約22時間後の24日午前8時50分ごろ。夕方から翌週の作業予定のミーティングがあるため、少しでも多く休息を取ろうと、航太さんは仮眠せず原付自転車で帰宅中、事故を起こした。

 この日は、正社員としての初任給振込日の前日でもあった。

 航太さんは自分の初任給の明細書を見ることができなかったが、後日、淳子さんが会社から受け取った給与明細書によると、基本給はわずか5万8080円で、休日・時間外手当は空欄だった。

■グリーンディスプレイの主張

 この事件は現在、遺族が会社を相手取って損害賠償の支払いを求める裁判を起こしている。訴状によると、会社には勤務シフトを調整して睡眠不足や過労状態を避ける安全配慮義務があったが、会社がこれを怠ったとするのが遺族の主張だ。

 提訴は航太さんの死亡からちょうど1年目の今年4月24日。横浜地方裁判所川崎支部で審理が進められており、会社側は、業務と航太さんの死亡には因果関係がないなどと反論している。航太さんの死亡は、通勤災害の認定を受けている。

 現在までの会社側の主な主張は以下のとおり(要点のみ、筆者まとめ)。
・従業員の健康管理は最大限していた。
・航太さんが休憩を取らず連続して労働していた事実はない。
・仮眠室では快適に睡眠を取ることが可能である。
・事故は居眠り以外の原因による可能性を否定できない。
・23日に原付自転車で出社したのは航太さんの都合である。
・事故当日は鉄道で帰宅できたので使うべきであった。
 同社は、「裁判で粛々と主張していく」と述べている。
(文=佐藤裕一/回答する記者団)

※より詳しい内容は「MyNewsJapan」または「回答する記者団」でご覧いただけます。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2199
http://kishadan.com/report/read.cgi?id=201510072033043


 

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コメント
 
1. 2015年10月21日 00:52:17 : k5G8VGOScY
パソナ系列だったのでしょうか?それとも極悪宗教関連組織だったのでしょうか?
ワタミ関連だとか?いずれにしても最悪レベルの企業ですね。
老人介護で若年層が亡くなるのは本末転倒です。

2. 2015年10月21日 05:15:39 : N8fwunSifE
夢ってな、弱みなんだよ、日本では。

3. 2015年10月21日 07:00:00 : nJF6kGWndY

今後も景気改善が続き、人手不足が厳しくなっていけば過去の話となるが、どうなるかなw



4. 2015年10月21日 08:10:08 : jXbiWWJBCA
【第6回】 2015年10月21日 
内藤忍先生に学ぶ「投資家」と「資産運用」の話
お金の謎を解く冒険。今回は「投資家」という生き方と「資産運用」の具体的なお話を伺います。先生は資産運用のプロ・内藤忍さんです。「投資家とはお金の経営をする人のこと」と定義する内藤さん。ぼーっとしていてはお金は増えていかないこの時代、自分のお金をどのように運用すればいいのでしょうか? お金の本質が見えれば、人生が開かれる! 人気投資マンガ「インベスターZ」とのコラボ企画。最高の講師をお迎えして、お金の授業がいま始まります!!
取材・構成:岡本俊浩/写真:加瀬健太郎/協力:柿内芳文(コルク)

話題の投資マンガ「インベスターZ」とは
中学生が株式投資!? 世界一タメになるお金漫画、誕生!創立130年の超進学校・道塾学園にトップ合格した財前孝史。入学式翌日に明かされる学園の秘密、それは各学年成績1位のみが参加する「投資部」が存在することだった。少年よ、学び儲けよ!そして大金を抱け!! 投資部・財前の「株儲け」がいま、幕を開ける。
インベスターZ(1)フルカラーを読む

<今回の先生>


内藤 忍(ないとう・しのぶ)

1964年生まれ。東京大学経済学部卒。91年MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。東大卒業後、住友信託銀行、シュローダー投信投資顧問で資産運用に従事。99年、マネックス(現・マネックス証券)の創業に参加。マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長 などを経て、12年に資産デザイン研究所を設立、代表取締役。現在は、早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学で講師も行う。また投資家の集まるワインバー「SHINOBY`S BAR 銀座」オーナーとして飲食店経営にも関わる。著書に『10万円から始める![貯金額別]初めての人のための資産運用ガイド』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『内藤忍の資産設計塾』シリーズ(自由国民社)などがある。

