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東芝本社ビル(「Wikipedia」より/Lover of Romance~commonswiki)
東芝不正会計、「甘すぎる」処分の真相 すべて予め決められたシナリオ
http://biz-journal.jp/2015/10/post_11795.html
2015.10.04 文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授 Business Journal
この初春に始まり、西田厚聰相談役、佐々木則夫副会長、田中久雄社長の歴代3社長辞任、さらには第三者委員会の調査報告書公表でも収集がつかず、世間を騒がせた東芝の不正会計・粉飾決算問題。9月7日には当初予定より4カ月遅れて2015年3月期決算を発表し、過去の決算訂正を含む有価証券報告書について2度の延期の末に関東財務局へ提出した。そして再発防止策の表明と室町正志会長の新社長就任で、一応の表向きの収束をみたようである。
今回訂正された過去の有価証券報告書の提出を受けて証券取引等監視委員会は、今後どの決算期に虚偽記載があったかを最終的に判断したうえで、金融庁に課徴金納付命令を勧告することになる。その金額は、東芝が課徴金納付に備えた引当金として84億円を計上していることから、同じ虚偽記載で2008年に総合重機大手であるIHIが課された約16億円を大幅に上回ると想定される。
また、東京証券取引所は9月15日付で、東芝株を特設注意市場銘柄に指定すると発表している。これで18カ月以内に東芝の内部管理体制等の改善が確認できない場合は、上場廃止となる。処罰が甘いという指摘もあるが、これで一応の公的な懲罰を受けて、東芝の粉飾決算問題は幕引きというかたちとなる。
しかし、当然これで東芝の抱える問題が解決したと思う向きは少数である。本稿では、この東芝問題の意味合いを多面的に考えてみたい。
■メディアの報じ方に差
まず、今回の件に対する4大新聞(読売、朝日、日本経済、毎日)の取り扱いである。4月3日の東芝による「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」に端を発する本件に関して、4大新聞は7月21日の第三者調査委員会報告書の公表前後までは「不適切会計」という表現を使っている。朝日と毎日は、委員会報告書公表の前後で不適切会計から「不正会計」に表現を変えている。しかし、現在でも不正会計であり、「粉飾決算」という表現を使うようにはなっていない。明確な定義はないが、不正会計よりも粉飾決算のほうが強い印象を与える。
一方、日経と読売は、現在に至るまで一貫して不適切会計(不注意などケアレスミスを想起させる用語)と表現し、不正会計や粉飾決算という用語は使用していない。
不正会計・粉飾決算といえば、2011年のオリンパス事件が思い出される。事件発覚の初期の頃から不正会計・粉飾決算という表現が使われ、日経ですら粉飾決算という表現を使っている。そして、オリンパスは東京証券取引所上場廃止の瀬戸際まで追いつめられていた。結局は、東芝同様に特設注意市場銘柄に指定され、1年半後に解除、上場を維持した。加えて、オリンパスの監査を担当していたあずさ監査法人と新日本監査法人に対して、金融庁は業務改善命令を下している。
この2社に対するメディアの扱いが違うのは、粉飾確定額で東芝はオリンパスを大きく下回るからであろうか。否、実は東芝のほうが大幅に上回っている。今回の東芝の粉飾額は計2248億円で、オリンパスは計1200億円程度の規模とされる。
それでは、オリンパス事件の発端が、月刊誌「FACTA」(ファクタ出版)という雑誌の調査報道であるのに対し、東芝の件は同社による「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」という情報開示であるからであろうか。その後の展開はどちらも株価の急落、第三者調査委員会の設置である。オリンパスと東芝の違いは、株価の急落が先か第三者調査委員会の設置が先かの違いである。そしてどちらのケースも事態は深刻化する。オリンパスでは、菊川剛前社長(元会長)をはじめとする逮捕者を出し、刑事事件にまで発展した。
正論をいえば、犯罪と同じく裁判で判決が確定するまでは、犯人は容疑者であり罪人ではないのと同様に、今回の東芝のケースも会計処理を法的(強制捜査も含む)もしくは公的にみて、適切性・不適切性があるかを確定し、それが不正であると認定するまでは不正会計とも粉飾決算とも断定はできない。
内実が公になる前に、最初に第三者調査委員会を設置した東芝はやはり賢明な会社である。しかし、主要メディアは上記のような内容を理解し、かつ中立的に報道していただろうか。
そして、7月に公表された第三者調査委員会報告書(要約版)のなかで、監査法人への隠蔽の意図を認定しているにもかかわらず、会計操作を「不正」ではなく「不適切」と表現しているので、不正会計と断定できず、依然として不適切会計であるというのが日経と読売の認識なのであろうか。また、オリンパスは損失隠し、東芝は利益水増しと、粉飾決算の内容が違うからであろうか。つまり、利益水増しのほうが損失隠しより不正の度合いは軽微ということであろうか。
