5. 2015年10月07日 17:35:41
: OO6Zlan35k
社説】低調な米雇用統計という衝撃 2015 年 10 月 5 日 12:46 JST 米国の景気の回復具合はあまりぱっとしないが、それでも労働市場は強みのはずだ。だから、2日発表の9月の雇用統計が低調だったことは、投資家にとって、そしておそらく米連邦準備制度理事会(FRB)にとっても衝撃だった。問題は今回の景気回復が始まってからこれまでもたびたびあったような一時的な停滞がまた起きているだけなのか、それともさらに悪い何かが起こる警告なのか、という点である。 9月の雇用統計に多くの好材料を見つけるのは確かに難しい。非農業部門の就労者数は前月比14万2000人増で、民間部門の就労者数は11万8000人増にとどまった。7月と8月の就労者数の伸びはそれぞれ下方修正され、前回の発表より合わせて5万9000人減少した。第3四半期の1カ月当たりの平均就労者数は16万7000人増にとどまり、年初から9月までの平均19万8000人増を下回っている。これも昨年の平均26万人増と比べれば大幅減である。 さらに悪いことに、労働参加率――労働市場の健全性を測る主要な指標だ――が1997年以来最低の62.4%にまで低下した。1977年と言えば、米国経済は1970年代半ばの厳しい景気後退局面から回復の途上にあったころだ。9月の労働人口は約35万人減少し、雇用創出があまり良くなかったが失業率は5.1%にとどまった。米大統領経済諮問委員会(CEA)は2日、ブログにコメントを掲載し、雇用情勢の停滞は「海外の成長鈍化と世界的な金融の混乱」が原因という見解を示した。それ自体は正しい。しかし、CEAは指摘していないが、その混乱と成長鈍化の一因は、FRBの政策によって新興市場が経験した二重の損失にあった。 FRBが積極的に国債を購入した当時、新興市場には資本が殺到したが、FRBが利上げを検討する今、資本はドル資産に再び流入しつつある。ドル高が進んだため、商品(コモディティー)市況も下落、米国経済の中では珍しく好調だった米国の石油・ガスブームに大きなダメージを与えた。 しかし、いつ起きるにせよ、こうした事態は避けられないものだった。FRBは、米国経済が新興市場や商品市場の修正に十分に耐えられるほど回復するだろうと思っていた。問題は、2009年以降、2.2%という低成長が常態化し、米国経済が世界の他の地域の成長ショックの影響を非常に受けやすくなっているということだ。9月の雇用統計によると、平均時給は前月比横ばいで、前年同月比でもたった2.2%しか上昇しておらず、資金が米国に流入しても米国人の生活水準が向上しているわけではない。 こうした現状は金融政策に対するFRBのジレンマを増幅させている。FRB関係者は9月にゼロ金利政策を解除することを期待させてきたが、結局、政策を変更しなかった。その後、イエレンFRB議長らは年末までに解除したい意向を示しているが、そのためには労働市場が9月の水準から回復しなければならない。 われわれを含め、さまざまなところで指摘されているように、FRBはゼロ金利政策にとらわれているようだ。ゼロ金利政策が投資をゆがめていることを承知していながら、解除したときの経済的な影響を恐れているのだ。われわれはFRBがもっと早く多少でも金利を引き上げておくべきだったと考えていたが、FRBは既にそのチャンスを逃してしまったのかもしれない。FRBが今すぐ利上げに踏み切っても踏み切らなくても、金融政策の限界は明らかになっている。 米国経済が減速しているとしても、米国政府に多大な支援を期待してはいけない。ホワイトハウスのエコノミストたちは先に紹介したブログにこう記した。「われわれは、米国経済がこの数年間享受してきた国内の勢いを持続させるために対策を講じなければならない。それには、予算の自動削減を無効化し、米国経済の成長維持に役立つ重要な投資を行うための予算を成立させること、米国企業が海外で対等に渡り合うことができるように輸出入銀行を再承認すること、インフラ投資を増やすことが含まれる」。 やることはそれだけなのか。融資保証を実施する銀行を復活させ、道路や橋にさらに資金をつぎ込むというのか。本気なのだろうか。今のホワイトハウスは知性を使い切ってしまったのか、それとも税制改革や規制改革など共和党が提案している成長政策を検討するには党派にこだわりすぎているかのいずれかである。先週、政権は大気中のオゾン濃度を制限するという金のかかる規則をまた1つ、米国経済に押し付けた。オゾン濃度が現行基準を大幅に上回っているのはカリフォルニア州の一部だけであるにもかかわらず、だ。 どうやら、オバマ大統領は民間経済が積み重なる負担をものともせず、悪影響も受けずにこうした措置を全て吸収できると思っているようだ。だからこそ、景気拡大が6年も続いているというのに、労働参加率は62.4%という水準にとどまっているのだ。 米雇用、労働参加率低下の背景に低い失業保険受給率 米国では失業保険を受給している失業者が珍しくなっている PHOTO: M. SPENCER GREEN/ASSOCIATED PRESS By ERIC MORATH 2015 年 10 月 6 日 14:56 JST 米国の失業者数は9月に2008年以降では初めて800万人を割り込んだ。だが、この数字は雇用の伸びを反映したものとばかりは言えない。 米労働省によると、失業者が減る一方、9月は35万人が労働力人口から離脱した。米国の労働力人口は5月に過去最高をつけたが、その後4カ月中3カ月で減少している。 長期失業者が求職活動をあきらめている、と言うのがこの傾向についての一つの説明だ。失業者支援組織の全米雇用法プロジェクトで政策分析を担当するクレア・マッケンナ氏によると、労働力人口からの離脱者は、短期失業者よりも長期失業者の方が急増している。マッケンナ氏は、「見た目の数字は雇用市場のぜい弱性を覆い隠している」と指摘した。 労働力人口から離脱する理由としては、失業保険の受給者数が比較的少ないことが考えられる。失業保険受給者数は9月に15年ぶりの低水準をつけた。 ENLARGE 大半の失業者は失業保険を受けていない 労働省の統計によると、先月の受給者数は失業者全体の28%に満たない。前年9月は31%だった。また、緊急措置として大半の州で支給期間を26週以上最大99週に延長した2010年9月には67%で、これをはるかに下回っている。この緊急措置は13年末に失効し、受給者の急減につながった。 失業保険の受給期間が切れると、需給対象者は低賃金の仕事を受け入れるか、労働力人口から離脱する例がよく見られる。退職や復学、あるいは家庭で子供や老人の世話をするか何らかの別のかたちでの政府援助を求める方が金銭面でみて合理的だと考えて、労働力人口から離脱するのだろう。労働参加率は、1970年代以降では最低の水準で推移している。 全米雇用法プロジェクトの資料によると、12の州において失業者に占める失業保険受給者は5人に1人に満たない。同プロジェクトが今年初めに発表した分析では、失業保険受給者の比率は72年以降の統計で最低となった。労働省の最新統計では、総失業者数が減ったため、この比率が今年は落ち着き、やや高まっている。 関連記事 • 【社説】低調な米雇用統計という衝撃 • さえない雇用統計、利上げの「悪材料」=FRB前議長 • 低調な米雇用統計、FRBの手を縛る可能性 • 9月の米雇用統計、エコノミストはこうみる • 米雇用統計で10月の利上げ遠のく |