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雇用形態別・非正規雇用労働者の推移(「厚生労働省 HP」より)
賃金4割ピンハネ!派遣業界のトンデモ実態 残業代&交通費なし、女性容姿ランキング…
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11895.html
2015.10.10 文=神樹兵輔/マネーコンサルタント Business Journal
安倍晋三首相が唐突に、名目GDPを2020年に600兆円にする――などいう荒唐無稽な目標を打ち出したことには失笑を禁じ得ませんでした。ちなみに14年度の名目GDPは490兆円です。低賃金の不安定雇用を増やし、個人消費の低迷を招くだけの労働者派遣法の改悪を大慌てで成立させたタイミングでどの口が言うのかと、その主張の非整合性には首を傾げるばかりだからです。
アベノミクスと称する経済政策も、日本銀行の大規模異次元緩和で出口の見えない危険な財政ファイナンス状態に陥れただけで、円安効果による虚構の株高も失速、輸出も伸びず、消費税率アップと食料品価格高騰で可処分所得は減少し、デフレ脱却も遠のくばかりと、目先の景気浮揚すらはかばかしくはありません。浅はかで「“安倍”コベ」の政策が多すぎるからでしょう。
さて、そもそも「労働者派遣事業」なるものは、戦前のタコ部屋奴隷労働横行時代の反省から、戦後は職業安定法で厳しく禁じられてきたものであり、労働基準法6条にも中間搾取の禁止規定があります。それを産業界からの要請で1986年以降、労働者派遣法の施行により合法化したものでした。産業界が、いつでもクビにできる・安くて便利な労働者を求めたからにほかなりません。
当初は「テンポラリー(一時的・臨時的)の働き方」と「専門的業務にのみ限定した働き方(正社員から派遣社員への代替防止)」という制度上の役割と機能も、法律上一応は位置づけられていたものの、もともと違法時代から横行していたモグリ事業者がなんでもアリの派遣事業を行っていましたから、こうした法令順守などは合法化のスタート段階からどこ吹く風の有様でした。一般事務なのに、専門26業務の「事務用機器操作」「秘書」「ファイリング業務」と称して違法派遣が横行していたのはご承知の通りなのです。はじめからザル法だったともいえます。
派遣のメリットは、労働者側にとっては「好きな時間に、好きな仕事だけを選べる働き方」などと強調される場合もありますが、しょせんは派遣先企業と派遣元企業にとってのメリットだけが大きいものです。厚労省の実態調査でも、正社員になりたくてもなれない不本意・派遣労働者比率は44.9%にも上ります。
すなわち派遣先企業にとっての派遣労働者は、いつでもクビにできる雇用の調整弁であり、社会保険料負担なし、福利厚生費負担なし、昇給なし、ベースアップなし、ボーナスなし、退職金なし、交通費負担なしと良いことづくめなのです。
また、派遣元企業(派遣業者)にとっても、当初は社会保険料負担もなし、有給休暇負担もなし(これらの違法はその後徐々に改められてきた)のうえに、人手さえ確保すれば無法状態で派遣先に送り込めたので、非常にオイシイ商売だったからです。交通費は今でも支払わないケースが多いです。
■政府や厚労省とも癒着
かつて、派遣元企業のマージン率は、労賃のピン(1割)ハネどころか、4〜5割ハネで儲かったため、この悪の巣窟のような業界には、恥も外聞もなく一時は大企業までもが次々と参入したものなのでした。現在でもピンハネ率は30〜40%に及び、開示が義務づけられたのに開示しない業者までが平気で存在します。
なんと08年9月のリーマンショック前のピーク時には、7兆8000億円まで市場は拡大していたのです(13年時点で5兆1000億円まで縮小)。
これまで労働者派遣業者(派遣元)は、約1万7600の一般事業者(仕事のある時だけ雇用して派遣する許可制の業者)と、約6万7600の特定事業者(常時雇用の労働者を派遣する届け出制の業者)、合計8万5200もの業者がひしめいていました。
こんなに規模の小さな業者ばかりが多数存在するのでは、いったいどれだけのマッチング機能が果たせるのかは疑問ですが、現在も派遣労働者は増え続け、その数は119万人にまでなっています。14年の非正規雇用労働者1962万人(全雇用労働者の37.4%に相当し、契約社員、嘱託、パート、アルバイトなどが該当)のうち、6.1%を占める数なのです。
当然ですが、これだけ大きな市場規模になると、大手業者は政界工作の政治献金も潤沢にバラまけますし、芸能人や政治家を招いての事業者パーティーも盛大に開け交遊人脈も築かれたりするわけです。もちろん、労働者派遣業界の団体役員には、当然ながら厚労省の役人も高額報酬での天下りを行っています。額に汗して働く派遣労働者こそが、「いい面の皮」という状況でしょう。
■法令違反が横行
この労働者派遣業者のコンプライアンス意識の低さには定評がありますが、かつて派遣労働者の社会保険料負担分を逃れてきた違法事例のほかにも、これまで問題となってきた事例を参考までに挙げておきましょう。
・派遣禁止業務への派遣(専門26業種逸脱、建設、港湾・運送などの適用除外業務など)
・許可なし・届出なしでの人材派遣業務、偽装請負(実態は派遣)
・二重(多重)派遣
・期間制限違反(3年を超える派遣)
・派遣先への派遣労働者の履歴書提示
・事前面接(会社訪問と称する)
・女子の容姿にランキングをつけ派遣先に提示して選ばせる
・「装備費」「データ管理費」などの名目による賃金ピンハネ
・割増残業代の不払い
・備品の自腹購入の強要
・無給早出出勤の強要
・派遣先管理者によるセクハラ・パワハラの放置
以上が代表的なものですが、「あれ、これは今でもうちではやっているぞ」といずれかの違法事例に該当して、今さらのように驚かれる派遣労働者の方も、きっと少なくないことでしょう。
つまり、これほどいい加減で法令違反常態化の業界なのです。もとより、人を人とも思わぬ「モノ扱い」(厚労省課長発言で問題化)での生き血を吸う業態ですから、モラルもへったくれもないのかもしれません。
こういう状況ですから、労働者派遣法という法律も、無法な業界の実態に合わせるべく規制を緩和してあげなければいけないという本末転倒の行為を、与党政治家と厚労省がタッグを組んで担ってきたというのが、これまでの労働者派遣法改悪の歴史だったのです。
もちろん、表向きは、派遣労働者の保護を重視する法律のように見せかけているのですが、改定の内容はことごとく派遣先企業や派遣元企業の保護を優先した、商売がやりやすくなる法律としての変更を重ねてきただけだったのが実態なのです。こういうことを政権に気遣ってマスメディアはなかなか報じないので、若いうちから騙されて、低賃金の派遣労働に一生涯を従事させられてしまうのです。
例えば、86年の同法施行後の改訂では以下の内容が盛り込まれました。
・99年に派遣可能業務の規制の自由化
・03年に製造業派遣を解禁、一定期間経過労働者の直接雇用義務
・12年に日雇い派遣規制、派遣労働者と派遣先労働者の処遇の均衡、マージン率開示の義務化、労働契約申し込みみなし制
このうち、最後に記した12年の「労働契約申し込みみなし制」というのが、今回の労働者派遣法を大慌てで改めなくてはならない一番の理由でした。
では次回は、この労働契約申し込みみなし制の削除を含めた、今回の労働者派遣法改正の問題点について解説します。
(文=神樹兵輔/マネーコンサルタント)
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