人生には「2つの制約」がある

 人の一生には、2つの制約があります。

「お金」と「時間」です。

 どちらも無限大に使えるとしたら、それはもう贅沢極まりない人生でしょうが、そう甘くはありません。

 なかでも「お金」は、働かない以上手に入れることができません。

 だから、誰もが大人になると働きに出るわけですよね。

 ただし、働けば働くほど「時間」はなくなってきます。

 人生、仕事がすべてではありません。暮らしや子育て、友だちと過ごす時間、趣味、あるいは勉強や旅——誰もがそれぞれ、やりたいことがあるはず。

 なぜ働くのかというと、やっぱりそれは幸せになるためだと思うんですが、働けば働くほどに時間はなくなるわけです。

 この矛盾。お金と時間のバランスをとるにはどうしたらいいんだろうか。このことを、もう一度問い直してみるべきだと思うんですよ。

 世の中には数多くの職業がありますが、ひとつ言えるのはこの区分けです。

「労働者」と「経営者」の2つ。

 でも、労働者が自分の時間を自由に使えるかというと、そうではありませんよね。

 こんなことがありました。

 私は投資セミナーやワークショプをやっているんですが、この何年かで海外ツアーもやっています。

 海外不動産の投資を目的とした視察ツアーですね。カンボジアからアメリカまで、いろいろ出かけてきました。

 参加者は大企業のサラリーマンばかり。

 ツアーの日程はこうです。土曜の朝に出て、火曜日に日本に帰ってくる。3泊4日。ゆっくりした日程である理由は、単に物件を見るだけでも味気がないですし、現地でおいしいものも食べて、参加者同士で交流も深められたらいいよね——という狙いからなんですが、多くの参加者が口をそろえてこう言うんですよ。

「内藤さん、月曜の朝は全体会議があるから、ムリムリ。帰らなきゃ」

 企業に勤めているんだから、仕事の都合はあるでしょう。自分もサラリーマン経験がありますから、わかります。

 でも、一方ではこうも思うわけですよ。

「本当に月曜の朝から、やらなきゃいけないこと満載なのか」

 ですから、こう尋ねました。

「何か発表とかあるんですか」

 そしたら、ある方からこう返ってきました。

「ないです。でも……出ないと、なんかちょっとまずいんですよ。情報共有しなきゃいけないし」

 なんかちょっと、まずい。

 微妙な表現に、「立場」を感じずにはいられませんでした。

 しかし、ですよ。単なる情報共有だけなら、メールでもいいわけですよね。もっと言うなら、有給を年間に1日、2日とったって、会社全体のパフォーマンスにどれだけ影響が出るのかというと、出るわけがないですよね。大きな会社なんですから、バックアッパーがいるのが当然なんです。

 よく考えたら、それは一目瞭然のはず。

 それでも、労働者は自分の時間を会社に捧げている。もしかしたら必要以上に。

 有給に限らず、年に1度の長期休暇をとるんだって大変でしょう。

 同僚や部下への引継ぎをし、前後のスケジュールは圧迫されるからかえって忙しくなってしまったり。休暇先でもなんだか申し訳ない気分になるから、空港でクッキーを買いこんでみたり、なんだかもう——。

「お金を経営する」仕事がある

 では、「経営者」になったら、時間的制約から自由になれるのかといえば、そんなこともありません。

 自分も小さいながらも会社をやっていますから、日々実感するんですが、人は思い通りには動いてくれないんです。むろん、予想すらしない動きをして、高いパフォーマンスを発揮してくれることもあります。

 ただ、ならして見てみると、会社経営って、とてつもない時間へのコミットメントを必要とするものなんですよ。経営者で左団扇なんていうのは、あり得ないんです。ユニクロの柳井正さんであるとか、日本電産の永森重信さんのように、「24時間経営者」の人は、仕事が趣味みたいなものですからいいとしても、経営者だって人間です。やっぱり時間は欲しい。

 では、働きかたって、いまの2つですべてなのか。「第3の道」はないのか。

 あると思うんですよ。

 それは「投資家」です。

 労働者は自分が働いて、お金を得る。経営者は従業員に働いてもらってお金を得る。その点、投資家は、

「お金に働いてもらって、お金を得る」

 わけです。換言するなら、

「お金を経営する経営者」

「君は日本株を」「君はベトナム株を運用してください」と、采配を自らが下すわけです。

 金融商品の取引ひとつとってみても、お金は自分が指示を出さない限りは勝手に動いたりしませんし、また出した指示に対して、さぼったりもしません。不動産投資なら、土日もきっちり家賃を稼いでくれる。

