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エマニュエル・トッド氏、64歳〔PHOTO〕gettyimages
緊急インタビュー!仏学者エマニュエル・トッド「VW事件から見えてくる ドイツ最大の弱点」〜やっぱりドイツが世界をダメにする?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45706
2015年10月12日(月) 週刊現代
■こうなることは、見えていた
「フォルクスワーゲンのスキャンダルについて、よく言われているのは、ドイツの技術力の評判が地に墜ちたのが問題だということでしょう。しかし、私はあまりそうだとは思いません。それよりも重要な問題があるように感じるのです」
『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)が日本で10万部を超えるベストセラーになっている、フランス国立人口学研究所研究員のエマニュエル・トッド氏。いま世界で最もその発言に影響力がある一人とされるフランス人学者は、本誌の取材にこう語った。
ドイツ産業界を代表する名門企業であり、自動車業界の世界トップに君臨する「王」、フォルクスワーゲン。年間1000万台以上の自動車を売り、全世界で約60万人の従業員を雇用する巨大企業は、21世紀の成功企業のシンボルであった。
それが、米国での排ガス規制を逃れるために、同社の主力ディーゼル車に不正なソフトウェアを使用していたことが発覚したのが9月18日のこと。以降、次々と新たな問題が噴出し、一向に騒動が収まらない緊急モードに突入。世界中から褒めあげられた名声が一夜にして、底まで墜ちた。
誰もが想像すらしなかった異常事態だが、実はトッド氏はこのことを「予見」していたのだ。
■「米国の陰謀論」を持ち出す
トッド氏といえば、1976年に発表した著書『最後の転落』で旧ソ連の崩壊を予測したことで有名。さらに、2002年には著書『帝国以後』で米国の没落を描くと、6年後に米国経済を根幹から揺るがすリーマン・ショックが勃発した。未来をピタリと言い当てる洞察力こそが、世界中の経営者や政治家、アカデミズムが「トッド信者」になる最大の理由である。
そんなトッド氏が最近警鐘を鳴らしていたのが、ドイツだった。近著では次のように「ドイツの危機」を指摘していた。
「私は悲観的だ。ドイツが望ましい方向に推移していく蓋然性は日々低下している。すでにきわめて低い水準にまで落ちている」
「ドイツの指導者たちが支配的立場に立つとき、彼らに固有の精神的不安定性を生み出す。
歴史的に確認できるとおり、支配的状況にあるとき、彼らは非常にしばしば、みんなにとって平和でリーズナブルな未来を構想することができなくなる」
■しばしば「モラル」を忘れるドイツ
トッド氏はEU(欧州連合)内で経済力と影響力を拡大するドイツの指導者たちを指して、こう批判していた。これをそのままフォルクスワーゲンの指導者=経営者にあてはめると、今回の不正事件の深層をそのまま映すように、次のように読み替えられる。
自動車業界の世界トップという「支配的立場」に立った彼らが、「精神的不安」に陥ったとき、不正に手を染めてしまった—。
トッド氏は本誌に、続けて言う。
「私はさきほど技術的な評判はあまり問題ではないと言いました。なぜかといえば、排ガスをごまかすための装置というものを作れること自体、技術的に妙技であるといえるからです。
では、私が真に問題と考えるのはなにか。
それは、諸問題を単にテクニカル(技術的)なものとして扱い、モラル(道徳)の面を忘れてしまうという古くからのドイツの傾向です。フォルクスワーゲンのスキャンダルが起きて、世界中の人々はそんなドイツの特質を思い出したでしょう。知っての通り、この種の『中身のない合理性』は、それ自体が危険なのです」
いくら優れた技術も、モラルに欠ける人間がそれを手にした時には「凶器」になり得る。フォルクスワーゲンは高い技術力を持つ一流メーカーでありながら、その「成果」の使い方を間違えてしまったわけだ。
「もう一点、付け加えて言いましょう」
トッド氏は言う。
「フォルクスワーゲンのスキャンダルは、ドイツ人のアメリカに対する根深い感情について多くのことを教えてくれます。ドイツ人は心の底で、かなり反米の気持ちを強く持っています。ドイツ人はおそらく、リベラルなアメリカの価値観を受け入れないでしょう」
フォルクスワーゲンのディーゼル車の不正を発見したのは、米国のウェストバージニア大学の研究者だった。その指摘を受けて、米環境保護庁が調査をしたところ、改めて不正が発見されたという経緯がある。
そのため、一部からは「フォルクスワーゲンを倒すための米国の謀略」という陰謀論が浮上している。だが、トッド氏が指摘しているのは、そうした不毛な対立についてではない。
■ヒトラーのような経営者が生まれる?
トッド氏は著書でこう書いている。
「数世紀に及ぶ長い期間に注目する歴史家の観点から見て、アメリカとドイツは同じ諸価値を共有していない。大不況の経済的ストレスに直面したとき、リベラルな民主主義の国であるアメリカはルーズベルトを誕生させた。ところが、権威主義的で不平等な文化の国であるドイツはヒトラーを生み出したのだ」
危機に直面した時に、どう立ち振る舞えるか。いまフォルクスワーゲンに問われている最大の課題はそこにある。
果たして創業以来の危機に見舞われたフォルクスワーゲンが、「ヒトラー」のような経営トップをかつぎあげてしまう危険性はないのか。幹部たちがモラルを忘れてしまうほどに追い詰められた「精神的不安」とは、一体どういうものだったのか。その不安がいかにして、今世紀最大かつ最悪の不正を手招きしてしまったのか。
VW事件は、われわれに多くの課題を突き付けている。
「週刊現代」2015年10月17日号より
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