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中流のはずが…下流老人転落はなぜ起こる 藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事に聞く(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan101/msg/501.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 10 月 14 日 09:42:00: igsppGRN/E9PQ
 

現役時代に中流以上の稼ぎがあっても、老後は思わぬ事態から貧困に転落。「下流老人」著者・藤田孝典氏が語る老後の現実とは?


中流のはずが…下流老人転落はなぜ起こる 藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事に聞く
http://diamond.jp/articles/-/79873
2015年10月14日 ダイヤモンド・オンライン編集部


低賃金の仕事だったから、年金額が低くて老後は貧困――そんなイメージは過去のもの。今や、比較的所得が高かった人が下流老人に転落するケースが相次いでいる。「下流老人」の著者・藤田孝典氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

■元地銀マンでも下流老人に!ささいなきっかけから転落が始まる

――著書「下流老人」(朝日新書)では、現役時代の年収が高いからといって、決して老後が安泰とは限らない。そんな事例が描かれています。

 私は、ホームレス状態や生活困窮状態にある方を支援するNPO法人・ほっとプラスで活動してきた経験から、年収が高いから老後も大丈夫とはとても思えません。

 以前は、低賃金の仕事に就いていて、老後に無年金や低年金で苦しんで生活保護を受給しなければならなくなる、というケースが比較的多かったように思います。

 しかし最近は現役時代に、比較的所得が高かった人たちが相談に来られるケースが増えています。貧困に転落した理由はさまざまです。本人の病気やケガで医療費がかさんだ結果だったり、子どもなど家族の病気で、看護や介護が必要な状態が長引いた結果だったり。もう1つ、最近増えているのが単身世帯の貧困です。

 もともと独身だったり、離婚や死別で1人暮らしとなった方々なのですが、特に男性は貧困に陥りやすい。たとえば、元地銀マンだった67歳の男性は、離婚をして妻と資産や年金を折半。月額12万円の年金暮らしをしていたのですが、あれこれ散財して家賃を払えなくなり、アパートを追い出されて、公園で生活をしていました。認知症の症状もありました。

 今の若い世代はまだしも、60代、70代の男性たちは、仕事一辺倒で生きてきた方が多い。結婚している割合は高い世代なのですが、離別や死別で1人暮らしとなった場合、極端に生活能力が低いのです。家は荒れているし、食事はすべてコンビニ弁当か外食。当然、栄養が偏ります。病気になるなどして、だんだんと体が弱ってきて、要介護状態にまでいってしまう。

 一方の女性は、12万円の年金でも、それなりにしっかりと暮らしていけていたりする。男性とは対照的です。

 こうしたケースは、決して珍しくありません。よく「下流老人に転落しないためにどうすればいいのか」と聞かれます。もちろん、生活に必要な金銭の確保も大切なのですが、特に男性の場合は、現役時代に持っていた「家にお金を運んでくることが男の価値」という考え方を変えていく必要があります。下流老人に欠けている3つの要素は、収入(年金)と貯蓄、そして人とのつながりです。

――男性は「助けてくれ」と言えない人が多いですよね。

 相談を受けていても、女性や若者は「助けてほしい」とストレートに言えるし、生活保護制度を説明して受給を勧めると「明日にでも申請に行きます」との返事が返ってきたりする。一方、男性だと「親族に連絡がいくのだろうか?迷惑をかけたくない」とか、「昔おもちゃを買ってあげた甥っ子にもバレるんですか?だったら死んだ方がマシ」といった返事が返ってくる。理想像に固執しすぎるため、生きることへの、いい意味での貪欲さが欠けている印象です。

「助けてくれ」と騒げる人は、強いのです。実は、孤独に耐えることが強さなのではなく、依存先が多い人ほど強い。私はそう考えています。男性の場合は、「助けてくれ」と口にできない弱さをどう抑制し、助けを求められる強さを身につけるか。ここに、孤独死や自殺を防ぐカギがあると思います。

