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現役時代に中流以上の稼ぎがあっても、老後は思わぬ事態から貧困に転落。「下流老人」著者・藤田孝典氏が語る老後の現実とは?
中流のはずが…下流老人転落はなぜ起こる 藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事に聞く
http://diamond.jp/articles/-/79873
2015年10月14日 ダイヤモンド・オンライン編集部
低賃金の仕事だったから、年金額が低くて老後は貧困――そんなイメージは過去のもの。今や、比較的所得が高かった人が下流老人に転落するケースが相次いでいる。「下流老人」の著者・藤田孝典氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)
■元地銀マンでも下流老人に!ささいなきっかけから転落が始まる
――著書「下流老人」(朝日新書)では、現役時代の年収が高いからといって、決して老後が安泰とは限らない。そんな事例が描かれています。
私は、ホームレス状態や生活困窮状態にある方を支援するNPO法人・ほっとプラスで活動してきた経験から、年収が高いから老後も大丈夫とはとても思えません。
以前は、低賃金の仕事に就いていて、老後に無年金や低年金で苦しんで生活保護を受給しなければならなくなる、というケースが比較的多かったように思います。
しかし最近は現役時代に、比較的所得が高かった人たちが相談に来られるケースが増えています。貧困に転落した理由はさまざまです。本人の病気やケガで医療費がかさんだ結果だったり、子どもなど家族の病気で、看護や介護が必要な状態が長引いた結果だったり。もう1つ、最近増えているのが単身世帯の貧困です。
もともと独身だったり、離婚や死別で1人暮らしとなった方々なのですが、特に男性は貧困に陥りやすい。たとえば、元地銀マンだった67歳の男性は、離婚をして妻と資産や年金を折半。月額12万円の年金暮らしをしていたのですが、あれこれ散財して家賃を払えなくなり、アパートを追い出されて、公園で生活をしていました。認知症の症状もありました。
今の若い世代はまだしも、60代、70代の男性たちは、仕事一辺倒で生きてきた方が多い。結婚している割合は高い世代なのですが、離別や死別で1人暮らしとなった場合、極端に生活能力が低いのです。家は荒れているし、食事はすべてコンビニ弁当か外食。当然、栄養が偏ります。病気になるなどして、だんだんと体が弱ってきて、要介護状態にまでいってしまう。
一方の女性は、12万円の年金でも、それなりにしっかりと暮らしていけていたりする。男性とは対照的です。
こうしたケースは、決して珍しくありません。よく「下流老人に転落しないためにどうすればいいのか」と聞かれます。もちろん、生活に必要な金銭の確保も大切なのですが、特に男性の場合は、現役時代に持っていた「家にお金を運んでくることが男の価値」という考え方を変えていく必要があります。下流老人に欠けている3つの要素は、収入(年金)と貯蓄、そして人とのつながりです。
――男性は「助けてくれ」と言えない人が多いですよね。
相談を受けていても、女性や若者は「助けてほしい」とストレートに言えるし、生活保護制度を説明して受給を勧めると「明日にでも申請に行きます」との返事が返ってきたりする。一方、男性だと「親族に連絡がいくのだろうか?迷惑をかけたくない」とか、「昔おもちゃを買ってあげた甥っ子にもバレるんですか?だったら死んだ方がマシ」といった返事が返ってくる。理想像に固執しすぎるため、生きることへの、いい意味での貪欲さが欠けている印象です。
「助けてくれ」と騒げる人は、強いのです。実は、孤独に耐えることが強さなのではなく、依存先が多い人ほど強い。私はそう考えています。男性の場合は、「助けてくれ」と口にできない弱さをどう抑制し、助けを求められる強さを身につけるか。ここに、孤独死や自殺を防ぐカギがあると思います。
■酒・ギャンブル依存から貧困ビジネスまで 貧困に孤独が追い討ちをかける
これは男女を問わずですが、孤独と貧困が長引くと、心も体も崩れてしまい、うつ状態になります。ストレス発散のために、発泡酒を飲み過ぎてアル中になったり、パチンコなどギャンブル依存も多い。また、貧困ビジネスに騙されたり、新興宗教にはまったり、さらには訪問販売業者から、必要ないものを大枚をはたいて買ったりする。訪問販売にはまるのは、認知症もからんでいると思いますが、寂しさも大きな要因だと考えています。
「受援力(じゅえんりょく)」という言葉があります。災害援助の現場でよく使われる言葉なのですが、ボランティアがいるのに、助けを求めない人がいる。ボランティアは、「これを手助けしてほしい」と意思表示してもらわなければ、助けられないですよね。
高齢期の方々にも、ぜひ受援力を身につけていただきたいです。「1人で何とかできる」とがんばりすぎたり、「こんな自分になってしまって恥ずかしい」とプライドに固執しすぎれば、どんどんと転落していく。われわれのような相談機関やボランティアの手を借りることはもちろんですが、人とのつながりの基本は、やはり家族。次に親戚や友人、そして地域社会もある。無用なプライドを捨てて、「かわいいおじいちゃん、おばあちゃん」になることは、大切なのではないでしょうか。
――年金や貯蓄は、どのくらいあれば安心とお考えですか?