 お金って、けっこうまじめに働いてくれるんです。

 投資家になれば、用もないのに会社に行く必要はありませんし、自分の裁量で時間に融通をつけることもできる。

 もちろん、いきなり投資で食べていくことはハードルが高い。食べていくぐらいの収入を得ようとしたら、その分、元手がかかるからです。

「職業、投資家」

 などと言うと、こんな声が返ってくるかもしれませんね。

「お金を右から左にだなんて。自分は働かないんだろう。卑怯じゃないか」

 日本人の根本にある労働観って、学校の銅像にある「二宮金治郎」(二宮尊徳、江戸時代の思想家)のころから、あんまり変わっていないんですね。つまり、がむしゃらに努力して、汗びっしょりになって働いた人「だけ」がえらい。コツコツ働き、コツコツ貯金が日本人である。これが美徳。

 しかし、投資は脳に汗もかきますし、知性や洞察力も求められる。ですから誤解でしかないんですが、それはさておき——コツコツ「貯金」というのは、いまの日本が置かれた状況を考えると、問題があるかもしれないんですよ。幾つかの論点に触れながら、考えていきましょう。

お金をため込むことはこんなに悪い

 論点その1。「銀行員は有能か」。

 預金者が銀行に預けているお金の一部は、銀行の「審査部」と呼ばれる部門が運用しています。

 彼らは、調査部から上がってきた情報をもとに「あの企業は今後有望だ」と判断をし、融資(資金の貸しつけ)を行っています。

 しかし、彼らが「有能」だったかというと、むしろその逆。1990年代、日本のメガバンクは、融資が原因で巨額の不良債権問題を抱えました。融資した先の企業に返済能力がなく、お金が戻ってこなかった。明らかな失敗です。

 長らく銀行の審査部は、こんな自負を持ってきました。

「我々は一般の人が知らない『特別な情報』を持っている。だから、自分たちには『特別な判断』ができる」

 言い換えれば、

「一般の人にはできない。エリートに任せておけばいいんだ」

 ということですよね。

 でも、いまやインフラとしてのインターネットがこれだけ普及しました。自分のお金を経営するハードルは、以前と比べたら格段に下がっているんです。となると、自立した個人なら、預金という形でまるごと任せる必要はないんじゃないでしょうか。

 論点その2は、「お金は社会の公器である」という考え方です。

 もちろん、自分で稼いだお金は自分のものではあります。でも、少しは社会のために使うべきではないか、という話です。

 いま日本で問題になっているのは、銀行にお金を抱えこんで離さないタイプの人たちで、彼らのお金が投資に回されれば、企業は新たな株式を発行するときの資金にできるかもしれない。日本経済、喫緊の課題であるベンチャー育成にもつながるかもしれない。

 でも、それをやらない。余力があるのに、やらない。

 ただお金を抱えているだけなのは、他人に手を差しのべることをしない——態度として非難されるべきことかもしれないんです。

 論点3は、「日本が長らく超低金利であること」です。

 いま、日本の銀行には1700兆円という莫大な個人金融資産が蓄えられています。半分あまりが現金ですが、金利が低いから預けているだけではお金は増えません。これだけ蓄えられているから、日本人は現金好きといってもいいのに、投資資金として動かそうとしない。

 自分のお金を大事と思うなら、「貯金だけ」し続けるのは実に非合理的な態度なんです。

金利ってそもそもなんだっけ?

 ところで、なぜ日本の金利は低いのか。

 このことを説明できますか。

 少し長くなりますが、お金を経営する投資家にとって、「金利」はとても大切なことなので、勉強をしましょう。

 銀行の金利が低いのは、一言で言えばこうなります。

「お金の需要が低いから」

 お金の人気が低い?

 妙に聞こえるかもしれませんね。

 銀行の仕事とはなんでしょう。もちろん、人のお金を預かるのも仕事ですが、お金を「貸す」(融資)のも重要な仕事です。結局、銀行のお金も、世間一般で流通するモノやサービスと同じで、需要と供給のバランスで成り立っています。人気のないものは安く、人気があるものは値上がりをします。さきほど、個人金融資産のお話をしました。いま、銀行がたっぷりお金を持っていることはおわかりですよね。

