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「新しい3本の矢」を打ち出した安倍首相。達成は極めて困難と見られる。参議院本会議で民主党が提出した問責決議案が否決された後、礼をする安倍晋三首相(2015年9月18日撮影)。(c)AFP/TOSHIFUMI KITAMURA〔AFPBB News〕
安倍首相はどこに向かって矢を放っているのか? 結局また期待に働きかけるだけの「新3本の矢」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44923
2015.10.8 鷲尾 香一 JBpress
9月24日、安倍晋三首相は記者会見で、「一億総活躍社会」を目指して、(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障―という「新しい3本の矢」を打ち出した。「新3本の矢」の具体的な目標は、(1)として「名目GDP600兆円」、(2)として「希望出生率1.8の実現」、(3)として「介護離職ゼロ」を掲げている。
これまでの安倍首相の政策は、経済戦略と安全保障戦略の繰り返しだ。経済戦略で支持率を上げ、安保法制を通し、また、経済政策を打つというやり方を続けている。その特徴を簡単に記せば、以下のようになる。
・2012年12月からは「アベノミクス」を打ち出し、日銀総裁に黒田東彦氏を登用、「3本の矢」を推進する。
・2013年秋からは安保関連に注力し、年末に「特定秘密保護法」を成立、2014年7月には集団的自衛権の解釈の変更を閣議決定した。
・2014年秋には内閣改造を行い、「地方創生と女性活躍社会」を打ち出す。さらに、消費税率10%への引き上げを先送りし、解散・総選挙に打って出た。
・2015年に入ると、安保委関連法案の成立に邁進する。9月18日深夜には、ついに念願の安保関連法案を成立させる。
こうなれば、次は経済戦略の出番ということになる。思った通りに、安倍首相が打ち出したのが「新3本の矢」だった。
■明確にされなかった「達成時期」
しかし、この新3本の矢、どうもこれまでとは様子が違っている。9月24日の記者会見で新3本の矢を打ち出した時には、その具体的目標である「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8の実現」「介護離職ゼロ」についての達成時期を明確にしていない。目標は掲げたものの、いつまでに達成するとは言っていないのだ。
自民党総裁選を対抗馬もなく、無投票で再選され、3年間の任期を得た安倍首相、新3本の矢の達成時期も自ずと安倍首相の任期となる2018年と受け止められた。しかし、もし達成時期を2018年とするならば、この目標は“達成不可能なあまりにも無謀な目標”と言わざるを得ない。
例えば、「名目GDP600兆円」は、今年7月に内閣府から発表された「中長期の経済財政に関する試算」で見た場合、年3%以上の成長率を継続して、2020年度に名目GDPが600億円になる。もし、2018年度に600億円を達成しようとすれば、年5%以上の成長率が必要となる。これがいかに無茶な数字かはお分かりになるだろう。
実質GDPを使わずに、数字の膨らみやすい名目GDPを目標にしても、さすがにその無謀さは隠しようがない。何せ、現状の経済成長率は年1%をやっと超える程度しかないのだから。
■非現実的な「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」
では「希望出生率1.8の実現」はどうか。希望出生率とは「国民の希望がかなった場合の出生率」を指しており、夫婦や独身女性の希望する子供の人数が実現するという数字を仮想的に計算したものだが、現在の出生率は1.42人である。晩婚化、生涯独身率、出産年齢の高齢化を考えた場合、これを1.8人にするのは相当に難しい。ちなみに、日本の出生率が1.8人だったのは、1984年と約30年前の話。
実は日本創生会議が希望出生率1.8人の「2025年達成」を掲げているほどで、およそ2018年に達成できるような目標ではない。
また、「介護離職ゼロ」では、東京商工リサーチの調べによると、2014年に介護関連施設の廃業・倒産は過去最高の54件となったが、2015年に入ると急増しており、1〜4月の間に31件(2014年は19件)となっている。
この要因としては、2015年度の介護報酬改定が9年ぶりに引き下げとなったことが大きい。介護報酬の引き下げにより、慢性的な人手不足に拍車がかかっている。しかし、まさか「介護離職ゼロ」を達成するために介護報酬の引き上げを行うようでは、あまりにも福祉行政に対する基本理念がないというものだろう。
■単に“期待に働きかける”だけの政策
さて、「新3本の矢」の達成時期は、後に明らかになる。9月30日、安倍首相はその達成時期について2020年代を目指すと表明したのだ。
もうお分かりだろう。名目GDP600兆円では「中長期の経済財政に関する試算」の“焼き直し”でしかなく、「希望出生率1.8の実現」では創生会議の2025年を5年前倒しにしたに過ぎない。
「3本の矢」は1本目の金融政策が効果を現わしたものの、2本目「機動的な財政政策」、3本目「民間投資を喚起する成長戦略」については、まったくと言ってもよいほど効果が出ていない。そもそも、「3本の矢」の目標の1つには、デフレ経済脱却に向けて“期待に働きかける”という効果を目指している。とすれば、「新3本の矢」の達成目標が焼き直しのものである点からも、口先だけの性懲りもなくただ単に“期待に働きかける”ものであった可能性は大きい。
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