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「野草で飢えをしのいだ」「病を治すカネがない」 ルポ・高齢者の貧困〜9割が予備軍。転落は、突然やってくる
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45791
2015年10月14日(水) フライデー :現代ビジネス
■「収入がない」「貯蓄がない」「頼れる人がいない」
「路上の生活は厳しい。何をされるかわからない恐怖がある。中学生や高校生が、飲みかけのペットボトルや火のついたタバコを投げつけてくる。そのタバコの火で私のダンボールの家が燃えて、消防車が来たこともあります」
反貧困ネットワーク埼玉で貧困者の支援をしている高野昭博氏(60)は、こう振り返る。
彼は6年ほど前までホームレスだった。19歳〜45歳まで大手百貨店の正社員として働き、年収は最高で1200万円もあった。それがいつの間にかホームレスにまで転落した。キッカケは、両親の介護だった。
「99年頃、父にガンが見つかりました。病気がちの母に父の世話はとてもムリ。それで、私が会社にお願いして、しばらくは休職扱いにしてもらっていたんです。でも、だんだんいづらくなって....悩んだ末、45歳で退職しました。でも、その時点ではまさかホームレスになるなんて夢にも思いませんでした」
高野氏のように、貧困にあえぐ65歳以上の人が増えている。NPO法人・ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏は、
@収入が著しく少ない。
A十分な貯蓄がない。
B頼れる人間がいない。
という3ない状態にある高齢者を「下流老人」と名づけ、6月に同名の新書、『下流老人』(朝日新聞出版)を上梓した。
「近い将来、高齢者の9割がこうした生活困難者になる可能性がある」
と藤田氏は警鐘をならす。
「下流老人とは『あらゆるセーフティネットを失った、生活保護基準相当のお金で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者』のことです。国が定める『健康で文化的な最低限度の生活』さえ送れない高齢者は年々増大しているのです」
生活保護の支給額は、たとえば首都圏で一人暮らしの場合、月額13万円程度になる。つまり、これが国が考える「健康で文化的な生活」の最低ラインだ。厚労省の調査では、今年3月時点で生活保護を受けている家庭は約162万世帯。うち約79万は65歳以上の高齢者世帯だ。
これに、年金生活者でも生活保護レベルの収入しかない高齢者や、その予備軍も含めると、現時点で下流老人は600万〜700万人になるというのが藤田氏の試算だ。高野氏の話に戻ろう(以下、発言は高野氏)。
「45歳で会社をやめたとき、貯金は500万円強あり、退職金も800万円ほど受け取りました。株も約600万円分持っていましたので、金銭的には余裕があると考えていました。
しかし、父の葬儀代金が350万円、お墓の代金が500万円ほどかかってしまい、退職金が消えてしまいました。それでハローワークに通うようになり、運よく、元の職場の取引先の社長から声をかけていただきました」
■話し相手がいないというツラさ
再就職先はスポーツ用品店だった。高野氏はここで5年間、スキーウェアなどを売る販売員を務めた。だが、不況のあおりから、この会社でも’03年頃から人員整理がはじまった。
「年齢、給料が高い人からどんどんクビになっていく。私は社長と親しかったので整理要員ではなかったのですが、周囲のベテランが次々やめさせられていくのを見ているのはツラかった。結局、50歳まで働いて自分から身を引きました」
この会社をやめた後は、認知症ぎみの母の介護をしつつハローワークに1ヵ月通い、トラック運転手の職を見つけた。
「年収は200万円程度。50〜52歳の2年間働きました。しかし、給料の遅配が繰り返されるようになり、最後の2〜3ヵ月は給料がもらえませんでした」
運転手をやめ、知人の紹介でオートレース場で働いた。収入は手取りで月15万円ほど。住んでいたアパートは月5万5000円だったため、貯蓄を切り崩し、株を売却してしのいだ。
「53歳のとき、母親が亡くなりました。最低限の葬式は出したけれど、蓄えも尽きてしまい、納骨の費用も出せませんでした。そのうち家賃を2ヵ月分滞納し、大家さんから『出ていけ』と言われました。’09年のことでした」
埼玉・JR川口駅西口前の公園でのホームレス生活が始まった。このとき、所持金は1万5000円しかなかった。
「高い遊具の上や地下道など、比較的環境がいいと思われる場所を選んで寝ました。ですが、やはり冬場は寒くてとても眠れたもんじゃない。そんなときは身体を温めるため、夜中じゅう歩き回りました。主な食べ物はコンビニの賞味期限切れの弁当です。
あの頃は親切なコンビニがいくつかあって、夜中になると期限切れの弁当やおにぎりを店の前に置いておいてくれたんです。それを午前2時頃いただきに行く。ホームレスはみな、その情報を知っていましたから、取り合いになることもしょっちゅうでした」
食べ物にありつく苦労よりつらかったのは、人と話すことがない環境だった。
「ホームレス同士は、たとえ何ヵ月そばにいても絶対自分の身の上は話さない。みんな借金など事情があってここまで落ちてきたんですから、名乗っても偽名です。一人でなにやらブツブツ言っているホームレスは多かったですね。統合失調症になる人が多いんです。当時は私もブツブツやっていたかもしれません」
■飛び込み自殺を目撃
衝撃的な場面にも出くわした。高野氏が住みついていた公園からは、川口駅のホームがよく見えた。ある日、何気なくタバコを吸いながら駅を見ていると、ホームに立っていた老女が突然、入ってきた電車に飛び込んだ。おそらく、60代だろう。身なりから、高野氏と同じホームレスではないかと思われる女性だ。
