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2015年10月02日 (金) 午前0:00〜[NHK総合]
時論公論 「変調か? 日本経済」
今井 純子 解説委員
景気の先行きに、不安が広がっています。
きのう公表された日銀の短観は、大企業の製造業が9か月ぶりに悪化しました。
消費増税の後、ようやく回復してきたかに見えた日本経済ですが、再び、悪化していくのでしょうか。今夜は、日本経済の現状と先行きについて、考えてみたいと思います。
【短観の結果】
まず、日銀短観です。
(景気の現状は?)
こちらは、景気が「よい」と答えた企業の割合から、「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数の推移です。
今回、9月の調査で、「大企業の製造業」は、プラス12ポイント。前回6月と比べて3ポイント悪化しました。9か月ぶりの悪化です。
一方、「大企業の非製造業」は、プラス25ポイントでした。こちらは、外国人観光客の消費が活発なことを受けて、2ポイント改善しました。
(先行きは)
このように、現状では、製造業と非製造業で、判断がわかれました。しかし、3カ月先については、ともに、景気は悪化するという見通しになりました。非製造業は、6ポイントの大幅なマイナスの予想です。
企業の業績は、今のところ、今年度も過去最高益を更新する勢いが続いています。ところが、その企業でも、景気の先行きについて、慎重な見方をする経営者が増えていることがわかります。
【政府のシナリオが崩れ始めた】
(政府の当初のシナリオ)
政府は、今年度の日本経済について、
▼ 円安や好調なアメリカ経済を背景に、輸出が増える
▼ 賃金が増えて、消費も増える。
▼ さらに、設備投資も増えて、1.5%の成長率を達成するという明るいシナリオを描いていました。
(シナリオに狂い)
ですが、実際はどうなっているかというと・・・こちら。
▼ 輸出は、今年に入ってから、大きく減っています。
▼ そして、消費も一向に増えていません。今年の春以降は、減少する傾向が続いています。
こうした結果、4月から6月のGDPは、マイナス成長に落ち込みました。
政府が描いていた経済回復のシナリオに、明らかに狂いがでてきているようです。
【経済回復もたつきの背景は】
なぜでしょうか。
(海外 〜 中国経済の減速)
最大の要因は、中国経済の減速です。
中国政府は、4月から6月の経済成長率について、中国が目標としている7%を達成したとしています。ですが、アジア開発銀行は、9月に、今年の中国の成長率の見通しを、3月の時点での見通しより、0.4ポイント引き下げ、6.8%としました。中国経済は、政府の発表より、かなり悪く、経済の減速は続きそうだという見方が広がっています。日本から中国向けの輸出数量は、8月には、1年前より9.2%と大幅に落ち込みました。
(国内 〜 食品の値上がり)
一方、国内を見てみますと、食料品の値上げが消費の足を引っ張っています。
確かに、8月の全国の消費者物価は、エネルギー価格が下がったことから、2年4か月ぶりに下落しました。しかし、生活に欠かせない食料品についてみると、値上げの動きが相次いでいます。
これに対して、物価の影響を除いた実質賃金は、7月を除くと、今年もマイナスの傾向が続いています。
こうしたことから、消費者庁が毎月行っている調査では「この先、支出を減らす」と答えた人が、9月には、54.8%に達しました。去年の消費増税直後に次ぐ高い水準です。
特に、何の消費を減らしたいかという問いに対しては、食料品と答えた人が70%を超え、食料品の値上げが、消費者の節約志向につながっていることがうかがえます。
【今後の見通しは?】
では、この先はどうでしょうか?
政府は、景気の先行きについて「緩やかな回復基調が続いている」という基本的な判断を変えていません。
さらに、安倍総理大臣は、先週、日本のGDPを、名目で600兆円に増やすという新たな目標を打ち出しました。これは、この20年あまり日本が経験したことのない、3%という高い成長率を毎年続けて、ようやく2020年ごろに到達できる、高い目標です。しかし、目標を達成するためにどうするのか、具体的な政策は示されていません。
何もしないで、このような高い成長率を達成できるほど、この先、日本経済をとりまく環境が、改善するとは、とても思えません。むしろ、先行き、不安材料の方が目立ちます。
(中国の冷え込み)
まず、中国です。中国は、リーマンショック後の巨額の経済対策の結果、地方政府の借金と過剰な設備が膨れ上がり、中央政府が経済対策を打ち出しても、思うように効果があらわれなくなっているという指摘もでています。もし、中国経済が、これ以上、冷え込む事態になると、東南アジアの新興国にも影響が広がる。そして、日本からの輸出だけでなく、現地で活動している多くの日本企業の業績に、深刻な影響がでかねません。さらに、国慶節を迎え、今、日本で大量の買い物をしてくれている中国からの観光客が、今後、減る心配すらでてきます。
(アメリカ金利引き上げによる混乱)
さらに、アメリカの金利引き上げによる影響も心配です。
アメリカは、先月は、金融市場の不安定な動きを踏まえて、金利の引き上げを見送りました。しかし、年内には、利上げを始める意向です。
日本が異次元の金融緩和を続けるなかで、アメリカの金利が上がることになると、一段と円安が進んで、食料品の値段がさらに上がる。また、金融市場が混乱して、株安が進む。それによって、消費が一段と冷え込む心配もでてきます。
(頼みの綱は、設備投資)
海外の先行きに不安が増す中、残された頼みの綱は、企業の設備投資です。
今回の短観でも、設備投資については、高い計画が維持されました。企業が手元に抱える現金・預金は、240兆円あまりと、増え続けていることが背景にあります。計画倒れにならないよう、企業は、今後、多少、海外経済が悪化することがあっても、例えば、深刻な人手不足に対応するためのロボットなどの省力化投資といった、先を見据えた設備投資に力をいれてほしいと思います。企業にとっては将来の競争力につながります。また、そのおカネが、中小企業や地方、そして働く人たちの賃金へと、循環していけば、内需を盛り返す起点になることも期待できます。
(構造問題への切り込みも)
ただ、少子高齢化という不安を日本社会が抱えている中では、設備投資や消費を本格的に増やし続けることは、難しそうです。経済の体力を本格的に底上げするためには、政府も、こうした社会の構造問題に真剣に切り込むことが欠かせないのではないでしょうか。
【まとめ】
日本経済は、7月から9月も、マイナス成長だったのではないかという見方も出始めています。そこに、海外経済の影響で、日本経済をここまで支えてきた企業の業績や株高が崩れることになると、今年度の成長シナリオが狂うだけでなく、アベノミクスじたいが崩壊するかもしれない。そうした、曲がり角に、今、日本経済は差し掛かっているように思えます。安倍総理大臣は、7日に内閣改造を行う方針ですが、小手先ではなく、中長期的に、日本経済の体力をいかに強くしていくのか。中味のある対策づくりを急いでほしいと思います。
(今井 純子 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/228472.html
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