■酒・ギャンブル依存から貧困ビジネスまで 貧困に孤独が追い討ちをかける

 これは男女を問わずですが、孤独と貧困が長引くと、心も体も崩れてしまい、うつ状態になります。ストレス発散のために、発泡酒を飲み過ぎてアル中になったり、パチンコなどギャンブル依存も多い。また、貧困ビジネスに騙されたり、新興宗教にはまったり、さらには訪問販売業者から、必要ないものを大枚をはたいて買ったりする。訪問販売にはまるのは、認知症もからんでいると思いますが、寂しさも大きな要因だと考えています。

「受援力(じゅえんりょく)」という言葉があります。災害援助の現場でよく使われる言葉なのですが、ボランティアがいるのに、助けを求めない人がいる。ボランティアは、「これを手助けしてほしい」と意思表示してもらわなければ、助けられないですよね。

 高齢期の方々にも、ぜひ受援力を身につけていただきたいです。「1人で何とかできる」とがんばりすぎたり、「こんな自分になってしまって恥ずかしい」とプライドに固執しすぎれば、どんどんと転落していく。われわれのような相談機関やボランティアの手を借りることはもちろんですが、人とのつながりの基本は、やはり家族。次に親戚や友人、そして地域社会もある。無用なプライドを捨てて、「かわいいおじいちゃん、おばあちゃん」になることは、大切なのではないでしょうか。

――年金や貯蓄は、どのくらいあれば安心とお考えですか?

 これはいくらとは、一概に言いにくいですね。病気を患って思わぬ出費がかさむこともあるし、そもそも長生きをすれば、必要な金額は増えます。もちろん、ファイナンシャルプランナーなどに相談をして、老後の生活設計を考えることは大切ですが。

 私の経験から言えることは、「年金が足りなければ、働けばいい」という考えは甘いということです。一部の高度な専門職や農業の方などを除けば、高齢期に働くというのは現実的ではない。特に後期高齢者(75歳以上)の就労は難しいのです。厚生労働省の調査でも、高齢期に働いて得られる収入は、全収入の2割以下にとどまっています。体の具合が悪くて働けなくなることも多いし、第一、働く場があまりありません。

 また、子どもがワーキングプアだったり、うつ病や引きこもりになって、親に寄りかかっているために、さらにお金が必要で生活が苦しくなるというケースも多い。今、病気や引きこもりが原因で、無業・無職になっている人は、数百万人単位でいると言われています。親世代は「本人のがんばりが足りない」などと考えがちですが、今の若者世代は、「努力のしようがない」現実の中でもがいています。

 ブラック企業で心身を病み、うつ病や引きこもりになるケースも多いのですが、特に地方では、一度非正規になってしまうと、正社員への道が閉ざされてしまいがちです。また、日本はまだ新卒採用がスタンダードで、年齢を重ねると正規雇用が難しい社会です。

 こうしたケースで親が亡くなると悲惨です。ある40代の男性は、親の遺体の脇で、どうしていいか分からず、呆然と座っていました。親が亡くなったことを隠して年金を不正受給したり、葬儀費用を出せず遺体を捨ててしまうなどの事例も後を絶ちません。

■極度に家族の負担が大きい日本 若者に広がる「下流老人予備軍」

――今の高齢者は、比較的豊かな世代だと思います。その彼らも下流老人に転落してしまうということは、若い世代はどうなるのでしょうか?

 専門家たちも、今の高齢者世代に、ここまで貧困が広がるとは思っていませんでした。この後の世代は、さらに大変です。今の高齢者世代は結婚している割合は高いのですが、若い世代では、非正規で収入が足りないため、結婚すらできない人がたくさんいます。彼らが高齢期を迎えれば、下流老人は今よりもっと増えるでしょう。

 下流老人の問題を、個人の努力だけでなんとかしようというのは、現実的ではありません。消費旺盛な若い世代に対して、高額の家賃や教育費、医療費負担の軽減をはかり、さらに親の面倒は国が見る、という政策に転換していかなければ、貧困問題が解消しないだけでなく、景気が良くなるはずもありません。

 また、これまで、日本は高齢者のケアを家族と企業に依存してきたと言えます。何かあれば家族が面倒を見たし、企業も社宅など福利厚生を充実させることで、こうしたあり方を支えてきました。しかし今、企業はグローバル競争の中で利潤を追求しなければ生き残れないと考え、福利厚生は削減されてきています。家族も支える財力を失っています。

