1. 2015年10月08日 07:11:04
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韓国で急速に広がる「日本型長期不況」への懸念 構造改革は待ったなしだが、企業業績に黄信号 2015.10.8(木) 玉置 直司 韓国政財界で日本と同じ「失われた20年」入りを懸念する声が高まっている (c) Can Stock Photo 「『失われた20年』はもはや他人事ではない。何とかしなければ大変なことになる」。最近、韓国の経営者や学者、エコノミストからバブル崩壊前後の日本の状況について質問を受ける機会がやたらと増えた。メディアでも日本型長期不況を懸念する報道が目立ち始めている。 「韓国は、日本の『失われた20年』の前轍をそのまま踏もうとしている」 2015年10月5日、韓国国会の企画財政委員会で与党セヌリ党の李漢久(イ・ハング=1945年生)議員がこう切り出した。 発言内容を詳細に報じた「毎日経済新聞」によると、李漢久議員は、韓国経済がかつての日本と同じように長期的な低成長局面に入っていると指摘した。 日本の「失われた20年」の前轍を踏むのか 李漢久議員が説明に使った資料によると、日本は1980年代には年平均4.6%経済成長したが、1990年代に1.1%、2000年代に0.8%に落ち込んだ。 これに対して韓国は、1981年から「IMF危機」直前の1997年まで、年平均8.8%成長だったが、1998年〜2012年に4.1%、さらに2012年〜14年まで2.8%にまで急速に鈍化している。 「日本経済の不振は、1990年代初めからはまず投資が不振に陥り、次いで90年代半ばからは消費不振が追い討ちをかけた。韓国は消費と投資がともに落ち込んでいる」と語った。 それにもかかわらず、現在の韓国政府の対応が日本の前轍を踏んでいるというのが李漢久議員の主張だ。 李漢久議員は「日本の前轍を踏まないためには、朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領がかねて主張している4大改革(労働、金融、公企業、教育改革)などの構造改革を進めて潜在成長率を高める必要がある」と述べた。 李漢久議員は、3回当選で党院内代表などを歴任した経済通の大物議員だ。財務官僚や大宇グループ役員を歴任し、経済政策にも企業経営にも精通している。朴槿恵大統領の経済ブレーンの1人とも言われる。 だから、国会での質問は政府を批判するためではない。 日本の「失われた20年」を引き合いに出すことで、構造改革を進めるためのいっそうの努力を政府に強く督促する狙いだった。 李漢久議員の発言だけではない。最近、メディアのあちこちで「失われた20年」という見出しを見かける。 人口高齢化、成長率、主力輸出品目の推移まで、ぴたり一致 韓国の経済政策に大きな影響力を持つ「朝鮮日報」の主筆は、10月3日付のコラムでも「失われた20年」を取り上げた。 こんな内容だ。 韓国の国策シンクタンクである韓国開発研究院(KDI)の著名なエコノミストが8月のセミナーで「韓国経済の力動性―日本との比較を中心に」という発表をした際の資料を紹介する。 人口高齢化、成長率、主力輸出品目の推移まで、20年の時差を置いて韓国がそのまま日本を追いかけている。資料のグラフを重ねると、ぴたりと一致するというのだ。 三菱商事、カナダのウラン探鉱プロジェクトに参画 - 東京 韓国は本当に日本の前轍を踏むのか・・・〔AFPBB News〕 主筆は、「当時(20年前)の日本政府は3〜4%成長をすると言っていたが、実際には0.5%〜1%だった。3%以上成長すると言って2%台になる今の韓国政府と変わらない」と指摘する。 さらに、「我々の悲劇は、政治までもが日本の失敗を踏襲している点だ」と述べ、2016年春に迫った総選挙を前に政争が続く政治を嘆いた。 急速に進む少子高齢化、経済成長率と物価上昇率の低下。こうした構造的な要因に加えて、中国経済の鈍化などの影響で輸出に勢いがなくなってきた。 