2. 2015年10月15日 13:57:19
: OO6Zlan35k
【第6回】 2015年10月15日 沖有人 [スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント] マンション価格がいよいよ頭打ち!今ここで決めたい自宅の売買アベノミクス以降続いてきたマンション価格の上げ相場が、いよいよ終焉を迎えそうだ。今このタイミングで、自宅を売買すべきだろうか ?マンション価格の上げ相場は終焉を迎えそうである。中古マンションの成約価格にピーク感がクッキリ見て取れるからだ。東京都心3区の成約単価は、今夏以降に横ばい傾向となる一方、在庫数は昨秋を底に反転急増している。不動産ビッグデータを用いれば、不動産は金融資産のように分析ができる。分析は近未来を予測可能にし、それをいち早く理解した者が市場の勝者となる。不動産価格への影響要因を整理しつつ、短期・中期の不動産相場をビッグデータで占おう。その結果は、あなたの資産形成の一助となるだろう。 「湾岸の物件が売れない」 マンションブームに変調の兆し 「湾岸タワーマンションを20件も案内しましたよ。みんな決められないですね。ぐったり疲れます」 ?ある湾岸物件の仲介営業マンはこう嘆く。 ?五輪ブームに沸く東京の湾岸部では、選手村を建設する中央区晴海、勝ちどきなど五輪施設・競技場予定地の周辺で、マンションの建設ブームに火が付いた。冒頭の営業マンのぼやきの背景には、「価格が高い割に売出物件は多く、どれも似たり寄ったりで決められない」という顧客の本音が隠れている。 ?マンション価格が上がり始めたのは、2013年のアベノミクス以降だ。理由は日銀によるかつてないほどの金融緩和で、それは今も続いている。ダブついたお金は、不動産融資に向かう。金融機関が借り手から確実な担保を取れるのが不動産だからだ。それは日銀短観(金融機関の不動産業への貸し出し態度)の結果と、住宅価格の傾向が一致することで証明できる(下図参照)。まず第一に、不動産はローンが組みやすいか否かで価格が決まることは覚えておこう。 ?値上がり傾向が続いた不動産。不動産への融資は、銀行間の貸し出し競争が起き、ファミリー層にとっては金利低下傾向が止まらない好環境だ。一般の住宅ローンの金利も戦後最低の低水準が常態化し、利払いが少なくなるので融資総額も増やしやすい。都心のマンションでも、建築費や地価の上昇を低金利効果が吸収できるわけだ。銀行にとって、不動産以外の貸出先が少ない状況も変わっていない。
?不動産と融資の関係を理解するためには、バランスシート(B/S)で考えることが重要だ。住宅ローンの指標にもなる長期金利は0.3%とゼロに近い。つまり借り入れに負担感はなくなった。借金はバランスシート上で「負債」だが、金利負担が小さく、借り手優位の際に負債はどんどん増えていく。 ?一方、ローンで買った不動産は「資産」であり、負債が増える分だけ(資産と負債はバランスしているので)資産インフレし、含み益が発生しやすく、売却すると利益が出る。つまり、負債(借り入れ)を増やせば資産が膨らむ、資産が膨らむと負債を増やす、という相乗効果で資産インフレは進んでいく。 ?不動産の中でも立地がよい場所に立つマンションは、土地や戸建てを尻目に独歩高となっている。国交省の不動産価格指数のグラフ(下記)を見れば、もはや説明不要だろう。個人にとっては資産インフレの利点を享受できる不動産は、土地・戸建てではなくマンションなのだ。 「マンションの時代」を象徴するように、建築費は急騰しても、都心のマンションだけは引っ張りダコだ。それは「アベノミクスが続くと、値上がりしてもっと高く売れる」という思惑があるからだ。こうした事情から、思わぬ高値の売り出し物件が続出し、「今なら高値でも売れる」と欲をかいた価格設定も多く見られるようになった。
