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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第144回 格付けの真実
http://wjn.jp/article/detail/1706899/
週刊実話 2015年10月15日号
本連載で当初から何度も繰り返してきた通り、日本が財政破綻する可能性はゼロだ。ここで言う「財政破綻」とは「政府の債務不履行(デフォルト)」であり、それ以外に定義はない。
より具体的に書いておくと、政府が借金の返済不能に陥るか、もしくは利払いができなくなることを「財政破綻」と呼ぶのである。
ギリシャ政府は、7月1日にIMF(国際通貨基金)から借りた15億ドル(約1800億円)の返済不能に追い込まれた。まさしく、ギリシャは7月1日に間違いなく財政破綻したのだ。
基本的に、財政破綻するためには二つ、条件を満たさなければならない。すなわち、
(1)政府がおカネを借りる際の金利、つまりは国債金利が上昇する
(2)政府が借りたおカネが、自国通貨建てではない(外貨建てか、もしくは共通通貨建て)
の二つだ。
歴史上、自国通貨建ての政府負債の返済不能(財政破綻)に陥った国は存在しない。独自通貨国である以上、政府は自国通貨を発行できるわけだから、当然だ。
ところが、世界には奇妙な連中が存在し、政府の負債について「通貨」を意識せず、国債の債務不履行の確率を評価し、各国に混乱をもたらしている。ずばり、格付け会社だ。
アメリカの格付け会社であるスタンダード&プアーズ(S&P)は、日本の長期国債の格付けを、21段階中で上から4番目の「AAマイナス」から「Aプラス」に1段階引き下げた。理由は、
「アベノミクスが国債の信用力を回復させるのは難しい」
だそうだ。
結果、日本国債の格付けは中国や韓国よりも下になり、何と2008年に財政危機に陥ったアイルランドと同じになってしまった。
そもそも、格付けとは「債券のデフォルト(債務不履行)の確率」を記号で表したものだ。日本の格付けが下がったとは、S&Pが、
「日本国債のデフォルトの確率が高まった」
と、主張していることになる。
さて、日本国債はデフォルトするのだろうか。確率は「ゼロ」だ。理由は、日本国債が100%日本円建てで、わが国は独自通貨国であるためだ。
しかも、デフレで資金需要が乏しく、日本の長期金利は、現在わずか0.31%に低迷している。日本より国債金利が低い国は、スイスのみだ。
S&Pは“嘘”をついているか、単純に間違っている。ちなみに、これがユーロ加盟国や「外貨建て国債」を発行せざるを得ない国であれば、話は別だ。
例えば、ギリシャは政府が国債で資金調達する際に、ユーロ圏の「国際金融市場」でドイツ政府やフランス政府と競争しなければならない。ギリシャ国内の銀行にしても、国民から預けられたユーロをギリシャ政府に貸すか、ドイツ政府に貸すか、フランス政府に貸すかは自由なのだ。
国債発行に際し「競争」があって初めて、格付けは意味を持つ「可能性」が生じる。金融機関などは各国政府の金利と格付け、つまりはリターンとリスクを比較し、どの国の国債を買うかを「選択」することになるのだ。
ドル建て国債に代表される外貨建て国債も同じである。ドルを借りたい国は数多く存在するため、そこに「競争」が存在する。国債発行に際して競争と選択が存在して初めて、格付けは意味を持つ「可能性」がある。
ところが、日本国債の場合は「競争」も「選択」も存在しない。日本政府がアメリカ政府やイギリス政府と「日本円建ての国債発行」に際して競合する事態は起こりえない。何しろ、日本円は日本国内でしか流通していない。
日本の銀行は、民間に十分な日本円の需要がなければ(まさに今の日本だが)、最終的には政府に貸す以外に選択肢がない。格付けが世界最低であっても、日本の銀行は過剰貯蓄の運用先として日本国債を選択することになる。さらに、日本政府は“子会社”の日本銀行に命じ、国債を買い取ることが可能な存在なのだ。
日本円を発行できる日本政府が、なぜ日本円建て国債のデフォルトになるのか。格付け会社は、一度も説明したことはない。彼らは
「国債の信用力を回復させるのは難しい」
などと、よく分からない抽象論で格付けを説明するのみだ。
「国債の信用力」とは、何なのだろうか。
もちろん、金利だ。そして、日本国債は世界で2番目に金利が安い国なのである。
要するに、こと日本国債に限って言えば、格付け会社のやっていることは無意味であり、虚偽の「言論活動」なのである。
なぜ「言論活動」と表現したのかといえば、格付け会社は以前、格付けがおかしいことを指摘され、
「格付けは言論の自由」
と、反論したためだ。
問題は、この手の無責任な連中の「自由な言論」に政府の政策が振り回されてしまうことである。あるいは、彼らの“嘘”情報を活用しようとする勢力がいることだ。
財務省は当然、格付けが引き下げられたことを受け、
「格付けが引き下げられた。緊縮財政が必要だ」
と、やってくるだろう。
日本が緊縮財政をすると、当然、デフレは深刻化。すると、民間の資金需要が乏しくなり、国債金利は下落。財政破綻(政府の債務不履行)の可能性は遠ざかると同時に、日本国民が貧困化し、税収が減り、財政赤字や政府の負債が増え、またまた格下げ。すると、財務省が、
「格付けが引き下げられた。緊縮財政が必要だ」
と、やってくる。
いい加減に、このバカバカしい循環に終止符を打たねばならない。そのためには、日本国民が「格付け」や「格付け会社」の真実を知る必要がある。
ちなみに、財務省は2002年の時点では、「外国格付け会社宛意見書要旨」を公表し、「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」と断言している。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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