1. 2015年10月20日 02:13:04
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50代ミドル社員、「希望」退職の先にある絶望_人生のターニングポイントは40歳2015年10月20日(火)河合 薫 今回は、「ミドル転職の矛盾」について、アレコレ考えてみようと思う。
先日、人員削減計画を発表した企業の幹部が、“素っ裸”にされるという事件が起きた。 素っ裸にされたのは、航空会社エールフランス(Air France)の人事担当マネジャー。2900人の人員削減計画に「ふざけるな!」と数百人の従業員らが集まり、幹部たちを羽交い締めにした。「いたぞ! そいつが人事マネジャーだ! 絞めろ!!」とばかりに、マネジャーのシャツが激しく破られ、見るも無惨な姿にさせられてしまったのだ(注:「」内は私の妄想です)。 この騒ぎで7人が負傷。うち警備員1人が殴打されて意識を失い病院に搬送されたそうだ。 過激だ。ホント、すごすぎる。 粛々と人員削減が行われている日本とは、えらい違いだ。 シャープ、3234人。 ルネサス エレクトロニクス、2300人。 ワールド、453人。 9月末だけでも、これだけの大手企業の従業員たちが、“希望”という接頭語のついた退職のもと、企業を去った。 もちろん中には、自らの強い希望で退職した人たちもいるかもしれない。だが、ほとんどは会社側に狙い撃ちされた人たち。 子どもの教育費がかかる45歳以上のミドル社員たちが、「悪いけど〜、辞めてくれるかな?」的扱いを受け、退職を余儀なくされたのだ。 ソニー、モバイル分野で2015年度末までに2100人の人員削減 セガサミーホールディングス、300人の人員削減 日本コロムビア、リストラの一環で全従業員の約3割の人員整理を実施 カドカワ(旧KADOKAWA・DWANGO)、232人を削減 損保ジャパン日本興亜ホールディングス、200人の人員削減 ニッセンホールディングス、120人の人員削減を実施 日本たばこ産業(JT)、1754人の人員削減 etc、etc、 件の3社以外にも、今年に入ってからこれだけの“名の知れた”東証一部上場企業で、人員削減が実施されている。 しかも、ルネサスでは早期退職後、人材派遣会社に再就職した元社員を、派遣社員として再び雇用したという。これって、どうなのだろう…。ナンデ、ニホンジンハ、オコラナイノデスカ? フランスのように暴力的になれ!とは言わないけど、もうちょっと怒ってもいいように思う。沸点が高すぎやしないか。あまりにも淡々とし過ぎだ。 リクルートマネジメントソリューションズが実施した「人材マネジメント実態調査 2013」によれば、「定年が65歳まで延長されている」と回答した企業が 30.6%なのに対し、「早期退職優遇制度などにより、積極的に早期退職を促している」は40.3%。 つまり、「ウチの会社は、とりあえず65歳までいられるんで……」と、のん気なことを言ってるア・ナ・タも、いつ、なんどき、ターゲットにされるかもしれないのだ。 あまり言いたくはないけど、多くの企業にとって“ミドル社員”はお荷物でしかない。 労働人口6689万人の9%ほど存在すると試算されている社内失業(雇用保蔵)者の多くは、45歳以上のミドル社員だ。この先、ちょっとでも景気が悪くなれば、「はい、待ってました!」と容赦なく切られるに決まってる。希望なき希望退職を、希望せずとも余儀なくされるのだ。 「そ、そこまで言わなくても……(泣)」 あい。すんません。 ずいぶんと耳をふさぎたくなるような、ひどいことばかり書いてしまったけど、残念ながらこれが現実なので勘弁してほしい。45以上の早期退職の先に、“希望”などない。微塵もない。ごくごく一部の特殊スキルのある人以外、45歳以上という年齢には、想像以上の重しがズシリとのしかかる。 ミドル苦難の時代といっても、過言ではない。 50を過ぎると送られる“白い封筒” 現在、ハローワークに通う日々を送っている、某大手企業の48歳の男性も、3カ月前に早期退職をした1人だ。 彼の会社では数年前から、53歳になると“白い封筒”が送られるのが通例だった。ところが、雇用延長制度に伴い、早期退職志願者が激減。「これじゃ困る」と企業側は対象を拡大した。 封筒の中には、早期退職した場合の退職金のシミュレーションと説明会の案内、さらに、上司との個別面談の日時が記されていたそうだ。 