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「アベノミクス2.0」は、海外での評価が低い〔PHOTO〕gettyimages
さらば、アベノミクス!日本「デフレ」に逆戻り! 〜株価、収入、物価が一斉に低下。またあの「悪夢」が繰り返される
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45749
2015年10月15日(木) 週刊現代 :現代ビジネス
アベノミクスが、なんとか信用されていたのは、わずかでも物価が上がっていたから。その「頼みの綱」の物価も、下がり始め、株価も一時、1万7000円割れ。もう、その効果を誰も信じられない。
■何かがおかしい
1万6930円。
9月29日の日経平均株価の終値である。この日、日経平均はわずか一日で714円もの下げを記録。8ヵ月半ぶりに1万7000円を割り込み、市場には悲鳴が充満した。
その後、多少は持ち直しているものの、株価は乱高下が続き、極めて不安定な状態にある。
8月までは2万円台を堅調に推移していた日経平均が、わずか1ヵ月半ほどのあいだに3000円も下落する。株式市場は、明らかにこれまでの力強さを失っている。
市場関係者は皆、口には出さないものの、この2年間続いた株価の上昇基調に異変が生じているという空気を感じ取っている。
誰もが信じたくない現実。アベノミクスによる景気上昇は終わりをつげ、いまや「反転」し始めたのではないか—実はそれを示す「証拠」が、株価暴落の数日前、ある発表によって明らかになっていた。
それは「消費者物価指数」の数値だ。9月25日、総務省は、生鮮食品を除いた物価を表す消費者物価指数の8月の数値を発表した。この指数が、前年同月の数字を下回ったのである。
アベノミクスが始まった'13年の4月以来、この指数は、一度も下落することなく、前年同月比で上昇を続けてきた。「少なくとも物価は下がっていない」「緩やかながらも上昇を保っている」。この事実こそが、アベノミクスの成果を証明し、説得力を持たせていたといっていい。だが、ついに物価は下落。その「砦」が陥落した。
「そもそもアベノミクスは、金融緩和や財政政策によって緩やかな物価上昇を起こすことを目標に掲げてきた。『デフレ脱却』は、経済政策面での総理の最大の目標であり、政権の支持率を保つ上でのアキレス腱です」(官邸スタッフ)
安倍総理は焦りに焦った。同日、総理は急遽、黒田東彦日本銀行総裁を官邸に呼び出し、経済の状況について話した。6月以来の会談だった。
だが、世界からの視線は現実的で冷徹だ。「日本が景気回復し、インフレを起こす」というシナリオは、すっかり疑念を持たれてしまっている。
米ジョージ・メイソン大学教授のタイラー・コーエン氏は、英エコノミスト誌のアンケートで'11年、「過去10年間で最も影響力のある経済学者」の一人に選ばれた人物。そのコーエン氏は、9月26日、物価の下落について、ブログで、
〈日本の国民は'13年以降、アベノミクスが効果を持つと考え、実際、物価は上がった。だが、いまや彼らはそれを信じなくなり、物価が再び滑り落ちていると見ている〉
という厳しい見方を示した。
■牛丼の「値下げラッシュ」
もはや日本経済は、デフレに逆戻りする寸前、いや、その一歩を踏み出した状態にある。
たしかに、生活を振り返っても、景気がよくなった、生活が楽になったという実感はない。いったい、なぜこうした事態になってしまったのか。
アベノミクスは、金融緩和によって投資や消費を増やし→賃金を上げて→需要を増やし→物価を上げるというシナリオを描いていた。
「ですが、多くの国民は、賃金が上がらなかった。それどころか、アベノミクスが生み出した円安によって、日用品や食料品などの輸入品の物価が値上がりし、家計はマイナスの影響を受けています」(クレディ・スイス証券・白川浩道氏)
実際、物価の影響を考慮した「実質賃金」は、アベノミクスが始まった'13年4月から今年4月まで24ヵ月連続で下落し続けた。'13年4月の実質賃金(ボーナス除く)を100とすると、今年7月は約94となる。この2年あまりのあいだに、実質賃金は6%も下がった。
賃金が上がらなければ、個人消費が振るうはずがない。4-6月期のGDPの「個人消費」は、0・7%のマイナスとなった。これでは、需要が伸びず、デフレに逆戻りして当然だ。
「デフレ産業」の代名詞である牛丼業界では、まさにこの状況を象徴する事態が起きている。
9月25日、牛丼チェーン「すき家」を運営する、すき家本部の興津龍太郎社長は、期間限定で、牛丼並盛を350円(税込み)から290円に値下げすることを発表した。
すき家は今年4月、人件費の上昇や、円安による牛肉価格の上昇を受け、291円から350円の値上げに踏み切った。
だが、その結果、4~8月の客数は、前年同期比で10・8%のマイナス、既存店の売上高は、同0・9%減となっている。
「値上げで客足が遠のき、7月には前年比90%まで持ち直しましたが、やはり一度、値下げキャンペーンを行って、お客様にお店に足を運んでいただきたいという考えです」(すき家本部広報室)
ライバルの吉野家、松屋も値下げに動いた。消費者にとってはうれしいが、値下げ競争が激化し、安いモノしか売れなくなると、賃金も上がらず、結果、ますますモノの値段が下がる。あの「デフレスパイラル」の再来だ。
事ここに至ったのは、安倍総理が、「アクセルとブレーキを同時に踏む政策」を行ってきたことも大きな敗因である。
第一は、消費増税だ。
「消費増税によって、十分に需要が回復する前に景気を冷やしてしまいました。本当は、いまからでも消費税を5%に戻し、'17年4月の増税も延期したほうがいい」(経済評論家・山崎元氏)
