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今のところ「新・三本の矢」の評判は芳しくないが…
「アベノミクス2.0」を成功させる3つの政策
http://diamond.jp/articles/-/79874
2015年10月14日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] ダイヤモンド・オンライン
■「成果はあったが、道半ば」が「アベノミクス1.0」の評価
安倍晋三首相が自民党総裁に再選され、地味ながら内閣改造を行った。そして、安倍首相は、いささか唐突だったが、アベノミクスが「第二ステージ」に移ると宣言し、「新・三本の矢」を発表した。
ここまでのアベノミクスを「アベノミクス1.0」、今後のアベノミクスを「アベノミクス2.0」と名付けよう。アベノミクス2.0は何をすればいいのだろうか。
その前に、アベノミクス1.0を総括しておこう。一言で言うと「成果はあったが、道半ばである」ということではないか。
アベノミクスは、デフレを脱却し2%程度の物価上昇率の環境を作ることを最優先する経済政策パッケージだと考えられる。成長、完全雇用などもさることながら、経済環境の整備として「物価」を重視するところに特徴がある。
ただし、デフレからの脱却を目指す上では、完全雇用で高成長を目指すことと、物価重視は両立する。物価重視の根拠としては、物価にはある種の「慣性」が働くことと共に、物価上昇率が2%程度のプラスであることが、マクロ的な調整も、ミクロ的な調整も容易な経済環境であることを挙げておこう。
さて、2012年末の安倍政権の成立と相前後して、インフレ目標と金融緩和で円安と株価をはじめとする資産価格の上昇を誘導し、失業率を低下させたことと、目標に距離があるとはいえ生鮮商品・エネルギーを除く消費者物価上昇率(いわゆる「コア・コアCPI」)で前年比0.8%程度と物価上昇率をプラスゾーンまで持ってきたことは、評価できる成果だ。この成果には、単なる運やプラシーボ(偽薬)効果ではない必然性があったし、特に雇用状況を改善したことに関しては、経済政策としてプラス評価を与えることがフェアだろう。
■消費増税が失敗、マイルドインフレと財政再建は同時には目指せない
一方、2015年に入って、消費支出は5月と8月が前年比プラスであったものの、他の月は対前年比マイナスゾーンにあり、消費の低迷が続いている。また、いわゆる「景気」感と一致しやすい鉱工業生産も、消費の低迷に加えて、中国経済減速の影響を受けて、さえない動きになっている。
物価上昇率の目標達成が遅れる状況となりつつある。景気に対して遅行指標である雇用関連の指標にはまだ影響は出ていないが、この状況を放置すると雇用に悪影響が及ぶ可能性もある。
海外要因はある程度仕方がないが、国内では、端的に言って昨年の消費税率引き上げが失敗だった。
金利をゼロまで低下させて、マネタリーベースを増やしても、物価が上昇するためには、財に対する需要が高まることが必要だ。
そのための経路としては、(1)円安、(2)資産価格上昇、(3)財政赤字の拡大(有効需要の財政的追加)が考えられる。(1)、(2)は金融緩和で導くことができたが、(1)は対外配慮上そろそろ限界に近づきつつあり、(2)は株高の消費に対する効果・投資に対する効果は理論上プラスであるはずだし事実存在したのだろうが、それほど大きなものではなかった。(3)に関しては、アベノミクス1.0の当初「旧・三本の矢」の財政出動はプラスに効いたが、2014年の消費税率引き上げは言わば矢を逆方向に撃ったようなものであり、金融緩和政策の効果を削いでしまった。
アベノミクス1.0の教訓は、財政引き締めは金融緩和の効果を減ずるということだ。つまり、マイルドなインフレの実現と財政再建は同時には目指せない。
■必要なのは「消費増税凍結」「子ども手当」「定年廃止」
「新・三本の矢」の一本目は、「旧三本の矢」を一つに集約したものだと考えることができよう。そして、日本経済の最優先の「環境整備目標」である消費者物価上昇率2.0%の達成には、物価をコアコアCPIで見るとしても、まだ距離がある。
アベノミクス2.0に必要なのは、インフレ目標の達成と財政再建に明確な優先順位を付けることだ。当然、前者を達成してから、後者を目指す。また、インフレ率の上昇は、税収増を通じて財政にプラスに働くし、過去の財政赤字の実質価値の減少にもつながる。
金融緩和の継続と同時に、財政政策も拡張的でなければならない。
本当のところ、消費税率を8%から5%に戻すことができるといいのだろうが、さすがに政治的に難しいかもしれない。しかし、物価上昇率目標の達成が遅れる中、海外経済が中国の減速に加えて、今後米国もピークアウトに向かう可能性があることを考えると、2017年の消費税率引き上げを延期ないし白紙撤回することが必要だろうし、減税ないしは給付金の形で、幅広く消費者に購買力を付加して需要を底上げすることが適切だ。現実的には、何らかの補正予算を組むべきだろう。
「新・三本の矢」の二本目の具体項目の筆頭に「希望出生率1.8の実現」が来ることを考えると、実は、民主党政権が唱えた「子ども手当」は、出生率引き上げ策としても、(金融緩和政策と組み合わせたら)デフレ脱却策としても、大変優れた政策であったように思われる。
子育て支援と出生率アップのためには、自民党の小泉進次郎議員が言うように、多子世帯をではなく、第一子から国がバックアップすべきだろうし、若年者が結婚して独立しやすいように、若年ファミリー向けの賃貸住宅を充実させる必要があるだろう。公営住宅を造らなくとも、会社員の借り上げ社宅のような制度で、子供がいる若年低所得家庭に公的な家賃補助を行うような制度を考えるべきかも知れない。
もちろん、女性の労働参加を促すためには保育園の待機児童ゼロを早急に実現すべきだ。
また、新・三本目の矢である「社会保障の充実」に関連して、高齢者の労働参加のためには、「定年廃止」が年齢差別解消の点でも、社会保障費の拡大を防ぐためにも、好ましいことであるように思う。これは、短期間で実行できる優れた規制緩和だ。
なお、年金は、確定拠出年金のような自助努力型の制度は拡大する(特に個人型を)ことが望ましいとしても、公的年金をこれ以上サイズアップする必要はない。長期的には、公的年金を縮小し、生活保護を拡大し(制度・手続きはもっとシンプルにする必要がある)、最終的にはベーシックインカムないし、給付付き税額控除(負の所得税)に吸収していく形が望ましいように思う。
■金融緩和は現状の継続で十分 株式買い入れ拡大は弊害が大きい
金融政策は、当面の長期国債買い入れを中心とする緩和とほぼゼロ金利を長期的に継続することをコミットすれば現状で十分だ。株式の買い入れについては、効果が乏しいし、これ以上の拡大にはむしろ弊害を強く感じる。
そもそも株価形成を歪めるような市場への介入が不適切だ。例えば、株式には満期がないが日銀はETFの形で抱え込んだ株式をいつ売ることができるのか。また、日銀が抱える株式の議決権が空洞化していることも問題だ。公的年金の巨額の株式投資も適切だとは言い難い。
金融緩和の継続を大前提とした上で、アベノミクス2.0で重要と思われる政策を3つに絞ると以下の通りだ。
(1)物価上昇率目標をクリアするまでの消費税率の引き上げを凍結宣言。
(2)「子ども手当」的な若年層・中間層中心の減税ないし給付金支給。
(3)定年廃止。
待機児童解消、教育支援、介護支援なども重要だが、何はともあれ、上記の3つが重要かつ効果的ではないだろうか。
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