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ワタミ本社ビル(「Wikipedia」より/Rsa)
ワタミ、債務超過寸前の経営危機 キャッシュ流出、多額負債…自己資本での再建困難
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11978.html
2015.10.17 文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO Business Journal
居酒屋大手のワタミは10月2日、介護事業を損害保険大手の損保ジャパン日本興亜ホールディングスに210億円で売却することを正式に発表しました。ワタミは1980年代、現参議院議員の渡邉美樹氏が創業して以降、その経営手腕で拡大を続け、上場企業にまで上り詰めました。
ところが、最近では消費者の「チョイ飲み」や「宅飲み」需要の高まりで本格的な居酒屋が敬遠されるようになったことに加え、ワタミでは従業員を過酷な環境で働かせていると「ブラック企業」の烙印を押されてブランドが大きく毀損した影響で、客足が遠のいて業績が急下降。2014年には上場以来初めて49億円の最終赤字に転落。15年にはさらに赤字幅が拡大して126億円を記録します。
この未曽有の経営危機を乗り切るために繰り出したウルトラCが、今では稼ぎ頭にまで成長した介護事業の売却であり、ワタミにとっては背に腹は代えられない最終手段だったといっても過言ではないでしょう。
それでは、ワタミは一体、どれほどの危機的状況に陥っているのでしょうか。
今回はワタミの直近の決算書を分析しながら、経営の危険度を検証してみたいと思います。
■現預金残高は危険水域
まずは現預金残高から見ていくことにしましょう。
倒産というのは「現金が底をつくこと」と同意です。現金が底をつかなければ、どんなに巨額の赤字を計上しても倒産することはありませんし、現金が底をついてしまえば、どんなに黒字を計上していても倒産の憂き目に遭うことになるのです。
たとえば、直近の15年6月30日現在でワタミの現預金残高は53億円となっています。同年3月31日には95億円ほどの残高がありましたので、ここ3カ月で40億円以上ものキャッシュが流出したことを意味しています。
また、ワタミの年商は1500億円程度なので、月商に換算すると125億円となります。
つまり、現状ワタミの現預金残高は月商の半分以下、具体的にいえば2週間分の売り上げ程度という水準であり、極端に少ないといっても過言ではありません。
ちなみに、同じ業態では、最近急成長している鳥貴族は月商が16億円に対して48億円(月商の3カ月分)、大庄は月商45億円に対して114億円(同2.5カ月分)であり、その水準を比較するといかにワタミの現預金残高が少ないかが浮き彫りとなります。
■大きな負債負担
続いて負債を見ると、銀行からの短期と長期借入金を合わせると330億円に達しています。
特に問題は、短期借入金が164億円と同社の流動資産をも大きく上回っている点です。万が一、銀行が期日の到来した短期借入金の借り換えを承認しなければ、現状の現預金残高53億円では借入をすべて返済することができずに、経営を断念せざるを得ない状況に追い込まれてしまうということになります。
加えて、ワタミにとって予断を許さないのが、50億円にも及ぶ介護施設の入居金返還債務の財務制限条項です。
財務制限条項は「コベナンツ」とも呼ばれ、銀行の課した条件を融資先企業がクリアできなければ期限の利益を喪失し、銀行は即座に債権を回収することができるという厳しい取り決めです。
介護施設の入居金返還債務に関して、ワタミの決算書には次のような2つの条件が記載されています。
(1)純資産の金額は2012年3月期の75%を下回らないこと
(2)2期連続で経常赤字を出さないこと
ワタミは15年3月期の決算で大きな最終赤字を計上した影響で、すでに(1)の条件をクリアすることができませんでした。本来はこの時点で銀行は50億円の債権に関して即座に回収を図るところですが、ワタミは銀行との交渉で(1)の条件を「15年3月期の100%以上に維持する」と緩和することで合意して返済を免れています。
ただ、これ以上の猶予は金融機関にとってもリスクが高くなることを考えれば、ワタミとしては、今期赤字を計上して、純資産を減らすことは許されない状況になっているといえるでしょう。
このようにワタミには、負債面からも銀行のプレッシャーが重くのしかかっているのです。
■自己資本比率はマイナスに陥る一歩手前
それでは最後に、企業の安全性を測る自己資本比率をみてみましょう。
ワタミは最終利益段階で、14年3月期には49億円、そして15年3月期には126億円の赤字を計上し、これまで積み立ててきた利益剰余金が大幅に減少しています。
15年6月30日時点では、48億円とかろうじて繰越損失は免れている状況ですが、自己資本比率はついに6.2%まで低下。この自己資本の水準は、鳥貴族の41.6%、大庄の52.6%に比べると極端に低く、いかにワタミが他人資本に頼った経営を強いられているのかが浮き彫りとなります。
つまり、ワタミは現状債務超過に陥る一歩手前であり、自己資本で経営を再建する余力はなく、かなりの窮地に陥っていることが如実に伝わってくるのです。
■経営危機を脱する打つ手はあるのか?
それでは、ワタミはこの危機的状況から抜け出すためには、どのような手を打てばいいのでしょうか。まずは大きな視点で、連結ベースの利益面から見てみましょう。
15年4月から6月の3カ月間、営業利益段階で10億円の赤字を計上しています。つまり、ワタミは現状営業を行えば行うほど損失が積み重なる体質になっているのです。これは売上に対して、人件費や賃料などの固定費が大きな負担になっていることが窺えます。ですから、さらに不採算店を洗い出して整理するか、業態転換を図って止血を行わなければならないでしょう。
また、金融収支を加味した経常利益段階を見ると、金利負担が月間2億円を超えています。元本が330億円と想定すると、年利7%以上の高金利で調達している計算になります。恐らく銀行はリスクに応じてかなり高い金利を設定しているのでしょうが、金利が大きな負担となって経営破綻に追い込まれれば本末転倒です。ワタミとすると、銀行に対して金利の減免や債務の株式化などの交渉を行い、財務の健全化を図っていくことが望まれるでしょう。
最後に、セグメント別の利益を見てみましょう。
主要な事業である国内外食事業は15年4月から6月の3カ月間で5億円の赤字を計上しています。また、今回売却の決まった介護事業も1億円を超す赤字に転落。さらに、海外外食事業は2億円の赤字、そして農業は6000万円の赤字となっています。
一方、利益を上げているのが宅食事業と環境事業の2事業。宅食事業は3億円を超す黒字を計上し、今やワタミの大黒柱となっています。また、北海道に設置したメガ・ソーラーで発電を行う環境事業も今では安定的な利益を稼ぎ出し、黒字額は1億円を優に超えています。
このようにセグメント別の利益を分析すれば、主力事業の国内外食事業の不振が深刻であり、今後の事業展開にも暗い影を落としかねません。
今回赤字に転落した介護事業は売却することで今後のリスクを回避することができましたが、ほかの事業とのシナジーがあまり期待できない海外外食事業なども撤退を含めた検討が必要かもしれません。
介護事業を210億円で売却し、ようやく一息つけるワタミですが、安心するにはまだまだ遠い道のりが待っていることを決算書が如実に物語っているといえるでしょう。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)
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