新築の割高感で中古にもニーズ 黒田バズーカでマンション在庫が消えた! ?つまり、金融緩和が不動産価格を上げることを理解した人たちが、先陣を切って不動産を買い始めたわけだ。昨秋の日銀の追加金融緩和は、総裁の名を冠して「第二次黒田バズーカ」と呼ばれた。それは10月末の金曜日で、発表後の3連休は新築マンション販売センターは大わらわになった。 ?昨春の消費増税による消費不振や不況対策でもあった「第二次バズーカ」が、マンション相場をさらに高くした。「今売っている新築は1〜2年後の竣工時には値上がりしている可能性が非常に高いから」という理由で、高額物件が高倍率で売れた。 ?そして新築の割高感が浸透すると、中古マンションに割安感が出た。「新築は高い」と見るや、築後10年以内の築浅の物件がもてはやされた。その結果、中古マンションの在庫は急激に減り、中古の売れ行き好転から、新築の供給も増加傾向となった。中古を高値で売って含み益を出し、それを頭金にして新築に乗り換える賢い住み替え派が注目された。 ?住宅の価格上昇には、買い手の雇用環境も大切だ。全国の有効求人倍率は1.21(今年7月)と非常に低い水準で、住宅取得には追い風。リーマンショックの頃は、若者が住居費を節約するため、都内の賃貸住宅を引き払って茨城や千葉の実家から通勤する現象が起きた。今はその頃とは正反対の状況になっている。 ?つまり、都市圏に勤労層が流入して大都市、特に東京の住宅需要が強くなっている。首都圏の転入超過数の月次推移(住民基本台帳の移動人口)を見ると、11年秋は3万人強の流入超だったが、15年にはその2倍となる7万人弱の水準に達している。四大生の就職内定は、卒業前の2年ほど前に決まる。今の求人倍率は2年後の新卒流入を高水準にするので、少なくともあと2年は東京一極集中が続く。原則として、人口が増えるところの不動産価格は上がる。 ?都区部の人口流入が多いのは言うに及ばず、震災で人口が流出した千葉県も流入が回復し、東京への通勤者も持ち直した。ただ、少子化で1世帯あたりの構成人数は減っていくトレンドなので、利便性を求めて都心付近にシフトする動きは根強い。震災で関東を離れた外国人も、登録人口で見ればアベノミクス以降に着実に増えている。新卒採用増や五輪や相続税対策の需要から、賃貸住宅の需要は今後も旺盛で、賃料の上昇要因になっている。 ?つまり、新築も中古も賃貸も価格は高騰した。湾岸エリアでは、震災後、津波や液状化の連想から敬遠され在庫はたっぷりあったのに、13年初秋に五輪誘致が決まり、「第2次バズーカ」が放たれ、在庫は急減した。今から1年前には在庫が2012年のピークから半分の水準となり、「よい物件は探してもない」という雰囲気が生まれた。しかし、これも長くは続かない。価格が高騰したので、売り手が増え始めたからだ。 価格高騰が一転、 在庫が急増を始めたカラクリ ?それでは、持ち家の中で勝ち組であるマンションの今後の価格トレンドはどうなのか。下の図は「首都圏中古成約価格インデックスの前年同月比」(日本不動産研究所)だ。こちらをチェックしよう。 ?東京の中古マンションの価格動向は、前年同月比で上昇幅を縮めている。つまり伸びが鈍化してきている。これは価格の上昇に一般消費者の需要がついていけていないからだろう。過去の動きからすれば、グラフの前年同月比は山と谷を繰り返している。「山高ければ、谷深し」の動向になる。山を過ぎれば直線的にマイナス圏(不動産価格の下落)に突入するケースが多い。今回の山は高いので、どうなるか注目に値する。
在庫は「予言者」だ その急増が価格上昇のブレーキに ?相場が一本調子に上がっても、やがて価格調整が待ち構えている。その潮目の変化は、在庫の急増となって現れるものだ。住宅の在庫は、この先の需給関係や価格動向を如実に語る「予言者」にも見立てられる。 ?まずは、下の東京都心3区(中央、千代田、港)にある中古マンションの価格と在庫を示すデータを見て(出典・東日本不動産流通機構)、グラフの「交差点」に注目してほしい。そして成約価格のm2単価(万円)と在庫数(戸数)の関係を考えてみよう。 ?上の図表を見れば、中古も売れ行き好調で、在庫はほぼ1年前には「品薄」だったのに、以前の価格から2割増しになった頃から在庫が急速に積み上がり、アベノミクス以前の在庫水準に近づいていることがわかる。過去の品薄感から一転して、在庫は急増している。こうした状況下で15年春以降、ここ半年の成約価格の伸びが緩やかになり、最近は横ばいに近づいている。
?在庫増は安く買いたい買い手の立場を強くする。「買いたくても物件があまりない」状況から、「買おうと思えば物件はある」状態になっており、近いうちに立場が逆転しそうな「潮目」に差しかかっているのだ。 ?ちなみに新築も、中古と同じように在庫は昨年より増えている。完成在庫ばかりでなく、市況高騰で価格を決められずに売り出せない未発売物件(実質的な在庫)も数多い状況だ。住宅取得については贈与の非課税枠拡大で親の頭金支援が厚くなったし、フルタイムの共稼ぎの世帯総所得も大きいため、すでに高値であっても「先高感」をバックに買い進まれて、強気の市場が形成された。