「もともと私は53で早期退職してもいいかな、と考えていました。冷静に社内を見渡せば50代以上の社員に、仕事なんてありません。私自身、お恥ずかしい話ですが、数年前から居場所がないなぁって感じることが度々ありまして。早期退職して、次へ行こうと考えていたんです。でも、さすがに予定より5年も早くこんなことになるとは……。封筒が届いたときは、ショックでしたよ」 「ただ、先輩の中には、新天地でバリバリやっている方もいたので、50代で辞めるより、いいかもしれないと決心をしたんです。世間では私みたいなのを、“夢追い転職”っていうそうですね(苦笑)。ホント、夢、だったんです。年齢不問といいながら、45歳以上はダメみたいで。面接にすら進めません。気持ちは焦るばかりです。同じ時期に退職した43歳の後輩は、退職翌日から正社員で雇用されました。いわゆるヘッドハンティングです。どこから情報が回っているのか分かりませんが、仲介を専門にしている会社から、退職する前に複数コンタクトがあって、それで決まったと言っていました」 「うらやましい、ですよね。だって、私の年齢で、正社員は無理。たったひとつの椅子を、1万人くらいで争ってる感じがする。ひょっとしたら、そもそも椅子なんてないのかもしれない。非正規ならある。ただし、賃金は最悪です。想像以上に低くて、驚きました。失業手当の方が高い。すると、悩むわけです。下手に働くより、失業手当で一年過ごした方がいいんじゃないかって。子どもの学費もかかりますから……」 「でも、一年間、仕事から遠ざかることにものすごい不安を感じています。ものすごい曖昧な不安ですけど、ずっとひとつの会社に居続けた人間にとって、会社と無縁の一年を送るのが恐い。モチベーションを維持できるのか?ってね。充電期間と考えて、勉強すればいいと思う自分と、そう思えない自分がいて。時間がたてばたつほど仕事がなくなるんじゃないかと不安になる」 「もちろん就活は続けますけど、動けば動くほど、自分の市場価値を突きつけられるんで、結構、堪える。非正規だろうと、低賃金だろうと、働いた方がやっぱりいいんですかね? ……減額されてでも失業手当がもらえる制度があればいいんですけど、仕事に就いた途端、切られちゃいますから。まるで負け犬ですけど、なるべく組織に居続けることがBestな選択なのかもしれません……」 彼は今の心境を、ゆっくりと、何度も何度も自問するように話してくれた。私に話すというより、むしろ自分自身と対話していたのかもしれない。 「もらえるものはもらえばいいんだよ! 非正規のカネじゃ、生活できないだろ?」 「でも、(失業手当が切れる)一年後はどうしたらいい?」 「働いたって、一年後の保障なんてないよ。下手に夢みたオマエが悪い」 「…だよな〜」――― 厚生労働省の「賃金構造統計調査」によれば、50〜54歳の正社員の平均月収が40万円程度であるのに対し、非正規雇用だと20万円程度。20代の新人のときにもらっていた賃金と、ほぼ同じだ。その上、雇用機会を失うリスクは、ミドルほど高い。 つまり、何を、どう、選択したところで、将来への不安は残る。「職務保障(job security)」の欠如が、不安を煽るのだ。 職務保障は「会社のルールに違反しない限り、解雇されない」という落ち着いた信念と確信で、生きる力の根本をなす、極めて重要な要因である。私たちは、「今日と同じ明日がある」と思えるからこそがんばることができるし、踏ん張ることができる。 だが、やっかいなことに、当たり前の日常が繰り返されているときには、職務保障の大切さに気付くことができない。失って初めて気付く“感覚”なのだ。 プライドが邪魔をして弱い自分を見せられない 恐らく彼も、その価値に気付かなかった。しかも、失業中のミドルが気の毒なのは、自分のそういったモヤモヤを誰にも言えないこと。 同じような境遇に置かれた人たちと語り合えれば、「オレだけじゃない。もう一踏ん張りしよう」と、前向きスイッチが入るかもしれないのに、それができない。プライドが邪魔をして、弱い自分を見せることができない。 だって、ホントは、 「○○会社に決まったよ! 給料は減るけど、第二の人生がんばるよ。100点満点じゃなく、70点でいいって思えば、意外と次の道が見つかるもんだぞ!」 と言いたかったし、そういう自分をイメージしていたのだ。 前に進まないはがゆさと徒労感。