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中国に金融危機の兆し、下支えを失う原油市場 最大輸入国の需要減少で1バレル20ドルへ?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45012
2015.10.19 藤 和彦 JBpress
中国税関総署が10月13日に発表した9月の貿易統計によれば、輸入額が前月比20.4%減の1452億ドルと11カ月連続でマイナスとなった。減少幅は事前の予想値(16%減)を上回り、リーマン・ショックの影響が強かった2009年5月と同規模である。中国経済の先行きへの懸念がますます高まっている。
原油市場の関係者が注目する原油の輸入量は2795万トンと前月比5.1%増だった。だが、8月の原油輸入量が7月に比べ13.4%と大幅に減少したことを考慮に入れると、増加分は期待外れと言っても過言ではない。
原油の平均輸入価格は1バレル=50.4ドルと8月の同58.5ドルから大幅に下落した。国際的な原油価格は8月に比べて若干上昇しているので、この価格低下は主要産油国のシェア確保のための値引き競争の結果だろう。
10月13日付ブルームバーグによれば、中国では一部の地上貯蔵施設が満杯になっているため、原油を運ぶ200万バレル積みの超大型タンカー(VLCC)の荷下ろしまでの待機期間が延びている。通常、VLCCは港湾到着後1日以内に出港するが、ブルームバーグが10月9日に集計したデータによれば、少なくとも19隻のVLCCが中国沖で2週間以上停泊しているという。中国国内には膨大な原油在庫が積み上がっているということだ。鉄鉱石や石炭に加え、原油も「1年以上輸入しなくてもやっている状態にある」との観測が出始めている。
原油価格が下落する状況で中国政府は戦略国家備蓄を積み増し、これが低迷する民間需要を補い、全体の原油輸入量を着実に増加させてきた。しかし8月12日の天津港の大爆発事故により、同港に建設された備蓄施設への原油の搬入が停止し、早期復旧は依然として期待薄の状態にある。中国は戦略備蓄をテコに原油輸入量を増加させてきたが、今後、原油輸入量は減少傾向を鮮明にする可能性が高いのではないだろうか。
■危険な兆候を示している中国の債券市場
金融面からの懸念要素もある。
8月14日の人民元切り下げ以降、中国からの資本流出が激化しており、中国政府は原油代金の支払いに必要な外貨の確保が日増しに困難になっているという観測がある。中国の外貨準備高は減少したとはいえ約3.5兆ドルと巨額だが、その中身に対する懸念が強まっているからだ。
日本は外貨準備の9割超を米国債で保有しているのに対し、中国が保有する米国債は外貨準備の3割に過ぎない。残りの7割弱をユーロ国債や金で保有しているという想定は非現実的だ。だとすれば、残りの外貨準備はベネズエラやアフリカ諸国などへの政策投資で焦げ付いているか、不明朗な経路で既に国外に流出したと考えざるを得ない(約1.5兆ドル規模の国有企業のドル債務が計上されているとの説もある)。
中国が、人民元の安定に向けてドル売り・元買い介入資金を確保するため、9月に日本国債を大量に売却した可能性も浮上している(10月13日付ロイター)。財務省によれば海外投資家が9月下旬に約4.6兆円分の円債を処分しているが、市場関係者の間では「中国の大手投資家が売却した」との噂がもっぱらだ。このような動きからも、中国政府は既に外貨不足に陥っていると捉えることもできる。
民間サイドの状況も深刻である。中国株の急落で時価総額5兆ドルを失った投資家は社債市場に資金を避難させた。しかし、その社債市場もバブル崩壊の寸前にある(10月10日付けサンケイビズ)。
42.1兆元(約800兆円)規模の債券市場は、現在割高な相場水準や投資家のレバレッジ急拡大など、4カ月前の株価急落前と同様の危険な兆候を示している。独コメルツ銀行は社債市場が年末までに大きく崩れる確率を20%と予想している(6月時点ではほぼゼロと見ていた)。
■年末までに中国で金融危機が発生?