整合性の乏しい政策は、ほかにもある。山崎氏が続ける。
「安倍総理は、賃金の上昇を目指す一方、企業のROE(自己資本利益率)の向上を呼び掛けた。すると企業は、無理をしてでも利益を出さなければいけないから、賃上げに積極的になれない。矛盾した政策です」
■「劇薬」を使いすぎた
安倍総理は9月11日、経済財政諮問会議で、携帯電話料金の引き下げを求めたりしている。自分で「デフレ脱却」と「インフレ目標」を決めておきながら、まったく逆の要求を経済界にしているのだ。この発言で、ソフトバンクなど日経平均を支える通信会社の株が大幅に下がった。
さらに、アベノミクスは第三の矢として「成長戦略」を掲げていたが、これが不徹底だったことも致命的だった。
「効果があったのは、農業分野での規制緩和で新規事業の参入者が増えたこと、再生医療分野の審査基準が緩和されたことなど、一部にとどまりました。本当は、金融緩和で円安、株高を演出しているあいだに、規制緩和や構造改革をもっと進めておくべきでした」(信州大学・真壁昭夫教授)
こうしたなか、円安という「数字のマジック」で隠されてきた日本企業の実態があらわになり、業績を下方修正する企業が出始めている。
「今期の企業業績は平均で10~15%程度の増益が見込まれていましたが、10%以下になる可能性も出てきました。こうしたなか、11月16日に発表される7-9月期の実質GDP成長率は、年率1・2%減だった4-6月期に続いて、マイナス成長となりそうです。2四半期連続のマイナス成長となれば、定義上『景気後退』といっていい状況です」(日本総研副理事長・湯元健治氏)
百戦錬磨の外国人投資家たちは、こうした政策の甘さを見抜き、日本株から手を引き始めた。
8月、外国人による、現物と先物の売り越しの合計は、2兆5350億円にも達した。リーマンショックのときですら、これだけの売り越しはなかった。
「追い打ちをかけたのは、総理が9月24日に発表したアベノミクスの『セカンドステージ』の新三本の矢、つまり『強い経済』『子育て支援』『安心につながる社会保障』への失望です。まったく新味がなく、とくに海外の投資家の落胆は大きい。
GDP目標600兆円を掲げましたが、これは、当初から目標としている『名目成長率3%』を2020年まで続けることを言い換えたにすぎない。しかも、ファーストステージについての総括や説明は何もないのですから、不信を買って当然です」(マーケットアナリスト・豊島逸夫氏)
日経平均をドル換算すると、9月30日現在、約145ドルで、これはアベノミクス開始直後の'13年5月の数値と、ほとんど変わらない。
海外から見れば、アベノミクスの効果は、もはや「なかったこと」になりつつあるといって過言ではない。実際、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、9月29日、こう書いている。
〈安倍総理は日本経済を楽天的にとらえているが、(マイナス成長となった)'15年の第2四半期GDPを見ると、新たな政策への効果が問われている〉
株価は下がる、収入は上がらない、物価は下がる、海外からの評価は散々。アベノミクスの全てを否定された政府は、なんとか株価を保とうと、なりふりかまわず追加緩和を行うだろう。だが、その効果も限定的だ。前出の豊島氏が言う。
「10月には、日銀が国債やETF(上場投資信託)を購入し、市場に資金を供給する、追加緩和が行われると思います。ただ、この『劇薬』のような政策は、やるたび効果が徐々に減る。そもそも、すでに日銀が大量の国債を買ってしまったために、10年物国債は取引不成立の日もある。日銀は買うものを見つけるのも大変です」
■また、あの悪夢が…
こうした日本経済にさらなる打撃を与えるのは、海外の不確定要因による株価暴落のリスクだ。
最大の懸念は、アメリカの利上げ。ジャネット・イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、年内利上げの姿勢を崩していない。
これまで、世界の中央銀行が緩和してきたマネーによって、日本の株は値上がりを続けてきた。
「アメリカの金利が上がるということは、その利益を目指し、世界の資金が集まるということ。日本からも資金が流出し、株価が下がる可能性がある」(前出・山崎氏)
すでにこの数ヵ月の株価下落の影響で、140兆円を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、7~9月で9・4兆円もの損失を出した。さらなる下落があれば、年金の原資があっという間に溶けるという事態もありうる。
安倍総理は、日本経済の信頼を取り戻すため、9月29日、米ニューヨークにある経済専門紙「ブルームバーグ」本社のホールで、数百人のアナリスト、経済誌記者などに向けて英語でスピーチをした。
「日本経済全体を見回せば、デフレマインドはすでに払拭されています。これに安心することなく、経済を力強い成長軌道に戻すためにあらゆる行動を取る決意です」
だが、場は白けきっていた。安倍総理が力強く語れば語るほど、その言葉は空回りし、空疎に響くばかりだった。
安倍総理はこれまで、このスピーチ同様、ひたすら「アベノミクスはうまくいっている」と強弁してきた。挙げ句、「セカンドステージ」などと言い、結局、世界の信頼を失いつつある。
これ以上、嘘と誤魔化しを続ければ、日本はまた、「失われた20年」に逆戻りすることになる。
「週刊現代」2015年10月17日号より
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