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ネット通販の利便性は、大手宅配業者が支えている(撮影:風間仁一郎)
宅配業者は「過重労働の矛盾」に直面している ネット通販の利便性を支える過酷な現場
http://toyokeizai.net/articles/-/86836
2015年10月11日 中村 陽子 :東洋経済 編集局記者
アマゾン、ユニクロと業界覇者の暗部を暴いてきたジャーナリストが次に光を当てたのが宅配ビジネス。日本人が受け取る宅配便の数は1人平均年28個。もはや生活に欠かせないネット通販の「送料無料」「即日配達」が意味するものとは。このほど出版された『仁義なき宅配 ヤマト vs 佐川 vs 日本郵便 vs アマゾン』の著者、横田増生氏に話を聞いた。
──今回、執筆したきっかけは?
たまたま家人が靴の通販を利用したとき、行きの送料無料はまだわかるけど、返品するのもタダと聞いて心配になった。利益どころか送料分持ち出しで、宅配便の会社にちゃんと運賃を払えるのかと。そのシワ寄せは宅配便で働く人に来てるんだろうという推測が、まずありました。
■下請け業者は採算割れも
──2014年に営業所での仕分け、幹線輸送車、配達車、巨大物流センターと複数の現場を体験され、出た結論を一言で言うと……。
いつ暴発するかわからない、ってことですね。ギリギリのところでヤマト運輸、佐川急便、日本郵便が戦ってるというのを肌で感じた。
つてを頼って助手席に横乗りさせてもらったヤマト集配車の下請けドライバーは、1日100個程度しか荷物が出ないセンター勤務。配送料が1個150円だから日当は1万5000円。拘束時間14時間で割り、そこから燃料代等を引くと、時給800円台です。しかも契約は3カ月更新と不安定。次に大きなセンターへ移った矢先、くも膜下出血で倒れてしまった。でも彼は下請けだから倒れても労災も何も出ないんです。
佐川の下請け業者で、夜間幹線輸送車の往復便にも乗せてもらいましたけど、業者への支払いは関東─関西間で片道8万円。10万円ないと下請けは採算割れです。ドライバーに支払われる給与は手取り月25万円、20年前の半分だそうです。
──宅配便におけるサービス残業の実態も、目撃されてますね。
ヤマトのセールスドライバーの例だと、朝6時半に出勤して積み込み作業を始め、配達終了後に伝票整理などをして終業するのが夜10時。ところが業務で使用するポータブル端末を立ち上げるのは朝8時で、閉じるのがセンターに戻った夜9時すぎ。この端末の稼働時間が彼らの勤務時間になる。ほぼないに等しいお昼休みを足せば、サービス残業は1日3時間、月20日勤務で60時間、8万円弱の未払い。年間では100万円近い金額になります。
出勤しても×時までは端末を立ち上げるなと指示するセンターもある。そうなると確信犯ですわ。ヤマトは20万人も従業員がいて人件費率50%だから、さらに3時間分賃金が上乗せになれば利益なんて吹っ飛ぶ。明らかに違法ですが、それが横行してる。これは佐川も一緒です。ヤマトは14年、勤務時間の短縮登録を適正化するよう社長通達を出しましたが、実情は何も変わってないようです。
──現場はかなり疲弊している?
サービス残業の原因の一端が、個人宅への再配達や時間指定サービス、代金引き換えサービスなどで、ドライバーの負担がどんどん増えています。宅配便の不在持ち戻り率は20%に達してる。時間指定などは少しでもズレると苦情が来るので、早く到着してもその時間まで待ちます。時間指定も不在持ち戻り率はほぼ同水準。いっそ有料にするかやめるか、って話ですわね。ホント現場はシンドイから。100個200個配達する中で時間指定があると効率的に回れない。あれがけっこう負担になるんです。
■バイト入れ替わりの時期は大混乱、怒号も
──国内最大規模のヤマトの羽田クロノゲートにも潜入しました。
夜10時から朝6時まで1カ月、クール宅急便の仕分けと積み込み作業をしました。この宅急便の心臓部がいちばんシンドかった。深夜手当込みで日当8925円、1カ月16万5000円でした。あそこの場合、2カ月で契約が一度打ち切りになり、1カ月置いて、2カ月の再契約になる。
最大でも年に8カ月しか働けない。やっと仕事を覚えても1カ月ブランクが空き、メンツも替わるから現場はすごくギスギスしてるんですね。バイトが一斉に入れ替わるタイミングでは、現場は大混乱でした。そりゃ混乱もしますわ。新人に仕事のやり方などほとんど説明もせずに、いきなり現場投入ですから。
宅配便の仕分け作業、とりわけクール便の場合、これにはドライアイスを何個入れるとか、温度は何度とか、最低6種類あるボックスのどれを使うかとか複雑だから、説明がないと何もできない。新入りはまともな説明なしだから見よう見まねでやる。間違えたら怒鳴る、が流儀の職場でした。怒鳴られても、怒鳴られる理由がわからない。あれで日当9000円以下じゃ、人が来ませんわね。
──クール宅急便の不適切な温度管理問題もそのままだったようで。
僕が見た中ではそうでしたね。ドライアイスを入れようとしたら「何で入れるんだ」と。「いや温度上がってるし」と言うと、「入れんでいいっ!」と。センターに着いた時点で規定温度になるよう入れる時間を遅らせろということなんだけど、じゃあその間はどうでもいいのか。
2013年に温度管理不適切が露呈したときは、セールスドライバーがお客に届ける時点だったけど、ベースでの仕分け時でも同じく問題があった。でも管理を徹底するには手間もカネもかかる。なぜできないか?人がいないから。一定時刻に温度管理表へ記録するんだけど、こっちは荷物の仕分けで手いっぱい。書き込む間にどんどん荷物が流れてきて、渋滞すればたちまち警報ランプが鳴りだす。
結局、宅配便の運賃が安いから人は増やせないって話なんですよ。すべて運賃に懸かってると僕は思う。
■運賃を払うか、要求水準を下げるか
──宅配便はどうなってしまう?
ドライバーの労働時間は全産業平均より3割長いのに、年収は大型トラックで416万円、中小型では385万円と、全平均の469万円を下回っている。低賃金・長時間労働で人手不足は深刻化していきます。
結局、消費者が対価を払うかどうかですね。便利で安いのが何より、という意識は変われるのか。この本でいちばん書きたかったのは、おカネを払いましょう、ってことだったんです。深夜8時間働いて、給与明細16万円という金額がどこから来るかといえば、運賃ですわ。低運賃が宅配市場を育てた面はあっても、それがもとで今ガタガタになってる。ある日突然、宅配便が届かなくなったら大勢の人が困るでしょう。それでいいの?という問題提起です。
今のサービスレベルを享受するために運賃を負担するか、運賃はそのままでサービスの要求水準を下げるか。誰かが泣くことを前提に成り立ってるサービスが長続きするとは、僕は思えないんですね。皆さんに考えてもらう、一つのきっかけになればいいなと思って書きました。
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