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求人・求職及び求人倍率の推移(「厚生労働省 HP」より)
「雇用情勢は絶好調」はまやかし?地方では悪化や不況の兆候 トヨタのお膝元でも異変
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11959.html
2015.10.16 文=寺尾淳/ジャーナリスト Business Journal
厚生労働省は毎月月末、「労働力調査」として前月の完全失業率と有効求人倍率を算出・公表している。8月の有効求人倍率は1.23倍で、バブル景気末期の1992年1月の1.25倍以来、23年7カ月ぶりの高水準だった。
これは全国平均の数値だが、厚生労働省には各都道府県に「労働局」という出先機関があり、管内各地の職業安定所(ハローワーク)を統轄している。毎月、その求職数と求人数を集計し、各ハローワーク別、都道府県別の有効求人倍率を算出・公表している。
東京の品川、飯田橋、渋谷、愛知の名古屋中、名古屋東、大阪の梅田、大阪東、大阪西、広島の広島、広島東、福岡の福岡中央など大都市中心部のハローワークは、求職者も多いが求人も集中するので有効求人倍率が2倍、3倍になることが珍しくない。復興が進む東日本大震災の被災地の東北三県(福島、宮城、岩手)の沿岸部にも、月によっては有効求人倍率が2倍を超えるハローワークがある。
ハローワーク別の有効求人倍率を見ると、地域経済の現状だけでなく、いま好調な産業、不振な産業や、大企業の業績の良し悪しや製造拠点の進出、撤退の影響がうかがえる。その現状は、地域によっては「バブル景気以来の好況」どころか、深刻な景況の悪さをみせている。また、今年の初めと比べて有効求人倍率が急減している地域があり、今後の景気悪化の兆候も垣間見える。
■自動車産業王国、三河地方、遠州地方の有効求人倍率が変調をきたしている
日本の基幹産業といえば、その代表は自動車産業とエレクトロニクス産業。どちらも部品供給の「下請けピラミッド」、販売会社や物流などサービスまで含めれば産業の裾野が広大で、大きな雇用吸収力を持っている。
自動車産業が盛んな地域として誰でも思い浮かぶのが、トヨタ自動車のおひざ元、愛知県の三河地方だろう。浜名湖をはさんで浜松市、磐田市など静岡県西部の遠州地方にかけて、完成車工場、デンソーのような大手部品メーカーから小物部品のプレス加工をする小さな町工場まで、日本一の産業集積がある。
この地域のハローワークの有効求人倍率がいま、年初に比べて低下していることをご存知だろうか。
【愛知県三河地方、静岡県遠州地方のハローワーク別有効求人倍率の推移(2015年2月→8月)】
※左が2月、右が8月の数値
岡崎 1.92 1.44
豊田 1.00 0.97
刈谷 1.61 1.65
西尾 0.95 0.88
豊橋 1.90 1.43
豊川 0.84 0.85
新城 0.97 0.93
掛川 1.38 0.97
磐田 0.95 0.81
浜松 1.30 1.10
細江 1.03 0.88
浜北 0.71 0.55
(出典:愛知労働局、静岡労働局の統計資料より/パートを含む常用)
特に減り方が激しいのは岡崎、豊橋、掛川だった。2月から8月にかけてプラスになったところも、刈谷は0.04ポイント、豊川は0.01ポイント増えたにすぎない。
なお、雇用統計については、有効求人倍率よりも「新規求人倍率」の増減を重視すべきだという意見がある。ハローワークの求人には、待遇条件の悪さなどで求職者に敬遠され、何カ月も繰り越されて棚ざらしになっているものがあるからだ。それよりも新規求人倍率を見れば、その地域の産業全体の「人を採りたい」という本気度がより正確にわかり、景気が悪化すればその影響がいち早く出るといわれている。
【愛知県三河地方、静岡県遠州地方の地域別新規求人倍率の推移(15年2月→8月)】
※左が2月、右が8月の数値
西三河 2.00 2.18
(岡崎、豊田、刈谷、西尾)
東三河 2.11 1.95
(豊橋、豊川、新城)
遠州 1.75 1.91
(静岡西部/掛川、磐田、浜松、細江、浜北)
(出典:愛知労働局、静岡労働局の統計資料より/パート含む常用)
愛知県全体では伸びている中で東三河地域の減少が目立ち、ここは東海地方全体の雇用悪化の震源地になるかもしれない。西三河と遠州は新規が伸びているが有効求人倍率が低下しているので、求人増の流れが途切れればアッと言う間に雇用情勢が悪化してしまう危うさを秘めている。「新規求人倍率が伸びているから大丈夫」とはいえない。
一般的に、自動車関連のような製造業は正規雇用の比率が大きいので、その賃金水準はパート・アルバイトの比率が大きい小売業やサービス業に比べると高め。そのため愛知県の三河地方や静岡県の遠州地方で自動車関連の雇用が減ると、個人消費もふるわなくなり、小売業、サービス業も含めた地域経済にも悪影響が及ぶ。仕事を求めて労働力が名古屋市や南関東など他の地域に流出してしまうと、地域経済はいっそう落ち込む。有効求人倍率の低下は、そこが日本の自動車産業の中心地だからこそ、今後の景気の行方を占う上で決して軽視できない現象だ。
■北米で無敵の強さをみせるスバルの「企業城下町」、群馬県の太田も不振
いま、自動車業界で一番元気な会社はどこか? たいていの人はスバル(富士重工業)と答えるだろう。SUVは北米市場では売り切れ続出の人気で、決算は絶好調だ。海外生産比率は22.5%で大手の中ではまだ小さく、14年度の世界生産台数の約6割は日本で生産され、海外に輸出されている。