 銀行は、お金をみんなに借りて欲しい。だから、うんと金利を下げている状態なんです。

 現在の融資の金利は1〜2%とかそんなものです。100万円を銀行から借りたとすれば、返すときの金額は101〜102万円。

 借りる側にとっては絶好のチャンスなのに、誰もお金を借りないんです。

 こんなにいいチャンスなのに、なぜなのでしょうか。

 話を進めます。

 この裏には、「経済の成長率」が関係しています。

 長期的に見れば見るほど、金利と経済成長率は強い相関関係でつながっているんですよ。

 つまり、経済がゼロ成長だから超低金利になる。

 経済成長率が低いということは、いまある経済が新たに収益を上げられるものを見つけられていない状態です。こうなると、お金を借りる側——つまり企業は、自信がない状態に陥っているのと同じです。

「100万円借りても、101万円にできるビジネスを見つけられません」

 と言っているのと同じです。

 逆に経済成長率が高ければ高いほど、新規事業のための資金が必要になります。すると、銀行のお金が求められる。

 そうなると「お金の需要が上がる」から、銀行は金利を上げられる。融資が「売れる商品」になるからですね。

 なぜ経済が成長しないのかは、様々な議論がありますが、自分はまだ成長の余力はあると思っていまして、規制緩和できる分野はまだあります。たとえば医療や農業分野ですね。規制を緩和すれば、新規参入や投資も呼びこめるのに、医療なら医師会や薬剤師の人たちの既得権益があって、なかなかうまくいきません。

 いまでも、インターネットを介した民泊サービス「エアビーアンドビー」が、日本国内でも急成長を遂げていて、確実にこれは、外貨獲得に寄与していくわけです。潜在能力はまだある、といっていいんじゃないでしょうか。


金利の高い国債を買えばいい?

 では逆に、金利が高いとはどういうことなのでしょうか。

 日本および先進国をのぞけば、金利の高い国はたくさんあります。

 たとえば、自国の経済が小さい新興国ですよね。経常赤字国(モノの輸出入の差額で赤字になっている)にも、高金利の国があります。

 これらの国では、お金が必要になっても自国内で調達が難しいから、海外からお金を集めます。この際、有力な手段になるのが「国債」です。

 国債とは、国が発行する借金の証書で、投資家はこれを買うことで、国にお金を貸すことができる。借金ですから、お金を借りている間は金利が発生します。

 投資家の側に立ってみれば、金利が高ければ、その分だけ多く、自分の資産を増やすことができます。

 トルコや南アフリカ、オーストラリアの通貨は7〜8%の金利があります。仮にこういった国で100万円分の国債を買ったとすると、国債の償還(借金の返済)時には107万円〜108万円になっているはずです。

 なら、世界中の投資家は、みんな高金利国の国債を買えばよい。

 しかし、投資の世界に「絶対安全」はありません。

 なぜなら、こういった国は海外からたくさんお金を借りていて、なかにはアメリカのような経済超大国もふくまれている。だから、アメリカが「利上げ」(政策金利を上げること)を行うと、(それまで低金利だったアメリカの)金利が上がるわけですから、新興国に流れこんでいたお金がアメリカに戻っていくことになる。投資家は、米ドル預金で資産を増やそうとするからです。

 すると、引き潮のようにお金がサーッと引いていき、新興国で通貨下落が起きるわけです。トルコリラならリラ安が起きる。

 08年、実際にトルコリラで急激な下落が起きました。

 それまで8%の金利で回っていたものが、一気に20%も下落。差し引きで12%ものマイナス。100万円持っていたものが、88万円になってしまうことと同じです。高金利通貨にはこういう下落リスクがあるんです。

 こんな話を聞いていると、「あー、やっぱり。だったら、お金は日本の口座に置いといた方がいい」

 と思う人もいるかもしれません。

なぜ人は「何もしない」という選択肢をとるのか?

 ただ、そういうことではないんですよ。

 リスクがある。だから何もしない。実は、このことのリスクの方が、大きいかもしれないんです。

 特に、いまの日本が置かれている状況を見ると、そう思わずにはいられません。

 いま現在、預貯金を全て「円」で持っている人は多いですよね。でも、5年、10年、さらに20年後と、円がさらに安くなるのか、あるいは高くなるのか。ピタリと予想を当てられる人はいるでしょうか。

「わからない。円安か円高か、五分五分かなあ」

 と考える人がいるとしたら、現預金は、日本円と外貨で「5:5」で持つのが正しいんです。全資産を円で持つということは、「将来、100%円高になる」と確信を持てたときにとるべきポジションなんです。

