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フォルクスワーゲンに関する報道について(「フォルクスワーゲン 公式HP」より)
VW不正問題、全世界の自動車会社が戦々恐々 カタログ数値と実際値の乖離問題が浮上
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11837.html
2015.10.07 文=河村靖史/ジャーナリスト Business Journal
世界的な一大スキャンダルに発展している独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車の排ガス不正問題に、自動車業界全体が神経をとがらせている。VWの不正行為が自動車メーカー1社による暴走というよりも、長期間にわたって不正を見抜けなかった「仕組み」にも問題があると見られているためだ。すでに欧米当局などは、ディーゼル排ガス試験方法を厳格化することの検討に入っており、VW以外の自動車メーカーにも影響が及ぶのは必至だ。
VWは排ガス規制を逃れるため、ディーゼルエンジンを制御するECU(電子制御ユニット)に、当局による検査を検知すると有害物質の排出量を大幅低減するソフトウェアを搭載していた。自動車の排ガス検査は、回転するローラーに自動車のタイヤをのせて路上走行状態を再現できる「シャシーダイナモ」と呼ばれる測定装置で検査される。VWはこの仕組みを悪用。一定の速度やハンドルが固定されるなどの条件をソフトが検知すると、排出ガス低減装置がフルに稼動して有害物質の排出量を低減する。通常走行の場合、この機能が働かずに有害物質の排出量が増える。
VWの不正が発覚したのは、NPOであるICCT(国際クリーン交通委員会)が米ウエストバージニア大学にディーゼル車の排ガス検査を委託したのがきっかけだ。同大が2013年に実際の路上を走行させて排ガスを検査したところ、「パサート」などのVW車で基準を最大で40倍上回る窒素酸化物(NOx)の排出量が検出された。これを受けて同大は米環境保護局(EPA)に通報、VWは「複数の技術的な問題」としか説明しなかったとされる。EPAは納得せず、VWと約1年間にわたってやり取りを続けてきた。最終的にはEPAがVWに対して、明確な説明がない場合は新型車の認証を認めないと通告、これを受けてVWは不正なソフトの搭載を認めた。
VWグループ全体で、不正なソフトを搭載したモデルは全世界で1100万台に及ぶ。この不正なソフトをディーゼル車への搭載を決めたのは2005年から06年頃で、08年に米国で実際に販売開始したとされ、長期間にわたって不正は見逃されてきた。
■不正に手を染めた理由
VWが企業存亡の危機にも陥りかねないリスクを冒してでも不正に手を染めた理由は何か。
米国販売のてこ入れをするため、もしくは排ガス基準をクリアしながら燃費を少しでも向上するためとの見方もあるが、不正ソフトを搭載した車両はドイツで280万台、英国、フランスなどの欧州各国や韓国などアジアでも販売されている。世界的にも最も厳しい米国の排ガス基準をクリアするために排ガス機能をフル活用すると、排ガス後処理装置が壊れるためでは、との見方もあるが、VWが不正を行っていたのは最新の規制であるユーロ6対応ディーゼルエンジンの一世代前のユーロ5対応のもので、ユーロ6対応ディーゼルエンジンには不正なソフトを搭載していないと明言しており、技術的に遅れていたとはいい難く、現時点で真相は明らかになっていない。
また、VWのエンジニアは不正がここまで大問題に発展すると認識していなかったのではとの指摘もある。現在の自動車は電子化が進み、ECUによって排ガス量や燃費などを一定の範囲なら自由にコントロールできるようになっている。VWが犯した不正は、他の自動車メーカーでも「やろうと思えば簡単にできる」(自動車メーカー開発担当役員)手法だ。このため、VWの問題発覚後、BMWやダイムラー、マツダが相次いで「不正は一切行っていない」という異例のコメントを公表している。
■多くの自動車メーカーにとって試練
問題のひとつに、排ガスを含めて自動車に関するさまざまなテストが、実際の路上走行ではなく、台上で、しかも一般的ではない走行方法で測定されることがある。いい例が燃費だ。自動車には、当局の試験を経てカタログ燃費が公表されているが、実際の走行における燃費と大幅に乖離していることはよく知られている。
カタログ燃費値はクラストップでも、実際の燃費ではほかのモデルより悪いことはざらにある。これは、燃費を測定する試験でエアコンを使用しないなど、実際の走行状況とまったく異なることが原因のひとつだ。エアコンオフの状態でクラストップの燃費になるように、ECUでコントロールすることは簡単にできる。
VWの不正問題を機に、当局は排ガスや燃費のテストの見直しを本格的に検討し始めた。欧州では、排ガス試験で実際の路上走行によるテストを導入することを検討開始。認証手続きも見直す。国連では、排ガス試験方法を統一するための話し合いが行われているが、ここにも今回の問題が影響を及ぼすとの見方は強い。また、米国当局はVW以外のモデルで不正なソフトが搭載されていないか検査する。
排ガスや燃費の検査が厳格化されテスト項目が増えれば、自動車メーカーにとって大きな負担になるのは確実で、自動車のコストアップにも結びつく。さらに、環境自動車として注目され、市場が拡大してきたクリーンディーゼル車のイメージ悪化も懸念され、低排ガス・低燃費のクリーンディーゼル車の開発に多額のコストを投じてきた自動車メーカーは試練を迎えることになる。
VWの不正問題は、制度の盲点をついていたことの悪質性から、「性善説」をベースとしてきた従来の制度の根幹を揺るがしている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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