そのスバル車の開発・生産の本拠地といえば、群馬県の太田市。その周辺の自動車関連の企業は活況に沸き、人手不足で雇用情勢は有効求人倍率が2倍近くの水準で高止まりしている。かと思いきや、なんと7月まで4カ月間も1倍割れしていた。
【群馬県・ハローワーク太田の有効求人倍率、新規求人倍率の推移(15年1〜8月)】
※以下、左が有効求人倍率、右が新規求人倍率
1月 1.11 1.53
2月 1.12 1.49
3月 1.06 1.36
4月 0.92 0.96
5月 0.90 1.26
6月 0.87 1.33
7月 0.96 1.62
8月 1.04 1.54
(出典:群馬労働局の統計資料より/パートを含む常用)
8月の群馬県全体の有効求人倍率は1.28で全国平均の1.23より高かったが、太田は、かつて多くの日系ブラジル人を呼び寄せたほど労働力不足に悩んでいた地区でありながら、今年はずっと低調が続く。新規求人倍率の数字も三河・遠州地方より悪い。決算が絶好調で国内生産比率の高いスバルですら、その地元の雇用は冷え込んでいるのだ。
もちろん、自動車関連の雇用が依然好調な地域もある。トヨタが12年に関連会社を統合してトヨタ自動車東日本を設立し、東日本の小型車生産拠点を集約した宮城県大衡村では、今なお生産規模の拡大が続いている。地元の雇用創出への期待は非常に大きく、宮城労働局はわざわざ隣の大和町にハローワークの出張所を開設しているほどだ。その大和出張所の有効求人倍率は今年1月からコンスタントに1.5以上をマークして8月は1.76。新規求人倍率は3、4月以外は2倍を超え、8月は3.01で今年最高だった。宮城県の仙台市と大崎市の中間に位置する黒川郡はいま、自動車産業の「ブームタウン(急成長する町)」になっている。
■シャープの業績がおかしくなったら、三重県・伊賀地方の有効求人倍率激減
自動車と並ぶ日本のもうひとつの基幹産業、エレクトロニクス産業で今年の最大の話題といえば、シャープの業績不振と東芝の不適切会計問題だろう。そのシャープに良くも悪くも関係が深い地域として、「忍者の里」で知られる三重県・伊賀地方がある。
西隣の奈良県にはシャープの総合開発センター(天理市)と、天理、葛城、大和郡山の各市に製造拠点がある。東隣の三重県・伊勢地方は亀山市と多気町にシャープの大きな製造拠点がある。伊賀地方は中間に位置し、無料だがほぼ高速道路規格の名阪国道(国道25号線/天理市〜亀山市)でつながっている。液晶テレビの「亀山ブランド」が生まれた亀山市へはクルマで1時間弱の距離だ。そのため伊賀地方にはシャープと取引している製造業やその下請けなど関連のある企業が数多く存在し、シャープの業績が悪化したら地域全体がその影響を受ける。
その伊賀地方全体を管轄するハローワーク伊賀の有効求人倍率は、今年1月は1.53で三重県内では津に次ぐ2番目の高さで、伊勢地方の四日市や鈴鹿や松阪よりも良かった。
【三重県・ハローワーク伊賀の有効求人倍率、新規求人倍率の推移(15年1〜8月)】
※以下、左が有効求人倍率、右が新規求人倍率
1月 1.53 2.26
2月 1.48 1.82
3月 1.34 1.63
4月 1.11 1.36
5月 1.06 1.66
6月 1.08 1.83
7月 1.27 2.49
8月 1.30 1.83
(出典:三重労働局の統計資料より/パートを含む常用)
それが5月には1.06に急落し、6月も1.08と伊賀地方の雇用情勢は一気に悪化した。5月に何が起きたかというと、14日にシャープが2223億円の最終赤字決算を発表して「シャープ・ショック」が起きている。事前に予想されていたとはいえ、内容の悪さに唖然とした関係者も少なくなかったはず。同じ三重県でも東の伊勢地方は名古屋に近く、鈴鹿市のホンダ、四日市市の石油化学産業、伊勢市の観光などほかの産業でカバーできる余地がある。しかし伊賀地方は名古屋、大阪までは距離があってシャープへの依存度が高かったため、その影響をもろに受けて有効求人倍率が大きく減ってしまった。
ショックは伊勢地方にも及んだ。シャープは3月に中小型液晶パネルを生産する多気町の三重第1工場を閉鎖したが、それを管轄するハローワーク松阪も、亀山市の第一工場、第二工場を管轄するハローワーク鈴鹿も、5月、6月の有効求人倍率は1倍割れを喫してしまった。
その後、7月、8月は伊賀地方をはじめ三重県の有効求人倍率は回復をみせたが、シャープ・ショックは三重県の雇用情勢に大きな爪痕を残している。このことは、特定の大企業に依存する地域経済は、その企業の業績が悪化すればいかにもろいかを物語っている。今後もそんなケースは、日本全国で起こる可能性がある。
景気が減速したら、その影響が真っ先に現れるのが雇用である。08年のリーマンショックの時も、非正規雇用の募集停止や「雇い止め」が真っ先に起きて新規求人倍率、有効求人倍率が急減し、その後に希望退職募集など正規雇用の人減らし、残業カットなど実質賃金の引き下げ、新規大卒者の就職氷河期などが長く続いた。全国どこに住んでいても、労働局が発表する最寄りのハローワークの有効求人倍率、新規求人倍率を毎月チェックして、次の雇用危機への備えを怠りなく。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)
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