 もちろん、アベノミクスが行われる前、日本は20年におよぶ「デフレ」(モノやサービスの価値が下がって、逆に現金の価値があがる)でしたから、現金で持っておくのは間違いではありませんでした。

 けれども、アベノミクス以降は、逆回りのことが起きているわけですよね。円高→円安、株安→株高になったわけです。この引き金を引いたのは日銀の金融緩和です。彼らは、円安と株高にするために、大量にお金を刷ったわけです。その反作用で円の価値は下がります。

 この流れがすぐにとまるのかどうか。

 追加の金融緩和(お金を市場に放出すること)が行われる可能性はあり得ます。

日本の「円」を持っていて大丈夫なのか

 現状を正確に見ましょう。

 いま現在、「円安、円安」とは言うものの、最大の輸入品である原油価格が下落しているので、目に見えて資産が目減りする実感はありませんし、物価も際立って上がっているわけではない。これが現状。

 ただし、通貨が極限にまで安くなると、その先に「ハイパーインフレ」が待っている。

 01年、アルゼンチンでデフォルト(債務不履行。抱えている借金を返せなくなった状態)が起きたとき、自分はブラジルに3日間いました。ここで、700%というインフレ率を経験したことがあるんですよ。強烈な体験で、1日で1割も物価が上昇する。食べものはもちろん、電話代も、あらゆるモノの値段が目を見張るスピードで上がる。

 こうなると、みんなどういう行動に出ると思いますか。

 自国通貨なんて誰も持たないんですよ。

 お金をもらったら、ブラジルレアルを米ドルに換えるか、現物商品に換えるんです。まるで魚が腐るような勢いで、自国通貨の価値が下落していくわけですから、貯めていてもしょうがないんです。ハイパーインフレが起きたときに、自国通貨しか持っていないことがいかに怖いか。身をもって実感しました。

 これから日本がどうなるか。

 専門家のなかには、日本で同じことが「起きる」。反対に「絶対に起きない」という人もいます。

 自分はまず大前提として、どっちに転んでも対処できることが大切だと考えています。なぜなら、株式市場がそうであるように、為替の未来がどうなるか、正確な予測をすることは不可能だからです。

自分のお金を働かせよう

 こんな時代に、自分の足で立って、自分のお金をコントロールする。それこそが「投資家」という働きかたなんです。

 どう働くかというと、お金を経営するわけですから、企業経営と同じです。

「ゴーイングコンサーン」(継続企業の前提)

 という言葉があるのをご存じですか。会社は雇用や価値を生み出す場だから、簡単につぶしてはならない。なるべく永続的に、しかも少しずつ成長していくのが望ましいということです。だから自分のお金も、簡単につぶしたりせずに徐々に増やしていく。投資も同じなんです。

 こう考えると、株価が上がったら売り、下がったら買うという行為を1日のうちに何度も繰り返す「デイトレード」は、不向きですよね。忙しすぎる。

 為替の差益で稼ぐ「FX」(外国為替証拠金取引)も同様です。先月は(持っている資産が)倍になったけど、今月は半分になっちゃいましたとか——そういうことが為替の変動で起き得るわけですから。経営的にはリスクが高過ぎる。

 だとするなら、5年、10年のスパンで考えて投資をする「長期投資」が、お金の経営者には向いているわけです。お金の働き道としては、「ETF」などの金融商品があります。細かい説明は省きますが、長く保有するうえでのコストが安い。また、これは「東証株価指数」「S&P 500」などの株価指数に投資します。対象になる企業すべてに分散投資するから、リスクも軽減できる。長く続けるためには理想的です。


インフレ対策としての「不動産投資」

 投資は株式に限った話ではないんですよ。

 たとえば不動産投資もあります。これだって正しく使いこなせば、老後資金の確保、インフレ対策になるんですよ。

 まとまった資金のない人にもできる投資活動です。

 いまは超低金利なんですから、まずは銀行から固定金利でお金をどかっと借りましょう。

 そのお金で、ワンルームマンションを買うんです。実は、自分自身で実践している手法なのですが、何もこれは、いますぐ儲けるためにやっているわけではありません。

 2000万でも3000万円のマンションでも、著しいインフレが起きると、値段があがります。

 倍の金額になるかもしれない。こうなるともう買えませんが、買った当時の金額は変わりません。2000万円なら2000万円のまま。これを幾つか持っておく。銀行から借りたローンは家賃収入から返済していって、全額返し終わったら家賃は老後資金になります。狙いはこうなんです。

