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中国ショックに戦々恐々の安倍政権 「下手すればリーマン・ショック級の衝撃が…」
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20151011-00000501-biz_san-nb&ref=clipRank
SankeiBiz 2015/10/12 11:00
アベノミクスによる好発進で、デフレ脱却宣言が視野に入っていた安倍晋三政権が想定以上の向かい風にさらされている。政権奪還を果たした約3年前から景気は回復基調が続いてきたが、中国経済の減速があらわになり、国内企業を萎縮させているからだ。米国による利上げ観測も強まり、日本経済は海外からの「ダブルパンチ」を乗り切れるかどうかの正念場を迎えている。首相が狙う対抗策は大規模な財政出動か、日銀による追加金融緩和か、それとも−。
■戦々恐々の官邸
自民党総裁選を無風で再選した安倍首相は、総裁2期目も「経済最優先」路線を貫くと表明。9月末の訪米中の講演では「一にも、二にも、三にも経済だ」と語り、国内外に経済再生への取り組みを進めることをアピールした。念願の安全保障関連法を成立させ、アベノミクスを再び軌道に乗せるシナリオは予定通りだが、首相がことさらに強調する背景には強い危機感がある。
政権発足直後は、日銀による異次元の金融緩和や機動的な財政政策が奏功し、企業収益の改善や個人消費の増加などに結びついてきた。だが、その後の成長戦略や規制緩和策などは小粒感が漂う。高い内閣支持率を維持してきた要因である経済政策での「凡打」が続けば、市場に失望が広がることは想像に難くない。
日銀は、国内経済は全体として「緩やかな回復を続けている」との強気の姿勢を崩さないが、4〜6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除く実質で前期比年率1.2%減。日銀が今月1日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の景況感が3期ぶりに悪化した。
経済産業省幹部は「海外経済の減速など先行き懸念が広がり、消費の伸び悩みも響いている」と語る。
■大規模な景気対策?
麻生太郎財務相は否定しているが、政府内で景気刺激のための補正予算編成が視野に入ったのは8月だ。中国が3日連続で人民元を切り下げた後、元安が進みすぎた場合にドルを売って元を買う市場介入も行い、世界同時株安を招いた時期と重なる。財務省幹部は頻繁に首相官邸を訪れ、「チャイナ・ショック」の説明を繰り返していた。
「アベノミクスの成否は、中国経済がどうなるのか次第だ」
「下手をすれば、リーマン・ショック級の衝撃がくるぞ」
財務省をはじめ経済官庁の幹部は9月半ば、東京都内の和食店にひそかに集まり、現状分析と今後の展望を協議。「効果的な対抗策を検討すべきだ」との認識で一致した。
英調査会社マークイットが発表した9月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)速報値は47.0と、8月確報値の47,3から一段と下降。好不況を判断する分かれ目の50を7カ月連続で割り込み、平成21年3月以来6年半ぶりの低水準に落ち込んでいる。
米国に次ぐ経済大国である中国からの「突風」は、国内企業の萎縮に直結した。産経新聞社が9月23日まとめた主要企業アンケートを見ると、中国経済の動向について「減速」と回答した企業は約9割に達し、中国経済の減速懸念を示した。すでに中国からは日系企業の撤退・縮小が相次いでいるものの、「爆買い」と呼ばれるインバウンド消費や貿易関係を考慮すれば、中国の景気失速によるダメージは大きい。
■サプライズはあるか
「風邪が悪化する前に予防的措置をとるのがベターだろう」。首相官邸には脱デフレに黄信号がともる状態から脱するため、日銀による追加金融緩和を期待する声は多い。
日銀は昨年10月末、「原油安で企業や家計のインフレ意識が低下するリスクを未然に防ぐ」との理由で追加緩和に踏み切った前例がある。2%物価目標の達成が危ぶまれる中、黒田東彦総裁は9月下旬に安倍首相と会談しており、予防的な金融緩和に向けた環境整備は整ってきているとの見方は根強い。
9月末、安倍首相は旧知の政界関係者からの電話に熱心に耳を傾けた。
「日銀は相変わらず動きが遅い。このまま何も手を打たなければ、恐らく(日経平均)株価は1万6000円を割り込むことになるだろう」
首相官邸が重視する日経平均株価は9月29日、中国経済への不安から前日比714円安の1万6930円。約8カ月半ぶりに1万7000円を下回り、「チャイナ・ショック」の破壊力を突きつけた。成長戦略の要となる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意で、株価が復調の動きを見せる場面があるものの、中国経済低迷は株価を一気に冷え込ませるパワーをはらむ。
黒田氏は「(中国は)財政・金融政策によって安定的な成長を続けていくだろう」と中国当局の政策対応に期待を示しているが、黒田氏を知る財務官僚OBは「『中国が効果的な対応をしなければ、こちらが動くぞ」と言っているようなものだ」と見る。
アベノミクス再起動の前に現れた巨大な壁。安倍首相はいかなる方策で乗り越え、デフレ脱却につなげるつもりなのか。難局に立ち向かう次の一手に国内外の熱視線が注がれている。(尾崎良樹)
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