 たとえば、フランスやドイツなどは、早くから少子高齢化に向けた政策を進めてきました。住宅補助を充実させたり、若者世代の家計負担を和らげて、将来に備えた貯蓄をできるように、教育費の無償化などを進めてきたのです。比較的、緩やかに少子高齢化が進んでいったため、政策を充実させる時間があったからできたと言えます。

 しかし、日本はあまりにも急速に高齢化が進み過ぎ、政策が明らかに現実に追いついていません。家族扶助が前提の年金制度は、少子化時代にマッチしていません。また、住宅費も高い。首都圏の公営住宅の当選確率は、だいたい30倍、高いときは800倍です。東京大学への入学(学部によるが約2〜10倍の入試合格率)よりもはるかに狭き門なのです。

 医療面も課題が大きい。医療費が支払えなかったり、そもそも健康保険料が未納で病院にいけず、担ぎ込まれたときには重篤な症状になっていて、高額の医療費がかかるというケースが後を絶ちません。

 孤独死問題とも密接につながっています。心筋梗塞で通院中だったのに、薬代が払えずに服薬を止めてしまった方は、苦痛で顔がゆがみ、酸欠で真っ黒に変色した死に顔で発見されました。症状が軽いうちに通院できる制度を整えなければ、尊厳ある死に方ができないだけでなく、重病者が増えて医療コストが増大する悪循環となります。

■生活保護のスティグマを恐れて共倒れする日本の家族

――日本は生活保護のスティグマ(烙印)も大きいので、「国に面倒を見てもらう」ことへの罪悪感や恥に苦しむ人も多いですね。

 特に、日本と韓国は異常ですね。生活に困窮した親の面倒を子どもが無理をしてでもみるという構図では、共倒れになってしまいます。高度経済成長期で余力があればこそできますが、既にそんな時代ではない。税の再配分をきちんと行わなければ、社会が機能しなくなります。

 海外の先進国では、税だけでなく、寄付で再配分が行われている構図が見られます。日本は寄付もあまり根付いていないし、税の再配分も弱いですから、二極化が進む一方です。これでは消費が伸びるはずもなく、企業が良い商品を作っても売れません。それなのに、アベノミクスは社会保障の充実に力を注がずに、経済成長のみを追いかけようとしている。

 資産家や企業にこそ、「こうした問題を解消するために、きちんと税金を取ってくれ」と声を上げてもらいたいものです。そして、現時点での下流老人を救うための政策ももちろん必要ですが、若い世代が将来、下流老人に転落しないような政策も必要です。今のままでは、彼らが高齢者になれば、下流老人が激増するのは確実なのです。

ふじた・たかのり
1982年生まれ、NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表、ブラック企業対策プロジェクト共同代表、厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活困窮者支援のあり方に関する提言を行っている。主な著書に「下流老人」(朝日新書)、「ひとりも殺させない」(堀之内出版)など。
 

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コメント
 
1. 2015年10月21日 08:27:54 : jXbiWWJBCA
老後のお金クライシス! 深田晶恵
【第27回】 2015年10月21日 深田晶恵
これからの下流老人とは、定年後も延々住宅ローンが残る人
60歳時の住宅ローン残高を
把握していますか?


 前回は「老後貧乏から下流老人に転落する分かれ目はどこか」と題して、「制度を知る・利用する力」と「少し先を想像する力」がないと、老後貧乏から下流に転じる可能性があると書いた。

「制度を知る・利用する力」があれば、困ったときに社会保障制度や福祉制度のサポートを受けることができる。男性は、「知る・利用する力」に加えて、「助けて」と声を出せる自分を作っておくことも必要だ(威張らずに)。

「少し先を想像する力」は、5年後、10年後、もしくは定年後の「自分のお金周りを予測する力」のこと。割り算とかけ算ができれば、老後の蓄えや年金収入をムダに減らさなくてすむ。

 今回は、定年後も続く住宅ローンが持つリスクについて考えてみたい。住宅ローンを持つ読者の方、次の質問に即答できるだろうか。

 (1)住宅ローンを完済する年齢はわかりますか?
 (2)60歳時の住宅ローン残高を知っていますか?