これはいくらとは、一概に言いにくいですね。病気を患って思わぬ出費がかさむこともあるし、そもそも長生きをすれば、必要な金額は増えます。もちろん、ファイナンシャルプランナーなどに相談をして、老後の生活設計を考えることは大切ですが。
私の経験から言えることは、「年金が足りなければ、働けばいい」という考えは甘いということです。一部の高度な専門職や農業の方などを除けば、高齢期に働くというのは現実的ではない。特に後期高齢者(75歳以上)の就労は難しいのです。厚生労働省の調査でも、高齢期に働いて得られる収入は、全収入の2割以下にとどまっています。体の具合が悪くて働けなくなることも多いし、第一、働く場があまりありません。
また、子どもがワーキングプアだったり、うつ病や引きこもりになって、親に寄りかかっているために、さらにお金が必要で生活が苦しくなるというケースも多い。今、病気や引きこもりが原因で、無業・無職になっている人は、数百万人単位でいると言われています。親世代は「本人のがんばりが足りない」などと考えがちですが、今の若者世代は、「努力のしようがない」現実の中でもがいています。
ブラック企業で心身を病み、うつ病や引きこもりになるケースも多いのですが、特に地方では、一度非正規になってしまうと、正社員への道が閉ざされてしまいがちです。また、日本はまだ新卒採用がスタンダードで、年齢を重ねると正規雇用が難しい社会です。
こうしたケースで親が亡くなると悲惨です。ある40代の男性は、親の遺体の脇で、どうしていいか分からず、呆然と座っていました。親が亡くなったことを隠して年金を不正受給したり、葬儀費用を出せず遺体を捨ててしまうなどの事例も後を絶ちません。
■極度に家族の負担が大きい日本 若者に広がる「下流老人予備軍」
――今の高齢者は、比較的豊かな世代だと思います。その彼らも下流老人に転落してしまうということは、若い世代はどうなるのでしょうか?
専門家たちも、今の高齢者世代に、ここまで貧困が広がるとは思っていませんでした。この後の世代は、さらに大変です。今の高齢者世代は結婚している割合は高いのですが、若い世代では、非正規で収入が足りないため、結婚すらできない人がたくさんいます。彼らが高齢期を迎えれば、下流老人は今よりもっと増えるでしょう。
下流老人の問題を、個人の努力だけでなんとかしようというのは、現実的ではありません。消費旺盛な若い世代に対して、高額の家賃や教育費、医療費負担の軽減をはかり、さらに親の面倒は国が見る、という政策に転換していかなければ、貧困問題が解消しないだけでなく、景気が良くなるはずもありません。
また、これまで、日本は高齢者のケアを家族と企業に依存してきたと言えます。何かあれば家族が面倒を見たし、企業も社宅など福利厚生を充実させることで、こうしたあり方を支えてきました。しかし今、企業はグローバル競争の中で利潤を追求しなければ生き残れないと考え、福利厚生は削減されてきています。家族も支える財力を失っています。
たとえば、フランスやドイツなどは、早くから少子高齢化に向けた政策を進めてきました。住宅補助を充実させたり、若者世代の家計負担を和らげて、将来に備えた貯蓄をできるように、教育費の無償化などを進めてきたのです。比較的、緩やかに少子高齢化が進んでいったため、政策を充実させる時間があったからできたと言えます。
しかし、日本はあまりにも急速に高齢化が進み過ぎ、政策が明らかに現実に追いついていません。家族扶助が前提の年金制度は、少子化時代にマッチしていません。また、住宅費も高い。首都圏の公営住宅の当選確率は、だいたい30倍、高いときは800倍です。東京大学への入学(学部によるが約2〜10倍の入試合格率)よりもはるかに狭き門なのです。
医療面も課題が大きい。医療費が支払えなかったり、そもそも健康保険料が未納で病院にいけず、担ぎ込まれたときには重篤な症状になっていて、高額の医療費がかかるというケースが後を絶ちません。
孤独死問題とも密接につながっています。心筋梗塞で通院中だったのに、薬代が払えずに服薬を止めてしまった方は、苦痛で顔がゆがみ、酸欠で真っ黒に変色した死に顔で発見されました。症状が軽いうちに通院できる制度を整えなければ、尊厳ある死に方ができないだけでなく、重病者が増えて医療コストが増大する悪循環となります。
■生活保護のスティグマを恐れて共倒れする日本の家族
――日本は生活保護のスティグマ(烙印)も大きいので、「国に面倒を見てもらう」ことへの罪悪感や恥に苦しむ人も多いですね。
特に、日本と韓国は異常ですね。生活に困窮した親の面倒を子どもが無理をしてでもみるという構図では、共倒れになってしまいます。高度経済成長期で余力があればこそできますが、既にそんな時代ではない。税の再配分をきちんと行わなければ、社会が機能しなくなります。
海外の先進国では、税だけでなく、寄付で再配分が行われている構図が見られます。日本は寄付もあまり根付いていないし、税の再配分も弱いですから、二極化が進む一方です。これでは消費が伸びるはずもなく、企業が良い商品を作っても売れません。それなのに、アベノミクスは社会保障の充実に力を注がずに、経済成長のみを追いかけようとしている。
資産家や企業にこそ、「こうした問題を解消するために、きちんと税金を取ってくれ」と声を上げてもらいたいものです。そして、現時点での下流老人を救うための政策ももちろん必要ですが、若い世代が将来、下流老人に転落しないような政策も必要です。今のままでは、彼らが高齢者になれば、下流老人が激増するのは確実なのです。
ふじた・たかのり
1982年生まれ、NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表、ブラック企業対策プロジェクト共同代表、厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関する提言を行っている。主な著書に「下流老人」(朝日新書)、「ひとりも殺させない」(堀之内出版)など。
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