 一時は「不労所得」などと揶揄されましたが、投資の世界では「インカムゲイン」(金融資産を保有したときに得られる利子所得)といって、立派な投資活動の成果です。

 この際、中身が重要になります。不動産の価値は収益性で決まる。

 専門用語で言うと、収益性の高さは「流動性の高さ」が関係してきます。

 流動性の高さを担保するためには、一軒家などは絶対に避けるべきです。一軒家って、流動性が低い不動産なんです。そもそも、家主の「癖」がついていますから、万人受けしません。

 よくプールつきの豪邸なんて言いますけど、これって最初に住んでいる人は気分がいいかもしれませんが、あとから住む人にとっては単なるムダ。車が何台もとめられるガレージも不要です。これも住む人を選びます。

 ワンルームマンションに、そういう癖はありません。単身者だったら、誰でも住めるようになっていますから、高い流動性を持っている。投資対象として活発に売買されるのは、こういう物件です。

どういう不動産を買えばいいのか

 だいたい、これらのマンションは購入価格に対して5%ぐらいで回っていますから、3000万円なら年間150万円ぐらいの家賃収入が入ってきます。

 一軒家は、購入価格に対して2〜3%だといわれています。これだと、3000万円の一軒家を買っても、年間90万円しか家賃が入ってきせん。マンションとは年間で60万円もの差があります。これなら、一軒家は買わずに、借りて住んだ方がよほど合理的です。

 ただし、一軒家ならどこでもよい、というわけでもありません。

 まず、日本全体で見た場合、去年1年間で人口が増えた都道府県は6つだけ。東京、千葉、埼玉、神奈川、愛知、沖縄。

 しかし、このなかでも人口減少に転じている市町村は、無数にあるわけです。

 東京なら、西東京の多摩地区は人口減少に転じているわけです。多摩ニュータウンの「多摩センター」には、40平米で500万円のマンションがある。駅から徒歩10分の公団住宅。エレベーターはありません。住民は高齢化しつつあって、商店も減りつつある。こういう場所で物件を買っても流動性は低いわけで、買うなら23区のなかでもさらに絞り込まないといけない。

 たとえば、いま、我々のいる銀座を見ましょう。

 東京でも一等地ですから、物件価格は非常に高い。買う、買わないはともかく、窓の外を見てください。そこかしこで工事をしています。新興国かと思うほどの勢いは、オリンピック効果もあって、ここだけ収益性が上がっていることの証拠です。

 銀座であるかはともかく、今後、10年、20年で考えて、どのエリアなら需要が高まるのか、あるいはそうでないのか。ニュースを読まないと見えてきません。

 投資は脳に汗をかく仕事なんですよ。

「お金を借りる権利」を存分に使おう

 いまお話しした不動産投資ですが、はっきり申し上げると、誰でもできることではありません。

 このことは、銀行が誰に向かってお金を貸すかを物語っているんです。

 最近、よく聞くのはこんなケースで、

「メガバンクを辞めて、ITベンチャーに就職します」

 自分は必ずこう助言します。

「転職前に、借りられるだけお金を借りておいた方がいい」

 6000万円ぐらい借りて、マンションを2、3戸買えばいい。

 無茶な助言に聞こえるかもしれませんが、何を言いたいかというと、ベンチャーに転職したらお金はもう借りられません。

 銀行って個人ではなく、その人が背負っている「看板」にお金を貸すんです。メガバンクの社員Aさんを例にとるなら、Aさんではなく、メガバンクの社員という立場に貸す。ドライですが、これが現実。仕事で何を成し遂げたかなんて、実は関係ありません。

 自分もかつては、外資系のクレディ・スイス証券にいたことがあります。

 そのとき銀行員は「内藤さん、2億円でも3億円でも貸しますよ!」と言っていたのに、自分の会社「資産デザイン研究所」をつくったとたん、「貸せません」と手の平返しにされました。1円も貸してくれないんです。大企業で正規雇用をやる強みって、こういうところにあるんだなと実感しました。結局、3年間黒字決算を続けたところで、やっと話を聞いてもらえましたけどね。

