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「中国商法」に大敗!日本の輸出戦略は、どこまで弱くなるのか 〜インドネシアの裏切りは「悪夢の始まり」?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45664
2015年10月06日(火) 町田 徹「ニュースの深層」 現代ビジネス
■なぜこんなことになったのか
日本政府は、これまで世界最大の援助を与えてきたインドネシアで、中国に出し抜かれ、圧勝のはずだった高速鉄道建設プロジェクトの受注商戦に敗れた。
インドネシア特使のソフィアン国家開発企画庁長官が29日、首相官邸を訪ね、菅義偉官房長官に中国案の採用を決めたと通告したというのだ。
これに対して、菅長官は、インドネシアが9月初めに計画を白紙に戻すと決定しておきながら、急転直下、中国に軍配をあげた経緯が「理解しがたく極めて遺憾だ」「常識として考えられない」と怒りをあらわにした。
だが、インドネシアのような経常赤字と財政赤字の「双子の赤字」を抱えて、経済成長の鈍化に苦しむ途上国に、日本の政府開発援助(ODA)商法の常識は通じない。しかも相手は輸出の拡大で国家的な経済危機を乗り切ろうと目論む中国だ。
この失敗の轍を踏まないためには、どうすべきか。あるいは不毛な競争には応じないと腹をくくるのか。“異常事態”が続くことを念頭に置いたインフラ輸出戦略が問われているのではないだろうか。
問題の高速鉄道計画は、1万3466もの島々が東西5110kmの間に連なるインドネシアの中で、人口の6割が集中するジャワ島内の首都ジャカルタと、約250万の人口を持つ都市バンドンとの間の140qを結ぶものだ。
将来は、ジャワ島の東北に位置するインドネシア第2の都市スラバヤまで延長され、全長730kmに達するとされている。
歴史的に関係が深く、巨額の援助をしてきたうえ、ODAによって途上国援助を行う日本の国際協力機構(JICA)が2013年12月に着手した事業化調査がプロジェクトの発端になったこともあり、当初から受注競争は日本の独壇場とみられていた。
ところが、2014年10月に、家具輸出商、市長、州知事などを経て、大統領に登り詰めたジョコ・ウィドド氏の政権が発足して以来、雲行きが怪しくなっていた。同政権は高速鉄道プロジェクトに国家予算を使わない方針を掲げ、政府の5か年計画から同プロジェクトを外す決定を下したからだ。
■裏切られた日本政府
しかし、世銀が「低中所得国」に分類しているインドネシアの高速鉄道プロジェクトに投融資してもよいという民間資金はそれほど潤沢ではない。かといって、日本にとっては、一般会計予算であるODAを投入する以上、インドネシア政府の債務保証は外せない条件だった。
そこで、利下げなどの配慮をみせつつも、従来型のODA援助の枠内で、商談を成功させようと目論んだ。
今年3月に入って、ジョコ大統領が国賓として来日した際には、天皇、皇后両陛下が同大統領夫妻と皇居で会見しただけでなく、昼食を共にしてもてなされた。安倍首相も、プロジェクトの受注を確実にするために、1400億円の円借款の供与を表明した。
ジョコ大統領自身も、自ら希望して東京から名古屋まで試乗するなど、日本の新幹線に強い興味を示していた。
だが、ジョコ大統領は、日本と中国を競らせる姿勢を崩さなかった。日本からの帰路に訪中し、習近平国家主席と高速鉄道の協力覚書を交わしたのだ。
そして、9月4日、インドネシアのダルミン経済担当調整相は、日本の谷崎泰明大使に日中の案をいずれも採用しないと通知した。計画そのものをいったん「白紙」に戻し、コストを抑えるため高速鉄道ではなく中速鉄道に切りかえる方向で、民間主体の事業に衣替えすると表明したのである。
当時は、日本が2018年から2023年までの5年をかけて「最高時速300qの高速鉄道を建設する」としていたのに対し、中国は2019年までの3年間で「最高時速350qの鉄道を建設できる」としており、その実現性に技術的な疑問符が付いているとの解説もあった。
にもかかわらず、冒頭で記したように、事態は再び大きく転換。中国が受注するという顛末になったのだ。
■「中国商法」に負け続けるのか
菅長官が怒りをあらわにしたこと自体は、理解できないことではない。日中両国政府を巻き込んだ援助プロジェクトで、一端、正式に白紙化を表明しておきながら、1カ月も経たずに、それを撤回するのは異例の事態である。国としてのメンツを潰された日本政府が苛立つのは当然のことだろう。
まして、日本はインドネシアと長らく友好関係を維持してきた。日本はインドネシアにとって世界最大の援助国だし、インドネシアは日本のODAの最大の受領国である。インドネシアの選択が、歴史的な貢献や関係を軽視する暴挙と日本政府関係者の目に映っているのである。
だが、インドネシアを一方的に責めるのは酷だろう。同国は、世界銀行の定義・分類でも低中所得国と、いまだに貧しい国だ。経済成長率はこのところ鈍化が続いており、双子の赤字を抱えて、いつ大量の外資が流出しても不思議のない状況になっている。
国内を睨んだ場合、すでに鉄道や道路が整備されているジャカルタ―バンドン間の交通インフラ以外のものに国費を投入したほうが政治的に有利という事情もあった。
一方で、見逃すことができないのが、国家間の援助プロジェクトだったはずなのに、簡単に政府保証などの縛りを外してしまう「中国商法」だ。
こちらも、中国経済危機が深刻化する中で、なりふり構わず、輸出を伸ばしたいという事情を抱えているのは明らかだ。
今回のような中国商法が長続きするかどうかは不透明だ。短期間に高性能の高速鉄道を建設するというプロジェクト案が技術的に実現可能かどうか疑問視する向きが多いのは事実だし、政府の債務保証のない事業の採算性・安全性を不安視する声もある。
しかし、1%にも届かない潜在成長率を押し上げるために、輸出を伸ばしたいのは、日本も同じである。
今回と同じように、ダンピングまがいの中国の援助商法によって、世界各地で振り回されるのは悪夢だ。ODA援助だけでなく、インフラ輸出戦略の早期の徹底的な点検と立て直しが課題になっている。
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