最近の統計を見ても、消費者物価上昇率は9月に0.6%で、10カ月連続して0%台だった。 9月の輸出額は前年同月比8.3%減の435億700万ドル。2015年になってから9カ月連続でマイナスとなった。 1〜9月期の輸出入額の合計は7279億ドルで、このままでは4年連続貿易額1兆ドルという目標達成も難しくなってきた。 韓国では「韓国経済は日本経済を20年遅れで踏襲している。似ていないのは、韓国では不動産価格が急落していないことだ」という指摘も多い。しかし、これも政府の相次ぐ不動産(価格急落防止)対策のためだとも言える。また、不動産購入のための借入金で家計債務が急増していることから、「大幅調整は時間の問題だ」という悲観論も強まってきた。 「失われた20年」は、まったく他人事ではないのだ。 一部企業の業績が急激に悪化、「ゾンビ企業」問題も浮上 さらにもう1つ、最近、大きな問題になってきているのが、一部企業業績の急速な落ち込みだ。 世界的な造船不況と原油安による海外プラント事業の採算悪化で、造船やエンジニアリングといったつい数年前まで韓国経済の成長エンジンだった企業の業績が急速に悪化している。造船会社の中には兆ウォン(1円=10ウォン)単位の赤字を出している例もある。 不振企業が増えた結果、サムスン電子の突出ぶりがまた鮮明になってきた(右がサムスン電子本社) さらにこうした「業績不振企業」を政府系金融機関が支援するというこれまでの例を繰り返していることで、政府系金融機関の業績悪化と「ゾンビ企業」の増加という問題が浮上している。 10月7日に発表になったサムスン電子の7〜9月決算暫定値は営業利益が7兆3000億ウォンと、前年同期比79.8%増だった。半導体がほぼ半分を稼ぎ出し、業績は回復しているが、産業界全体ではサムスン電子の突出ぶりがまた鮮明になってきた。 李漢久議員は国会質問で、4大改革に加えて「限界企業の整理、家計負債対策、規制改革」という広範囲の構造改革を断行するために、国民や野党を説得することを政府に強く求めた。 もちろん、韓国政府も必死だ。 韓国経済の最大の問題の1つは、労使問題だ。強すぎる労組のために、産業界全体で低成長産業から新産業への構造転換がなかなか進まない。 朴槿恵大統領もこの点は十分に認識しており、4大改革の1つである「労働市場改革」を最重視してきた。9月には、労使政の協議で何とか合意点を見いだした。各論については難題も残っているが、難航を重ねた協議を前に動かしたことは評価できる。 消費テコ入れのためには、政府主導で「韓国版ブラックフライデー」という米国の感謝祭明けの大規模セールにならった販売促進策が10月1日から百貨店などで始まった。 「割引幅が少ない」「対象品目が少ない」などの批判もあるが、何も手を打たないよりはよほど良いだろう。 10月5日にロッテデパートを見て回ったが、平日にもかかわらず、中国人観光客以外に、久しぶりに大勢の韓国人のショッピング客が詰め掛けていた。 それでも経済に対する不満は根強い。雇用情勢が相変わらず厳しく、体感景気があまりに良くない。足元の景況感から離れても、「次の成長分野」がなかなか見えてこないのだ。 このため、産業界では、事業や不動産の売却などの資産圧縮が目立つ。業績がまずまずの財閥や大企業は、現金をため込むが、なかなか投資に回らないのだ。 「眠りから目覚めた」日本に対する焦りも 「日本経済の構造改革がどこまで進んだのかはまだ判断できない。だが、株価が上昇し、大企業の業績が改善したことは間違いない。海外インフラビジネスでも先行している。TPP(環太平洋経済連携協定)でも大筋合意をした。最近、日本の動きが速い印象だ」 ある企業経営者はこう話す。「失われた20年」への関心の高さは、長期停滞への懸念とともに、「日本が長年の眠りから目覚めたのかもしれない」という焦りが増幅しているようだ。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44950 |