前に進む選択ができない自分への不信感と罪悪感。充電期間と思えない、余裕のない自分――。そのすべてが、辞める前の気持ちと矛盾していて、つじつまが合わない。 ただでさえ不安がつきまとう転職なのに、足が止まってしまったことで、余計に不安になった。前を向いて歩いているときには決して感じることのない、曖昧な不安に彼は襲われてしまったのだ。 「でも、非正規で働きながらでも、失業保険ってもらえるでしょ?」 確かに。1日4時間未満のアルバイトであれば、「内職や手伝い」の扱いになるため、基本手当を全額受け取る事ができる。だが、彼の場合には、完全にフルタイム。「内職や手伝い」には該当しない。 「だったら、再就職手当を使えばいいでしょ?」 それもある。 失業保険の所定給付日数の3分の2以上を残して早期に再就職した場合、基本手当の支給残日数の60%が、所定給付日数の3分の1以上を残して早期に再就職した場合、基本手当の支給残日数の50%の金額が支払われる。 ただし、「1年を超えて勤務することが確実であること」という条件があり、派遣就業で雇用期間が定められ、雇用契約の更新が見込まれない場合にはこの要件に該当しない。 彼のケースでは、半年間の契約とされていたため、再就職手当の対象にはならないと言われたという。 これだけ非正規が増えているのだから、もう少し国も条件を緩めればいいと思うのだが、そういった動きは全くない。 そもそも世界各国のGDP(国内総生産)に占める労働市場政策への支出を比較した場合、日本は「就業支援・訓練」などの積極的措置、「失業保険」などの消極的措置のどちらにおいても使われているお金の割合が各国よりも低い。 また、失業保険の給付期間も、欧米と比較した場合、かなり短い。 フランスでの失業保険の給付期間は最長36カ月、デンマークは2年間と長く設定されているほか、ドイツの保険制度は12カ月の期間終了後、更新可能な扶助制度がある。スウェーデンでは300日(18歳未満の子供がいる場合はさらに150日)であるが、支給期間を満了した後にも失業状態の場合、新たに300日間の支給日数が起算される。 長くなればなるほど、「働いて半端なカネをもらうくらいなら、働かない方がいいや〜」という精神状態に陥るリスクも高まるので、長きゃいいってもんでもないかもしれない。 無理して働かなくても最低限の生活ができれば、生活への期待、自分への期待が低下し、世の中を冷ややかに見るようになり、ある種の“諦め”が生じ、「このままでいいよ」と精神状態が安定するのだ。 それでも、やはり日本は短すぎる。もう少し長くてもいいのではないか。 次の人生に向き合うタイミングは40歳 さらに、日本の失業は「完全失業(full unemployment)」を前提としているが、多くの先進諸国では、「部分的失業」も失業保険の適用対象としているので、通常の労働時間がゼロになる場合のみでなく、労働時間の削減を部分的失業者として扱い、手当が給付されている国が少なくないのである。 非正規の賃金の見直し、失業の概念を変えるなど、やる気ある50代を後押しする支援策を講じないと、ますます“萎えたミドル”が増殖する。早期退職する前の一年間を、国の援助の下、新しい職種や業種に必要なスキル(技能)の習得期間と位置づけるなんてやり方だってあるのではないか。 このままだと「65歳」までゾンビのようにしがみつくミドルを増やすだけだ。それは結果的に、生産性を下げることでもある。 そして、働く人たちも50歳になってからアレコレ考えるのではなく、油が一番乗っている40歳前後までに、次の人生に向き合わなきゃ。50過ぎに居場所を準備してくれるような、夢の時代は終わったのだ。え? もう50だって? ふむ……。個人的には、いかなる状況になろうとも、“次へ”とあがいている人が好きだし、応援したい。組織にとどまろうと、外に出ようと、大事なのは、少しばかりの勇気と謙虚な気持ちを持てる自分になることなんじゃないでしょうか。 このコラムについて 河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学 上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/101600018/
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