「それを見て足がガタガタ震えて、涙が出てきた。でも、ホームで電車を待っていたサラリーマン風の男たちは、『なんで電車を止めるんだ』って駅員に罵声を浴びせている。もう、悲しくなってね。自分もあの老女みたいに死んでいくのかな、と思うと」
この状況から脱出できたのは、支援団体のフォローがあったからだ。
「09年11月、寝泊まりしていた公園で、支援団体の事務所に来てはどうかと話しかけられました。私は周囲のホームレスに声をかけ、総勢6人で事務所に行きました。そこで1万5000円をポンと渡された。『これで何日かつないでください』と。宿泊施設も紹介してもらって、夢じゃないかと思いました。
これまで、私には税金の滞納や家賃の未払いがあるから、生活保護なんて受けられるわけがないと思っていました。でも、団体のアドバイスを受けながら手続きすると、生活保護をもらえることになりました。生活扶助と住宅扶助あわせて月額13万円強。ホッとしました」
高野氏とともに支援団体の事務所に行ったホームレス6人のうち、2人は生活保護を受けた後にアパートで孤独死し、別の1人は首を吊って自殺したという。
「生活保護を受けている間じゅう、役所のソーシャルワーカーからボロクソに言われるんですよ。『受給の期限は××までだからね』と冷たく言われるのはいいほうで、『(受給を)切るぞ切るぞ』と脅されるなど、人間の尊厳を傷つけられる。それで参っちゃう人がいるんです」
6月30日、東海道新幹線のぞみ225号の先頭車両でガソリンをかぶって焼身自殺し、罪もない乗客を巻き添えにした林崎春生容疑者(71)も、下流老人の一人といえる。彼の年金受給額は月12万円。2K風呂なしアパート代4万円と、月額2万円を超える国民健康保険料を払うと、いくらも残らなかったはずだ。
もし彼が杉並区の生活保護を受けていれば、基準額は14万4430円。年金より20%以上も多い。しかも、生活保護の受給者には国民健康保険料や住民税の減免措置もある。林崎容疑者にはそういった知識がなかったのか…。
■両親の介護が転落のはじまり
林崎容疑者のように自暴自棄になっての凶行には走らないまでも、似たような暮らしをしている下流老人は多い。
「介護の仕事をやめたのは65歳。厚生年金が月額9万円ほどしかないと知って驚いたよ。貯金が500万円ほどあったから、少しずつ切り崩して生活していたんだけど、糖尿病は見つかるわ、介護で痛めた腰の治療費はかかるわで....」
こう語るKさん(76)に結婚歴はなく、子供もいない。東北地方で料理人をしていた30代までは、まずまず順調な暮らしだった。ところが40代に入って、両親が相次いで介護を要する病気にかかった。
Kさんは正社員の地位を捨てて、介護中心の生活に切り替えた。父親は数年後に肝臓がんで亡くなったが、膠原(こうげん)病で寝たきりになった母親の介護は10年続いた。
母親の死後、それまで住んでいた実家を売り払い、仕事を求めて上京した。50歳を過ぎたKさんに、人並みの暮らしができる職はなかなか見つからない。経験がないまま、慢性的な人手不足に悩む介護の仕事に就いた。
以後、つましく暮らしたが、介護職をやめてからは、そのつましい生活を送ることすらできなくなった。前述のように糖尿病に加えて激しい腰痛。500万円の貯蓄は底をついた。
「厚生年金9万円からアパートの家賃6万円と公共料金、病院代に薬代も払っていたら、どうやったって食っていけない。野草を食べてしのいだよ。ノビル、ヨモギ、フキノトウ、ツクシ....野草があったから、かろうじて生きてこられた」
こう振り返るK氏は、厚生年金と生活保護は同時に受給できないと思い込んでいた。そんなとき、生活困窮者支援のNPO団体が、不足分の生活費と医療費は生活保護でまかなえることを教えてくれ、申請の手助けまでしてくれた。
現在の月額所得は、厚生年金の9万円に生活保護4万円を加えた13万円。かろうじて日々の暮らしと医療費をまかなえるようになり、野草食からも解放された。
自身も長年下流老人で、自らの経験を生かしながら全日本年金者組合東京都本部の年金アドバイザーを務めているのは芝宮忠美氏(72)だ。芝宮氏は妻と2人で約17万円の年金を受給している。
「この金額は、東京都の2人世帯の生活保護基準より数十円高いだけですが、生活保護の申請の資格はありません。生活保護を受けられれば、医療費や固定電話と水道の基本料金などが無料になるので助かるのですが....」(芝宮氏)
奥さんは人工透析が必要な体だ。
「障害等級は2級です。こちらは医療補助を受けているので病院代はタダですが、そこに通う交通費の負担が重い。透析は食塩と水を嫌うので、食事は別々に作らなくてはなりません。
忙しいときは妻の分を先に作って、私はそれにしょうゆをかけて食べています。よく買うのは299円の弁当。でも、私の生活など、まだマシなほうですよ。年金相談に来られる方々は、本当に厳しい暮らしをしておられます」
■個人では防ぎようがない
下流老人はこれからも増え続けるのか。前出の藤田氏が解説する。
「今の日本に中流は存在しません。ひと握りの富裕層と、大多数の貧困層というのが実態です。若い貧困層は、いずれ下流老人化する。年間所得400万円以下の層は、下流老人化のリスクが高いと考えたほうがいい。『私は年金をきちんと積み立てているから安心』などと考えるのは、ただの夢物語です」
どうすれば下流老人化を回避できるのか。
「定年後も働けるように、手に職をつけるという防衛策があります。しかし、働きながら、別の技能を身につけることは容易ではありません。個人でできることには限界がある」(同)
下流老人は、まさにわれわれの明日の、数年後の姿なのだ。
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