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20150720_1.pdf
その動機はどうであれ、不正会計・粉飾決算は株主を欺く行為であり、その責任は極めて重い。このことについて、日経も読売も十分に理解しているはずであろう。しかし、当の東芝にその意識は薄そうである。そもそも株価操作という明確な意図が経営者にあったわけもなさそうであり、「適切な会計処理に向けての意識が欠如していた」東芝の役職員が、「チャレンジ」という名の圧力のもとに、当期利益の向上のために全社で不適切会計をしたというなんとも子供じみた話である。なぜ、このような子供じみたことが公然と行われるのかは次回考えてみたい。
ここまで見てきても、オリンパスと東芝のケースに対する主要メディア、特に不適切会計という表現にこだわる日経と読売の扱いの違いが、何に発するのかは見えてこない。しかし、もし東芝のケースが不正会計でも粉飾決算でもなく不適切会計であるのならば、両新聞は今後、不倫や浮気は「不適切交際」といわなければなるまい。
■東芝への配慮
上記以外にいくつか考えられる理由のひとつとしては、企業規模の差もさることながら、消化器内視鏡では世界シェアトップではあるが、カメラメーカーとしては劣後であったオリンパスと、穏やかで紳士的・公家的と形容される出自の良い優等生大企業であり、戦後に石坂泰三や土光敏夫(両名とも東芝出身ではないのだが)という日本経済界の重鎮を輩出し、代々の社長が経団連の要職を歴任する東芝では毛並みが違うということであろうか。日経と読売としては、不正会計という表現も憚られ、朝日や毎日としてはスキャンダル的な要素が強い粉飾決算という表現は東芝には馴染まないということであろうか。
また、穿って考えれば、日本郵政社長で元東芝会長の西室泰三氏が自民党・安倍政権と蜜月であるため、安倍政権がマスコミの報道管制を公言していることを考慮すれば、主要メディアに躊躇が生まれたとしても驚くにはあたらないかもしれない。不正会計と表現する朝日、毎日と、不適切会計と表現する日経、読売では、現政権との距離が違うことは、よく知られているところである。
■決められたシナリオ
もっと、穿って考えるならば、今回の問題をどう処理するかは、発覚直後の時点で決まっていたのかもしれない。そのために不正会計・粉飾決算を認定されては困るので、あくまでも悪意のない不適切会計で押し切らなければならないのではないか。
そのシナリオとは、東芝の上場廃止はしないというものだ。オリンパスは本業ではなく、財テク投資の損失隠しであり、それに関わっていたのはごく限られた経営幹部であったが、上場廃止の瀬戸際までいった。一方、東芝のケースは本業に関わる不正会計であり、全社ぐるみの不正経理である。どちらが企業犯罪として重いかは明白であろう。
しかし、東芝が上場廃止の瀬戸際まで行く気配は露ほどもない。事実、第三者調査委員会報告書が公表された直後の7月28日に、日本取引所グループの清田瞭CEO(最高経営責任者)が間髪を入れずに、東京証券取引所の対応について、東芝株を上場維持しながら内部管理体制の改善を求める「特設注意市場銘柄」に指定することが有力であるとの考えを示し、上場廃止の可能性を否定している。この時点で、15年3月期の決算も過去の決算修正も発表されていないのにである。
2つ目のシナリオは、監査法人へのお咎めはないというものだ。事実、第三者委員会の報告書は、「会社組織による事実の隠ぺいや事実と異なるストーリーの組み立てに対して、独立の第三者である会計監査人がそれをくつがえすような強力な証拠を入手することは多くの場合極めて困難である」として、監査法人が不正会計を指摘できなかったことは仕方がないとも取れる表現をしている。オリンパスの件では不正経理はかなり巧妙であり、監査法人が見抜けなかった可能性が高い。にもかかわらず担当した監査法人は、金融庁から業務改善命令を受けている。
一方の東芝のケースでは、今秋より金融庁が調査を開始するとの報道もあるが、お咎めなしか、せいぜい業務改善命令で、カネボウ粉飾事件で解散に追い込まれた旧中央青山監査法人が受けたような一部業務停止命令は受けないであろう。東芝の監査を担当した監査法人は、新日本監査法人である。この監査法人は前歴が多い。オリンパス事件の時には監査を担当し、IHIが前述の粉飾決算を起こした時にも監査を担当していた。この履歴を見れば、業務停止命令も当然かと思われるが、そのようなお咎めを受ける気配はない。政府は、旧中央青山監査法人の解散を経験して、二度と監査法人は解散に追い込まず守る方針なのであろう。
もし、新日本監査法人に対して真剣な処分をしないのであれば、今後監査費用は企業が払うのではなく、株主が直接負担をするようにすべきであろう。特に、株主の視点が希薄で、人間関係で縛られ人情が効く日本のようなウェットな社会では、払い主に対して厳格かつ中立に振る舞うのはそもそも無理があろう。金融庁をはじめ、政府関係者にはぜひ一考していただきたい。
次回は、東芝はなぜかくも子供じみた不正経理を行ったのかを考えてみたい。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)
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