金融市場以外でも、李首相が推奨していた「保証付き融資」の焦げ付きが懸念されている(10月9日付ブルームバーグ)。
UBSグループによれば、保証付き融資の焦げ付きは昨年86%増加し、約4000億元(約7兆5600億円)に達した。景気減速により企業の借り入れに対する信用保証が裏目に出ており、デフォルトの連鎖を引き起こす危険が出てきている。米S&Pによれば、保証専門会社が打撃を受けており、金融リスクを引き受け過ぎた保証業第2位の会社が業務を停止した。
中国政府は10月14日、9月の卸売物価指数が前年比で5.9%下落したと発表した。下落幅は前月と同じでリーマン・ショック直後の2009年9月以来の6年ぶりの大きさが続いている。深刻なデフレリスクが金融市場関係者のセンチメントを悪化させている。
元日銀理事の稲葉延雄氏は、10月9日、中国経済について「北京周辺や東北部の成長率はゼロ%との見方があり、減速が激しくなっている。現地に進出している日系企業は決済不履行が起こらないか心配している」(10月9日付ロイター)と述べた。
年末までに中国で金融危機が発生するリスクは高まっている。
たとえ金融危機が起こらなくても、カネ不足に陥った中国が原油の輸入を減少させることは間違いないだろう。
■原油市場の需給ギャップは解消されるのか?
世界の原油市場の生産サイドに目を転じると、9月のOPECの原油生産量は日量3157万バレルと予想に反して過去3年で最高の水準に達した。
OPECのバドリ事務局長は10月11日、「非OPEC諸国の原油生産が減少し、原油価格下落により来年の原油需要は堅調であるため、原油市場の需給ギャップは来年第3四半期にほぼ解消される」という、これまでどおりの見方を示した。
石油リグ稼働数は10月5日の週に605基と落ち込み(米石油サービス会社ベーカー・ヒューズ)、米エネルギー省は10月13日「11月のシェールオイルの生産は7カ月連続で減少する」との見通しを明らかにした。しかし15日に発表された米エネルギー省の統計によれば、在庫が6ヵ月ぶりの大幅増加となった(756万バレル増)。
また、政策当局者レベルの頻繁な接触から年末に向けてOPECの雄であるサウジアラビアとロシアが減産合意に達するとの期待が生じていたが、最近の「シリア」情勢の変化が両国の協調ムードに水を差している。
ロシアのプーチン大統領は10月11日にソチでサウジアラビアのムハンマド副皇太子(国防相)と会談し、シリア空爆への理解と過激派組織「イスラム国」に対するアサド政権中心の共同戦線構築への協力を求めた。これに対し、米国中心の有志連合の一員であるサウジアラビアはイランと協力したロシアの空爆に懸念を示すなど、両者の立場の違いが鮮明となっている。
OPECが楽観視している原油需要についても、「価格低下が需要を刺激するのは事実だが、マクロ経済の成長減速でその大部分が相殺されている」(米シティ)という指摘もある(10月13日付ブルームバーグ)。
■中国の原油需要減少のインパクト
国際エネルギー機関(IEA)は10月13日に発表した月報で、「世界的な石油の供給過剰は来年いっぱい続く」との見通しを示した。非OPEC諸国の生産量が来年日量50万バレル減少するにもかかわらず、需要の伸び悩みに加え、OPECの主要産油国が記録的な生産水準を維持していることがその理由だが、OPECの見方よりも現実的である。
しかしこの見通しに中国の原油需要の減少という要素は織り込まれていない。
世界の原油需要を眺めると、近年、先進国は一進一退である一方、新興国は総じて増勢基調にある。中でも突出していたのが中国の需要の伸びである。2015年9月までの輸入量は前年比8.8%増だった。中国の原油輸入の増加傾向は、原油価格下落を下支えする最大の要素である。
しかし、中国の原油輸入が鈍化・減少することになれば、原油価格に対し大きな押し下げとなる。ゴールドマン・サックスは9月の調査報告の中で「中国の原油輸入量が減少すれば原油価格は1バレル=20ドルに下落するかもしれない」と指摘し、10月に入っても「原油価格は下落する」との見解を示している。
最後に、このところ金融市場を騒がせていた大手商品取引会社だが、中国の輸入が予想以上の落ち込みとなり、その株式が再び売られた。
先月末に暴落したグレンコアは債務削減のために豪州やチリの銅鉱山を売却する動きに出ている(10月12日付ブルームバーグ)。1バレル=40ドル台の原油価格がさらに下落すれば、保有しているシェール資産を手放す事態に追い込まれるだろう(米エネルギー調査会社IHSは14日「原油価格下落で世界の石油・ガスのほぼ全資産が売却対象になっている」とコメントした)。
グレンコアなど大手商品取引会社の後ろ盾を失えば、シェール企業の大量破綻がまた一歩近づくことになる。これによる金融市場の大混乱で再び危機を迎えることになる日本経済に、はたして備えはあるのだろうか。
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