 ドライなのは、外国人に対しても同じです。日本の銀行はね、外国人にはお金を貸しません。ゴールドマンサックス証券のような、一流外資で働いていても借りれません。

 だから、彼らが借りる時は外資系の銀行で借りるんですよ。日本の銀行のように低金利ではなく、もっと高い金利でお金を借りるんです。

 日本で暮らしている日本人は、日本においては特権階級とすら言っていい。

 でも、大企業の社員が銀行から借りて買うのは、なぜか一軒家のマイホームですよね。チャンスがあるのに、活かそうとすらしない。

 やっぱり、「目先のことしか」見えていないからでしょうね。

 お金の経営者を目指なら、これは褒められる態度ではありません。

株価の上がり下がりに一喜一憂するな

 株価は上がりもすれば下がりもします。時には暴落さえします。

 でも、お金の経営者の目的ってなにか。改めて言うなら、資産をなるべく長期で増やしていくことに他なりません。

 だから、株価の動向に一喜一憂する必要はないんですよ。

 たとえば、きょうの相場で日経平均が700円落ちました。でも、10年というスパンで見れば、700円なんて上がろうが下がろうか、微々たる差でしかありません。

 住友信託銀行で働いていたときに、市場最大規模の株価大暴落「ブラックマンデー」(87年)を経験したことがあります。株式市場全体がみるみる下落していって、1日で10何%も株価が下がった。当時は新人でしたから、

「もう死ぬかもしれない」

 なんて思いましたが、あれから20年近くが経ったいま、投資するならいい機会だった。下がったところで買って、20年も寝かせておけばよかったんですから。

 当時はなかなかそうは考えられませんでしたが、渦中にいるときさえ、スーッと引いて状況を見られるぐらいがいい。

 こう考えると、チャイナショックやアメリカの利上げなどのニュースにだって、冷静でいればいいんです。

 それでも、専門家やメディアが騒ぐのは、センショーナルだからです。お酒の席でも盛り上がれるから、話題として便利なんです。なんとなく場が持ちそうじゃないですか。

「チャイナショックは……」

 とか言いながら、グラスをカラーンってやるのって。


バブルはなぜ起きるのか?

 とは言うものの、正しい知識がないと、これらの話で右往左往してしまうかもしれません。

「バブル」がなんであるかは知っておいて損はありません。

 バブルを一言で説明するなら、モノの価値がオーバーバリューになっている状態です。

 過大価値、過大評価です。

 もちろん、その逆で過少評価されるケースもあるんですが、オーバーバリューになった場合、本来の価値より大きくなればなっているほど、弾けたときの衝撃は大きくなるわけです。日本のバブルしかり、リーマンショックしかり、今回のチャイナショックも、全部同じです。

 チャイナショックに関していえば、まだ途上。どの程度の大きさになるかは、事後的にならないとわからないものの、大きな驚きは、

「経済成長率が(中国政府の発表している)8%ではなかった」

 という点ですね。実は5%、4%だったんじゃないかと言われているんです。

 英の経済誌『エコノミスト』が、今年の5月に警告を出していたんですよね。

「中国経済は割高である」と。

 いま、いろいろな疑惑が出てきていますが、確かなのは、明らかに不要な不動産を次々とつくっていた事実ですよね。完全な供給過剰。廃墟シティといっても過言ではない場所もあるわけです。価値を生まない資産をつくっていただけで、これが8%のなかでどれだけ占めていたのか——という話になる。

 こういう事例もありました。

 中国株で、PER(株価収益率。株価が1株あたり、企業の純利益の何倍かを示す指標)が、287倍の企業があったんですよ、要するにこれ、向こう280年以上の純利益が保証されているようなもので、まずあり得ない数値。どんな企業かと思えば、サウナ会社でした。

 今回は中国でバブルが起きた。でも、同じようなことはアメリカでも起きました。返済能力のない人に家を売って、それでもなお、不動産価値が担保されるなんて喧伝したリーマンショックも似たようなものでしょう。日本のバブルも同じです。日本経済が過大に評価された結果です。

いまの日本国債は「バブル」である

 実はいま、自分がバブルだなと感じるものがあります。

「日本国債」ですね。

 日本株の割高感はないものの、国債の値段は上がり過ぎている。10年国債の金利は0.5%。これだけ低いということは、債券価格が高いということなんです。

 誰が日本国債を買っているかというと、まず挙げられるのは一般の日本人なんです。

 でも、みなさんの身の回りで国債を持っている人って、あまり聞きませんよね。個人向け国債なんて金融商品もあるものの、身近に感じる人はそう多くないでしょう。

 それでも、国債はみなさんのお金で買い支えられているんですよ。

 銀行や郵便局の預貯金、年金、生命保険各社——ありとあらゆる機関が日本国債を買っている。

 彼らが、預かっている資産の大半を株式投資に回すことはできません。元本割れのリスクがあるので、万が一そんなことになっちゃうと、大変なことになります。

 そうなると、金利は低いけど、国債を買った方がマシということになる。銀行のバランスシートを見ると、2割から3割が国債。年金だって、比率を下げるとは言ったものの、一時は過半が国債に流れこんでいた。

