2. 2015年10月14日 18:28:16
: OO6Zlan35k
中国債券、借り入れによる買いが急増−市場にゆがみも 中国株は今年前半にマージン取引を背景に上昇したが、夏場に急落した。写真は株価ボードに見入る中国の投資家(8月) ENLARGE 中国株は今年前半にマージン取引を背景に上昇したが、夏場に急落した。写真は株価ボードに見入る中国の投資家(8月) PHOTO: ZHENGYI XIE/ZUMA PRESS By FIONA LAW 2015 年 10 月 14 日 14:37 JST 中国では借入資金による株式投資の拡大を背景に株価が急騰したあげく、やがて暴落した。現在、投資家の戦略は債券市場に移り、債券を担保とした借り入れは過去最高額に達している。 アナリストらによると、中国の投資家の多くはこうした債券担保融資を使って債券の持ち高を増やしており、買いが膨らむなか債券の発行額は急増し、利回りは数年ぶりの低水準をつけている。 投資家にとっての懸念材料は、多額の借り入れによる債券買いで市場がゆがみ、過度に相場が押し上げられることで社債の利回りが低下し、国債とのスプレッド(利回り差)が縮小していることだ。 バンクオブアメリカ・メリルリンチの金利ストラテジスト、ヤン・チェン氏は「クレジットスプレッドが小さすぎて、経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を正当化できないことが問題だ」と述べた。 その上、債券価格が下がれば、投資家は融資返済のために売りを余儀なくされ、下げが加速する可能性がある。これはまさしく夏場に株式市場で起きたことだ。 債券担保融資は株式のマージン(証拠金)融資とほぼ同じメカニズムだが、株式の代わりに債券を担保に使う。投資家は保有債券を担保に証券会社から短期融資を受け、新たな債券を買う。 だが株式のマージン取引とは違い、個人投資家は関与しない。これは債券レポと呼ばれる取引で、機関投資家が証券会社などから短期資金を受け取る代わりに債券を手渡す。個人投資家はレポ市場に参加できないため、銀行、証券会社、資産運用会社などの機関投資家が同市場の借り手だ。 左から、債券を担保とした短期融資、トリプルA格付けの5年物社債と国債のスプレッド、国内債券の新規発行額 ENLARGE 左から、債券を担保とした短期融資、トリプルA格付けの5年物社債と国債のスプレッド、国内債券の新規発行額 ウィンド・インフォのデータによると、7-9月期の債券レポ取引高は4-6月期の137兆3000億元から13%増加し、155兆8000億元(約2930兆円)となった。これは四半期ベースの過去最高額で、2014年7-9月期(86兆1000億元)のほぼ2倍に相当する。 投資家やアナリストは、レポで調達した資金の大半は債券購入に使われていると指摘する。債券を担保に調達した資金でさらに債券を買うというプロセスを何度も繰り返している機関投資家もいる。 チェン氏は「聞き取り調査によると、一部の証券会社、ファンド、銀行の理財商品ではレバレッジ比率が3倍となっており、仕組み商品に特化した投資家の中には最大10倍に達した企業もある」と話した。 中国のレポ市場は債券現物市場全体(44兆0600億元)の2.5倍に等しい規模だ。 コメルツ銀行のアナリスト、チョウ・ハオ氏はレバレッジの上昇が「懸念材料」だと指摘した。 中国経済が減速から脱する兆しは全くない。そうした中で株式よりも安全とされる債券に人気が集まったわけだが、多額の債券買いがゆがみを引き起こしているとみるアナリストもいる。 HSBCの中国調査部門責任者、張之明氏は「信用リスクが適切に織り込まれていない」とした上で、価格決定のゆがみを示す一例として、中国企業が発行するオフショア債券は、本土債券よりも利回りがはるかに高い傾向がある点を指摘し、海外投資家の方がデフォルト(債務不履行)リスクへの懸念が大きいことの表れだと説明した。 格付けがトリプルAの社債と国債とのスプレッドは9月に8年ぶりの低水準である0.8%まで縮小し、現在も1%にとどまっている。14年には2%に達していた。 社債のパニック売りが起きるのではないかとの不安も投資家にとってのリスクだ。債券相場が下落すれば、投資家は証券会社などからの借り入れを返済するために債券売りを強いられ、下落に拍車を掛けるだろう。 これは株式市場で起きたことだ。上海総合指数は6月、1年前の2倍を上回る水準まで上昇した。株式購入のためのマージン融資は5月と6月で過去最高の2兆元に達した。これは市場に流通する株式の時価の約9%に等しい金額だ。同じ時期の米国では2.8%だった。中国政府が違法な融資の取り締まりに動き、熱狂的な株式投資が収束する中、マージン融資は58%減少し、足元で上海総合指数は6月半ばの高値から36%安となっている。 中国政府は年初来、金融システム内に十分な流動性を確保するため、レポ金利を低く抑える措置を講じてきたが、これは借り入れによる債券買いが急増する一因となっている。例えば、7日物レポ金利は13日時点でわずか2.45%と、昨年末の5.07%を大きく下回る。 だがバンカメのチェン氏によると、短期金利が突然上昇したり、中国人民銀行(中央銀行)が少しでも金融政策姿勢を変えたりすれば、借入金利の急騰や投資リスクの拡大から投資家は債券売りを強いられ、相場は大きく下げる可能性が高い。 同氏は、社債が売り込まれれば売りは国債にも波及し、ひいては債券利回り全般が上昇して中国政府の低金利政策は台無しになるだろうと指摘した。 HSBCの張氏は「手遅れになる前にどこかの段階で政府がこのレバレッジによる債券買いを解消する措置を打ち出すことを願っている」と語った。 |