2. 2015年10月21日 08:55:50
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閉店セール、新規開店セールと値引きの関係「他店より高い! 「でんかのヤマグチ」 “高売り”の秘密」37年続けた店を「閉める」心境 2015年10月21日(水)日経トップリーダー 10月4日、でんかのヤマグチは移転オープンに伴い、37年間慣れ親しんだ店の営業最終日を迎えた。繁盛店としての礎を築いた店なので、特別な感情があると思いきや、意外にも山口勉社長は「感傷に浸っている暇はない」と語る。その真意とは何か。今回は最終日を迎えての心境を解説してもらう。 前回の連載で少し説明しましたが、10月4日、店の新築移転オープンに伴い、ヤマグチは37年間慣れ親しんだ店の営業最終日を迎えました。この日で雑貨などの小物はできるだけ売り切って、売れ残った家電は11月にオープンする新店に持っていきます。 当初の予定通り、閉店セールで家電は一律2割引にしました。お陰様で最終日を迎える2日前からお客さんがたくさん店を訪れてくれました。10月に入って2日間で洗濯機が9台売れたほどです。閉店セールで商品が安いから来店するというよりは、「これでヤマグチの旧店も見納めだ」という思い出づくりで足を運んでくれる人が多かったように思えます。 閉店セール中は、店内に朝から「蛍の光」の曲を流して、旧店の営業が終了することをアピールしました。もっとも、17時を過ぎると、今日の営業はもう終わりかと勘違いする人が出てくる恐れがあるので、17時以降は通常のBGMを流したのですが(笑)。 旧店の1階で、家電の安売りをやめて「高売り」にかじを切ると宣言したのが約20年前。そこから会社を強くするために試行錯誤を重ねてきました。まさにその歩みが詰まっている店です。 ですから、営業最終日を迎えるに当たっては感慨深いものがあるかと思っていました。しかし、いざ最終日を迎えてみると、意外にもそうした感情は湧き上がってきません。 新店がうまく立ち上がるかどうかが一番心配 旧店の営業最終日を迎えたヤマグチ。37年続いた 自分でも不思議だったので、なぜなのか考えてみました。理由はシンプルでした。11月にオープンする新店の立ち上げがスムーズにいくかどうか。それが心配で、感傷に浸っている暇がないからだったのです。新店の経営が軌道に乗って初めて旧店の思い出が蘇ってくるのではないかと考えています。
実は閉店セールで商品を一律2割引するに当たっては、少し不安が残る部分もありました。「閉店するんだから、もっと安くしてよ」と要求するお客さんが続出するかもしれないと、ちょっと心配していたのです。 しかし、ふたを開けてみると、杞憂に終わりました。お客さんも心得たもので、「閉店する記念に何か買っていくよ」と話して、値切る人はほとんどいなかったのです。その結果、閉店セール中も粗利益率は35%を確保できました。 本音を言えば、閉店セールとはいえ、私の中では家電を2割引以上に安売りするつもりはありませんでした。なぜかと言えば、それをしてしまうと、新店の立ち上げが苦しくなることが目に見えていたからです。 お客さんは価格の変化に敏感です。キャンペーン中とはいえ、極端に安く売ってしまうと、新店で通常価格で商品を売り始めたときに「急に高くなった」という印象をお客さんに与えかねません。そうすると、お客さんが離れてしまうのです。 新店オープンでも大幅な値引きはなし 最終日には売り尽くして棚が空になった商品もあった 新店オープンに伴うキャンペーンでも、閉店セールと同じく大きく値引きするつもりはありません。ヤマグチのトレードマークであるシマウマの模様をしたマグカップを来店客にプレゼントしますが、それ以上何か大きなことはしないつもりです。
新店の場合、今までヤマグチで買い物をしたことがない人が「近くに店が新しくできたから行ってみよう」と考えて、来店する可能性があります。そんなとき、最初だけ極端に安くして、途中で通常価格に戻すと、せっかくの新規客が二度と来なくなる恐れがあります。「何だ。安いのは最初だけか」とがっかりするからです。 よく飲食店で開店当初だけ大幅割引きのクーポン券を配って、途中でやめるケースがありますよね。これをすると、大抵は通常価格にした瞬間にぱったりと客足が途絶えます。そうした事実を横目で見ているので、同じ轍を踏まないように気を付けています。 新店の準備は順調に進んでいます。9月中に建物自体はほぼ完成し、10月に入って内装工事が始まっています。旧店から1kmほど離れた場所にあり、町田駅からは少し遠くなります。しかし、地元の人が頻繁に通る道路沿いに新店はあるので、客数が極端に減ることはないと考えています。 新店をつくる際、一番悩んだのは何だったと思いますか。答えは駐車場の台数です。どのくらいスペースを確保すれば適切なのか結構迷いました。悩んだ末に解決策として導き出したのは、旧店でどのくらい車が来るか実際に調べてみることでした。 実測データをもとに、新店の駐車台数を決定 そこで今年1月の2〜4日の3日間で、10分おきに車が何台駐車場に停まっているかデータを取ってみました。すると、最大でも8台までにしかならないことが分かりました。この結果を基に、新店は少しゆとりを持たせて12台まで駐車できるようにしました。 「駐車場の台数を決めるのに、旧店で10分おきに車の台数のデータを調べた」と語る山口社長 新店オープンは10月31日。キャンペーンも実施するので、たくさんのお客さんが来ることが予想されます。しかし、一度に12台以上にはならないと思っています。
ただ、それでも一度に入りきらないとお客様に迷惑を掛けてしまいます。そこで、もう一つ工夫をしました。それが前回説明した、店の近くに住む人から順に日程をずらして招待するという方法です。 10月4日で旧店の営業は終わり、引っ越し作業に入りました。引っ越し作業は外注しているので、スムーズに進んでいます。当初予定通り、10月30日にパナソニックの幹部を招いてお披露目会を開催し、翌31日から一般のお客さん向けに営業を開始する計画です。 いよいよ新店オープンまで10日となりました。最後まで気を抜かずにいいスタートダッシュを切りたいと思っています。 (聞き手・構成:久保俊介) カルビー・松本晃会長兼CEOなど、著名経営者と人材教育を語り合うセミナー 日経BP社ではカルビーの松本晃会長兼CEOなど著名経営者が登壇する、人材教育の特別セミナーを開催します。1時間の講演の後、1時間の質疑応答の時間をご用意。受講者の方々にも徹底的に討論していただける、特別なプログラムです。2日間にわたって、5人の経営者が登壇します(松本会長のほか、キングジム・宮本彰社長、柿安本店・赤塚保正社長、ダイヤ精機・諏訪貴子社長、中央タクシー・宇都宮恒久会長)。詳細とお申し込みはこちらからどうぞ。 このコラムについて 他店より高い! 「でんかのヤマグチ」 “高売り”の秘密
東京・町田の郊外にある「でんかのヤマグチ」は、最も多いときには周囲に6店の家電量販店に囲まれつつも15期連続の黒字を維持している家電店だ。この店の特徴は、ものを高く売ること。たとえばテレビは一般的な量販店の2倍の値段でも売れるという。顧客は町田市内に限定し、高齢者を中心に絞り込み、社員は顧客に徹底的にサービスしている。留守の間に郵便物を受け取ったり、機械が苦手な老婦人のためには毎週韓流ドラマの録画予約にうかがったりと、至れり尽くせりだ。山口勉社長は「かゆいところをかいてあげるのは当たり前、かゆくなる前にかいてあげるのがウチのサービス」と言う。ものの値段を引き上げるにはどうすればいいのか、そのヒントがここにある。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/244460/101500003/?ST=print |