 銀行に限っていうと、国債ではなく、融資に回すのが一番健全なんです。

 ただ、さきほど触れたようにこれが全然回っていない。もはや、銀行って、本来の機能を果たしていないんですよ。預金者から0.1%ぐらいの金利でお金を預かって、利回り0.2%の国債に使って、差額分の0.1%で社員の給料を払っている。

 国が破たんしない限りは、確実に利ざやを稼げる手段に依存しているんです。

 ただし、なかでも一番買っているのは日銀。ここはお金を大量に刷って、その資金で国債の値段を吊り上げている。

 これはバブルではないのか。

 あんなにお金を刷って値段を吊り上げるのは、国債の過大評価ではないのかと思うんですよね。


時間は増やせないがお金は増やせる

 16歳が大人になるころ、絶対に投資すべきかどうかと聞かれたら、「絶対」とまでは思いません。

 マネーリテラシーは、投資だけが最適解ではないですしね。

 自分の持っているお金を増やすには、方法は3つしかない。

「収入を増やし」「支出を減らし」「投資に回す」しかないんですよ。収入と支出の感覚を磨くことも大切です。

 収入って、時給×労働時間で決まります。

 年収500万円の人だったら、1日10時間働いて、年間200日仕事に費やしている。

 となると、年収500万円の人の時給は2500円です。

 最初にお話しした通り、労働時間は増やしたくない。であるならば、時給を上げるしかありません。

 時給を上げるには、その人の希少性が問われます。付加価値といってもいい。

 たとえば、メジャーリーガー投手のダルビッシュ有は、年間40時間しか試合で投げていません。もちろん、地道に練習もしてはいるものの、これで何十億円ももらっている。時給に直したら、天文学的です。

 速球もある。変化球もある。そしてコントロールもいい。投球術も一流。こんなピッチャーはメジャーのなかでもいませんから、極めて高い付加可価値なんです。だから時給が高い。

 むろん、99%の人はダルビッシュにはなれません。

 なら、どうやったら付加価値を上げられるのか。お笑い芸人でも商社マンでも、ファイナンシャルプランナーや東大卒でも、専門が一つだけなら価値はそう上がらないことがある。

 なぜなら「ありふれている」から。

 ただ、そこに「英語」であるとか「コードを書ける」などの価値をかけあわせていけば、どうでしょう。ファイナンシャルプランナーは日本に20万人いますが、英語ができる人となると、少なくなる。ということは、もう一つでも価値を加えれば、希少価値はもっと上がる。付加価値って、こういう図式で高まっていくんですよね。

生きていくことはすでに「リスク」である

 そういうものをいくつ持てるかが大事になってくるはずで、自分に足りないもの取りに行って、戦略性を持って生きていかないといけないでしょうね。単なる学歴や資格だけではもう差はつかないんです。

 これまで確かだったものが崩れていって、変化の速度が上がっていく。

 そんな時代に、自分に足りないものをとりに行こうというのです。

 それは、多くの人にとって「わからないこと」ですから、リスクに感じるかもしれない。

 でも、そもそもの話をすれば、人間が生きていくこと自体がリスクの塊なんですよ。なぜなら、明日自分が何をしているか予想できる人なんていませんし、株式市場だって1年後はどうなっているかわからない。誰からも羨望のまなざしで見られていた優良企業だって、いきなり大不祥事にまみれて、株価が大暴落することがあるんです。わからないことだらけが、普通なんです。

 かつて「一億総中流」なんて言葉がありました。

 いい大学に入って、いい会社に入る。結婚は25歳か30歳で、子どもも2人ぐらい。年収も自動的に上がっていく。あとは一戸建てマイホームを買って、定年まで勤めあげる。最後は年金暮らし——こんな必勝パターンが日本に存在したのは、戦後の30年ぐらいの話。極めて短い期間です。いつまでも、これを「基準」としていて、いいのかどうか。

 これからの社会を生きる人には、自分の頭で考えられる人間になって欲しい。基準を自分でつくれるぐらいが、いいですね。

※本連載は不定期です
http://diamond.jp/articles/-/79513

[32削除理由]:削除人:関連が薄い長文


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