首都圏のマンションの平均価格は5000万円を、都区部は6000万円を大きく突破している。 ?しかし、一般の給与水準がほとんど上がらないなか、「先高感」では高額物件を「買えない」人が続出してきた。そうした人たちが買える価格でないと、売れない時代がやってきたのだ。 ?確かに、求人倍率など雇用環境はかなりいいのに、勤め人の給与は総じて横ばいだ。過去2年間、物価が多少上昇しても所得はそれほど上がらず、実質賃金は低迷傾向だった。これでは株などの資産価格は上がっても、一般層の消費は拡大せず、景気はさほど良くならない。住宅市況は、金融緩和効果を除くと、所得や税制の動向にも左右されるが、その限界値が近くなったと考えた方がよい。最近は「高くて買いにくい」状況なのだ。 価格変動は先読みできる! 移動平均線の「ご宣託」を読み解く ?次に下記の「都心3区の成約m2単価の推移(移動平均線との比較)」(出典・東日本不動産流通機構)の図表を見てほしい。 ?大切なのは過去のトレンドだけではなく、相場がいつの時点で下落に転じるか予測することだ。それは、金融・証券と同様の分析方法である「移動平均線」という補助線を使えば一目瞭然である。 ?株価については時々刻々の値動きの激しさに目を奪われがちだが、一定期間のトレンドを予測するために移動平均線を使う。株より値動きは長期的で緩慢な不動産でも、中長期のトレンドを見るには、このように移動平均線でチェックしたい。 ?価格の変化を示すグラフの底の部分に沿って、7ヵ月間の価格変化の移動平均線を描いてみる。するとどうなるのか。成約価格はこのところ前月比で下がることもあったが、近年は2ヵ月連続で下げたことはない。しかし、価格の伸びは止まりかけており、半年以内、早ければ年内にも2ヵ月の連続下落が起き、移動平均線の水準を2ヵ月連続で下回りそうだ。これは価格上昇の終焉を意味する可能性が高い。 ?過去のケースを見ても、移動平均線を下回る水準まで値下がりした後、価格が頭打ちすることが多い。価格の頭打ちが続くと、次の相場は下落局面に入っていく。ちなみに価格が上昇の場合は、ほぼ反対の現象が起きている。
?ここで今までの話を整理しよう。不動産価格に影響を与えるものには4つの要素がある。それらが今後どのようになるかを占っておこう。 ?@資金供給……金融緩和が黒田総裁の任期である2018年まで続きそう ?A需給バランス……都心部での需要は多いが、在庫は急増しており、高水準になりそう ?B建築費……東京オリンピック前の建築ラッシュは当分継続しそう ?C賃料……都市部では反転し始めているが、小幅に留まっている ?これらから言えることは、在庫以外は以前と何も変わっていないということである。つまり、在庫が価格の頭打ちをもたらすものの、下げる要因が存在しないということだ。 マンション価格は頭打ちになる 自宅の売買タイミングはいつ? ?そこで、1年余り先までを見た首都圏の中古マンションの成約価格の予測値をつくってみた。成約価格は2016年の2〜3月の繁忙期にピークとなり、その後は踊り場を迎えるという結果だ。上げ相場は終焉するが、下げ相場にもならない微妙な均衡が続くことになろう。しかし、この状況には数字に現れない注意が必要になる。 ?気をつけなければいけないことは、価格が変わらず在庫が増える場合には、物件の販売期間が長引く点である。価格は変わらないが、「売り手市場」ではなく「買い手市場」であることは肝に銘じた方がいい。売りたいときに売れない不動産は、非常に困るケースがある。住み替えを控えているとか、転勤になったとか、離婚して早く売りたいとか、様々な事情があるので、時期をコントロールできないのはリスクである。
?結論を明確にしておこう。今後の展開を慎重に考えるなら、売る事情がある人は早めに売った方がいい。逆に、売る気があまりない人は下手に「高く売れるなら売ってもいい」といった売り出しはやめた方がいい。「売り出して売れなかった物件」というのは、不動産屋の間で「傷もの」扱いになるだけだ。 ?その判断をするために、自宅の価格査定はしておいた方がいい。営業されることなく、即座に無料で価格を知るツールはある。スタイルアクトが主宰する「住まいサーフィン」(会員18万人)である。これで物件を検索して、号室を指定するだけだ。そこから、ローンの残額と仲介手数料を差し引いた額が、手元に返ってくることになる。インフレの止まった資産を持つか、現金に換えるか、その選択は今決めることをお勧めする。 http://diamond.jp/articles/print/79958
|