 完済年齢については「うん、わかる」という人が多数と思われる。35歳で35年返済のローンを組んだとしたら、その時に「70歳までのローンかぁ。退職金で返せば何とかなるだろう」と考えていただろうから覚えているはずだ。妻が知らぬ間に繰り上げ返済をしていたら、当初より完済年齢が数年早まっているかもしれないが、それはそれでラッキーなこと。

 一方の60歳時のローン残高については、答えられる人はかなり少ない。全期間固定金利の住宅ローンなら、返済予定表で完済までの毎月のローン残高が載っているので把握が可能。しかし、現在ローンを持っている人の大多数は、変動金利型や一定期間の固定金利型だ。その場合の返済予定は、「金利が固定されている期間」だけの記載のため、ほとんどの人が60歳時のローン残高を答えられない。

 定年後も返済が続くローンを、退職金をアテにして借りるにもかかわらず、退職時の残高を知らないのは、人生における大きなリスクである。さらに、ほとんど人が、ローンを組む段階で勤務先の退職金水準をご存じない。仮に60歳時のローン残高が1500万円で、退職一時金が1800万円だとすると、差し引き300万円しか老後資金に回せなくなるのである。

 他に老後資金の蓄えがないと、老後貧乏からあっという間に下流老人に転落するかもしれない。

40歳を過ぎて35年返済でローンを組むと、
老後貧乏の可能性大!

 今、50代の人だと「70歳完済」のローンを組んでいる人が多い。当初借入額3000万円程度だと、返済額や金利にもよるが60歳時点で1000万円前後となるケースが多い。

 60歳で1000万円前後というのも十分にリスクがあると思うが、40代でこの数年間に購入した人はさらに大きなリスクを抱えている可能性がある。住宅ローンの返済期間は長らく「35年、もしくは70歳までの期間のいずれか短いほう」というのが主流だったが、銀行ローンは獲得競争が激化したことにより、4〜5年前から完済年齢が80歳まで引き上げられた。このため、40歳を過ぎて高額物件を購入した人の多くは、70歳過ぎまで続くローンを借りているのである。

 具体的なケースで見てみよう。42歳で6000万円の住宅を購入したAさんは、頭金を1500万円入れて、4500万円の住宅ローンを組んだ。モデルルームでは「毎月の返済額は約12万円です。Aさんの年収なら銀行の審査もラクに通りますよ」と太鼓判を押された。

 読者のみなさんは、4500万円も借りて、月々12万円で済むの? と疑問を持つかもしれない。カラクリは「変動金利&35年返済」にある。低い金利、長い返済期間で借りると、毎月の返済額は少なくなるのがローンの仕組みだ。

 42歳のAさんが35年返済で借りると、77歳までローンが続く。Aさんは、モデルルームで提案されたプランを見て「77歳まで返済が残るのはどうかな」と言ってみた。すると驚くことに、営業マンから「大丈夫ですよ。住宅ローンには団体信用生命保険が付いていますから、返済中に死亡するとローンはゼロになります。退職金で一括返済など考えないで、定年後もぼちぼち返していくのがお勧めです。オトコはそんなに長生きしませんから、最後は団信で帳消しです」と言われたという。

 このようなケースはAさんに限らず、この数年、住宅ローンの相談で急激に増えている案件だ。これを聞いた私は「オトコは早く死ぬから大丈夫? 何を根拠にそういうことを言うのでしょうね!」と、怒りのあまり鼻を膨らませていると、男性相談者の多くは「そうか、長生きしないなら、繰り上げ返済する必要がないんだと思った。だから契約した」と言う。思わず「そこ、納得するところではなく、怒るところですよ!」と言ってしまったことが多々ある。

今は問題なく返済できても、
老後は年金収入の半分がローン返済に!

 Aさんが提案されたプランのリスクを検証してみよう。

 【モデルルームで提案されたプラン】
 ローン借入額:4500万円
 借入条件:変動金利0.775%、返済期間35年(完済時77歳)
 毎月返済額:12万2364円

 管理職になったAさんの年収は1000万円を超えている。当面は、月々12万円の返済は難しいことではない。しかし、定年後はどうだろう。

 サラリーマン(男性)の年金は、年200万〜240万円くらい。企業年金が上乗せされたとしても、期間が限られているケースがほとんどだ。仮に、営業マンが言う通り、繰り上げ返済をせずに「ぼちぼち」返していくと、年金収入のうち半分前後がローン返済に回ることになる。ローン返済後の残りだけでは生活できないので、退職金など老後資金を取り崩すことになる。

 65歳以上の高齢者の収支は、住宅ローンの返済がなくても年間マイナス60万円くらいなので、それに返済分の約150万円を加えると、年210万円を貯蓄から取り崩す計算となる。10年間続くと、2000万円以上の貯蓄が確実になくなる。貯蓄が大きく減った頃に死亡すると、遺された妻のその後の生活はかなり厳しいものとなるだろう。Aさん死亡後、妻は遺族年金収入となり、貯蓄が底をつくと、下流老人になる可能性はゼロではない。「少ない年金×ひとりだけの年金」は、貧困に陥るきっかけとなるのだ。

 そもそも、亡くなる年齢は自分で決めることができないのだから、「早く死亡するとローンがなくなるから、あわてて返さなくていい」なんていう考えは、論外なのである。

自分にとっての最長返済期間は
「65歳−ローン返済開始年齢」

 定年時に退職金で一括返済するプランを提示するため、60歳時残高を試算してみたところ、約2485万円(当初10年間は金利が変わらず、11年目以降2.5%と仮置き)もある。金利上昇を楽観的に見ても、これだけの金額が残ってしまう。

 これから子どもの教育費負担が増え始めるため、子どもたちが社会人になるまでは繰り上げ返済に回す余裕はない。勤務先の予想退職金は3000万円に満たないうえ、一部が確定拠出年金制度にスライドしたため、運用次第で金額はもっと減るかもしれない。

 そもそもAさんは借りすぎなのだ。「変動金利&35年返済」という、借りすぎを引き起こす「マジック」に引っかかってしまったといえる。金利が低下し、銀行が完済時年齢を80歳に引き上げて以降、身の丈以上のローンを組んでしまう人が急増している。私は、次世代型の下流老人は、多額のローンを組み、60歳を過ぎても延々と返済が続く人と危惧している。

 老後の安心を確保するためには、返済期間は「65歳−ローン返済開始年齢」とするのが良い。42歳のAさんなら「65歳−42歳=23年」。金利は、少なくとも10年以上の固定金利で金利上昇リスクを抑えたい。

 以上を踏まえて試算すると、次の通り。

 【65歳完済のプラン】
 ローン借入額:4500万円
 借入条件:10年固定金利1.2%、返済期間23年
 毎月返済額:当初10年間は18万6658円、11年目以降は20万2514円
 60歳時残高:約1141万円
 ※11年目以降の金利は2.5%で仮置き

 Aさんは、毎月返済額を見て「子どもたちは2人とも私立中学受験の予定なので、月19万円近くもの返済は無理」と言う。60歳時残高も結構な金額だ。やはり、42歳のAさんにとって4500万円は「借りすぎ」の金額なのだ。

「65歳−ローン返済開始年齢」の返済期間で試算をした毎月返済額が「多い」と感じるなら、それは借入額が身の丈に合っていないということ。住宅を購入する際には、売買契約を結ぶ前に何度も試算をして、慎重に検討すべきだろう。

 人生には自分でコントロールできることと、できないことがある。「自分の死亡時期」、「退職金の金額」、「金利変動」は、自分ではコントロールできない。一方、借入額や返済期間、金利タイプの選択は自分で決めることができる。住宅ローンという多額の借金を組むなら、コントロールできないことを少しでも減らし、コントロールできる要素でリスクを減らすのが肝心なのである。

※Aさんの事例は個別のものではなく、複数の相談内容を組み合わせたものとなっている点をご了承ください。
http://diamond.jp/articles/-/80281


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